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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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再出発④

 フェリアスの願いで俺は家族団欒の場へ赴いていた。

 とはいえ、実際のところは数年前にも会ったばかりだ。

 立場があり、俺の娘でもあるミネルバは自身の管理する迷宮からほとんど出ることがない。

 それは俺も同様で、神・魔の規定により、俺を含め、高位の神は原則として魔族が治める迷宮に足を踏み入れることが出来ない。

 まぁ、例外事項が今回のような願いであり、狂乱の様な魔族サイドの特例なのだが……。


 俺もこんなときでしか娘と会えないので、娘とのお茶会なんて歓迎すべきことだ。


 ……もっとも、その後確実にやって来る厄介なヤツから逃げるのが大変なのだが。


 今回も一週間程で帰るつもりだったのだが、結局半月ほど掛かってしまった。

 毎度毎度、脱出するのに時間も労力も掛かること、この上ない。


「これだから……ヤンデレは……」


 毎回戻っるためにえらく疲れてしまう。

 帰ってお茶でも入れてゆっくりするか。

 そんなことを考えていたのだが。唐突にルイミウォテルから緊急連絡が入る。


 俺が向こうで()()されていたため、連絡が取れず、今になったようだ。


 話を聞くと、人族にとって、いや、生物にとっては、まぁ、大問題だろう。

 俺は取り急ぎ戻ることとなった。




「って、なんだ!?この惨状は!!! 何事だ!?」


 ……そこで見た光景がコレである。

 空腹に耐えかねてだろう。皆ぐったりと倒れている。

 ミア達家族のために一週間強の食材は用意していたのだが。見る限りそれを使い果たしているようだ。


 というかだ。冒険者が数ヶ月分の非常食を用意しないとか……どうなってるんだ??


 少なくとも、俺の知る限り、冒険者と名乗る者達は圧縮空間などに非常食を確保していたり、魔術が不得意な者でも収納箱(アイテムボックス)などの収納系アイテムを用いて何らかの対策を行っているものなのだが……。


 正直、コイツラの将来……下手をすると人界の種族全体の将来に不安がよぎる。

 殆どヤツは才能は有るのだが、育ち方が歪であったり、スキルやレベルなどに固執しすぎていたりするし。


 これは本格的に手を出したほうが善いかも知れないな。

 そう思いながらもコイツらに声をかける。


「取りあえず、簡単で消化の善い物をつくるから、コレでも飲んで大人しく待ってろ!」


 そう言うと俺は皆に飲み物を渡し、厨房へと脚を運ぶ。

 空腹の時には消化に善いものでないと危険である。

 ちなみに今渡したのは、糖分と塩分の補充のためのドリンクである。

 空腹と断食による低血糖症はコレで少しは楽になるだろう。

 頭が朦朧としているのは完全に血糖不足だろう。


 次は消化の善い粥か何かつくるか。

 俺はそう決めると専用の()()()より出汁(スープストック)を取り出す。

 これは空間系の魔法の一つで、亜空間を形成し、その中を倉庫にするものである。

 さらに、時間凍結をかけているので亜空間内部では時間が進むことが無く、入れた状態で維持される。


 醗酵熟成などには別に倉庫を用意しているので、そういった食材はそちらに保管している。


 さてさて、粥と言ってもただ作るだけでは面白くない。

 今回は俺がチマチマ作っていた出汁(スープストック)の中からあっさりとした鳥ベースを選択。

 コレは鳥ガラと大量の野菜から取ったモノで何度も何度も濾して作った1品である。


 透明で澄んだスープ。そこに米を投入し、簡単な粥を作る。

「お粥は生の米から作るのが旨い」

 何だかんだでノリノリで作り出す。

 まぁ、簡単といっても出汁(スープストック)にはえらく時間をかけている気はするが。




 味つけは塩のみというシンプルな粥が出来上がり、それを皆に食わせる。

 ただ、空腹状態であるならば、大量に食わせるのはマズイので、皆には椀1杯のみである。

 翌日から様子をみつつ食事量を増やせばいいだろう。


「あ、ありがとうございます」


 ようやく思考が正常に戻り俺に気がついたのか、男の一人が礼をいってきた。


「冒険者なら、非常食の確保くらいはじめからやっていろ。どこにでも料理を提供する場所があるわけじゃないんだ」

 まったくもってその通りだと、自分で言って思う。


 よくこれで今まで無事だったものである。

 そのことに呆れていると、あるモノが目に入る。


 なんで、こいつ等コレ食べてるんだ!?


