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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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刻まれるモノ『結末』

 カウスの推測を聞いて納得を浮かべるのと同時に、少しの違和感を感じた。

 剣を軽くしている?

 いや、ソレは無いだろう。


「カウス、恐らくスキルはその通りだとは思う、だが、アレは……剣を軽くしているのか??」

「なに? 何か違和感を感じるのか? 直接剣を受けたお前が言うのなら、俺では解らない何かが解るのかもしれない」


 カウスはそう言うと、再度【魔槍】を精製し、宙を滑走する。

 俺はアドラから眼を離すことなく、小盾群を構え、攻撃に備える。


「お話は善いか? では、此方から行くぞ!」

「くっ!」

 

 タイミングを見計らったように、アドラはあの馬鹿でかい剣を構え、そこからなんと、刺突を繰り出す。

 俺は小盾を並べてその攻撃をいなすと共に、再びアドラの懐に潜ろうとする。


(っ!? まただ! はやり、この攻撃は何かおかしい)

 しかし、ここでもやはり違和感を感じる。

 その思いを一旦は無視し、アドラへ小盾を使った『盾打撃(シールドバッシュ)』を打ち込もうと、左手の前面に数枚集め、魔力を込める。

 タイミングは完璧。

 アドラは刺突を放った影響で、体を前に伸ばしており、この状況では剣での防御は間に合わない。


 そう判断しての一撃だったのだが。

 

「もらった!」

「いや! 甘い!」


 掛け声と共に気合いの乗った一撃。

 その攻撃を、アドラは()()()()()()()()()ことで回避をする。

 だが、今の動きは構造上不可能だ。

 軸足である右足が後ろにあり、かつ体が伸びている状態での回避。

 それに体全体がそのままスライドしたかのような動き。


 アレはまるで……

 と、そこでカウスが言ったスキルの予想を思い出す。

 つまり、アドラは普段攻撃に使っていたスキルを今は回避……いや、移動に使ったのだ。


「そうか、お前の攻撃は武器を軽くしているんじゃない」

「……ほう、では何だと?」


 アドラは再度剣を構えると此方に視線を投げる。

 その視線は、「言ってみろ」よ訴えているように感じる。


「お前のスキルは『重力』。そして、効果は任意の方向へ重力を発生させることか」

「ああ、そうだ。オレは得物を軽くしているんじゃない。狙った場所へ()()()()いるんだ」


 つまりはこういう事だ。


 アドラが剣を振り上げるときには重力がその剣の進む方向、上へと作用する。

 しかし、今度は振り下ろす時には重力が下方向へ作用し、力を込めずとも、自然と剣は下へと落ちる。

 横に薙ぐときも、先ほどの刺突もそうだ。

 横方向へ、そして先ほどのは前面へと剣が落ちていったのだ。

 アドラ本人はスキルの制御と、剣の動きの修正を行っているのだろう。

 

「これで納得がいった。俺がさっきから感じていた違和感。攻撃を受ける度に、横へ後ろへと体に大きく圧力が掛かっていた。が、剣が逸れるとそれが消える。なるど、『重力』であるなら理解できるな」

「そういう事だ、先ほどの攻撃も、オレごと前へ落ちることで回避したわけだ」


 わかったか?

 そう口には出さず、視線で訴えると、剣を構え、此方へ向ける。

 タネは解ったし、理解も出来たが。簡単に対処できる物ではないだろう。

 

 俺の操る小盾も見切っていることから『心眼』も持っているだろう。

 あの『重力』も利便性がかなり高い。

 正直、あの剣をわざわざ使ってくれているから助かっているのだ。

 片手剣や槍、弓など機動力を発揮できる武器で使われると、対処できるかどうか。

 

 と、ふと疑問に思う。

 そうだ。なぜあの武器なのだ?

 弓が向こうの神の嗜好上禁止なのはわかった。

 だが、もう少し小回りの効く片手剣などを使い、自身の移動や、相手への牽制などでスキルを使えば上手く立ち回れるはず。

 

(そうだ、全ての攻撃でスキルを使っていない! アドラがスキルを使うときは“振り上げ”“横なぎ”“突き”の3つだけだ)


 そして1つの仮説を思いつく。

 アドラはこのスキルを小規模で、もしくは“違う方向”へ連続で使えないのではないのか?

