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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
78/140

開戦「 」日前①

名前の間違いを修正しました。

 さて、どこから手をつけたら善いっすかね。

 ウォッドベーカーから出発してから十日と少し。

 予定より数日速く、俺の故郷『フラクペネイト』へと到着することができた。

 これも商隊(キャラバン)の皆と此処まで引いてきてくれた馬に感謝っス。



 商隊(キャラバン)には今回の目的、住民の避難の事は出発前から聞いていたそうっす。

 その上で、ネーネ経由でオーレアの情報が入ったもんで、皆気合を入れて此処まで走ってくれたっす。


 ああ、勿論、皆義勇心とか、そんな理由で来てくれた訳では無いっす。

 商人が動く理由。そんなもの、一つしか存在しないっすから。


「おい! お前ら! 折角の上客だ! 気合い入れて働けよ!」

「「「「「おうぅ!」」」」」


 そう、お金っすね。


 レクスが出発前、彼らを雇うために出した前金。

 その()、金塊約三百キロ。

 ちょうどあの収納鞄(アイテムバッグ)に入るだけの量を渡したそうっす。

 あの金塊を金貨換算すれば一体何枚になるんすかね?


 当然、避難用の非常食や衣料、医療品を仕入れるお金にも使われて入るが、ソレを売りに来ているのも商隊(キャラバン)なわけで、

 向こうとしては自分の商品が売れるし、避難に手を貸せばお金も入る。まさに一石二鳥だったわけっす。

 当然、それ以外のモノを売りに来ていた商隊(キャラバン)もいたっすけど、避難の為には有る程度の馬車が必要だったんで纏めて雇ったみたいっす。


“避難に協力すればお金が手に入る”“積荷に関わらず、買い取ってくれる”


 こんな話が一人歩きし、出発当初は数台の馬車だけだったっすけど、次第にその数が増えていって今では数十台の馬車が揃っているっす。

 聞いても噂の出所は解らないらしいっすけど、此処まで数があると避難時の食料がかなり詰め込めるので大助かりっすよ。



 そんなこんなで、今はこの大量の馬車の荷物と格闘中っす。

 街の皆も手伝って積荷を降ろしているとこっすね。


 彼らへの前金の支払いは最初に取り受けた商隊(キャラバン)が仕切っているっす。

 彼らも信頼が第一。そこら辺はごまかしたりせず、きちっとお金の計算をしてるらしいっす。

 まぁ、仕切りの報酬に空になった収納鞄(アイテムバッグ)を進呈するらしいので、それはもう喜んでやってるっすよ。

 商人ならあれの価値がどれだけの物か良くわかっているすね。


 さて、もう一働きするっすかね。

 そう思って馬車に近づこうとすると、俺を呼ぶ声がするっす。


「ベオ、今後の予定で話がある、お前の仲間と一緒に集会所まで来なさい」

 振り返るとそこには、長老が立っていたっす。

 この人は長老呼ばれ、この街の長役をしている老獣人っす。

 こんな風に長老と呼ばれる人が複数いて、皆で協議しながら街の運営をしていってるっす。



「わかったっす、直ぐ行くっす」

 俺はそう言うと近くに居るネーネに声をかけ、動く用意をしていく。


「ネーネ! 会議みたいっす! いくっすよ~!」

「……んん、いまいきますよぅ~」


 ネーネはそう言うと、手に持っていた本を沸きに抱えると、俺や長老のところまで来たっす。


「ネーネ、その本、気に入ったんすか?」

「ん~そうですねぇ~。非常に興味深い話ではありますねぇ~」


 ネーネが持っていたのはここに来るまでに読んだあの絵本っす。

 ここフラクペネイトでは珍しい本ではないっすけど、ネーネの故郷では無かったらしいっすから、きっと新鮮なんっすね。


「ほほう、その本が気に入ったのか。ワシも小さいころは良く母に読んでもらったものだ。昔、昔から伝わっているものでな。うちの孫もその本を読まないと夜眠れないって、泣いていたもんだ」


