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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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刻まれるモノ『精霊』

 終わりが見えない、無謀とも言える戦い。

 そこに自ら身を投じていく三人。

 常識的に考えて、二千対三人とは挑むべきものではない。

 通常、こういう野戦では三~五倍の兵力差が有った時点で普通敗走が確定するものだ。


 だが、俺たちは前線で二人、周囲を囲まれつつも、一歩も引かぬ大立ち回りをしている。

 なぜか?

 

「やはり、騎馬兵と弓兵は居なかったな」

「ああ、それに、魔術士も一人も居ない。聞いていた通りだ」


 そう。これが俺達が善戦している要因の一つ。

 相手の軍勢は全て騎士、それも重歩兵や槍兵など、白兵戦に特化した部隊なのだ。

 一応、馬に乗っている者も居るにはいるのだが、あくまで乗っているだけで、馬上槍も持っていなく、恐らくは指揮官やその近衛だろう。

 それゆえ、俺達を打倒すには接近し、手に持つその武器で切り捨てなければならない。

 しかし、接近しようにも、俺の操作する小盾が小型の城壁になり、行く手をさえぎり、カウスはその持ち前の高速移動と秘宝(アーティファクト)の力で触れることが出来ず、その投擲された魔槍は多くの兵を巻き込み、薙ぎ払うことで行動不能の兵を量産していく。


 だが、それだけでは直ぐに避ける事が出来なくなり、捕まってしまうだろう。

 それを、これだけの回避を、戦闘を可能としている要因。それは唯一つ。


「はっ! たかだか千や二千の兵でどうこう出来るほど、軟な鍛え方をしていないんだよ!」

 

 その叱咤と共に手にした魔槍が唸りを上げ突き刺さり、敵兵を薙ぐ。

 そうだな、連日繰り広げられたネクさんとの修行。

 アレはこんな生易しいモノではなかった。

 手加減こそしてはくれているのだが、容赦は一切無い。

 俺達二人を相手に、速度の速い【魔弾(バレット)】や、少し遅いがサイズが大きい【ルイン】などを混在させ、数千規模で俺達二人を攻撃していたものだ。

 それと比べれば……。

 

 そもそも、これだけの兵で囲っていても、俺達に攻撃を仕掛けてこれる者には限りがある。

 同士討ちを避け、あるいはこの惨状に逃げ腰になっていたりと連携がまともに取れて居ない。

 

「カウス! 右斜め前方。ターゲット補足。距離としては百数十メートルってことろだ」

「了解。指揮官が迂闊に前に出すぎなんだよ! 【白刃魔槍(ハクジンマソウ)】っ!」


 俺の指示を正確に理解し、カウスはストックの魔槍を一本投擲する。

 敵指揮官は遠方から飛んでくる槍を視認することは出来るのだろうが、あの速度、回避は不可能だろうし、防御したところで防ぎきれるものでもあるまい。


「ぎゃぁぁぁ!」

「ぐぁわぁぁぁっ!」


 その魔槍の直撃を受け、周囲に居た兵ごとあっさりと戦闘不能になる。

 そう。これが俺達が持ち堪えている最後の理由。


「脆いな。これが……選りすぐりの騎士だと言うのだからな」


 そう。兵の錬度が低いのだ。

 無論、一般人や駆け出しの冒険者よりは圧倒的に強い。

 身近な者でいえば。精霊迷宮(あのダンジョン)を攻略する前のミアよりかは強いだろう。

 だが、結局はそこ止まり。

 何故、あのように騎士の質が低いのか。


 この事を予見……いうより、あの国で、ミアを通して騎士を眼にしたネクさんの意見はこうだった。


『あの騎士団だが、弓兵や魔術士は居ないだろう。理由は簡単だ、この国のクラスでは選択に出ないからだ』


『理由? ああ、あそこの神の嗜好だ。脳筋で筋肉自慢のヤツだ。弓や魔術は“軟弱”だと思っているんだよ』


『まぁ、この都市の兵は外の迷宮に篭る機会が無いようだしな。あ? どうしてって、手元から騎士を動かしたくないんだよ。迷宮に行くのは限られた者だけだ』


『それに、ここは十余年前に一度壊滅した国だぞ? 人員も満足に出来ない。騎馬とか軍馬だって維持とか大変なんだから。なんだかんだ言って騎士とはいえ兵の質は低い』



 まったくもって、ネクさんの分析した通り。

 この条件であれば、俺たちも防衛メインではあるが、立ち回ることができる。

 だが、


『だが、覚えておけ。お前達に例外が居るとするならば……それは、あの男だ」

 

 そう。ネクさんもこの作戦での唯一の例外として上げていた男。


「何をしている! 相手は二人だけだ! 無視して、都市内にいる本隊に攻撃を仕掛けろ!」  


 その男、騎士団長アドラが声を上げ、こちらへとゆっくり歩いてくる。

 流石に、見て解る。戦闘態勢を取った彼を眼にすると、背中に嫌な汗が流れてくる。


「さて、今からが本番だな。カウス、体は温まったか?」

「ああ、問題ない。一般騎士達も数を減らすことが出来たからな。あとは後方に任せていいだろう」


 俺たちはそういうと拳を握り、構えを取る。


「逃げる相談はしなくてもいいのか?」

「心配には及ばない。俺達も此処最近、軟な鍛え方をしてないんでね」

「同感だ。アンタこそ、何時でも連れて逃げる算段くらいしてなよ」


 戦闘の……それも命をかけた戦いの前だというのに俺達は落ち着いて話をすことができる。

 だが、アドラは後ろめたいのか、眼を伏せ、敵だと言うのに俺達、に侘びの言葉を投げかける。


「俺を恨んでくれていい。憎んでくれていい。騎士だと言いながらも、結局手の平の上で踊ることしか出来ない俺を嗤ってくれていい」

「馬鹿をいうなよ、たった一つの宝を守るためなんだろ? 顔を下げるな、前を向けよ」

「まったくだ。そもそも、“うちの神様”はこうなる可能性を想定して動いていたんだから。一切気にするな」

 

