ミアの想い、仲間の想い
名前の間違いを修正しました
私は馬車に揺られながら色々な事を考えていた。
ネーネは今後の計画の為にも、今猛勉強をしている。
ベオについても、少しでも戦力を伸ばすため、完全に習得できないで居る魔術を会得しようとしている。
御者台の上で、交互の仮眠を取りながら馬車を走らせるレクスとカウス。
なぜか、彼らは日に日に消耗しており、先日新調した装備品が既にボロボロになってしまっている。
……それなのに、いつの間にか、レクスは新しい篭手を入手していた。
気がついたのはつい先日で、レクスとカウスから何か強い力を感じることが出来たからだ。
私が目を凝らして、レクスが腕から、カウスは足からソレが出ているのを視ることが出来た。
隠蔽の力が作用しているようで、何となく、本人達に聞くのも躊躇われた。
視てもソレが何なのか、具体的にはわからない。
しかし、今まで持っていなかった新しい装備な上、何処と無く古美術品を思わせる美しさを持っていたので、きっとソレだろう。
あの消耗を考えて、私達が寝ている間に何らかの特訓をしているのではないか?
ネクさんもアレ以降、こちらへあまり声をかけてこない。
でも。きっとネクさんもその特訓に一枚噛んでいるのだろう。
そう考えると、私だけ蚊帳の外に放り出された気がして寂しくも感じる。
その為、ネーネとベオの魔術の勉強に付き合いながらも、いろいろな事を考える時間が出来てしまったためだ。
ソレは、間もなく侵攻してくるであろう、オーレアの事である。
私の記憶の中に、僅かに残っているあの国は、一体今どういう状況なのだろうか?
今から戦争を起そうとしてる相手。
私達は、その事を耳にするも、実情を知らない。
私の中で知りたい、知らなければいけないと言う想いが膨れていき……
明日、中継点であるウォッドベーカーへと着くその時に、皆に話してみたのだ。
「すみません。お願いがあるのです。……このまま、1度オーレアへ行って見ませんか?」
私のその言葉に皆が驚き、考え込む。
「行くって、お前、理解しているのか? そこは今から戦争を引き起こそうとしている都市だぞ?」
やはりと言うべきなのか、私の言葉を聞き、耳を疑うかのようにレクスが聞き返す。
「それは解かっているんです。でも、私達は現状のあの国を何も知りません。確かに周りから聞いた情報、そしてダンジョンで襲撃を受けた事実があります」
「だったら!」
そう、解かっている。
標的にされた私達が近づくなんて、自分達から“狙ってくれ”と言っているようなものだ。
現在の私達の動きが特定できないよう、ミネルバが用意してくれたこの馬車の幌には認識阻害の効果が織り込まれている。
幸いにも、ルイミウォテルを出発してから魔獣襲来も無い。
そのおかげもあり、道中の安全を確保できているのだ。
だが、近づくとなると、その安全を捨ててしまうのと同じなのだ。
でも。そう、それでも。
「それでも! 何も知らないまま、戦争だといって戦うことをしたくないんです!」
私はレクスから目を逸らすことなく、声を強くし、主張する。
私は弱く、皆の足を引っ張る。
この頼みを皆が聞いてくれたとしても、何も出来ない私は多大な迷惑を掛ける事になる。
でも、だからと言って、この想いを無視しておくことは出来ない。
だからこそ、その想いを2人に伝えたのだ。
レクスも私の目を見つめたまま、黙り考えているようだ。
と、横からカウスが私に話しかける。
「ミア、お前の事だ。どうせまた、自分の願いで皆に迷惑を掛けるとか、そんな事を考えているんだろ?」
その言葉に一瞬ドキッとしてしまう。
まさにそう考えていたからだ。
その様子を見て、カウスはため息をつくと、
「この際だ。はっきりと言っておこう。確かに、ミア。お前は戦闘において、まるっきりセンスが感じられない」
