模擬戦特訓①
誤字をいくつか修正しました。
自身の故郷が再び戦乱を引き起こそうとしている。
しかも、その相手が仲間の故郷だというのだ。
彼らにとって辛い話なのだろう。
「また……戦いを始めるのですね、あの国は……」
シアは悲しそうな表情でつぶやく。
自身も、そして夫もあの戦乱が原因で命を落としたのだ。
その思いは複雑であろう。
「まぁ、今日明日に戦いが始まるわけでは無い。だが、心に留めて置いてくれ」
さて、コレで当面の重要案件は話したわけだが。
ふむ……どうしたものか。
「そうだ。ミア、今のうちだ。出発すると暫くは顔を合わせることも無いだろう。聞きたいことが有れば今のうちに聞いていいぞ?」
ミアにも聞きたいことが有るだろうと思い、そう切り出すと
「では……。このユニークスキルって一体なんなのですか? 眷属になったときに同時に獲得しましたけど」
ああ、そういえば。
何も説明していなかったな。
「それはユニークスキルと言って、言うなれば、ちいさな世界の法則みたいなものだ」
ミアに判るように説明する
大雑把に言えば、権能のダウングレード版だ。
例えば、『炎』の権能を有する神魔が居たとして、そいつは炎に付随する副次効果も操作できる。
この場合、炎の持つイメージ。熱・燃焼などといったところだ。
故に、炎の権能を持てば、ただの熱波を発生させることもできるし、炎を発生させずに燃やすこともできる。
無論、神魔の技量にも左右されるのだが。そこからイメージできること、連想できる事なら神魔の権能は効果を発揮する。
対して、ユニークスキルで『炎』が有ったとして、その能力は純粋に炎を発生させ、操ることが出きるだけである。
ただし、その性能は権能にこそ劣るものの、魔術や同系列のスキルなどとは比べ物にならないほどの影響力を持つ。
言うなれば、限定的な法則そのものである。
スキルは魂に書き込む為、通常の人族では魂の容量が足りないため、習得は困難であり、仮に習得したとしても、他のスキルの発現に支障をきたす恐れがある。
では、今回のミアのスキルはどういうモノか。
付与したユニークスキルは3つ
『神威代行』
『神罰代行』
『神眼(真)』
である
本人が効果を自覚しているのは神眼くらいだろう。
これの基本性能は“相手の本質を見抜くことが出きる眼力”、神の瞳、それの複製品である。
後ろの(真)というのはほぼ誤差なしで俺の瞳を複製しスキル化したためである。
これが劣化して複製されると(偽)(劣)などが付属され、性能低下を起こす。
複製元の神とリンクすれば、神側からはスキル所持者の見ているものを視認でき、スキル所持者は見た対象物を神を通して鑑定・解析することができる。
判りにくいのは他二つだろうか
「神威代行、そのままの意味で考えていい。神威、つまり俺の威を代行するってこと。俺の権能を代わりに使うことができるスキルだ」
「……それって凄いことじゃないんですか?」
簡単な説明だったんだが、この時点で軽く引いている。
まぁ、そんなのがスキルがノーリスクのわけがない。
「凄いが、コレは原則、俺の承認が居る。あくまでも代行なんだからな」
自由に使えるのなら代行じゃない。逆にいえば、許可が出ればある程度自由に使えるということなのだが……。
「無論、神の権能だ、代価が要る。お前の意思で俺に使用を求める場合、代価、まぁ……負債が増えると思っていればいい」
ポンポン使えば雪だるま式に増えていきます。ええ。
その言葉に青ざめるミア。
表情から察するに。『絶対に使わない!』とでも考えているのだろう。
「そしてもう一つ、神罰代行。コレは、俺への敵対行動を取ったモノへの干渉力を極大まで高める効果がある。対象があくまで神たる“俺”への敵対行動だから、普段の迷宮攻略には影響はしないだろうな」
「私達への敵対行動じゃなく、ネクさんに対しての敵対行動なんですね」
ソレはそうだ。ミアたちへの行動で発動するならあまりに強力するぎる。
その条件で発動する類似スキルも有るが、効果が違い過ぎる。
ミアに付与したスキルは使い何処が難しいモノが多く、利便性で考えると神眼が挙げられるだろう。
簡単な説明であったが、ミアは納得したようで「なるほど~」と呟いている。
と、何か思い出したのか。「あ」と言ったあと、俺に再度質問を投げる。
「私のクラスが変わって『命神の使徒』になっていますがこれってどんな職業なんですか?レベル表示も無いですし」
朝の話でが本当にいっぱいいっぱいだったんだな……。
今になって自分のクラスの事を聞いてきた。
「いや、何かに特化したとか、そんなクラスじゃない、完全に固有のクラスでね。ミアの成長や経験、思いに合わせ自動で強化されていく“進化型職業”だ」
俺は少し例を出して説明する。
例えば、ミアがひたすらにスライムを倒したとする。そうすると、その経験を元に、『スライム殺し』とかそういったスキルを獲得する。
また、別の例を出せば、錬金術の勉強を頑張れば、錬金術関連の。魔術であればそのに関係したスキルが獲得できる。
