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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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再出発⑤

 食卓に朝食が並ぶ。

 彼らはまだ胃腸が弱っているだろう。

 それを考慮し、内容は油分の少ないモノばかりだ。

 柔らかいパンとふわふわのオムレツ。トマトたっぷりのサラダに暖かいスープだ。

 このスープは昨日の出汁(スープストック)を使ったモノだ。


 質素に見えるが味は間違いないく旨いだろう。

「話や聞きたいことが有るだろうが、先ずは食事が優先だ」


 俺はティーカップに紅茶を注ぎながら、食事を促がした。


 食卓には朝食のいい香りが漂う。

 食欲を刺激されたのだろう。

 彼らは俺の自己紹介に戸惑いながらもテーブルに着いた。

 その中でもベオと言ったか、あの獣人の冒険者だけは長々と俺の顔を見ていたのだが……。

 俺が目で『とっとと食え』と訴えているからか、皆大人しく席に座った。


「ネク様……でしたか。食事ありがとうございます、では、いただきます」

「いただきます」


 めいめいに、頂きますと言った後、食事に手を伸ばす。




 一度口に入れると、ただひたすらに食事に没頭する。

「うまいうまい!」

「うまうまっす」

「おいしいですねぇ~」


 皆、旨いと口にし、一心不乱に食を続ける。


 ……あまり急いで食べるなよ?

 俺はそんな事を思いながらも、皆を眺める。

 作り手として、旨いと言って貰えるのがなによりだ。

 