「おい、カウス!」
仲間となってもうすぐで2年になる中、初めて面と向かって指摘を受けた。
自分でも理解していて、解かってはいたが、やっぱりそう思われていたのかと、少しショックを受ける。
話を聞いてたベオとネーネもカウスのその発言に驚きを感じているようだ。
レクスがカウスの発言を咎める中、カウスは目でレクスを推し留めると、私の目を真っ直ぐに見て言葉を続ける。
「日々の努力はしているのはわかっている。それでも、自分の力で出来ない事が多い事を悩んでいるのも知っている」
淡々とカウスは私に告げる
「それでも尚。実力が足りない、才能が足りない、努力が足りない。目指すべき所は遥かな雲の上。そんな状況の中でもお前は諦めることだけはしなかった」
そうだ、私は諦めたくないのだ。
分不相応だと、私なのではこの想いを実現させられないのだと。そう言って、想いを、願いを隠し捨てる事が出来ないのだ。
「……いいじゃないか。力が足りないのなら、他所から補えばいい。一人では無理なのだったら二人で、二人で無理なら三人で。俺たち人間なんて、多少の才能やら能力やらの違いが有ったところで、時間は有限。出来ることは限られるんだ」
私はカウスから、自分と言う存在の肯定を受けた気がした。
「だったら、お前はその願いを持ち続けろ。そして、その願いに一人で届きそうに無いなら、誰かを頼れ。力が足りないのなら、借りろ。お前が諦めない限り、声が届く限り、力を貸してくれるモノはきっと居るから」
そう言うと、カウスはレクスを見て、「俺たちみたいな酔狂なのとかな」と、笑った。
レクスはその様子に再度ため息をつくと、
「はぁ。仕方ない、話は聞く。だが、情報が無さ過ぎる。俺たちだけであの都市に入るのは難しいかもしれん」
「ああ、そうだな。ウォッドベーカーで情報を手に入れよう。恐らく、交易に来ている商人などは居るはずだ。皆、それでいいか?」
二人のその言葉に、成り行きを見守っていたベオとネーネは賛成の声を上げる。
力を、私のこの願いのため、力を貸してくれる者がいる!
「ありがとう!」
私はそんな仲間に礼を言う。
と、最近聞いてなかった声が頭に響く。
『そうだ、ミア。お前はそんな力を貸してくれる存在に、絶対に感謝を忘れるなよ』
私には、こんなに力を貸してくれる存在が、仲間がいてくてる。見守ってくれる存在がいる。
私はそれを嬉しく思うのだった。
「ネクさん、いらしてたんですか?」
レクス達もネクさんが来たことに気がつき、挨拶をおこなう。
これに関しては、姿が見えない分。私に向かって行われるため、不思議な気分だ。
『ああ、少し前にな。話は聞いていたから問題は無い。続けてくれ』
「解かりました。しかし、良かったのですか? 予定の進路を変更することになりましたが」
レクスが気にしてネクさんへ訊ねる。
と、少しため息をつくイメージを感じながら、ネクさんが
『出発前にも言ったが、方針や目標はお前達が決めることだ。多少の口はだすが、現に、たとえ今回の一件も、安全のためにフラクペネイト行きを取りやめたところで咎めはせん』
そう口にだした。
その言葉を聞いて、私は即座に言葉を返した。
「辞めませんよ。私達はフラクペネイトへ行きます。でも、その前にオーレアの事も見たいんです」
私の言葉を聞き、皆が頷く。
皆、今回の件を降りる気はないようだ。
「俺には故郷の事っスからね! オーレアもミアの故郷っす! 気になるのも当然っすよ!」
その言葉に私はベオのことを無視していたと、今になって思ってしまう。
そうだ。ベオにとってはフラクペネイトが故郷。そちらを優先すべきなのに!
(ネクさん! すみません! 今更なんですが。知恵をお借りできませんか!)
