模擬戦特訓②
誤字修正しました。
一連の流れにミアは呆然としている。
だが、今は模擬戦とはいえ、戦闘中。
手を抜くことこそが失礼に当たる。
なので俺は叱咤しながらも、攻撃の矛を向ける。
「ぼさっとするな! 実戦では相手は待ってくれないんだぞ!」
俺は瞬動を使い、ミアの懐に潜り込むと左手で掌底を打ち放つ。
無論、この一撃にも魔力が込められており、インパクトの瞬間に開放。
周囲の空気が撓み、破砕音と共に衝撃波が水面を波打つ波紋のように広がる。
急激に空気を圧縮・破裂させ、広範囲に衝撃波を放つ技法である。
スキルで言うところのベオが使う衝撃矢の拳打版である。
ただの一発であるが、ミアは後方に大きく吹き飛び転がる。
見えていても肉体が、思考が着いて行かない。
高速戦闘を行う場合、思考の高速化か自身が認識できる限界速度を見極める必要があるのだが……。
まだ彼らには高速思考も無理だろうし。高速戦闘が今後の課題だろう。
ネーネを除き全員がもんどりうって倒れ込んでいる。
これまでに十秒もかかっていない。
少しだらしないな……。
このまま続けてなんとかなるものか……?
最初に吹き飛ばされたレクスがゆっくりと起き上がる。
「ったたたた……」
「おい、流石に情けないぞ。お前、このチームの頭だろう。そんなヤツが壁役で前衛に立つんだ。真っ先に倒されてどうする」
前衛の盾が先に倒れると後衛は脆い。また、対人戦も含め、知性あるモノを相手にするとき、確実に指示を出している頭を倒す。
今後、もしもこいつ等が戦乱に関わることになればレクスが倒れることは全滅の危機に直結する。
レクス本人もそこは意識しているのだろう。
迷宮攻略の際も真っ先にやられていた。まぁ、当然ではある。
プチ神獣もベオを最優先で排除するが、それ以降は指揮官を初めとした頭を狙うようになっている。
そもそも、あいつら、大元たる各神獣とも思念リンクしており、戦闘情報など相互で共有しているのだ。
何も考えず襲い掛かってくる一般的な迷宮のモンスターとは違うのだ。
さて、このままではレクスは壁役として不安が残る。
彼の所持スキルを解析し、育成方針を考える。
先ずは助言をしてからか。
「レクス、お前、『不破の鎧』を持ってんだから、ソレを活用しろよ」
立ち上がろうとするレクスへ、俺は手を止め、アドバイスを送る。
「ふ、不破の鎧ですか?」
先ほどの衝撃が抜けていないのだろう。
おぼつかない足取りで立ち上がると俺に聞き返す。
「ああ。汎用EXスキルのわりに、使い勝手はいいぞ。そのスキルは本来、武具に魔力を通し破損を防ぐ効果を簡易化、限定化したものだ。類似スキルで『不破の盾』や『不破の剣』などもあるんだが……。
レクス、鎧を着ているとき盾や武器もその一部だと意識して扱ってみろ」
「鎧の一部……ですか?」
盾を鎧と同一と認識できれば、そのまま効果範囲が広がる。更に上手くいけば不破の盾の取得か範囲拡大した『不破の○○』へスキルが成長する。
まぁ、スキル成長はそうそう起こらないから効果拡張くらいだろう。
俺の言葉にレクスは盾を手に思案している。
これが上手くいけば盾自体の強度が大きく上がるため、盾強打の威力も上がる。
だが、彼らに問題は高速戦闘に対応できないこと。
盾を強化したところで視認できなければ意味が無い。
結局はそこに行き着くのだが……。
この中で取得できそうなのはベオとミアくらいだな。
ネーネはまだクラスチェンジしてないので現状のクラスではスキルとして高速思考を獲得できないだろう。
高速で動くモノを見ようと、対応しようとすれば修練しだいで覚えることはできるのだが。
「ネーネ、クラスチェンジ先はまだ決まらないのか? せめてその上位クラスに変更すればスキルで高速思考を取得できる可能性があるんだが」
せかすようで悪いが、スキル等のレクチャーは今を逃すと何時できるか判らない。
俺の言葉にまだ悩んでいるのだろう。ネーネは困った顔をし、
「まだ悩んでるんですよぉ~。この二つのクラス、具体的にどんなものなんですかぁ~?」
精霊に関わるものを希望したため、授けたつもりだが、選択肢があると判りにくいのか?
