馬車に揺られ
私達はルイミウォルテからの転移門で来るときに取った門まで一気に転移をした。
此処から一路フラクペネイトまで目指す旅路となる。
「レクス、ここからだとフラクペネイトまでどういう経路になります?」
「そうだな、一旦北上し、エトーリアまで向かう。そこで補給をしてそこから幾つかの都市か街を経由し。フラクペネイトに到着という流れだな」
私の質問に御者台から答えるレクス。
此処からだとエトーリアまでは3日。
エトーリアからだと経路によって変わるが、恐らく1ヶ月前後といったところか?
私はネクさんから言われていたタイムリミットに間に合いそうで一先ず胸を撫で下ろす。
一路目的地まで目指さないのは食料などの問題があるからだ。
現在は積み込んだ、といってもレクスの持つ鞄、(信じられない事に、収納鞄と呼ばれる貴重品だ!)に食料を相当量積めて貰ってるらしい。
それでもフラクペネイトまでの食料は無いらしく、どこかの都市で補給をする必要がある。
そのため、複数の都市を間に挟むのだそうだ。
「さて、俺達の今後の活動だが、カウス、説明を任せていいか?」
「了解した、問題が有れば口出しを頼む」
移動の間もムダには出来ない。
今から私達は馬車中でミーティングとなる。
「現状の確認だ、我々の目的地はフラクペネイト。ベオの故郷である獣人の都市だ。そこに行き、ベオの使命の達成を報告すると共に、全民の移民を行う、何か質問はあるか?」
カウスが現状と今後の目的の確認を行う。
正直私もカウス達が移民を即座に実施しようとするとは思わなかった。
どういうことだろうか? ネクさんから直接タイムリミットと迎えている危機の内容を聞いているとは思えないのだが?
私と同じ疑問を感じたのか、ネーネがカウスに質問を投げかける。
「ベオの報告はともかくとしてぇ~、もう移民の話まで持っていくのですかぁ~? 移民などは希望者で各人だと思っていたのですけどもぉ~?」
そうだ、事前に情報を知りえていないのならそう思うはずだ。
「そうっすね、オレも報告してから街長や巫女様たちが話し合って決めるものと思っていたっすけど?」
それは当人のベオでさえ同じ意見らしい。
カウスはそんな2人を見やり、私に視線を投げる。
「ミアはどう思う? 意見を聞かせてくれ」
「わ、わたしは・・」
果たして話していいものか。
恐らく、ネクさんは私達を自分の命令で動かしたくないはずだ。
私がここで意見を述べることは干渉にならないのだろうか?
その不安が頭をよぎり、意見を言えないでいると。
「……まぁ、ミアの事情も有るのだろうが、恐らく、その辺は心配せず話してもいいはずだ」
まるで私の内情などお見通しのように、カウスは私に話しかける。
あまりに急な話に私は言葉を失う。
「皆に言っておこう。恐らく、フラクペネイトを襲うであろう危機。それはもう間もなく現実のモノとなるはずだ」
どうやってその結論に達することが出来たか。
私は本当にわからないでいる。
「ど、どうしてそれを……」
だからこそ、不意にそんな言葉が漏れてしまう。
それに気がついても後の祭り。皆の耳には既に私の言葉が届いてしまい。カウス が私を見て静かに頷く様が見える。
「簡単な話だ。出立が急すぎる。あの方からすれば、もう少し都市部で俺達を鍛えたほうが後々上手く回るはずだ。だがそうはせず、都市に戻られてから間にはほぼ2日間しか挟んで居ないのだ」
なるほど、ネクさんが余りに速くクランの設立を奨めたり、クラスチェンジや鍛錬など、あわただしく動いたわけだ。
そこからこの現状を推察したわけか……。
しかし、それにしても、カウスはほんのわずかな時間しかネクさんと話していないはず。なぜ、そんな推察が出来るのだろうか?