 テーブルの上には無造作に置かれたリンゴが有る。

 このリンゴ、本来人が食べるものではないのだが……

 俺の神力をたっぷりと含んでいる。いや、むしろ、神力で出来ているといってもいいだろう。

 味こそ善いものの、人にとっては食料などではなく、むしろ、エリクサーなどの最上位霊薬扱いだろう。


 こいつらがいったいどれだけの数食べたかわからないが……。

 恐らく寿命自体が補強されて数十年単位で伸びているだろう。


 俺はそのことに軽くめまいを覚える。

 普通に考えるとルイミウォテルが自分から差し出したとは考えにくい、ということは。


 俺は予想を立てる。俺の眷属となったミアが欲しいといえば、手にいれることはできるだろう。


 ……まぁ、過ぎたことだ。そこは後で考えよう。


 俺は食料を配り終え、この場を後にする。

 今話しても、小言をいってしまいそうだ。


 とりあえず、温泉にでも入って明日。あいつらに話を聞こう。

 こうして、彼らの静かな危機は去ったのだった。



 そして翌日。

 俺は彼らが置きだす前に厨房にいた。

 彼らは昨日のドリンクと粥が良かったようで、良く眠れているようだ。


 さて、このまま粥だけだと栄養バランスが悪いな。

 俺の権能で簡単に操作できることではあるが。俺はそれを良しとしない。

 そもそも権能を使えば満腹中枢すら制御できるし、必須栄養素も自由自在に作り出せる。

 だが、それをやってしまえば、もはや生きていると言っていいものか……。

 食事などで補えるものは口からちゃんと摂取すべきである。

 それこそが、生きている証ではないか。


 と、難しいことは置いといて、美味しい食べ物を食べることは人にとって必要なことであろう。


 俺は()()()()()あいつらの食事を用意する。

 ただ、今回。いつもと違うところを挙げるなら2つだろう。

 一つはミアの母親、シアが居ること

 そして、もう一つは……。


「……ネ……クさん?」


 俺はその声に振り返る。

 朝食の匂いに釣られたのか、それとも、神眼スキルの直感が働いたのか。

 そこには驚いた顔でこちらを見るミアの姿があった。

 昨日はまともに顔を合わせなかったため、最後に会ったのは……試練の間か。

 ミアだけではなく、母親のシアも共に降りてきていた。

 シアとは顔を合わせたことが無いが、彼女にも神眼スキルを付与している。

 まぁ、それ以外にも、『第六感(シックスセンス)』や『予兆予感』などの面白そうなスキルの影響か?

 彼女もなんらかの予兆を感じたのだろう。


 そう、既に俺のことを知る存在がいるという事だ。

 ちょうど善い機会であろう。


 俺はここに居るメンバーに今後、どうするか、そしてミアの代価をどう要求するかを説明することに決めた。

 目的は簡単。


 現状の人界の冒険者達の実力の把握。

 そして……。


 朝食の匂いに誘われたのか、ぞろぞろと他の奴らが集まってくる。

 昨日は皆いっぱいいっぱいだったことも有り、俺のことまで気に留めてる者は少なかったようだが。

 朝食を食べながら少し話をしてみよう。


 それでも先に自己紹介だけはしておくか。

 俺は料理の手を止めず、顔だけ向けて挨拶をする。


「おはよう。よく眠れたかい? 挨拶がまだのヤツもいるだろう。自己紹介だけしておこう。俺の名前はネク。此処に住まう……神だ、よろしくな」


 さぁ、もうすぐ朝食ができるぞ! 


 朝食の香りが漂う、宿屋の食堂でようやく一同に会した俺たち。


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