緊急事態『殲滅』
俺はこちらに向かって這い寄る、2匹のメデューサワームへ目を向ける。
2匹は脇目も振らず|、真っ直ぐに俺を見ている。
好都合だ……
俺は向かってくる数多の視線を睨み返し、気合い一線。
「そこを動くなっ!!」
瞳に魔力を込め、鋭い眼光を放つ。
俺と視線が合ったことが彼らにとっての不幸だろう。
眼光に威圧され、彼らは金縛り状態になってしまった。
初歩的では有るが、瞳術の1つで『居竦み』とされるものだ。
見切り系の瞳術と違い、視線が合わないと発動させられないが、実力差次第ではこの様に複数を一度に竦ませ、金縛りにかけることが出来る。
●スキル『居竦む眼光』をラーニング
そして、案の定。コレもスキルとして獲得したようである。
『え? え?? 今何やったんですか!?』
そして、こちらも案の定。今のアーツの発動自体、良くわかって居ないようである。
俺は嘆息し、半ば諦めの境地に達する。
まぁ、俺の使っているアーツを理解しろと言うほうが酷なのだろうか?
肉体に依存するモノは、ミアでも再現自体可能なんだが。
と、背後に注意を向けると、
「おい、カウス。今のは以前言っていた魔眼系のアーツか?」
「……そのようだな、こちらからは詳細には見えなかったが、一瞬の魔力集中から考えると、そうだろう」
今だ燃え盛るメデューサワームへの注意を怠ることなく、俺の戦闘を観察しているようで、先ほどのもちゃんと理解していた。
「おい、ミア。他の連中、理解しているようだぞ?」
『……精進します』
一応の言い訳を聞けば、彼ら2人は、妻であり実姉の存在が同じようなモノを持っているかららしい。
ミアの話から察すると、心眼系等だろう。
いやいや、お前、自分も神眼もってんだろ?
こいつを鍛えるのは骨が折れそうだ。
あんまり話し込んでいても気が抜ける。
俺は持ってきたメイスに魔力を込める。
『……今度は……反動で腕壊れませんよね?』
……一応の保護と強化を掛けておく。
俺はこの体を強化・保護すべく、魔力を編む。
普段俺が使っている術式だと強化に耐え切れず、おそらくだが……この体が爆散するだろう。
もう少し鍛えてあると魔力を通しやすいんだがな。
俺の爆散という想像にミアが震え上がっている。
『なんでそんなに物騒なんですか!!』
「お前が脆いからだ!!!」
くそ、話が進まん。
俺の突然の大声に後方の面々は思わず体を震わせている。
彼らにはミアの声が届いていないので、俺の言葉は独り言にしか聞こえて居ない。
もう、ミアを無視することに決め、とっとと実行に移す。
即席の強化術式だが、発動をさせる。
そうだな、名を付けるなら、【攻撃体勢】といったところか。
発動と同時に肉体の強化がなされ、
●スキル『剛力』をラーニング
●スキル『金剛』をラーニング
●スキル『不破』をラーニング
そしてスキルの獲得……いや、もはや、気にすまい。
意識を魔獣に集中し、瞬動で一気に接近する。
何の工夫も無い。ただ真正面からの魔力を集中したメイスでの振り下ろし。
だが、その1撃は轟音を周囲に轟かせる。
直撃を受けたメデューサワームを中心に迷宮が陥没し、周囲にまで蜘蛛の巣状の破壊痕を残した。
しかし、本命は2打目。
俺は魔力を切り替え、振り下ろしからの反動を利用し、返す様に振り上げのトドメを放つ。
その1打を受けた瞬間。
音も立てず。直撃部を基点として、メデューサワームが砕け、血肉を含んだ粒子状へと変貌する。
●スキル『振動』をラーニング
●スキル『崩壊』をラーニング
●スキル『打撃・極』をラーニング
やはり、ただの打撃よりも振動を利用した崩壊系の方が効きが良い様だ。
俺はそのまま、振り上げた反動を再度利用。
目標と少し距離があるため、足に魔力を込め、神速の踏み込みの元。渾身の振り下ろしを放つ。
今だ瞳術で動けないその魔獣に避けるすべも無く。俺は無慈悲な1打を放つのだった。
『すご……なんて威力なんですか……』
先ほどの刺突もそうだったんだろうが。自分自身の体を使って尚、これだけの火力をだせることに驚いているようだ。
忘れてるかも知れないが……今、この体は俺の強化術式以外にも『神罰代行』が発動している。
今回の魔獣は自然発生したモノではない。
明らかに、俺を……そして眷属を狙ったものだ。
それゆえ、スキルの発動条件を満たすことが出来、これだけの影響を与えたのだ。
『でも。私と敵対しただけだと発動しないって言ってませんでした?』
ほう、覚えてたのか。
それはあくまで、通常の戦闘においてだ。
俺の眷属を殺す。
それはつまり、俺への敵対行動と等しい。
それに1つミアに言っておこう。
「眷属になった以上、お前は俺のモノだ。誰にも殺させないし、奪わせはしない。お前が生きることを諦めるその日まで、それは変わることがない。覚えておけ」
『……っ!』
俺はそう言うと、こちらへ向かってきている残りの2匹へ意識を向ける。
後方では、今の戦闘の間に何とか1匹倒し終わったようだ。
「さぁ! 残り2匹だ。お前ら! 行くぞ!」
「「「はい!」」」
俺の言葉に皆、返事を返し、こちらへ駆けて来る。
「いくぞ、ミア」
『はい! わかりました!』
こいつらは、そうそう殺させやしないよ。
お前の思惑、潰してやる。
俺はこの魔獣の背後に居るであろう、あの剃頭の神を思い、そう心に決めたのだった。




