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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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戦神の巫女②

 案内された部屋は一応の客室なのか、表に有った長イスとは違い、痛み等は無い。

 部屋に入ってテーブルに座ると対面に座ったマリミュースはにこやかに話し掛ける。


「改めまして、お話に付き合って頂きありがとうございます。……え~と、お名前は何よお呼びしたらよろしいでしょうか?」

「あ、私はミアと言います。ヨロシクお願いします。マリミュースさん」

「マリで結構ですよ。私もミアと呼ばせてくださいね。でも、本当によかった。もうお話をする機会なんて無いモノと思ってましたから」


 マリミュース……いや、マリはそう言うと少し寂しそうな顔をした。

 それが私を呼んだ理由なのだろうか?

 だが、どうして私達がここに来ている事が分かったんだろうか?

 私達が入国してまだ一時間も立って居ない。

 タイミング的に、私達がこの都市に到着する前から準備をしていないと、あそこで遭遇することは無いはずだ。


「私達は今日この都市にやってきたけど、どうして私達のことが分かったの?」


 私はその事を疑問に思い、マリへ尋ねてみた。

 私のその問いかけを聞いて、マリはどうしようかと迷った様子を浮かべたようだが、ゆっくりとその口を開いてくれた。


「実は、予言……と言えばいいのか。この先どんな事が起こるか、それを夢で見たの」

「夢……? 予知夢っていうこと?」


 私のその言葉に首を横に振ると、マリは


「たぶん……違う。アレは予知夢とかではなく、啓示。それも、この都市の崇める戦神様ではなく、まったく別の神さま」

「神の啓示……? あれ? どこかで?」


 私はそのフレーズを聞いたことが有ったはずだが、一瞬思い出すことができない。

 しかし、私が思い出す間もなく、マリは話を続ける。


「その啓示ではこの戦争がいつ、どんな風に始まるのか、この都市にミア達がいつやって来て私と出会うのか、この先の戦争がどう進むのか。そして、この先の私の運命も……その夢では教えてくれたわ」


 その言葉を口にするとき、マリの顔色は悪く、握った両手には力が篭っていた。

 私が心配になり、声を掛けようとすると、マリは顔を上げ、

「ねぇ! 教えて! ミアはどんなモノを見てきたの? 私はこの国から出たことがないから、聞いておきたいの!」


 その言葉には、まるで小さな子供が欲しいものをねだるような、そんな年相応な姿を垣間見ることが出来た。


「えぇ~と」

 私の……これまでの事!?

 それを話すとなると、ネクさんの事も話さないといけないんじゃないかな?


