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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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先立つ物が有りません

 出立から3日目。馬車上の生活も間もなく終わり、まもなく第一目的地、エトーリアに到着予定である。

 当初の予定では補給を済ませ、翌日には街を出立予定だったのだが……


 事の発端は昨日にまで遡る。




「エトーリアに到着後、数日間ほどダンジョンに篭る」

 カウスのこの言葉に私達は驚きを隠せない。


「何か理由があるのですか?」

 猶予は多少あるとはいえ、急ぎの旅には間違いない。

 それを何の理由もなしにダンジョンへ篭るなどど、カウスがいうはずがない。


 私はそう思いながらもカウスへと確認を取った。

 すると御者台からレクスが声をはさむ。


「それに関しては俺から説明しよう。理由は大きく2つある。まず、当初の予定では、エトーリアを出てからフラクペネイトまで、大小の都市を3つ挟むルートだった。しかし、俺とカウスで話し合い、進行ルートの変更が妥当だと判断。

 その為の情報収集を行うため、数日エトーリアに滞在したいというのが1点」


 何らかの理由で予定していたルートを変更する必要があった?

 一体何が有ったというのだろうか?


 予定のルートを通らない理由がわからない。

 それは他の仲間も同様らしく。


「予定のルートではダメなんっすか?」


 べオが首を傾げけながらレクス達に尋ねる。

 それは私も同意である。何故わざわざ滞在時間を延ばしてま経路変更をするのか?


「この予定していた経路が問題でな。当初は俺たちも知らなかったから立てた計画なんだが……。予定していた経路に有る都市の1つが『オーレア』なんだよ」


 その言葉で私達に理解が広がる。

 と、同時に苦い顔をせざるを得なかった。


 フラクペネイトの隣がオーレアなのだ。

 更に言えば、この2都市の間には人里が一切無い。


 その為、殆どの場合、フラクペネイトへ行こうと思えばオーレアを通ることになるのだ。


「つまり、俺たちはオーレアの街を回避してフラクペネイトへ進む必要が有る。それに現在の情報を確保するためにも、エトーリアでの情報収集は必要なんだよ」


 確かに情報も無く、戦争を起こそうとしている都市と、攻め入られようとしている都市に行くのは危険極まりない。

 その説明に私達は頷き、同意をしめした。


 と、ふと気がついたのか、ネーネが手をあげ質問する。


「あれぇ?ではもう1つの理由ってなんなんですかぁ~?」


 確かに。理由としては先ほどのもので十分に理解できている。


このネーネの質問に、レクスとカウスも言い難いのか、言葉を濁しながらも答えた。


「あ~、それは、だな。……実は、補給を買うお金が心もとなくてな。あの都市で少し金策をしないと再出発が出来ないんだ」




 お金……それは非常に大切なモノ。

 お金……それは無くてはならないモノ。

 お金……それは、私達にいつも足りないモノ。




 私達にとって先ほどの理由以上に、十分に理解させるモノだった。






 そんなこんな有りながらも、私達は無事エトーリアへ到着。

 入口の馬車の係留所に馬ごと預ける。

 都市内部へは馬等の持ち込みが原則禁止なのだ。

 コレは疫病対策であり、内部で運行が認められているのは専用の乗り合い馬車の みである。

 逆にこの乗合馬車の馬は外へは出ることが出来ないなど様々な条件が制定されているのだ。


 ちなみに。料金は1日~1週間と設定されており、期限内に戻ってこない、代金を払えなくなる等があればその馬車と馬、荷物ごとセリに掛けられてしまう。


 私達は一先ず情報を求めて酒場(バル)を目指す。

 資金を稼ぐにも、都市の情報を集めるにも、それはヒトが多い酒場がもってこいなのだ。



 私達一向は前回訪れた宿屋兼酒場を選択。そこへ行くことにした。

 しかし、何故だろうか?


 この都市についてから、何か視線を感じてならない。


(見られている?でも・・・誰に??)


 内心でそう思いながらも、周りの仲間の様子は普段通りである。

 気のせいだ、と思いながら酒場へ到着。


 だが、この視線が私の勘違いでなかったと痛感する出来事が起こることとなる。





 酒場へ私達が足を踏み入れた瞬間。

 中にいた冒険者達が一斉に私達の方を振り返り、視線をそのままで周囲の人たちとなにやら話し込んでいる。



「……何か……有りましたかねぇ?」

 その視線の圧力に少したじろいだネーネが顔を寄せ、ひそひそと話をしてくる。


「なんとなくっすけど、俺たちにもなんですけど、主にミアを注目してないっすか?」

 こういったのに敏感なベオは視線の先に私が居ると忠告を掛ける。


 なんで私なんだろう?

 こう戸惑っている間にもレクスとカウスは回りを無視し、空いている席へと進む。


 遅れてはマズイと小走りで後を追いかけると



「おいおい、お譲ちゃん! 何か面白いクラスをしてるじゃないか! なんだ! 俺たちにも教えてくれよ!」

「ガハハハハハ、なぁ? 減るものじゃないだろ? なぁ?」



 完全に酔っているであろう冒険者達に絡まれてしまった。

 って、クラス……ああ。そうか! そういうことか!


 私はその言葉で何で私がこうも“注目の的”になっているか理解した。


 他人のクラス名とレベルは通常、見ようと思えばいつでも見れるようになっている。

 が、これが適応されないイレギュラーが存在するのだ。

 それが先日会ったフェリアスさん等、“神族・魔族”の方々。

 そして精霊を中心としたクラスの必要としない“亜神・霊種”


 直接見たことが無くとも、話だけは聞いているのか彼らである。

 が、しかし。

 今回目の前にソレ以外の存在が現れたのだ。


 クラス名は判明するが、レベルが存在しない。

 さらに、クラスの名前が『命神の使徒』と書かれている。


 私でもそうだろう。

 コレを注目しないわけがない。


 私達は何とか、冒険者……いや、酔っ払いたちを切り抜け、レクスたちの居るテーブルへと進んだ。




 私はこの時気がつくべきだったのだ。


 これだけの注目を浴びて、注目の的になって何が起こったのかを。

 そして、この視線の中に、興味や好奇心といった視線以外・・・・・・そう、冷徹な視線が有る事を。










**********


 暗がりの中、彼らを見つめる視線が2つ。


「対象をエトーリアで確認。やはり目的地はフラクペネイトのようです」


『監視を続けろ。彼らがダンジョンへ足を向けることがあれば例の魔物を使って始末しろ」


「了解しました。足を運ばず、そのまま街を出た場合はいかがしましょうか?」


『その時に備え、奴らの荷馬車に細工を施している。案ずるな』


「心得ました。この命に代えまして成功いたします。

“我等が神の御心のままに”……」


『“我等が神の御心のままに”……』



 スキルを併用しているのだろう。人の聴覚では聞こえない会話。

 彼らの会話を聞く人物など存在しない。


 ただ、闇夜の静寂の中を計画が進んで行く。

 今日もエトーリアの夜は梟の声が静かに木霊するだけだった。

 

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