神の試練④
爆発により、周囲が瓦礫と化している中。俺は爆心地を見ていた。
この粉塵爆発、一回限りで使い捨ての仕掛けである。
本当は、ノームをひっそりと配置し、その力で粉塵にしょうかとも思ったのだが、今回はヴァーユの力で直接粉砕した形である。
こういった爆発系のトラップもいろいろ作ってみたいのだが、神魔には単純な物理攻撃は“一切”効かない。
ゆえに、フェリアスにはこの粉塵爆発も当然のことながら、目くらまし程度しか効いていないだろう。
フェリアスが難敵な理由は詰まるところその『対神性』である。
たとえば、全身に魔力を纏って居るだけで、神格が高ければ高いほど、攻撃が通らなくなり、さらに、こちらの守りを紙のように切裂いてくるのだ。
故に、アイツと相対するならば、非神格の攻撃でないと効果がでないのだ。
そして、この粉塵爆発の意図は別のところにある。
フェリアスは無事だろうが……果たして、あの新顔はどうだろう?
俺は新顔をフェリアスに新顔を庇わせ。距離を取らせるつもりなのだ。
その間に別の精霊を召喚し……と考えていたのだが、まだ炎と煙の立ちこめる爆心地より、人影が飛び出してきた!
俺は思考を高速化させ、状況を把握する。
この高速思考は分析思考には便利だが、体とのギャップが酷すぎるのが難点だ。
やはりというべきか、傷1つない状態で、フェリアスがこちらへ迫る。
全身に紫の魔力を宿し、短剣を構え、神速にて攻撃を繰り出そうとしているのだ。
(なに? 新顔を見捨てた?)
そう思い、周囲を即座に索敵する。
得られた情報は驚愕をもたらした。
新顔が居ない?? だが、死亡して権利消失したわけではない……ではどこに?
と、一つの可能性を思い浮かぶ。
「ええいっ! そういえば、アイツもお節介焼きだったっ!」
俺は高速思考を解除し、フェリアスの攻撃に備えながらも、この試練を観戦しているはずの神物を思い浮かべ、悪態をついた。
私は衝撃とともに吹き飛ばされ……此処で死ぬのか、と思った中、気がつけば先ほどとは違う場所で倒れていた。
そこは小さな庭園のような場所で、土の地面に芝生が生えている。
と、直ぐ脇にテーブルとイスがあり、一人の女性がお茶を飲んでいた。
年齢は20前といった感じで、金髪の細身の美しい人であった。
「気がつきましたね。差し出がましいとは思いましたが、貴方をここへ運びました。暫く、こちらで見物していてください」
そういうと、対面のイスへ手を差し出し、座るよう促がされた。
私は困惑しつつも、促がされるままイスへ座る。
と、目の前にお茶とお菓子が出された。
私は今どういう状況なのだろうか?さっきまで試練を受けていたのに、私は死んでここに来たのか?
急速に移り行く状況に混乱しつつ、まず、目の前の人は誰かと聞いてみた。
「あの、貴方はいったい……」
その言葉を聞いて、目の前の女性は少し眉をよせ、
「名を尋ねるときは先ずは自分から名乗りなさい。それが礼儀ですよ」
そう指摘してきた。
状況の把握もできず、追いつこうとするだけでいっぱいいっぱいな私はその言葉に即座に
「は、はい! ミアといいます」
姿勢を正し、そう名乗ったのだが、
「神を前にして名乗るときは正式に名乗りなさい」
さらに眉を潜め指摘してきた
っ!この人! 神っていったよ!!!!
