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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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確かな成果

 その夜、俺はアレフと話を終え、レクスとカウスの特訓の為、再度ミアの体を使っていた。

 毎夜の訓練は一週間を超え、少しずつではあったが、確実に成長の兆しが見えていた。

 特に、先日には『心眼』のスキルを取得するに至り、『神々の城壁(アースガルズ)』の小盾を視認することが出来るようになっていた。


 そこで俺は二人に装備を渡し、扱いを覚えさせようとしているところである。

 無論、その方法は体に叩き込むことであり……。




 夜の高原。

 明日にはウォッドベーカーにたどり着くこの場所で、最近の日課となっている夜の訓練が行われていた。

 結界を張り、周囲に俺たち以外居ないなかで、俺の厳しい叱咤が響き渡る。


「遅い! 発射されたのを目視で確認してからでは回避が間に合わない! 発動前の魔力の兆候から判断して射線を予測して動け!」


 俺は二人にそう指摘しながらも、高速の回し蹴りを繰り出し、カウスを吹き飛ばす。

「ぐっ!」


 両手で歯を食いしばりながらもガードし、自らも後方に飛ぶとこで威力を相殺する。


 だが、俺の追撃は終わらない。


 俺の周りを手のひらに収まるほどの光球が浮かんでおり、その総数は優に百を超える。

 ソレはまるで小さな天体のようで、この夜空の下。美しい絵のような趣すらある。

 その周囲に浮かぶ光球は輝きを増し、弧を描くように旋回しながら、カウスへと殺到していく。


 魔術体系の1つ、【ルイン】。

 光球を射出するだけの基礎魔術。

 本来であるなら、ここから矢状にして【ボルト】、槍状にして【ジャベリン】、 剣状で【ブリンガー】と形状と質量を変えることで威力を増す。

 ただ、魔力を弾丸としているだけなので、この状態では威力はお世辞にも高いとはいえない。

 だが、ソレはあくまでも魔術の基礎としての話。

 当然のことではあるが、鍛えられ、磨かれた基礎技能は、強い。


 本来は拳大の大きさではあるのだが、そのサイズを半分以下まで圧縮。

 それにより、強度を大幅に増している。


 そしてこの魔術の利点は圧倒的な燃費の良さ。

 この規模であるのなら、魔力の自然回復方が多く、常時展開しておける程だ。

コレだけの物量による全方位攻撃。

 体勢を崩されたこともあるが、流石にまだ回避できるほどには至っていない様だ。


 と、そこへレクスの操る小盾が、カウスと光弾の間へ割り込みを掛ける。


「やらせん! 『小盾群、即時展開、阻め』!」


 口頭での命令と同時に手を使った遠隔操作。

 まだ思念だけで操作することは無理だが、それでも遠方まで防御をかける術を見につけたようだ。

 本人には言わないが、この短期間で見事と言っていいだろう。


「助かる!」


 間一髪、攻撃を回避することが出来たカウスは空中を駆けながら礼を言った。

 カウスも何とか『天駆ける長靴(ヘルメスアンクル)』を使いこなしているようだ。

 元々機動性が高かったことが幸いしたのだろう。

 アレは空中の任意の場所に足場を作り駆けることが出来るので、この様な開けた場所でも立体的な動きが可能となる。


 だが、アレは移動を補助する秘宝(アーティファクト)使い方は至極簡単であるため、俺はカウスに別のことを叩き込んでいる。


「……っ!【(ワレ)始原(シゲン)(コトワリ)(モト)(ヤリ)(ツク)ラン】!」


 カウスは上空より俺を見据えると、右手に魔力を集中しながら、呪文の詠唱を始める。

 その詠唱を共に、右手の魔力はカウスの願う姿へと変わっていく。

 俺がカウスに教えたのは、一つの魔術。


 詠唱こそ短いものの、コレも極めるのが困難とされる基本魔術……


 そして、その呪文の完成と共に、カウスは体を弓のようにしならせ、一気に()()する。


「貫けっ! 【白刃魔槍(ハクジンマソウ)】!!」


 魔槍(ジャベリン)系統の魔術と自身の持つスキル『投擲』、それと新規で取得した『貫通』とを掛け合わせた奥義。

 通常の魔術と比べ、自身で投げるという1手間掛かるものの、それに見合うだけの威力を兼ね備えている。


 コレにより、上空からの投擲攻撃が可能となり、オールレンジでの使用を可能とした。

 さらにメリットとして、魔力を消費こそするが、複数のストックを作ることも出来、作りだした魔槍(ジャベリン)は実際の槍と同じように扱うことも可能である。


 俺はその見事な一撃を見て満足しつつ。


「だが、甘いっ!!」


 周囲に浮かんでいたルインを複数個集め、巨大な剣を作成する。

 だが、コレだけで終わらない。


「いくぞ! 【宿(ヤド)レヨ、緋炎(ヒエン)(オドレ)レヨ陽炎(カゲロウ)(ワレ)始原(シゲン)(コトワリ)(モト)(ケン)(ツク)ラン】っっ!」