「精霊術士も精霊剣士も大きな違いはない。どちらも同じことが出来るが、取得しやすいスキルが違うだけだ」
俺は二つのクラス、どちらも精霊を召喚し、その力を借りるクラスだが。
口で説明してもわかりにくいだろう。そこで俺は実演してみせる。
「よし、今から実演して見せるから。全員。再度構えろ!」
「「「えっ!?」」」
俺は問答無用で用意をする。
他の者が戸惑う中。俺の説明に、修練の間で見ただろうミアは顔を引き攣らせている。
「さて、精霊魔術だが、そのまま精霊を召喚し、魔術を使用してもらうものと、精霊を自身や武具に宿らせ、その力を借りる技法の2つに分けられる」
前者は少ないとはいえ、精霊術士が使用するもの。後者は俺が昔開発した精霊技法だ。
さて早速実演だ。
「精霊魔術は召喚魔術を併用し、遠方から呼ぶのと、常に傍らに居てもらい力を借りる方法がある、今回は召喚で精霊を呼ぶ」
「【精霊召喚:風精霊】!」
俺の声とともに魔力で召喚門を開き精霊を呼び出す。
あまり力を込めると大精霊とか土地神クラスのが出てくるので少量で。
俺の周りを数体の風精霊が漂う。
精神体での召喚なので肉眼では見えない。
コレを見ることができるのは神眼をもつミアか、精霊交感をもつネーネくらいだろう。
今回呼んだシルフも形が定まっていないほどの生まれたての精霊だ。
精霊魔術のメリットの一つはステルス性だ。
精神体である精霊を見ることができる存在は少ない。
俺は身構えている彼らへ魔術を行使する。
「さて、実戦でいくぞ、説明しながらだから、聞き逃さないように!」
その言葉と共に、精霊に魔力を供給する。
俺の周囲を風が渦巻き、そのままレクス達に襲い掛かる。
「これが精霊魔術の基本だ、精霊へ魔力を供給することで魔術を精霊に代行してもらえる。このメリットとしてはこういう点がある!」
俺は風が吹き荒れるなか、木の棒を構え切り込む。
彼らからしても、体が吹き飛ぶような強風ではないが、複数の精霊から起こされた乱気流により、よろめいている。
そんな中、術者には影響を与えず、俺の周りは無風に近い。
瞬動で接近すると。魔力は込めず、ただ力いっぱい殴る。
「あいたあああああああああああああっ!!!」
頭を強打されたのだ。カウスが叫びを上げる。……まぁ、痛かろう。
精霊魔術のメリットはこの点だ。
「術者本人が魔術を行使しないため、本人は自由に動ける。そのため、高速移動も、攻撃も回避もできるし、更にこういう事が出切る。……レクス!盾に魔力を込めて全力防御!」
俺はレクスをターゲットとして狙いを定める。
指定されてレクスはぎょっとしながらも、言われたとおり、魔力を込め、防御体勢をとる。
先ほど指摘された事を意識しているようで、目にも力が宿っている。
俺はソレを見て少し満足に思うと、それでも無慈悲に行動を起こす。
「いくぞ! 【ファイアボルト】!」
魔術士なら誰もが知っているような下位の火炎魔法。
だが、その魔法は精霊の起こす風操作によって酸素を送られ肥大化する。
「うぉぉぉぉぉぉおおおおお!?」
レクスの絶叫をかき消す勢いで炎弾は直撃し、炸裂する。
このように【ファイアボルト】などの下位魔術でもこの威力になる。
さらにこのボルト系の下位魔術。メリットもあり、
「ボルト系魔術は無詠唱で放てる下位魔術だ。つまり、通常視認できない精霊の助力で無詠唱の魔術を強化できる。当然、大魔術になるとその効果は膨れ上がる。これが精霊魔術の利点だ」
まぁ、高位の魔術を強化するにはそれにあった格の精霊の力が要るのだが……。
さらに、そんな高位の精霊だと、使う魔術自体が強力である。
なんとか耐えれたのか。