俺の言葉にミアは目を輝かせる。
確かに、便利そうで凄いクラスなのだろうが。
「ミア、スキルは簡単に手に入らないからな?スキルの前に技量やアーツとしてモノにしたらソレがスキルとして補強されると思っておけ。楽して強化はできないようになっている」
俺はしっかりと釘を刺す。
まぁ、スキルさえ手にはいえれば、関連付けやスキルの相互リンクなど、自動で調整できるのでかなり便利ではある。
その神が持つ専用のクラスだからな。汎用クラスとは比較にならない。
いまいち判ってないようなので、こんな提案をしてみた。
「なら、お前達で俺に挑んでみるか?」
場所を変わって迷宮内部にある小部屋
そこの俺はミア達全員を呼び寄せた。
「さて、お前達が出発する前に1度だけ訓練をつけてやろう。全力でかかって来い!」
そう言うと俺は右手の木の棒をくるくるとバトンのように回す。
他の連中はフル装備に実剣を構えている。
対する俺は、正装の獣革ローブ……ではなく、動きやすい作業着だ。
訓練などをやる格好ではないが、まぁこれだけのハンデが要るだろう。
彼らには「まけ」と書かれた紙を貼り付けることで撃破扱いとなる。
周りからは戸惑いの気配が感じられる。
「どうした? 俺は権能を使わず、この装備とアーツのみで戦うんだぞ? ほらかかって来いって!」
折角特訓してやるっていうのに……
動く気配が無い彼らにため息をつき、俺はシアに目を向ける。
「シア、タイミングは任せるから。開始の合図を出してくれ。おい、お前ら。動かないなら俺からいくからな?」
俺は木の棒を回してながら、そう宣言する。
緊張感が漂うなか、周囲の息遣いが聞こえてくる。
「はじめ!」
静寂の中、誰かの息を呑む音が聞こえたと思った 瞬間、シアの開始の合図が響く。
連中が俺へ動こうとした瞬間。俺は既に動き終えていた。
「遅い。相手を目で、視覚情報だけで見て動くな。感知系の技能を磨け」
俺が冷静な指摘をするときには、先ほどレクスがいた場所に入れ替わるように俺が立っていた。
そこに居たはずのレクスは、というと。開始早々の俺の飛び蹴りで場所を入れ替えされ、後方に吹っ飛んでいた。
この一連の動きについていけていない彼らは、急に俺が現れ、レクスが居なくなったと思っただろう。
……いや、ミアだけは神眼の効果で把握はできているか。
だが、体はその認識についていっていないようだ。
気圧されたのも一瞬、カウスが瞬動を駆使して接近してくる。
スキルのダッシュと併用している瞬動は一瞬にして俺に肉薄するに至る。
先ほどの動きを見て、手加減など出来るモノではないと判断したのだろう。
カウスが放つ奥義の一撃。初撃から全力でということだろう。
考え方は悪くは無い。
が、それでも甘い。
俺は、下から抉る様に突きあがってくるその拳を足場として、大きく後方へ飛ぶ。
単発で奥義だけを放って当たると考えるは甘いといわざるを得ない。
「奥義を単発で撃ってもスキが大きすぎる。連撃から絡めて撃つようにして、必ず相手に当たる状況をつくること」
俺は後方へ飛びながら降り注ぐ矢弾を棒で弾く。
ラピッドの併用での超速射なんだろうが、如何せん、矢筒から矢を取り、弓につがえないといけないため、その連射速度は俺からすれば遅い。
「ここも遅い。ベオ! お前は実際の矢弾を使うのでなく、魔術の【魔力矢】を習得し、ソレに各スキルをリンクさせて使え」
仮にそれができるようになれば矢弾の残数を気にすることも無く、ほぼタイムラグ無しで矢を装填・ 発射することができるようになるだろう。
魔力枯渇も『無尽蔵』持ちなため、気にせずに使えるだろう。
棒で弾きながらも解説とアドバイスをこなし、俺も瞬動で駆ける。
緩急をつけて動くため、一瞬俺が急に消えたと思うだろう。
その一瞬が命取りになる。
俺はベオの背後を取ると、そのまま掴み、カウスめがけて投げつける。
迎撃に行こうとしていたカウスは目の前に迫ってくるベオを見て動きが止る。
だが、流石。そのまま、飛んでくるベオをキャッチする。
が、時既に遅し、意識がベオに向いた直後、俺はカウスにも紙を張る。
当然、投げられたベオにも貼り付けている。
俺が前衛職と遊んでいる数秒の間に、ネーネは魔術の詠唱を完了させ、特大のを放ってくる。
キチンとスキルともリンクさせ、教本に載っているようなオーソドックスの魔術。
迫る火球を見て哂うと
「ネーネも同じ、当たらない攻撃に意味は無い。先ずは数を放って相手の隙をつくとこ」
俺は解説をしながら、飛んでくる火球を棒で叩き潰す。
轟音を挙げながら掻き消える魔術。
コレは棒に魔力を集中させ、対象にインパクトの瞬間、ソレを開放する。【爆裂】と呼ばれる技法だ。
ここまでの流れでわずか数秒。
此処までの一連の動きを追えていただろうミアは
「え? ホント?」
ええ、ホントですよ。夢じゃないぞ。
俺はミアのぼやきに心の中で突っ込みを入れるのだった。




