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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
1‐2人の長いプロローグ
33/140

蘇生と創造③

 俺は目的の場所へ行くため、トラフ爺に頼んだ。

「トラフ爺、時間軸としてはおよそ、5年後といったところか。その時代の“鐘楼の迷宮”に行ってくれるか?」

『ほう……?鐘楼とは珍しいところに……そこに何かあるのかの?』


 トラフ爺はそう言いながらも移動を開始してくれる。

 周囲が白くなり、時空転移に移る。

「ああ、情報によれば、そこに彼が居るはずなのだ」

『そういうことか……。だがいいのかの?』

 

 俺が何をしたがっているのか理解し、そう質問を投げる。

 それはそうだろう。

 はっきり言ってコレは俺の立場からすれば無駄なことだ。

 だが、それでも一度俺が手を出すと決めたのだ。出来ることは全てやる。

 そう思いながらトラフ爺に


「構わない。それに今回は抜け道がある。俺に願う()()目 ()()()()だ、やる気になった以上。その願いは叶えるさ」


 遥かなる昔、人魔大戦終結前になる。

 俺に願いをいった人が居たのだ。

 その人物は結局、俺に代価を払うことが出来ずに死んでいった。

 今回のミア同様、それは魂の底からの、無垢な願いだった。

 あれから本当に長い時が流れたものだ。


『お前さんが善いのなら、そこは問題は無いがのぅ。ほれ、着いたぞ』


 昔の思い出に少し感傷的になってしまった。

 ともかく、俺は目的の迷宮に到着した。






 ◇◆◇


 その男は残りの命を賭け。このダンジョンの攻略に乗り出した。

 生活に必要な金を頼りにしている友に託し。残りの全財産を使い、この迷宮都市の冒険者を雇い入れ、最上部へと目指していた。

 ここは“鐘楼の迷宮”と呼ばれる場所で、巨大な塔の形をしたダンジョンである。





 この数年前の事件によって己の寿命が急激に減少し、今でも減り続けていることが自分でもわかっいた。

 これは自分への罰なのだろう。


 国からの命とはいえ、近隣の国へ魔獣をけし掛けようとする作戦。それに随伴しいたのだ。

 魔獣の召喚には成功したものの。その際に、多くの者はあの場で死に絶え、召喚した魔獣は怒り、相手国に向かうどころか、自分たちの国へと攻めて行ってしまっった。

 そんな中でも。辛うじて私は生き延びることが出来たのだが、召喚の代償としてか、二十代であった自分は急激に年を取り、自分の体は七十歳ほどにまでなってしまった。

 そんな状況ではあったが、残してきた妻と娘が心配で、私は大急ぎで戻ってきたのだ。


 急ぎ国まで早馬で戻ってきたのだが。そこで、私の目映ったのは瓦礫の山の多くの屍だった。

 私はこの状況を引き起こしたのが他ならぬ自分であり、この国であるという事に恐怖を覚え、この国から逃げ出してしまった。


 しかし、残してきた家族のことが気に係り、何度も国周辺の難民キャンプまで足を運んだ。

 幾度目かの捜索の時、ようやく、娘の手がかりが入り、出会うことが出来た。

 だが、妻は既に亡くなっており、私のことも死んだものと思われているようであった。


 それはそうだろう。

 魔獣の召喚先に居たうえに、あの場に居たもの全てが消息不明になっているのだ。

 辛うじて生き残りがいたとしても、外見は大きく乖離し、また、自分の名前を言おうにも、出てこないのだ。

 だが、名前が言えたとして、私だと認識されたとして、それでどうするのだ?

