秘宝《アーティファクト》①
俺はオルから背後関係を、アレフの思惑を聞いて以降、対抗できる手段を考えていた。
現在、俺が干渉できる存在は五名。
レクス・カウス・ベオ・ネーネ、そしてミアである。
それ以外に干渉しようとするのなら、俺はアレフたちの思惑通りに、封印した名を名乗り、神として降臨しなくてはならない。
しかし、同時に、ミアを除いて四人には過干渉が出来ない。
なぜなら、既にミアは眷属として俺の元にいるが、他のメンバーはあくまでも俺が居る都市を拠点としているだけである。
要は氏神と氏子、大家と店子の関係とでも言うべきか。
故に、ミアとは違い、蘇生やスキルの付与には著しい制限、つまりは代価が掛かる。
神としての力を使わず、ただ鍛えるだけならば制限が無いのでソレを活用するしかない。
だが、戦力不足が深刻なのは間違いなく、
追加の戦力として考えるなら、プチ神獣さえ呼べれば何も気にしなくて済んだのだが、ソレをやってしまうと、相手に更なる干渉の口実を与えるだけなので、避けなければならない。
そこで思いついたのが、木精霊を援軍として呼ぶことだ。
確かに、迷宮都市に居る精霊達は俺が神の権能を利用して生み出した者だ。
だが、活動自体は迷宮内部ではなく、あくまで迷宮外部。都市部の運行の為だ。
ならば、精霊達を俺が命令するのではなく、別の第三者が呼び出し、お願いをするのであれば、問題は無いだろう。
この役目はネーネに任せることにした。
彼女だと、統括しているルイミウォテルとも交信が取りやすく、精霊とも中が善いため、実現はし易いだろう。
問題としてあげるならば、呼び出すための召喚魔術と維持のための魔力提供だろう。
特に、維持コストは馬鹿にならない。
普段は俺の神気をエネルギーとしているので、問題なく生活できているが、俺の供給ナシで戦闘行為は魔力補給が難しいだろう。
ネーネの課題は召喚魔術の習得と、魔力の確保である。
そして、残りのメンバーのうち、ベオだが、一つ切札を授けようと思っている。
だが、これは最後の切札として存在すべきもので、扱いが非常に難しい。
使えば間違いなく、絶大な効果を発揮するだろうが、ベオに使いこなせるかどうかが問題なのだ。
しかも、コレは練習や訓練と言ったことが一切出来ない。
使えば、今張っている結界など吹き飛ばし、破壊できるだけの力を秘めている。が、当然、それだけの力。こちらを探しているであろう、オーレアの暗部に捕捉されてしまうだろう。
俺はベオが制御出来る可能性に賭け、コレを託そうと思っている。
ミアに関しては……正直どうすることも出来ない。
地道に鍛えていれば、封印状態のスキルも使用することが出来るようになる、と思うのだが。
圧倒的に時間が足りず、この短期間で力をつけさせようとすれば、付け焼刃にしかならず、しかも、使いこなせるか判らない。
なので、ミアには一般市民の避難、誘導などを任せる予定である。
『思念共有』を使えば離れた場所へも連絡を送ることが出来るため、ある意味うってつけだろう。
そして、此処からが今からの特訓の本題。
レクスとカウスである。
「と、いうことで、二人にはフラクペネイトでの迎撃戦を任せたい」
俺は二人に簡単にではあるが、対抗手段の骨子を説明した。
五人を二つのグループに分け迎撃と避難を担当させる。
迎撃はレクス・カウス・ネーネ+獣人兵
避難はベオ・ミア
無論、フラクペネイトについてから再度打ち合わせは必要だろうが、考えた中では一番成功確立が高いようだった。
「お話は理解できました。迎撃の主力を木精霊に任せるとして、俺たちは何をすればいいんですか?」
確かに、二人で万に近い軍勢を相手どれとは言わない。
だが、やりようによっては一人で千の軍勢を相手取ることは出来るはずだ。
「万の兵を相手取れとは言わん、だが、俺はお前たちになってほしいものがる。一騎当千の兵になってくれ」
俺の真面目なこの言葉に二人は絶句する。
まぁ、そうかもしれない。
二人は己の実力を十分理解している。
だからこそ。俺の要請を無理難題と感じたのだろう。
「出来ることなら、そうしたいのですが、俺たちの力では、一騎当千どころか、数名と戦うだけで精一杯ですよ」
「ええ、流石に伝説にあるような英雄や勇者のようには行きません」
彼らが言う英雄や勇者とは大昔に存在した人類だ。
その多くは、神魔に見初められた英傑であり、大半は異世界より呼び出された異邦人である。
その存在は神為的に生み出される存在で……実は、俺も作ることが出来る。
この場合、ミアを生物上強化し、スキル等を植えつければ古今無双の英傑が出来上がる。
が、俺はそんな存在がキライだ。
なぜなら、そういう存在は必ず人の世界から弾かれてしまう。
協力無比な力、いうなればチートな力は、その力が必要な間は崇められるだろう。
だが、一度平和になれば、そんな勇者など争いを生む存在でしかない。