本当に状況がわからなくなり、体が緊張でガチガチに緊張するなか、言われるがままにフルネームで名乗る。
「ミ、ミア・バレインシュと言います!」
「よろしい。先ほど、試練の間に入ったときもそうですが、神に自分の名を名乗らせておいて、自身は名乗らないなどと、無礼にもほどがあります。以降気をつけておいてください」
淡々と注意点を述べてくる。
わ、私はどうなるんだろうっ
混乱が極限に達しっそうになったとき、目の前の女神が
「私はこの迷宮の補佐をしています。戦乙女のラヒルデといいます。状況を把握できていないでしょうが、一つだけ、貴方はまだ失格になったわけではありません。そこは安心してください」
そう名乗り、私の試練はまだ続いているのだと説明する。
何でも、あの空間に留まったままだと、二時間も立たずに死んでしまうから、此処に一時避難をさせたのだそうだ。
女神、ラヒルデさんがそう説明してくれた。
「そもそも、あの駄犬がじゃれ付いて遊んでいるからこうなるのです。自身は基本的にはイレギュラーだという事を自覚していない……」
おそらく、フェリアスさんに対しての愚痴なのだろう。
何の事をいっているのかは解からないけれども。
と、その気配を察して、ラヒルデさんが
「先ほどの試練は貴方に対して発動したもので、本当ならただ出てくる敵から逃げるだけでよかったのです。ただ、あの場には駄犬が一緒にいたため……」
つまり、本当なら順当にいけばクリア出来ただろう試練だが、神とフェリアスさんの戦いが始まってしまい、その結果、余波であっさり死にそうになったということらしい。
それは神側にとって不本意なことらしく、急遽非難をさせたそうだ。
「もっとも、ネク神は広範囲攻撃をしかけ、駄犬が貴方を守りにいった隙をついて手駒の強化などを図りたかったようですが」
どうやら……私込みで攻撃をしかけていたようだ。
しかし、ラヒルデさんの愚痴は続き
「このままでは死んでしまうとはいえ、これでは私があの駄犬を助けたようではないですか!? まったくあの脳筋のアホ犬は……。どうせネク神と遊んでもらえると思って尻尾を振って挑んで行ったんでしょう。完全に自分が連れてきた人間のことなんて忘れてしまってます。そんなだから、他の神魔の機密をポロポロ行く先々で漏らしているんです。歩く情報漏洩です。なんだってネク様はあんな馬鹿犬を可愛がってるのか。そんなことをする暇があったらもう少し迷宮の管理とか、会議とか、話し合いとかをすればいいのに。そうすればふたりでお茶とお菓子を愉しみながらお話ができるのに……」
どうも自分の世界に入ってしまったのか、ブツブツ言い出してしまった。
最後の方は聞き取れなかったが、どうやらフェリアスさんとは喧嘩友達のようだ。
私は何気なしに空を見上げると、そこのは試練の間での戦闘が映っていた。
その映像の中で、フェリアスさんが全身から紫の魔力を吹きだし、高速で動き回っている。
ただ、消えたと思うと、相手の後方に回り込んでいたりするため。その動きは魔力の残像でしか捕らえられない。
その戦闘の映像に釘付けになっていると
「あの駄犬……完全に本気になってしまってますね。これが相手では並の神族は手も足も出ないでしょう」
自分の世界から戻ってきたのか、呆れを込めたため息をつき、そう分析するラヒルデさん。
ということは。このままフェリアスさんが勝つのか?
私がそう期待を浮かべると、ラヒルデさんがこちらへ目を向け、
「期待してそうなところ悪いですが。駄犬では絶対にネク神に勝てませんよ」
あっさりと私の期待を砕く言葉をくちにする。
「身体能力は圧倒的なまでに駄犬が上、究極位の対神権能を持つ以上、攻撃の殆どを無効化される。それでも、勝つことは出来ないでしょう」
断言しながらさらに続ける
「あそこまで本気で権能を機動している以上。ネク様も権能を使われることでしょう」
その言葉を聞いたわけではないはずだが、映像の中で猛攻を続けていたフェリアスさんが急に動きを止め、その場に倒れてしまった。
私はその光景を目にし、驚きで言葉が出ない。
しかし、ラヒルデさんは当然といわんばかりの顔で
「ほら、やっぱりこうなった」
とつぶやくのだった。
◇◆◇
新顔がこの周囲に居ないことを確認した俺は目の前にフェリアスにのみ集中する。
完全にスイッチが入ってしまったのか、目の色を真紅に光らせ、全身から魔力を噴出しながら突っ込んでくる。
そこからは俺は完全に防戦である。
攻撃を掠れば大ダメージ、直接攻撃は魔力と権能に阻まれ、精霊の攻撃は火力不足で防御障壁を突破できない。
このままだと捌ききれなくなった時に俺の負けが決まってしまう。
が、俺はそれ以上に完全に調子に乗ってはしゃぎ回るフェリアスに少し苛立っていた。
遊ぼう遊ぼう遊ぼう! そういってじゃれ付いて来る大型犬みたいな存在を止めるため、動く。
地味だがこれは効果が抜群だろう。
俺はそう思い、俺は権能を使用する。
「おまえ、少し落ち着け! ステイ!」
フェリアスの対神は攻撃をカットするものであって、それ以外なら通るのだ。
故に、俺のこの権能は防ぐことができない!
【状態付与:疲労・虚脱、睡魔】
発動と同時に効果を示し、フェリアスは電池の切れたおもちゃのようにその場に崩れ落ちて行った。