 暫くした後、皆は満足したのか、食後のお茶を愉しんでいる。

 さて、食事も終わったことだし、今後の話をしようか。



「さて、食事を愉しんでもらって何よりだ。改めて、名乗らせて貰おう」


 そう俺が切りだす

 俺の言葉に寛いでいた面々が緊張した顔をする。


「此処の迷宮の管理をしている。第一級神のネクと言う。まぁ、よろしく頼むわ」

 あっさりした名乗りであるが、やはり、神の名は伊達ではない。


 殆どが顔をこわばらせている。


 例外として、まぁ……予想は出来てはいたけども。獣人のベオは俺の顔を見て、更に名乗りを聞いて目を潤ませている。


 俺は獣人主神だからな、自身の種族の崇める神が目の前にいれば、信仰心が深くなくとも影響はでるだろう。


 それ以外にはネーネが「やっぱりあの声の片ですねぇ~」などと独り言を言っており

 本人にはそんなに面識が無いはずのミア母こと、シアも俺を見てニコニコしている。


 ……なんだ? 緊張しているのは男二人とミアだけか。

 少し拍子抜けした感もあるが、話を進めよう


「お前たちの実力だとか、事前準備が甘いとか色々言いたいこともある。が、一応、攻略おめでとうと言わせて貰おう」


 俺は苦言を交え、そう祝福(祝福なのだろうか?)を送る。


 身に覚えもあるのだろう。

 決定的な実力不足、さらに食料不足で飢えるという事前準備の甘さ。

 これはかなり致命的なものだった。


 俺の言葉にシアを除いた全員が押し黙る。

 ……彼女はこの叱責を間もなぜか微笑みを絶やさない。

 とりあえず、脇において置こう。


 俺の叱責を踏まえた上で、俺はこの冒険者達に提案をだす。


「さて、願いをかなえた以上、ミアには代価を支払う義務が生じる。が、しかしだ、現状支払うことが出来ない以上、長期的な計画の下。代価を支払ってもらおうと思う」


 その言葉により一層ミアは表情を硬くする。

 なるほど、代価の内容は皆には言ってないのだろう。

 周囲の心配そうな視線がミアへと集まる。


「まぁ、大したものでは無い。本人にも言っているが、俺の眷属に組み込んだ。基本は外界のダンジョンの情報や、冒険者の情報を俺に届けてもらう」


 代価の内容の緩さに皆が驚く。

 たいしたことでは無い。が、当然、掛かる任期は人間には相当長いものとなる。


「簡単な内容なだけ、要求する任期は。……まぁせいぜい二・三百年というところか。俺にとって有益か面白い情報で有れば期限は短くなる」


 そう説明したのだが、


「三百年って! そんなに私達、人間は生きてないですよ!」

 俺の言葉に男冒険者(その一)が驚く。

 まぁ言わんとすることはわかるが、これだけ緩い代価だと完済に時間が掛かるのだ。


「そこら辺も踏まえて、一つお前達に提案がある。聞くか?」


 そこでこの迷宮に挑んだメンバー全員にある取引をする。


「お前達、俺の実験部隊として、この都市の傘下に入れ」


 提案としてはこうだ。

 この都市部を本拠地としたクランの設立

 それに伴い、俺からの冒険者としての指導を受けるというものだ。

 はっきりいって、デメリットよりもメリットのが多いはずだ。


 獣人のベオに関しては既に俺の提案を受ける気になっているのだろう。

 コイツにとって俺の提案を受け入れるのはかなりの魅力有る提案になる。


 また、エルフのネーネも此処に友人たる精霊が住まうので、提案を受け入れやすいはずだ。


 と、他のメンバー、コイツは確かプチファフニールを殴った思い切りのいいヤツだったか。が訊ねる


「具体的に指導とはどのようなものがいただけるのですか?」


 なるほど、どれだけのメリットが有るか、ということか。

 俺はしばし考える。


「そうだな、クラン設立に伴い、所属が変更されるので、新たな職の選考が可能になるな。その場合、俺の承認でクラス変更可能だ」


 そう、この都市を拠点にしクラン設立をするなら庇護主神が替わることになる。

 普通は替わったところでその神に会うことが出来ないと意味は殆ど無い。


 しかしだ。此処で俺と会うことが出来たため、クラスチェンジという新たな可能性が生まれるわけだ。

 もっとも、そのメリットが大きいのは三人程のようだが……なぜなら。


「まぁ、ベオと言ったか? 獣人はもともと俺が主神としてやっている。故にあまりクラスなどにはメリットが無いな。ミアは既に俺の眷属化されて、専用のクラスになっている。よってクラスなどで大きな影響が出るのは三人だけだ」


 といって俺はミアを見て見る、

 案の定、ミアは沈んだ顔をしている。

 自分の代価に皆を巻き込んだとでも思っているのだろう。


 まぁ、俺が愉しむ為に配下に加えようとしているのだ。ちゃんとメリットを用意してやる。


「そして、指導の件だが、まぁ、お前達が他の迷宮を攻略し始めてからだな。現状は指導も何も、完全に実力不足だぞ」


 言った内容は理解しているのだろう。

 彼らには座学よりも実戦で鍛えさせたほうがいい。

 それにはこの迷宮では無意味なため、別の迷宮に潜らせる予定だ。


 まだ考え込む男冒険者達。


 仕方ない、もう一押しするか。


 俺は懐からリンゴを取り出すと、テーブルの上に置く。

 その行動を見て怪訝な表情を浮かべる彼ら。

 視線がテーブルのリンゴに移るのを確認すると。


「お前ら、コレ食ったよな?」


 おもむろに切り出す。

 言われた彼らは急なことで戸惑いつつも頷く。


「コレな、名前こそまだ付けてないものの、俺が改良したリンゴでな。本来、神族や魔族用なんだ」

 そう、本当は人に食べさせることを前提にしていない。

 その言葉に嫌な予感がしたのか、冷や汗を浮かべる面々。

 俺は淡々と言葉を続ける。


「効能だがな、人で言うところの霊薬:エリクサーくらいの性能は有る。食えば立ち所に傷や欠損、病気などを一発で治す優れものだ」


 そう、たとえ四肢欠損になったとしても再生させるくらい朝飯前だろう。

 ともかく、健康体に戻すことが出来る。コレが人界に出回れば……いったいいくらの値が付くことやら。

 

 俺の言いたいことが判ったのだろう。食べてしまった者達は顔面蒼白である。

 ……ホントになんでだろうか。シアだけは替わらぬニコニコ微笑顔ではあるが。

 だが、効果はまだある。


「そして、副次効果として、延命効果があってな、一個食えば数年は寿命が延びるだろう……。お前ら、何個食った?」


 致命的な言葉にうな垂れる面々。


 そこで、俺はにこやかな笑みを浮かべ再度提案する。


「さて、お前たち、この都市部で俺の配下に入り、クランを設立しないか?」




 俺のその提案に皆。快く、そう! 快く! 了承してくれるのだった。


ええ、間違いなく快くです。

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