 迎撃するは炎を宿らせし魔剣(ブリンガー)系統の魔術。

 俺の詠唱が完了すると共に、虚空に5mは有ろうかと言う巨大な大剣が出現する。

 その呪文通り、色は緋色であり、周囲に高温による小規模な乱気流が発生している。


 俺はこちらへ飛んでくる魔槍(ジャベリン)に照準を合わせると、そのまま剣を振る様に手を動かし、魔剣(ブリンガー)を振るう。

 膨大な熱波が周囲を巻き込み、火炎旋風を巻き起こす。


「灰燼に化せ! 【緋風ノ魔刃(イグニートブレイド)】!」


 先日、魔獣を処断するときに使った【雷帝の旋風突き(ヴォルテクスピアース)】ほどではないが、詠唱も短い割りになかなか使える魔術である。

 高速で飛来する魔槍と燃え盛る魔剣。二つの魔術の衝突は周囲を焼き払い、破壊の爪あとを残したのだった。






 破壊の嵐が去った後、そこは焼けた大地と疲労困憊の2人の姿があった。

 あの熱波から身を守るため、レクスは小盾で造った腕でカウスを緊急回収、周囲 全方位全てを小盾で多重に囲い、やり過ごした。

 持てる全てを防御に費やしたようで、盾の維持が出来なくなっている。

 カウスに至っても、高速で動き回り、あれ以前にも何度も俺へ魔槍(ジャベリン)の投擲を行っている。

 最後のアレで魔力も打ち止めだったようで、直ぐには立ち上がれないでいる。


「おいおい、だらしが無いな。……だが、まぁ、もうそろそろ時間だろう。今日の訓練はこれまでにするか」



 こうして、今日も厳しい訓練は終わりを告げたのだった。





「さてと。それでどうだ? 訓練の手ごたえは?」

 俺は彼らにそう尋ねると、訓練後のお茶を手渡した。


 彼らは、ありがとうございます。と、受け取ると。今日の特訓を振り返った。


「そうですね、俺はこの篭手の使い方がだいぶ解かってきました。ただ、やっぱり、一度に大量の小盾を展開すると消耗が大きいですね」

 そう言いながら、カウスは篭手を撫でる。

 本人は結構気に入っているようで、自身との相性もあり、大事にしている。


「そこら辺は慣れるしかないだろうな。一応、『タフネス』を持っているだし、多少の軽減は出来ていると思うんだが」

「そうですね。この小盾群を一つの盾と認識できればいいんですけど……」


 レクスのスタミナが足りないのは、小盾全てに盾系統のスキルが適応されてしまうからだ。

 小さい分、消費も少ないとはいえ、数が数である。

 その消耗は倍ではすまない状態にまで陥っている。

 スキルの認識など、そこら辺が今後の課題であろう。


「ふむ。カウスはどうだ? 慣れない魔術で大変だとは思うが」

「そうですね。燃費に関してもかなり改善はされたんですけど。ストック数ですしょうかね?」


 カウスの課題、それは魔槍のストック数。

 今の技量では三本までしか保持でき無いそうで、緊急時に足りないことに成り安い。

 コレばっかりは不慣れなのが大きいだろう。


「そこら辺も考えておくか。わかった、とりあえず、今日は終了としようか」


 間もなく夜も明ける。

 明日からまた事態が動くはずだ。

 彼らにも休息の時間をとらないとならない。


 俺のその言葉に体を伸ばし、緊張をほぐすと、レクスが思い出したように俺に尋ねる。


「でも、良かったんですか? 時間上、寄り道は厳しいんじゃないですか?」


 一瞬何をいっているのか解からなかったが、ソレがミアの要望を指していることに気がついた。

 今更言ったところで仕方が無いだろうし、どのみちオーレアの情報も必要ではあるのだ。


「まぁ、どの道調べる必要がある。それは絶対だからな」


 襲ってくる国の情報を調べないで済むわけが無い。


「ですが、襲撃の件はどうします? 危険なことには変わりないはずですが……」

「いや、その件は既に釘を刺してきた。流石にそれを無視してまでこちらを襲うことは無いだろう。だが、問題はベオだな」


 そう、アレフを通じて、あのハゲには釘が刺されたはずだろう。

 ……もし、それでも襲撃があるのなら、俺が介入してでも彼らを逃がす。

 ただ、ベオに関してはオーレアに向かわせるわけにはいかない。


「というと……。やはり、敵国の危険性ですか?」

「民衆の感情や情報操作も気になるが、あいつには自分の故郷に専念させてやりたい」


 ベオにとってはフラクペネイトが故郷だ。

 可能であるのなら、開戦の情報を持たせて早いうちに送り届けたいのだが……。

 明日の情報収集を経て、どうするかの結論をだすことにしよう。


 そう決めると、二人はわずかな時間を惜しむように。眠りに着くのだった。 

呪文の詠唱が初めて出てきました。

ネーネの使う魔術体系と違うのでこちらは声に出して宣言するタイプの詠唱です。

ちなにみ、ネーネの詠唱は鼻歌のようにリズムを刻むことで発動する呪文です。

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