 俺達の言葉に眼を見張るアドラ。

 どうせあの後、マリの支配権を奪った向こうの神に作戦の変更を強要されたんだろう。

 更に言えば、ダンジョンで襲撃してきた刺客。彼らに神からの指令を伝えたのも彼、アドラだろう。

 そうでないと、いくら巫女の啓示があったとはいえ、俺達の事を知りすぎている。

 

「気にするな、と言っても無理だろう。だから……全力でお相手する。まぁ都市に向かった騎士達は問題ない。ちゃんと手をうってある」



 そう、この先の展開も予測している。

 あとは任せたぞ、ネーネ!





**********************************


「あ~。やっぱりいっぱいこっちに来ましたねぇ~」

『全く。こうなる前に敵兵を全て倒しきればいいモノを……彼らもまだまだですね』


 いや、それはどうなんだろう?

 いくら修行して強くなったって言っても彼らは人族。

 魔術適正の高いエルフ族や、身体能力の高い獣人族とは違う。

 おそらくは決め手に欠ける。

 そのための戦術であり、装備なのだとおもう。


『ネーネ、いつでも行けますよ。善いですか?』

「はいぃ、精霊さま~【召喚:木精霊(ドリアード隊)】~」


 精霊さまに促がされるままに、私は召喚魔術を行使する。

 私が呼び寄せるのは迷宮都市にいた守衛。そう、あのドリアード達だ。

 だが、この召喚、未完成も善い所。欠陥だらけなのだ。


 召喚して、呼び寄せるだけの魔力が足りない。

 仮に召喚しても、あのドリアードをそのまま現出させるには魔力が足りない。

 そして、全員に指示をだし、命令することが私には無理だ。


 その為、通常であれば呼ぶ出すことなんて不可能な彼ら。

 だが、別アプローチでその召喚に成功することができた。


 呼び寄せる魔力が無いなら、その魔力を持ってくればいい。

 私の背後に二メートルほどの高さの樹が立っている。

 ソレは薄緑に発光しながら、粒子を周辺に振りまいている。

 コレは当然ながら、普通の樹ではない。

 

 ネクさんから貰った()()()()。アレを触媒として、精霊さまを召喚した姿なのだ。

 今までは木製のお守りに宿ってもらったが、今回は林檎の樹に宿ってもらった。

 勿論、そこら辺にある種ではない。

 迷宮都市で私達が食べ散らかした、あの林檎。その種なのだ。


 種そのものにかなりの神気が込められているらしく、精霊の器に最適なのだ。

 あとは、喚起魔術にて精霊さまに来てもらったのだ。


 その結果、規模こそ小さいものの、この樹はあの迷宮都市と同じく、精霊樹となり、小規模ながら、私にも魔力の恩恵を与えれくれる。

 だったら、後は簡単。

 同様に種を使い、ドリアード達の肉体をこちらで作り、精神体アストラルのまま召喚することでコストを軽減。

 こちらの意地コストは精霊樹と私の魔力で十分に賄うことが出来る。

 そして肝心の指揮だが……。


『さて、私の可愛い妹達。遠い遠い兄弟に害をなす者がやってきました。手加減は無用です。“のしてしまいなさい”』

 その言葉に、召喚したドリアード、総計十三体が木製の槍を片手にゆっくりと歩いていく。

 

 サイズは迷宮都市よりも縮み、人の腰ほどまでしかない。

 ヒト型ではあるものの、造型も歪。

 だが、その本質。中身は間違いなくネクさんが魔改造を施している精霊。

 通常の人間に太刀打ちできるモノでもない。



「ばかな! 兵が一人たりとも居ないだと!?」

「よく探せ! 居ないことなどありえない。いくら強いからといって数名で二千を抑えるなんて正気でないぞ!」


 どうやら、街の入口にたどり着いたようだ。

 獣人の兵が居ない事に戸惑い、伏兵を警戒しているようだ。


 私は魔力維持のため、この樹の側を離れることが出来ない。

 だが、彼女達の眼を通し、その様子を見ることができる。


「なんだ……あれは?」


 だれかが接近するドリアードに気がついたようだ。

 ソレを視界に入れ、警戒をあらわにする。


「っ! 魔物(モンスター)だ! ()()()()()()()()!」

 その言葉に兵達が臨戦態勢を整える。



 が、そんな事はもうどうでもいい。


「魔物……あの精霊達を……魔物?」

『……仕置く必要が有りますね』


 私のショック以上に、憤慨する精霊さま。

 その言葉の直後、遠方より騎士達の悲鳴が木霊するのだった。  

ネーネの造形があまりにアレだったため、どう見ても異形の魔物にしか見えて居ないのです。


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