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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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再出発③

 皆で食卓を囲み、リンゴを齧る。

 質素に見えるが、このリンゴの旨みを差し引いて考えても十分な食事といえた。


 と、リンゴを食べながら母が


「でも、めずらしいわね。()()()()()()なんて」

「え?シアさん、このリンゴが金色に見えるのですか?」


 母の素朴な疑問なのだろう。その言葉にレクスが訊ねかえす。

 やはり、スキルの影響で黄金に輝いて見えるようだ。

 私にも黄金に見えることと、おそらくはスキルの影響であろうことを皆に説明する。


「……なるほど。話を聞く限りでは、そのスキル、本質を見ることができるのかもしれない。類似スキルで『心眼』や『真眼』というものがあるからね」

 私の説明を聞き終えたカウスがそう分析する。

 何故だろうか。苦虫を噛み潰したような顔をして、スキルの解説をする。


「ああ……カレンさんのアレか」

「うん。姉さんのアレだよ……」


 その話を聞いたからなのだろうか。レクスも同様な顔し、ため息をつく。

 何事なのだろうか?


「へ~! カレンさんってそんなスキルを持ってたんすね!」

「ああ、そうなんだよ。おかげで尚のことタチが悪くてね。相手の弱いとろを的確に見抜き、こちらの動きの全を予測できる」

「そうだな、姉さんは相手の弱点を突くことが本当に上手かった……」


 ベオの発したその言葉に、二人が揃ってうな垂れる。

 何を思い出しているのか分からないが、恐怖で肩を震わせている。


 あのダンジョンで神獣に恐れずたち向かったはずの二人がである。

 その状況に私は少し薄ら寒いものすら感じてしまう。


「そんなに恐ろしい方なのですかぁ~?」


 興味を引かれたのだろう。ネーネが二人に尋ねてしまった。

 二人はしばしの沈黙のあとで


「家に帰るくらいなら、このダンジョンに挑み続けたほうがマシだな」

「……ああ、アレは魂ごと削られていくような気がする」


 いったいどれほどのものなのだろうか……。

 悲痛な顔で黙ってしまった二人に配慮し、話を元に戻す。


「え、えぇ~と。このリンゴが母さんと私にだけ輝いて見えるってことは、何か凄いものってことなんでしょうか?」

「あ、ああ。その可能性は高いな。何らかの効果を秘めているのかもしれない。すこし様子を見たほうがいいかもしれないが……。シアさん、ミア、そのリンゴから悪いイメージや気配を感じるか?」


 話が逸れてホッとしたのだろう。少し落ち着きを取り戻している。

 そんなレクスの言葉に私と母は考える


「母さん、どう思う?私は悪いイメージなんて沸かないけど。純粋に凄いって感じがするし」

「そうね。私には神秘的な印象を受けるわね。一番近いのは……そうね、霊薬かしら?」


 私の言葉に母はそう答える。

 母の職業はもともと『錬金術師(アルケミスト)』である。そのため薬品に関する知識を持っている。

 本人曰く、製薬師としては中位くらいだそうで、高位の薬や霊薬は過去、座学や資料として見ただけだそうだが。


「という事は悪いものではないようですね。残りはこのままにして少し様子を見ましょうか」

 カウスの言葉に皆が頷き、その日の食事は終わりとなった。




 そして、その異変に気がついたのは夜になってからだった。

 ちょうど私が温泉から戻って来たところで、1階でレクスとベオが話をしていた。


「なんですっかね? えらくおなかが空くんですけど??」

「お前もか」


 皆が空腹を感じているようだった。

 確かにリンゴだけしか食べていないとはいえ、ここまでの空腹感は久しい。


「……全員に確認を取るか必要が有るか。カウスとも相談するので少し待っていてくれ。ミア、一応、お前はシアさんとネーネに確認を頼む」

「解かりました」



 私は母とネーネに確認を取るべく部屋に戻る。

 部屋のドアをノックし、中へと入る。


「母さん、ネーネ。少し聞きたいことがあるんだけど?」

 そう切り出し、現在の空腹状況を確認する。


「皆もですかぁ~、おなかが空いているのは私だけじゃなかったんですねぇ~」

「そうみたいね、でも此処までおなかが空くのも変な話だけど……」


 話を聞くと、やはり二人ともおなかが空いているようだった。

リンゴだけしか食べていない為と考えられるのだが?