 長老は感慨深そうに、そうネーネに言っているっす。

 やっぱり、この本は昔から愛されているんすね。

「っ、おじいちゃん! 私はそんなことで泣いていません! 変な噂を広げないで下さい!」


 そう言いながらやって来た人物を見て、俺は固まってしまったっす。

 なぜならその人物は。


「はは、さしもの“巫女”もこういう話は恥ずかしいか。しかし、これ、ベオはともかく、来客の前だ。挨拶くらいしなさい」

 長老が嗜めると、彼女は慌てて姿勢を整え、さっきまでの剣幕を嘘の様に引っ込め、華麗にお辞儀をし、自己紹介を行った。


「これは。遠路より、ようこそ。私はこの国で巫女を務めております、ウルス・フェニアと言います。宜しくお願いします」


 そう、彼女こそがこの国で唯一の巫女、ウルス様っす。

 俺も自警団の入団の時と、此処を出るときの一回だけあったことがあるくらいっすけど。


 この国では人気がかなり高くて、ほとんどアイドルの様な状況っす。

 年は俺よりも若いらしく、多分十代前半で、最大の特徴は()()()()()()()()と、()()()()を持つ兎型の獣人っす。

 なんでも先祖返りって話で、両親は共に犬型獣人だったんすけど、兎型として生まれたって聞いたっす。


「どうもぉ、初めましてぇ。ネーネ・ルミリアと言いますぅ~。ネーネと呼んでくださいぃ」

「初めまして、ネーネ。私の事もウルスと呼んでくださいね。お話を聞きたいのですが。立ち話もなんですので。集会所まで行きましょう」


 ふたりは握手をすると、そのまま二人して集会所まで歩いていってしまったっす。

そして、取り残される俺と長老。


「ワシらも行くか」

「そうっすね、いきましょう」


 女性陣二名を追いかける形で、俺達も集会所へ脚を向けるのだった。




***************



『と、いうわけで、フラクペネイトでは予定通り状況が推移している』

 俺はネーネからルイミウォテルに伝わった情報をこいつ等に教えている。


「そうですか、ご連絡ありがとうございました」


 俺の話を聞いて、レクスはそういいながら頭を下げる。


 二箇所離れて行動している以上、相互の連絡は難しい。

 だが、ネーネがルイミウォテルと交信が出来るようになったことで打開策が見えたのだ。

 俺の迷宮都市を中継し、伝言として伝えるというもの。


 正直な話、ただのメッセンジャーでしかないが、まぁそこは仕方ない。

 どのみち、情報を集め、作戦を練る必要があるのだ。

 相互連絡を取って可能な限り情報共有をするべきなのだ。


 難点を言えば、俺の“目”は現在のとことミアただ一人なので、現在のフラクペネイトの情報が、また聞きでしかない点だろう。

 情報の精度がかなり低く、最低限度しか手に入れることが出来ない。

 この点について、思うところがあるのか、カウスがその事を的確についてくる。


「ネクさん、向こうにいる巫女には連絡が出来ないのですか?」

『……ああ、俺とは面識がないからな。名前はネーネ経由で聞いているが、向こうは俺の事を知らない。知らない以上通信の回線を開くことが出来ない』

「え? これって面識がないと出来ないんですか?」


 意外と条件厳しいんですね。

 そんなことをぼやきながら、ミアが俺の言葉に驚いている。

 やはり皆の中では神=万能とかそんなイメージなのか。


『当たり前だ。少なくとも巫女の場合は、俺を祭っている祭壇とかに行って、俺の名前を言いながら祈るとか、そんな手順がいるんだぞ』

まぁ、向こうから話しかける場合はそれ位の手順が必要だろう。

ミアは自分の場合と全然違うことに驚いているのだろう。


「私とは全然状況が違うんですね」


 とか言っている。

 そもそも、眷属と巫女では全然違う。

 ミアの場合は俺の名前どころか、直接あった上で眷属になっているんだ。

 対して、巫女の場合はあくまでも信仰として神に仕える存在だ。

 この差は意外と大きい。


『まぁ、巫女の方が直接神に会って、名前を聞いているのなら影響力は跳ね上がるんだがな。その場合はミアと同じようなことが出来るはずだ』

「……ちょっと待ってください、ソレは初耳です。巫女もミア同様、神の声を聞くことが出来るのは先日わかりましたけど、ひょっとして、“眼”も同様なんですか?」


 さすが、一を聞いて十を知る……とまで言って善いかどうか解らんが、流石の察しのよさ。

 カウスはこちらが抱える色んな状況を理解できたようだ。


『流石、カウス。よく気がつけたと褒めておこう』

「そんなこと言っている場合ですか! それが本当なら今頃!」

『まぁ、落ち着け。その点も把握しているが、どの道、限界も有るんだ』

「限界……ですか?」


 俺は『ああ』と言いながら他の二名の様子を伺う。

 俺とカウスが二人して話を進める中、まだ理解をしていないようだ。


「カウス、どういうことだ?」

 俺にも解る様に説明をくれ、とレクスは訴えながらもカウスに訊ねる。


「ああ、つまり、先日のマリとの話は、全て向こうの神に筒抜けだったってことだ」

 その言葉にレクスもミアも絶句する。

 それは今まで予定していた計画が全て相手に漏れているというのと同じことを意味していた 

初ベオ視点での物語。

ようやく、獣人側の巫女が登場しました。

巫女の裏設定などは明日活動報告であげる予定です。


まぁ、当然の懸念ではありましたが、巫女に干渉できる存在がそのまま放置しているわけがありません。

そこら辺は当然のことながら、ネクは織り込み済みで計画を立てています。


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