そして、周囲とかけ離れた力に、あるモノは溺れ、人界に害をなし。あるモノは妬まれ、蔑まれ、力そのモノを隠し生活する。
結局は、神族や魔族が己の欲望を満たすため、人界を遊戯盤として遊ぶための駒でしか見られていないのだ。
だからこそ、俺は彼らにそんなものを求めない。
彼らには、人のまま、一騎当千を成してもらう。
「俺はお前達にそんな存在になって欲しくない。だからこそ、人という存在のまま、ソレを成せる手段をさがした」
そう言うと、俺は一瞬にして装備を変更する。
とはいえ、変更されたのは両手の篭手と両足足首の装具である。
篭手は左右一対のデザインで、青白い金属板を幾重にも重ね、かなり重厚で、サイズで言えば、一般に流通しているものの約二倍の大きさはあろう。
構成している金属板にも精緻な紋様が描かれ、神秘的かつ、美しい造りと成っている。
装具は意外とシンプル造りで、足首を覆う金属製の環となっている。
表面には羽を模したデザインの調印が施されており、その調印はどこか光を帯びているようにも見える。
先ずは彼らに体感してもらおう。
「さて、特訓の時間だ。二人がかりで俺を打倒してみろ。ああ、安心しろ、俺の身体スペックは今はミアを基準だ。つまり、人に出来ることしかやれない」
俺はニヤリと笑うと拳を構える。
前回の訓練では、製造系とはいえ、神の肉体であった。
が、今回はミアの、人族の肉体である。
昨日のメデューサワーム戦で、大きな力を発揮したが、逆に言えば、アレは人の身でも発現できる程度の内容なのである。
そして、今回も人の身でどこまで出来るのかを見せ、理解させることが目的なのである。
とはいえ、先日の件は尾を引いているようで、警戒してなかなか動かない。
「さぁ! どうした! 掛かって来い! 時間が無限ではないんだ! 今のお前達には時間がないんだろ!」
俺の発破が項を奏したのか、2人とも目に力を込め、こちらに駆けて来る。
レクスが一直線に俺に接近し、レクスを盾にして、カウスが身を隠す。
「いくぞっ! つぇぇええええぁああ!」
気合いを込めたレクスの突進
小型ながらも盾を全面に構え、全面に魔力を集中。
更に前回のアドバイスが活きており、盾にも『不破の鎧』が適応され、更に、『盾強打』『強打』の二重発動である。
瞬動を使い、高速をも利用した見事な動き、盾の強度を威力を大幅に上げた一撃だ。
間違いなく、“奥義”と呼ぶに不足に無い一撃。
「見事! だが、甘いっ!」
俺は左手を前に差し出すと共に、腕に魔力を込める。
その途端、目の前に、不可視の……いや、見るものが見れば、壁と言うだろう。障壁が展開される。
コレは目には目えないかもしれんないが、間違いなく。“城壁”と言うにふさわしい防壁であろう。
そ の証拠に、激しい音をたて、レクスの渾身の突進を受け止める。
「なっ!?」
レクスの目から見れば、何も無いはずの空間にぶつかり、阻まれてしまったように感じたはず。
が、あくまでもコレは囮。
本命のカウスが影に隠れ、闇にまぎれたはず。
俺は周囲の気配を察知する。
カウスの気配の消し方はなかなか上手いとは思うが、あくまでも元軽戦士で現剣闘士。
本来はこんなアサシンまがいの事をするクラスではないし、本人もそんな性格ではないだろう。
と、いうことは……。
「下っ!」
カウスが俺の右手側から潜り込む形で急接近する。
現在俺は左手でレクスを止めている形だが、逆に言えば、レクスが全身で俺の動きを抑えてる形でもある。
挟撃の形を取り。接近する勢いをそのままに、渾身の拳打を放つカウス。
それは俺の迷宮で一度見た、一瞬とはいえあの強固なプチファフニールすら食い止めることができた、あの奥義。
「喰らえ! 【衝天轟音】っ!」
二人のナイスなコンビネーションと言えろう。
完璧な挟撃となり、カウスの拳が俺を狙う。
此処から取れる手段といえば、防御をすることだけだろうか?
左右に避けるにも対応されるだろう。
空いている右手で防ぐのが普通だが、あの拳を防ぐにはちと盾の強度が足りない。
ミアの肉体ではこれが精一杯なのだろう。
だから、それを補うべく、俺は足に魔力を込め地を蹴り、そのまま、上へと回避をした。
通常、空中など、回避が制限さえるとことへ逃げるなど、悪手である。
そう、普通であれば。
「なっ、そんな馬鹿な……」
誰とは無く、そんな言葉が漏れる。
俺は宙を蹴ると大きく方向転換し、まるで空を駆けるように移動する。
当然だが、コレはミアの力ではない。
人に足りない力を補いうものこそが道具であり、装備である。
力が足りないのなら、よそから補えばいい。
それこそが、俺の持論であり、本来の戦闘スタイル。
今回用意した二つの装備
『神々の城壁』
『天駆ける長靴』
これが、俺が彼らに用意した秘宝級の装備である。
はい、ネクさんは基本勇者否定派です。
本人もチート存在を作れるのですが、そういう存在の末路を散々見てきています。
そのため、そういう存在、人からかけ離れる存在になることに警笛をならしています。