 そう思っていると、母が提案を上げる。


「一階に集まりましょうか。確認しないといけないでしょうし、ね」


 私達は頷き、一階で集まることになった。

 そこには既に男性三人が揃っており、あのリンゴを前に考え込んでいた。

 私達に気が付いたレクスが声をかける


「これで皆揃ったようだな。検証を含め、少し話しをしようと思う。カウスいいか?」

「ああ。皆、いまから再度、皆でこのリンゴを食べてみようと思う。その際、どんな変化があるか、できる限り教えて欲しい」


 そう言うと先度のリンゴに手をとり、口に入れる。

 その行動に促がされるように皆、リンゴを手に取り齧る。


 シャリシャリとした食感と抜群の旨み、最高のリンゴにしか感じない。

 が、しかし。昼間には判らなかった違いが今になってよやく理解できた。

 それはリンゴを飲み込んだ後に起こったのだ。


「っ?? 食べているけど、おなかが膨らまない???」


 皆も食べて感じたのか、この現象に気がついたようだ。

 昼間ではその差が判らなかったが、今のような空腹感でこのリンゴを食べると違いが判る。


「そうか。どういう理屈かはわからない。だが、このリンゴ、食感など食べた感覚こそあるものの、胃袋まで到達せず、飲み込めば消えてしまうのか」


 レクスのその言葉に私達は愕然となる。

 そんな食べ物があるなんて……


 と、考えていたカウスが何かに気がついたように


「そうか、霊薬。あのイメージがそのままだとするなら……このリンゴは本来、食料として食べるものではないのかもしれない」


 つまり、こういうことだ。

 何らかの力が篭った果実。私や母の眼に神秘的な輝きを放っていたことから間違いないだろう。

 この果実は食べた感覚はあるものの、空腹感を満たしてくれるものではないようだ。


 そして、そのことが更なる不安を掻き立てる。


「ちょっと待ってっすよ! 食料は周囲にコレしかなかったんすよね? そうするなら……俺たちは……」


 そうだ。つまり、食料問題は何も解決していないということだ。

 私達は食料もないまま、この都市に閉じ込められているという事なのだ。


「まずいな。今後の進退を決めなければならない」

レクスのその言葉に私達の視線が集まる。


「まず現状の把握だ」

 

 そう言うと、現在私たちが置かれている状況をまとめる。

 手元に食料が無く、また、周囲にもめぼしいモノがない。

 更に、ここから転移門まで半月は掛かる


 あと、腹は膨れないが、リンゴの様なものはある。


「こんなところか?ほかに何か有るか?」


 その言葉に考える私達。と母が、


「もともと有った食料はどなたが用意してくださっていたんですか?」


 そんな、私達が考えていなかった問いを発した。

言われれば確かに。

 ダンジョン攻略中から食事は自然と用意されていた。

 攻略後も一週間分ほどは七人が生活できるだけの量が十分に揃っていた。


 では、この食料はどこから来ていたのか?

 この周囲では魚や牛・豚といった肉類が手に入るとは考えにくい。

 なにより、人が居らず、精霊のみの都市だ。


 そんな中、一体誰が用意していたのか。

 ふと、脳裏にあの黒い神の姿が浮かぶ。


 まさか……あの神、ネクさんが??


 だが、直感を信じるならば、そうなのだろう。

 私は母に視線をあげ、この予想があっているかどうか確かめる


「お母さん。お母さんは……()がここに食料を用意していたと思う?」


 私同様。『神眼』を授かっている母の直感だ、参考にするに十分に値する。

 

 少し思案した後、母は


「そうね、何となくだけど、此処の主だと思うわ。そして、遠くないうちに此処に戻ってくる。そんな気がするの」


 私と類似した予想だ!

 しかし、私よりも情報が多い?

 ひょっとしたら、他になんらかのスキルを得ているのかもしれない。


 この母の言葉を聞いて。レクスが一つ提案を上げる。


「では、今後の話だ。恐らく、移動しても食料が無い以上、飢えてしまうだろう。この都市に来た際通った丘には来るときにも動物を見かけなかったため、狩りも期待できない」


 そう、ここまで来るときに魔物にすら遭遇しなかったのだ。

 小動物すら見かけないのでは狩りも難しいだろう。


「そこでだ。来るかも知れない救援を待ち、ここに留まる事を提案する」


 それは、移動で体力を消費するよりも、ここで救援を待つという考えだった。

 都市にいながら救援を待たないといけないという……なんと言い表して言いか判らない。

 

 さらに話は続く。


「ミアとネーネには再度精霊の元へ訪れてもらい、このリンゴを手に入れてきてくれ。荷物の運搬にはベオをつける。そしてその際に、精霊経由で救援依頼を出してもらい。他力本願で不甲斐ないが、現状この手しか思い浮かばない」


 その提案、空腹感は収まることがないだろうが。せめてリンゴを齧ることで食べている気にさせておく。

 そして精霊経由の救援。

 フェリアスさんへ連絡が行けばあるいは……とも思うのだが。

 本当に自分達で何一つできない、この不甲斐なさ。

  

 でも、ここで諦められない。

 水は確保できるのだ、そう簡単にどうこうなる問題でもない。

 何より、私も、母も、何故だろうか、信じている。必ず来てくれると。



 私達は同意を示し、翌日より救援を待つこととなる。








 ◇◆◇



 そして、数日後、もう何日たった等、覚えていないが、話は戻る。

 空腹でうずくまり、倒れている私達に向かって声が聞こえる。


「って、なんだ!? この惨状は!!! 何事だ!?」


 静寂を破る、その男性の声が、待ちに待った声が聞こえた。


はい、倒れてたのは空腹でです。


ミア視点なので、かなり真剣に命の危機を感じています。

実際は水さえあれば1~2ヶ月は生命維持できるので命の危険は有りません。


でも、現代で1週間何も食べない水だけとなると、皆、同じような感覚だとおもいます。


このリンゴについては早いうちに活動報告に上げる予定です。

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