「昨晩、皆が寝た後。俺やレクスはあの方と話す機会が出来た。その時にあの方の話を聞いて、この神は信頼に足る片だと、そう判断できた。ほんのわずかな時間だったんだが、それでも、そう信じるに足る話だった」
「ああ、それは俺も同意見だ、あの神は信頼していいと思う。だから……ミア。何か託されてるなら、抱え込まず、皆に言ってしまえ。
自分一人で出来ないのなら、他の存在を頼れ。お前には仲間が居るだろ?」
その言葉にレクスもカウスも私を見て哂いかける。
それだけではなく、ネーネやベオも何かを察してくれたのか。私に哂いかけてくれた。
「皆……ありがとう。」
もう何度目になるかわからない。
私は皆に礼を言うと、ネクさんから聞かされている現状を説明するのだった。
「……そうか、そんな理由が在ったか。なるほど」
「だが……いや。やはりと言うべきなのか、名を伏せる指示が出ていたな」
カウスは私の言葉に思案した様子である。
予想だにしていなかったネーネは、私の言葉に焦りを感じている。
「そんな! あと数ヶ月で移民を完了させろなんてぇ~! 無理じゃないですかぁ!」
「戦争が……起こるんすか」
ベオに至っては、その危機が具体的に明かされた事で、危機感を更に募らせている。
「カウス、今後だが、どう動く?」
「そうだな……どの道、フラクペネイトまでは行かなければ話にならない」
「そんなっ! くそ! 急がないと危ないのにっ!」
どんなに気持ちが焦ったところで移動に掛かる時間は短縮できない。
焦れているベオにレクスが切り出す。
「ベオ、俺たちのクランに“フラクペネイト”への護衛の依頼を出すんだ。その上で、俺たちのクランはベオの依頼を受け、フラクペネイトへと向かう、コレは、あの神の意向ではなく、俺たちの意思だ」
その2人の言葉はベオに言うのと同時に私にも向けられている。
これにより、ネクさんの命令で動くのではなく、ベオの依頼を受け、私達が動くとい体制をとることが出来る。
「皆……ありがとうっす! お願いします!フ ラクペネイトまでお願いしますっ!」
私達のクランの初仕事。
フラクペネイトまで一路目指すのだった。
ふとネーネが気がつき訊ねる。
「初仕事ですけどぉ~、クランの名前って何にするんですかぁ~?」
「まだ決めて居ないな。もう少し落ちついたら考えようとは思うのだが……あの都市の名前は付けれないし」
「そうですかぁ~、いい名前にしたいですねぇ~」
いい名前……何かあるのか?
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夜の暗闇の中、小さな明かりを手に、話込む2人
「どうした? カウス。皆が寝静まってからの呼び出しなんて」
「レクス、思っていたよりも、あの神の名前は重要なのかもしれないな」
「というと? 確かに名を伏せるように指示があるようだが」
本来神は名を広めることで力を得る存在。逆なんで有り得ない。
「ああ、だが、覚えているか? 他の連中はあまり意識してなかったようだが、フェリアスさんとの話の中、あの神が創造神と言っていただろ?」
「そうだが……あの神の権能を考えれば自然なんじゃないか? 創造神だって1柱ではないだろう?」
「そうだが、いくつも条件が当てはまりすぎている・・」
「一体何の事だ??」
明らかに特異な数多くの事柄。
「“創造神”“死者の蘇生”“名を語れない”そして“クラスの創造者”。これだけの条件が揃う存在なんて俺は1つしか思いつかなかったが?」
「おい、それは御伽噺の話だろ?」
それは。御伽噺として絵本で出てくるとある神の物語。
「ああ、だからこそ、ミアも気がつかず、ネーネも知らなかった。ベオは気がついているか判らないが……。恐らく、あの神も御伽噺の存在を知らないのじゃないか?」
「……可能性はあるが……もしも、そうだったら?」
「俺たちはとんでもない神に出会ったことになるな」
それは最も古い神の、その1柱の話だった。
クランの名前はもう少し先で決まります。
カウスは少ない会話の中からネクの異常性に気がつきました。
神を題材にした御伽噺など、その土地の神からすれば異教の聖書に等しいので、閉鎖的な国ほど排他的になります。
その為、ミア、ネーネは存在を知りません。
ベオは……忘れてそうですね。