煙を上げながらもレクスは無事であった。
今回は後方に吹き飛ばないように足にも魔力を注ぎ、踏ん張っている。
さて、次は精霊剣士だが
「次の宿らせる方法だが、これは自分の霊格より大きい精霊には使いにくい。よほどに認められていないと力を貸してくれないからだ。まぁ、今回はシルフで実演してやろう【宿れ、シルフ】」
その声と共にシルフが俺の体内へ消えていく。
と、同時に俺から魔力を吸い上げ、俺の周囲には 先ほど同様に風が巻き起こる。
だが、決定的に違うものが一つ。
「いくぞ! しっかり防げよ!」
瞬動をつかうまでもなく、俺はそれこそ宙をすべるように高速で移動する。
突風を纏いながら肉薄し、カウスはソレを迎撃するように短剣を構える……がすでに俺はそこに居らず、フェイントを居れベオの側面まで移動する。
「疾!」
俺の突き出した木の棒に風が纏わり、突風となってベオを襲う。
先ほどのような乱気流でなく、一点に集中された突きは容易にベオを吹き飛ばす。
そのまま、流れるように体をひねり、カウスへ攻撃を繰り出す。
ネーネに見せるため、瞬動を使っていないので、カウスの迎撃は間に合い、短剣と木の棒が打ち合う。
本来なら、その時点で木の棒は折れ、俺はカウスに斬られるのだろうが、短剣は風に阻まれ、触れることができない。
「破!」
掛け声と共に、纏っていた風が炸裂し、カウスもベオ同様吹き飛ばされる。
「ぐぅっ!」
呻きながら吹き飛んでいくカウス、辛うじてダウンは免れたが、暫く立ち上がれないだろう。
そして俺はまたも動けないでいるミアへ視線を向け、離れている状態なのに、棒で空を斬る。
「斬!」
纏っている風は、そのまま真空の刃となり、ミアへと襲う。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
風の刃をしたたか打ち付けられ。ミアは悲鳴をあげる。
ミアの装備している胸当てには大きな裂傷ができ、ミア自体もひざを突いている。
俺は対峙した全員を戦闘不能にて、ネーネに解説をする。
「この様に、攻撃行動1つ1つに命令が必要だが、近接武器を併用で魔術が発動できる。また、宿したときは身体能力の上昇の効果がある。」
ネーネは、倒れ膝を突いている仲間をちらりと見やり、冷や汗をたらす。
まぁ。どの道特訓でボロボロになるよていなので問題はない。
「先ほども言ったが、どちらを選択しても手練次第で同じことは出来る。補正のパッシブスキルが違うくらいだな」
まだ悩んでそうなので念を押す。
こういうモノは本人のフィーリングでいいのだ。
ネーネは少し悩んでいたようだが。
「わかりましたぁ~。こちらにしますぅ~」
そう言うと、『精霊術士』にクラスチェンジを果たした。
元々遠距離での魔術を得意としていたようなので、こちらのがしっくり来るのだろう。
だが、これで憂いなく、修行ができる。
俺は先ほど召喚した精霊をネーネに憑けると、再度特訓の用意をする。
ネーネにはまだ精霊が召喚できないだろう、だが、今からの訓練で精霊魔術を行使するには精霊が必要だ。
「さて、全員用意が完了したな。いまから皆、足腰立たなくなるくらいまでボロボロになってもらうので、そのつもりで」
まだ時間はある、ある程度でも使えるように鍛えないと。
俺のある意味、絶望感を引き起こす宣告に、皆、表情をこわばらせ、冷や汗を長須のだった。
修行&解説回その2です。
強さの解かり難いネクですが、ミアたちは赤子を捻るようなものです。
ネクは本人の身体能力が低いため、技量を上げることで、此れまでやってきています。
彼は本来技術屋なので開発などが得意なのですが……