『構わんぞ。俺の名さえ伏せていればそれで問題は無い、一応他神の管轄区なのでね、名は伏せさせてもらう』

 そう思っていると、予想に反してネクさんの了承が出たようだった。


「じゃぁ。私が旅にでた頃の話からするね、あんまり面白い話ではないけど」

そう前置きをし、マリへと私の過去の話をするのだった。





*******************


 ミアを一人、この都市の巫女に預け、俺達は部屋の外で待つことにした。

 すぐ隣にはカウスが俺と同じようにある人物を見ている。


 この都市国家の騎士団長と呼ばれた男。

 長身で立派な体躯をし、プレートアーマーを纏い、威風堂々と立つ。まさに騎士という姿を表した男だろう。


 この男を見ると、俺は、いや。俺達は数年前のあのダンジョンを思い出す。

 共に挑んだ仲間に裏切られ、捨石とされて、この命が消えそうになったその時。 あの男が姿を現したのだ。

 デザインこそ違いはあるものの、同じくプレートアーマーの騎士だった。

 あの男も、目の前の男と同じように威風堂々としてり、瀕死の俺達の前に立つと、単身でダンジョンボスを討伐したものだった。

 彼は倒し終わると、俺達には眼もくれず、颯爽と去っていた。


 そう。俺達は、彼のおこぼれであのダンジョンを攻略したのだ。

 その事を深く悔やみ、しかし生き残った喜びも感じ、俺達は再度あの男に会わねばと思っていた。



 再度目の前の男を見る。

 あの時の騎士と同じイメージを持つ男。

 そして、先ほどの会話ででた、周辺ダンジョン制覇。

 俺達の中で疑念は募り、ついに口にでていった。


「失礼、騎士団長殿。一つ伺ってもいいでしょうか?」

「……何か用かな?」


 俺は礼を失さぬよう、彼に話し掛ける。

 隣のカウスは一瞬俺に眼を向けると、趣旨を理解したのか。そのまま彼へと視線を戻す。


 俺は彼の威厳に満ちた声を聞きながら、数年前のあの出来事を訊ねた。


「数年前、ウォッドベーカーのダンジョンを攻略されませんでしたか?」

「……過去には数々のダンジョンに挑んでいたのでな。確かに、あの都市のダンジョンも攻略はしたが、いつとは覚えて居ないものでな。……それがどうかしたのか?」


 俺はその答えに少なからぬ落胆を覚えたが、当時の彼にとって、俺達は路傍の石だったはずだ。覚えていろというのが無理な話か。


「いえ、その際に貴方の様な騎士に、仲間一同を助けて頂きましたので、今度出会うことができたらお礼を言いたかったのです」

 そう、俺達は伝えたいのだ。

 あの時の命があったから、新しい仲間にも出会えた、奇跡とも思える遭遇もした。

 そして、その奇跡は今も続いている。

 あのまま普通の冒険者をしていては得ることの出来なかっただろう経験をさせてもらっているのだ。

 コレについてはカウスも同じ想いであろう。


 俺は違うかも知れないが。目の前の騎士に、あの時の騎士を重ね、礼を言う。


「当時の彼が何を思って俺達を助けてくれたかは分かりません。あの時救ってもらった命のおかげで、新たな出会いをすることが出来ました」

「その通りです。そして、俺達はあの時の彼の様に、誰かを助けることの出来る冒険者を目標としているのです」


 カウスも同じ思いを抱いていたのだろう。

 俺の後に続け、彼への礼を込め、俺達の目標としている事をはっきりと口にする。


 そうだ、俺達の行動理念はそこから来ているのだ。

 挑んだメンバーに裏切られ、それでも尚、助けてくれた存在も居る。

 ならば、俺達は仲間を見捨てず、誰かに手を差し伸べることの出来る存在のなろうと。


 俺達の想いは、彼を通し、あの時の彼に伝わったんだろうか。


「……そういえば、名前を聞いていなかったな。私の名前はアドラ、アドラ・アーレス。軍国オーレアで騎士団長を務めている。貴殿らの名前を聞かせてもらえるか?」


 騎士としての正式な名乗り。

 俺達は、ここが本来敵地であることを棚上げし、名を名乗る。


「精霊都市にてクランのリーダーを務めています、レクス・ホムラビ」

「同じく、クランメンバーのカウス・ホムラビ」


 俺達の名乗りを聞いて、彼は「覚えておこう」と呟くと、厳格な騎士として、俺達に宣告をした。


「極秘事項に付き、詳細は説明することは出来ない。が、騎士として忠告いたす」


 何が、と訊ねることすら許さぬその気迫。

 だが、一語も漏らさず聞けと、そう訴えているのを感じることが出来る。


「現在、わが国は()()()()()である。我が軍、総数約一万の兵が昨日より既に作戦行動中である。冒険者の方々よ。()()()()に戻られる際は気をつけて戻られたし」


 はっきりとした宣言。

 俺達は言われた内容を理解し、同時に冷や汗が背中を流れるのを感じた。

 事態はすでに動いているようだ。




*********************



「っ! そんな! もう兵は既に出発しているの!?」

「ええ、出立は昨日の早朝。軍勢は約一万ですわ」


 私が昔の話、そして最近の話をマリにしていたのだが、そのお礼にと、教えてくれたのだ。

 既にこの国に軍勢は居らず、入れ違いで出発していたと言うのだ。


「そんな……今から一万もの軍勢がフラクペネイトに向かったんでは避難が間に合わないっ!」

 私はマリの言葉に絶望に似た何かを感じていた

 目の前が真っ暗になりそうな……そんな感覚が襲い・・・


『落ち着け、まだ終わって居ない』


 そのはっきりとした声が私を現実に引き戻す。


「……まだ、終わってない?」

『ああ、終わってない。いや、まだ始まってすらいない。そうだろう?マリとやら』


 先ほどまで黙っていたネクさんの言葉。

 そして水を向けられたマリの落ち着いた様子。


 私の理解の及ばないところで話は進んでいく。

オーレアの軍勢一万は既に出発してしまっていたようです。


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