 国の命とはいえ、召喚を実行した私達のせいで、国が滅び、妻を失ってしまったのだ。

 今更、父親として出て行くことなど、あわせる顔などない。

 そのため、あえて名前を出さず、ただの年老いた冒険者として、娘を引き取ることにした。

 せめて、幸せに。私のせいで失った多くのモノを埋めるほどの幸せを。

 その思いで育ててきた。

 名乗りでることが出来ないが、最愛の娘だ。私も幸せを感じていたが、同時に、罪悪感も感じていた。

 自分は幸せになる資格などないと。

 同時に、自分の体が急激に衰えていっているのも感じ、このまま一人残されることになろう、娘を案じた。



 そんなとき、死者の蘇生の噂を聞いたのだ。

「死者の蘇生の秘宝もあるかもしれんのぅ」

 そう、娘に言いながら、私はその噂の迷宮へと足を向ける決意をする。


 自分の体を考えると恐らく、戻ってくることはできないだろう。

 そのため、冒険者として活動したこの数年間でできた友人に娘を託し、一人そのダンジョンへ挑むことにしたのだ。


 準備には1年近くを費やした。

 娘に行って来ると別れを告げ、一路、迷宮を目指す。

 都市に着くと、時間も惜しいので、すぐさま他の冒険者を雇い、最上部まで攻略することとなった。


 そして、今、私の命は尽きようとしている。

 最上部には到達することもなく、モンスターに囲まれもはや、死を待つだけだろう。

 雇った冒険者は既に逃げ出している。

 仕方がないだろう。彼らも死にたくはないのだ。

 見捨てて逃げ出した彼らを責める気にはなれず、だが、しかし、後悔だけは残る。


 せめて、残してきた娘に幸せになってもらいたい。

 そう、思っていたが、未練だろう。

 妻に会いたい、娘に会いたい。

 再び……家族で食事を……。

 そうだ。約束を守れなかった、三人で誕生日を祝うと言ったのに……。

 走馬灯のように昔の思い出が駆け抜け、私は一人涙を流す。


「……ごめんなぁ……三人で……誕生日を祝うって……いったのに」

 泣きながら、未練が、後悔が口に出る。

 だが、私の命の灯火はすでにつき掛け、声も出せなくなっていった。


(ああ。もう一度……家族で……誕生日会をしたかったな……)

 そう思いながら、家族の顔を思い浮かべ、そして、私は生涯に幕を降ろした。






 降ろしたはずだった。



『お前の願いは俺が聞き届けた。家族との再会の場、俺が創ってやる』


 何処からか声が聞こえ……しかし、私の意識はそのまま闇に飲まれていった。





 ◇◆◇


 俺はこのダンジョンに来て、一人の男の魂を回収した。

 本来であれば、死者といえど、過去の世界で魂を回収することなど出来ない。

 だが、この男はこの世界に()()()()()になっている。


 存在を喰われるということは、本当に居ないことになるのだ。

 制約にも引っかからず。回収はスムーズに行われ、死ぬのを待ったため。歴史変更などのパラドックスも起きない。

 後は現代に戻り、再製をするだけだ。

 母親の方は問題はないだろう。世界書の情報に、亡骸を直接目にしたことで得た正確な肉体・魂のデータもある。

 だが、父親はそうはいかない。魂ごと回収したので記憶も含め、再製はできるだろう。だが、喰われた存在は戻らない。

 再会しても、ミアは父親のことを認識できないだろうし、魂の損傷が激しいため、修復しても一週間ほどの命だろう。


 認識されないのは面白くない。

 せめて最後だけであっても、幸せに終わりを迎えてほしい。

「なんとかしてみるか・・・」

 そう思いながら、プランを考える。

 人に名前が認識できないのは存在を喰われたからだ。

 だが、世界書には記載されている。

 だからこそ、俺はこの男を認識できるのだ。

 では如何するか?


 父親が皆に認識されるようにはできない。

 ならば、ミアと母親が認識できるようになればいい。

 逆の発想だ。


 母親の方は俺が一から再製するのだ。その際に弄ればいい。

 問題はミアのほうか……


 俺はそう考えながらも、一つの答えにたどりついている。

 ソレはミアが支払うべき対価のことでもあり、この数日感じていた、冒険者としての弱さでもある。


 そして、何よりも俺が楽しめるかどうかだ。

 俺が欲しているものでないと、対価にはならないのだ。


 ミアへの処遇も含め、プランを定めた俺は一路、現代へと舞い戻るのだった。

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