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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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災禍の夢、一握りの希望

 俺はミアとマリの会話を聞きながら、様々な思いに囚われていた。


 ベルクの起こしている、今回の一件。

 ほぼ間違いなく。神界で問題提起したところで、取り合わないだろう。


 神を縛る規則では外界、即ち、自分の管理領地外や他神魔の管理地、眷属に干渉することを禁じているだけなのだから。


 故に、アイツの行動を咎め、処罰出来るのは、ヤツが直接出てきて獣人へ干渉を行ってからである。

 現時点での、自国民への行為まではこちらから規制する事が出来ないのだ。


 あくまで良識の問題なのだが、新神の中には己の管理領地を、ただの箱庭としてしか見ていない者も多く存在しているのが実状だろう。


 そしてマリの見た夢。

 この内容から何が起きるのか、おおよその見当はつく。


 “闇に飲まれる巫女”というのはベルクに存在を喰われる事の暗示だろう。

 “血塗れで慟哭する兄”は無理矢理に加護を与えられ、肉体が耐えきれないのだろう。


 ミアの肉体的で技を使っただけで壊れるのだ。

 戦闘系の神の影響を直接受ければ肉体なんて壊れて当然だろう。


 つまり、干渉が起こってから助けると手遅れになり、

 その前にマリという巫女を助ける、その兄を助ける。そのどちらを行おうにも、他神への干渉になってしまう。


 唯一の対応。

 それは戦わない事だろう。

 応戦せず、逃げ切ることが出来れば、或いはベルクの顕現を回避出来る可能せいが有る。

が 、それはベルクにとっては許しがたい事のだろう。

 だからこそ、包囲に一万もの軍勢を使ったのだ。


(全く。俺は何時も、後手に回るな……)

 口には出さず、そう独白する。

 だが、俺はこのまま終わらせる気はない。

 ベルクは俺の眷属に手を出したのだ。

 必ず出し抜いて見せる。


******************


 私はマリが落ち着くのを待って尋ねる。

「それで、マリ。私たちに出来る事が有るの?」


 私たちに何かが出来るからこそ、マリは待っていたのだし、この情報を教えてくれたのだ。


「はい。既に兵は出立しています。ですが、前もってそのルートが解っていれば、そこを回避して避難をすることも可能なはずです」

「進軍ルートが解るの!?」


 マリのその言葉に思わず声をあげてしまった。


「正確に言えば、予定のルートですが。軍部の予測では南東にある都市を経由して避難を行うだろうと推測しています。その為、後方部隊を含め、部隊数を大きく分けて四隊に分ける作戦と聞いています」



 そう言うと地図を取りだし広げる。

 マリは部隊展開の予測場所の説明をしながら、地図を指し示していく。

 指差された地点はフラクペネイトと南東にある都市国家とに間だった。


「補給部隊は後方に待機するでしょうが、この前線の三部隊は逃さない為にも、かなり広域を予定しているそうです」


 確かに。

 一般人の避難となると、徒歩での移動になる。

 そう考えると、通常一番距離の近い都市へと

 避難するのが定石だろう。


「だったら、この部隊が展開する前に避難できれば良いって事ですね!」


 私の言葉にマリは頷き返すと、

「今から急いで連絡を送れば展開前に抜けられえるはずです」


 これで希望の光りが見えた気がする!


『いや、この作戦では避難出来ない、お前たちの考えは甘すぎる』

が、その言葉と共に待ったを掛けられた。

「甘い……ですか?」

 マリはこれで何とかなると思っていたか、この指摘に驚いているようだ。

 私も先ほどの話の内容で行けると思っていただけにどう応えるべきなのか悩む。


『この作戦。お前一人で考えたんじゃないか?』

 ネクさんの指摘にマリは再度驚き、表情を変える。

「どうしてわかったのですか!?」


 ネクさんはこの答えにため息をつくと、

『秘密の話は此処まで良いだろう? 表の三人を連れて来い。今後の話をするぞ』



 暫くして、部屋の外で待機していた3人と合流し、全員で対策を立てる事になった。

『俺が言っただけでは理由が解らんだろう。三人に同じ話をしてみろ』

 ネクさんのその言葉に従い、マリは同様の説明をするのだった。



 話を聞き終わった三人の意見だが、やはりネクさんと同意見で、これでは避難出来ないという結論に至った。


「巫女様、この計画では避難は難しいでしょう。避難民の移動速度を計算にいれていません」

「確かに。この場合、数日程度先行出来たとしてもすぐ追い付かれるな」

「その場合、三隊全てに追われる事になるな。追撃戦はされると厄介だぞ。先ず逃げ切れない」


 私たちには何故逃げ切れないのかが未だに解っていない。

「どうしてダメなんですか? 早い段階で避難出来れば包囲網は突破出来るはずですが?」


 マリの質問に騎士団長が丁寧に答える。

「理由は幾つか有りますが、最大の点は避難民と言うことです。確かに獣人族は高い身体能力を持っていますが、避難する者には老人や幼い子供の含まれるはずです。そうなると、移動速度は極端に遅くなり、いずれは追い付かれてしまうでしょう」


 そうか、訓練された兵士でも、冒険者でも無いのだ。

 そんな人達に求めるには過酷な要求だろう。

「さらに、地形が良く有りません。この地域一体はなだらかな平地です。一万近い避難民を隠す物等一切無いので、直ぐに発見されてしまいますね」


 騎士団長は更に続けると、マリを見やり、話しかける。


「一言前もって相談していただけたら良かったのですが」

「ごめんなさい。……でもこれ以上迷惑も心配も掛けたく無かったんです」

 騎士団長の叱責を受けてマリは肩を小さくさせている。


「だがどうする?このままと言うわけにも往かないだろう」


 カウスの提案で、私たちは皆で意見を出し合い、最善策を模索する。

 本来の私たちの計画に加え、マリがもたらした情報と、騎士団長からこの都市の 兵士の能力や装備情報を照合し、協議していく。


 暫くして、作戦の雛型が出来上がり、マリはネクさんへ意見を求める。

「命神様、ご意見を伺って宜しいでしょうか?」

『……不安要素も多いし、一部手直しが要るが、大筋はこんなモノだろう』


 ネクさんからの一応のお墨付きをもらい安堵する面々。

「後はフラクペネイトへ伝えるだけですね。急いで向かわないと」

 後はいかに速く避難が出切るか、時間との勝負になる。

 私は皆に出発を促そうとする。と

『そこは俺に手がある、まな、何とかなると思うぞ』

 私たちはその提案に驚きつつも、ようやく見えてきた光りを現実のモノとすべく、動き出すのだった。


※次回更新は2/18日予定です。

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