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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
1‐2人の長いプロローグ
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あの日の団欒

 時空転移の白い光を抜け、俺は現代へと戻ってきた。

 収穫は十分にあった。これで目的は果たせるだろう。


 そんな俺を期待と不安の入り混じった表情で見つめる者がいる

 そちらへ目をやると、ミアは両手を胸の前でしっかりと握り締め、こちらを窺っている。


 やはり、不安で仕方ないのだろう。

 そう思いながら俺は早速再製に取り掛かる。


 肉体と魂の復元はそこまで難しいものではない。

 手順はこうだ。

 

 まずは、先ほど見てきた実際の亡骸をベースにし、損傷などは世界書の情報を元に再製。

 コレにより世界書には記されていない記憶を保管したまま、肉体を再構成。生前の姿を取り戻す。


 だが、まだコレでは魂が宿っておらず、生きているとは言いがたい状態だ。

 ここに魂を宿らせることで、人の蘇生が完了する。


 当然ながら次に取り掛かるのは魂の再製だ。

 魂は大きく分けて二つの要素で構成されている。

 一つは魂の器。もう一つはその器の中身である。この2つ、どちらが欠けても魂として成り立たたない。

 まずは魂の器だが、個人個人で形が違う。その違いが個性であり、素質につながっていくのだ。

 次にその中身。この呼び方は様々あるが、根本は生命力(オド)である。

 生きるための力であり、スキルを発動させるための力でもある。

 余談ではあるが、スキル自体は魂の器に刻まれ、それを発動させるのがこの生命力である。

 スキルを使った際の疲労感はこの生命力(オド)の低下が要因であり、生命力(オド)を補おうとしてスタミナを消費してしまうのだ。

 俺が使った精霊技法はこの魂の器に精霊を宿すことで、生命力(オド)の代わりに精霊の力を借りるのである。

 故に、この魂の器が大きく、強固であれば


 器が正常であれば、時間と共に生命力は溜まっていく。

 が、しかし。器が破損している場合、その生命力は溜まるよりも速く失われていき、どんどん肉体が衰弱しいってしまう。

 そして生命力が空になってしまうと、魂を動かすことが出来ず、魂の死を迎える。

 この魂の死は、肉体そのものは生きているが、それを動かすことができず、精神が死んだ状態になってしまうことだ。



 例であげるなら、例えばネーネの場合、器が損傷してしまい生命力が大きく失われた。

 この損傷自体は蘇生の際に復元しているが、立て続けの死だったのと、器が損傷した際に、中身たる生命力の流失量が多く、危険な状態に陥っていた。


 そしてミアの父親の場合は、ベヒモス召喚の際に魂を喰われ、器に修復も再製も不可能な穴があけられてしまい、そこから生命力が流出し死の淵にいた。

 彼の場合、直接の死因は魔物による傷だったため、生命力の枯渇ではなかったのが。



 さて、器の再製も完了はしたが。中身が空の状態である。

 俺もこの補充は出来ないが、一度外部からのエネルギー供給によって魂を動かし、生命力を生成さえすれば問題はないだろう。

 寸分たがわずに完成した魂を見て、生前の人格を保ったままであると核心をし、俺は肉体に魂を埋め込んだ。


 この一連のながれ、高速思考を併用し行っているため、実際は十数秒かその程度である。

 俺が再製したその女性を見る。

 流石に親子、良く似ている。再製時に確認した情報によれば、享年は24のようだ。

 現在の二人の年の差が八つほどなので、姉妹と言われれば解からないほどだ。

 そして忘れないうちにスキルを一つ刻んでおく。

 コレがないとあとあと面倒だ。


 こうして、ミアの母親、シア・バレインシュがここに蘇ったのだ。









 私はその様子を瞬きも出来ずに見守っていた。

 ネクさんが虚空に手をかざすと、光の収束と共に女性の裸身が現れる。

 それは……夢にまで見た光景だった。


「あぁぁ……」


 私は涙をこらえることができなかった。

 十年も昔だ、記憶は薄れてきていた。

 それでも、その姿は間違いなく、私の母であった。


 フェリアスさんが用意をしていたのか、母の体に布をかけ、抱きかかえて私の元に連れてきてくれる。

 涙で滲む視界の中、言葉に出来ないほどの喜びを感じ、私は母を抱きしめた。

 昔は抱きついても腰にも届かなかったのに、私は今では同じくらいの大きさまで成長してしまっている。

 喜びながらも、その年月の経過に一抹の不安がよぎる。


 十年あまりの年月、成長した私をみて……お母さんは私が娘だと気づいてくれるのだろうか?