私は心の中でネクさんへ声を掛ける。
このまま行けば、ベオの故郷への帰還が一週間以上遅れてしまう。
私の思いに、ネクさんはため息をつくと、
(はぁ……お前はもう少し考えてもいいのかも知れんなぁ)
と私だけの声を掛けてくれる。
本当に、申し訳ないです。
『レクス、少し口を挟めば、結論は次の都市で情報を集めてからが善いだろう。オーレアが入国制限を設けていたら、浸入も行き当たりでの計画では無理だろうからな』
「わかりました。商人を中心に交易を聞いてみます」
私のお願いをきいてか、ネクさんがそうレクスへと声をかける。
レクスも解かっているのか、同意し、結論はウォッドベーカーでの情報収集後となった。
『まぁ、少し俺も動いてみるか』
そういうと、ネクさんとの接続が切れ、帰って行ってしまった。
……動くって何をするんだろ??
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俺は少し苦笑と共にため息を漏らす。
本当に手が掛かる。
俺のそんな様子をシアが見ながら
「何か楽しそうですね? 向こうはどんな風だったんですか?」
と口にする。
今はシアをサポートの付け、移民の受け入れ準備を行っている。
俺はそれに平行して向こうにいるメンバーを補助できる手段を講じているのだ。
「まぁな。お前の娘は面白く育ったようだ」
「まぁ」
俺の言葉に哂うシア。
娘の無事と元気な様子を聞けてよかったようだ。
さて、俺は今から面倒な話をしないといけない。
シアに少し外すと告げると、自室に向かい、ある神物と秘匿回線を開く。
僅かな呼び出し後、その男が声をあげる
『やぁ。キミから連絡なんて、めずらしいじゃないか』
「いろいろあったからな。お前こそ、裏でコソコソ動くなんてらしくない」
コイツは本来。裏で動くよりも、表で考えなしで動くことの方が多い。
地位が有る者としてはどうだとも思うが。
『ははは! まぁ指摘と通りだね! でも、この件は仕方ない。ボクも目的があるからね!」
久しぶりに話すが、どうもテンションが高い。
おそらく、予定通りに進む舞台に喜ぶ監督、といった感じだ。
「……今はお前の用意した舞台に立ってやるが、お前の脚本通りに動くと思うなよ」
『それはいい! 尚善い!! 愉しみだ! ・・・・それで? 何か用があって連絡を入れたんだろ』
チッ。本当に愉しんでやがる。
オレは腹立たしく思うとともに、要求を口にする。
「俺の眷属がオーレアに向かう。あのハゲに手を出すなと伝えておけ」
『え~、どうしようかなぁ?』
ニヤニヤとしているコイツの顔が浮かぶ。
仕方がないので、オレは脅しとして1枚手札を切る。
「俺に舞台の上で踊ってほしいんだろ? だったら、この話を聞いといた方が安全じゃないのか?」
『えぇ~? なんでだい?』
この先は余り言いたくないが……。
「お前の目的が、俺の予想通りだとした場合。後か先かで舞台が変わるだろ? 先に舞台ごと壊されたくないよな、聞くべきじゃないのか? それが舞台監督だろ?」
そう、俺にはこの茶番を発生前の終わらせる手段も残っている。
が、ソレを行うには……俺には覚悟が足りない。
だが、俺の言いたいことを理解したのか。あっさりと提案を呑む。
『いいよ! 君がそこまで言うんだ。ベルクにはボクから言っておくよ! ついでに、今後、君たちのことは静観するようにも伝えておくよ!』
予想以上の答えが返ってきた。
だが、この言葉がでるということは、既に準備が整っているということか。
俺は話しを終えると回線を切り、イスに深く腰を下ろすと思案にふける。
あの男、戦闘系神群の長、タルダロス議長を務めるアレフ。
複数の思惑が重なり、既に事が起こるまで、誰にも止めることが出来ない状況なのだろう。
だが、必ず終息させる。
その為に、今出来ることを再検討するのであった。