 つまり、本来のスタイルはあの剣をつかった“一撃必殺型”。

 ならば、本来は二ノ太刀は用意されて居ない。

 だからだろう。大振りの攻撃が多く、その回避も先ほどのような自身ごとの移動になっていた。

 そうか、此方へ突撃などをしなかったのはやはり、そういう理由があったか。 


(だったら……回避が出来ない向きへの攻撃、もしくはスキル使用直後への攻撃であるなら)


 幾つかの作戦プランは頭の中で立てた。

 アドラは強力だ。

 この秘宝(アーティファクト)が無ければ、そもそも攻撃を防ぐ手段が無い。

 一撃は重く、そのくせ、通常剣戟と同じ剣速なのだから。

 だが。



「お互い、時間が無い。次で終わらせよう」

「ああ……そうだな」


 アドラは剣を構え、此方へのカウンターに備える。

 やはり、カウンター。

 だが、常時スキルが発動していないというのなら、アレを持ち構えるだけの筋力となんらかのスキルはあるのだろう。

 

 俺は持てる力を込め。次の一撃を放つ。


「いくぞぉっ! アドラッ!」


 俺が選択するのは、【鉄巨人の腕(ギガントアーム)】。

 巨大な青白い巨腕が顕れると、俺の意思通りに動く。

 そして、繰り出される1撃。

 その実、なんの変哲も無いただの拳打。

 だが、大本は小盾であるため、あるスキルが乗る。

 『盾強打』

 しかし、これを構成している盾全てに乗ると果たして、どれだけの威力が出るのか。


「ッおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 対するアドラも渾身の力を込めた叩きつけ……そう振り下ろしで対抗してきた。

 恐らく、何らかの補正が掛かっているのか、鉄塊に近い剣は壊れることも無く、青白い巨腕と拮抗している。


 だが、我慢比べでは俺は負ける気はしない。

 そう、この腕を構成している一つ一つは……盾なのだ。

 そして、同時に、篭手でもあり、()なのだ。

 

 俺が併用できるスキルは『盾強打』だけでない。

 決して壊れぬ『不破の鎧』が併用されることで、盾としての性能が極端にあがり、【鉄巨人の腕(ギガントアーム)】そのものも強化される。


「おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ」

「オオオオオオオオオォォッッッッッ!!!」


 俺達の咆哮が木霊する中、ビキッ! と軋む音がしたと思うと、衝突地点から衝撃波が走り、周囲の土が轟音を立てめぐれ上がる。

 結果は相打ち。

 アドラの大剣は半ばより折れ、俺の繰り出した【鉄巨人の腕(ギガントアーム)】も魔力不足で維持が出来なくなっている。

 が、まだ戦いは終わってはいない。

「まだだっ!」

「くっ!」

 

 俺は叫ぶと共に、残っていた小盾を集め、打撃にてアドラへ向かう。

 だが、先ほどの一撃を自身の剛力で放った影響か。腕は上がらず、足にも振るえがきている。

 そんな状況で取れる手段は限られている。

 俺の一撃を『重力』を発動させ、後方へ自分を落下させることで回避した。

 

 が、タネが解れば対応も出来る。

 スキルを連続発動できないのならば、自身への作用は空中にいるのも同じこと。

 


「カウス!」

「任せろ!」


 俺の叫び声に即座に反応し、(ソラ)から閃光とともに槍が降り注ぐ。

 アドラはそれに気がついたが、スキルを発動中で、しかも俺との打ち合いの直後。回避など取れるわけも無く。

 スキルでの加速を図るも、1本がアドラへ深々と刺さり、地面へと縫い付ける。

 

「ぐはっ!! ……存在を失念していたな……。だが……見事」

 

 俺もかなりの消耗をしてしまったが、何とか立ち上がることができた。

 アドラへと目礼をすると、俺はこの戦いをとめるべく、勝どきを上げる。


「“豪戦騎士団(ストレングスオーダー)”騎士団長、アドラ・アーレスを討ち取った! 皆! 剣を捨てろ!」

 

 俺の声が後方で戦っていた騎士団の耳にも入る。

 此方の様子を理解すると、一人、また一人と剣を捨てていく。


 そんな中、声を上げ、此方へ駆けて来る影が見えた。



「お兄様っ!」


 その声と共に、後方の陣に張ってあったテントから。一人の少女が駆けて来る。

 白銀の髪をなびかせて、瞳には涙を浮かべ。


 その少女は……オーレアの巫女、マリミュースは大事な兄の元へと走るのだった。

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