 そう思っていると、抱きしめる母の体が震え、ゆっくりと目を開く。


「……おかぁさん……わかる??」

 私は涙濡れた顔で、その震える声で、母に話しかける。

 私のことが解からなかったら……どうしよう。

 生き返ってくれればそれでいいと思っていたのに、そんな不安が心に渦をまく。


 母は旨く動かないのか。よろめく体で辺りを見回し、そして私を見つめると


「……ミア……大きくなったのね」


 そういって笑いかけてくれた。










 ◇◆◇



 さてさて、母親の再製は成功だろう。

 記憶の欠損もない。

 まぁ、魂と体がなじむまで暫くはリハビリが必要だろう。

 こればっかりはどうしようもない。頑張ってもらうしかないな。


 俺にはあともう二つ仕事が残っているのだが……この空気の中、話し掛けるのも野暮だろう。

 普段いがみ合う、ラヒルデとフェリアスも今はおとなしい。


 今後の準備だけはしておこう。

 俺はもう一つの素体の製作を裏で行うことにした。




 数分が経過し、ミアがこちらに礼を言う。

「ネクさん、本当にありがとうございました」


 礼を言われることは無いのだがな……。

「礼を言う必要は無いぞ。いまから代価を請求しないといけないからな」


 その言葉にミアの表情は強張る。

 何が要求されるのか解からないのだから不安であろう。

 命の代価だ……自分の命を要求されると思っているのかもしれない。

 そんな無駄なことはしない。俺が要求することは実に簡単だ。


「お前が支払うべき代価だが。今後、俺の目となり、足となり、(しもべ)となり。冒険者として活動し、その情報を俺に伝えること、それだけだ」


 俺の言葉に驚き、思考を半ば放棄する。

 よほどキツイ代価を要求されるとおもっていたのだろう。

「え?それだけ……ですか?」

 えらく拍子抜けしたようだが、コレの代価はそこまで甘くない。


「簡単に言ってるが。お前が俺に提供する情報で代価を払うんだ。どれだけの時間が掛かるか……わかっているのか?」


 そう、現状で代価が払えないのなら、それを完済するまで払わせる。

 いうならば、代価の借金だ。そのことを伝えたうえで。


「その間、死ぬことも諦めることも、俺は許さん。お前は俺の(しもべ)として役立ってもらう」

「解かりました。私に出来ることは致します」

 俺の宣告にミアは同意をする。俺は頷きながら


「これにより契約はなされた。今この時より、ミア・バレインシュを我が使徒とし、我が代理とする」

 俺のその言葉にミアの存在が書き換わる


『クラスチェンジ、【ミア・バレインシュ】

 クラス:騎士⇒クラス:命神の使徒

 クラスチェンジによりスキルの追加……

 ユニークスキル【神威代行】獲得

 ユニークスキル【天罰代行】獲得

 ユニークスキル【神眼(真)】獲得


 固体情報書換え完了』



 ミアのクラス自体を変更し、新たなスキルなどを魂に刻む。

 特に変わったことがないか、自分の体をしげしげと見るミアだが、何の違和感も無く首をかしげている。


 そんなに急激な変化を与えるようなことはしないって……

 そう思いつつも、もう一つの願いをかなえてやる。


 裏で再製を行っていたのだが、既に覚醒している。

 そのため、彼には現在の状況と自身の体についても教え、すでに準備はできている。


「さて、ミアよ。これからお前の期待する意味も込め、もう1つ贈り物をしようと思う」

「え?」

「許された時間は短い。だからこそ、その時間を大事にするといい」


 そう言うと、俺はミアと母親を宿屋まで転送する

 俺は光の中消えていく二人を見送るのだった。







 ◇◆◇


 そこはこの一週間以上、生活していた宿屋だった

 いったい何が?


 そう思いながら見渡すと……。


「……元気に、していたかい?」


 控えめな声と共にその姿が目に入る。

 その姿を見たとたん。そこに居るのが誰かを漠然と把握できた。

 これまで、姿も声も記憶から消えてしまっていたのに……


「お……とうさん?」

「ああ……そうだ……二人とも、待たせたね」


 父の瞳にもうっすらと涙が、あふれ震える声でそう答えた。


 この日、十年の時を超え……私の願いが、あの日の団欒の続きが実現したのだった

次回で1章終了です

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