神の試練①
ダンジョンで死にゆく新顔の冒険者たちを蘇生しながら、俺は考えた。
これはダンジョンの難易度が高いのか?
それとも、冒険者たちの技量が低いのか?
まだ部屋を3つしか進んでいなく、開始直後の全滅である。
普段は神魔を相手取るため、加減をする必要が無く、戦闘系の権能をもっている連中に関しては容赦なく正面突破をしてくる。
ちなみに。彼らは最下層の門に到達すればクリア扱いとなるため、修練の門を通ることは無い。
一応、安全装置としての蘇生と、攻略ルートの設定などで攻略不可能な自体を回避しようとしていた。
今回、初めて人族たちがダンジョン攻略に来たため、モデルタイプとしてこちらで観測・解析をしていた。
すると、新たに複数の問題が浮き彫りになったのだ。
まず、魂へのダメージである。
今回はエルフ族の少女が参戦していたために判明した問題である。
修復も出来るのだが、あくまで直せるのは魂の器部分のみであり、その中身、いわば霊体エネルギーというもので、それの補填までは出来ない。
今回の場合は、精神的に未熟なためか、死亡時の魂の器の損傷が大きく、多くの中身が失ってしまった。
二回目に蘇生をしたときには魂の中身はすでに半分近くまで減ってしまっていた。
あと1度程度なら何とかなるかもしれないが、四度目になると間違いなく、その魂は力を失い、廃人になってしまうだろう。
これは俺も本意ではないため、この点は挑戦自体を弾くなど対応を考えるべきだろう。
次に、冒険者の技量である。
よもやアーツを使えないとは思ってもみなかった。
一応フェリアスが指導をしているようで、新顔の一人がプチファフニールに打撃を打ちこむことに成功していた。
まぁ……アレは装甲が硬すぎる上、スキルとして『衝撃反射』『超硬装甲』などなど防御に特化したスキルを保有いしているので、殴ったその腕の損傷がひどかった。
それでも死の間際に使った火事場のなんとやらであろう。
使えるならはじめから【瞬動術】や【クイックムーブ】といった移動系のアーツで切り抜けれるはずだ。
とするならば、使えない、ないし、使い方を知らない、と見るべきだろう。
なんにしろ、そんな技量の冒険者をこのダンジョンに来させていることが問題なのだろうか?
ミネルバが何を考えて新顔たちをここに導いたのか……。
あのエルフの子供。ネーネと言ったか。死んだ際の蘇生時、生と死のはざま、魂の領域というべきか、そこの一時とどまるのだが、恐怖のためかなかなか現実世界に戻ろうとしなかった。
そのため、だいぶ話をして宥めていたため、彼女の事情は把握できた。
この迷宮を製造する際に召喚したドリアードがかつて住んでいたエルフの里、そこに住んでいた精霊の友であるようだ。
求めているものが精霊との再会であるため、あえて危険を冒してまで最深部、修練の門まで来させる必要はないだろう。
そこはフェリアスに連絡をしておこう。あの子はこれ以上死なせるわけにはいかないからな。
フェリアスと連絡を取り、その旨を伝えておいた。
「……と、まぁそういうわけだ。あのネーネというエルフはこれ以上死なせるのは得策ではないな」
俺は昨日同様、新顔たちの食事を作っていた。
挑みに来たダンジョンの主に食事の世話を受ける冒険者……ホントにどういうことだ?
フェリアス曰く、食料もほとんど残っておらず、また、料理を作れる者も居らず(極簡単なものなら作れる者はいるそうだが)、俺はいつも通り、料理を作ることとなる。
「そうですか……昨日も体調を崩していましたし。ということは、四度目は無いと見て、次の挑戦をラストと考えておいたほうが良さそうですね」
イスに座り、お茶を飲みながらそう頷く。
ホントに俺の周りには女子力の低いやつらばかりだ……コイツも料理は一切できない。
そのことに嘆息しながら、まぁ諦めているが。フェリアスに一応の確認をしておく。
「最悪、お前がヘルプに入れ、俺も今回が人族最初の挑戦者になるからな。トライアルと見なして検証をしておきたい」
そう言うと、フェリアスの参戦を許可する。
「善いのですか? 私が参戦すると深部までは確実に届きますよ?」
「ああ、構わない。ただ、深部の仕様上三人には確実の脱落するだろう? ここの来たときに一人はクリアする必要があるって言っていたから、それとネーネの二人は第一門を超えて来させるようにしておけよ」
あまり口を出すのも問題なのだが。今回はクリアさせることを前提に考えよう。
と、フェリアスが、
「そうなると……私も修練の門をくぐることになるますが……それも構わないと?」
フェリアスがニヤリと笑いながら聞いてくる。
そうだな。長い付き合いだが、フェリアスと手合わせしたこともない。
お互い切り札が似たようなもの同士だ、使うわけにはいかんので、それを封じて戦うとなるが、多少面白そうだ。
ただ、問題は達成時の願いであり……。
「……まぁ、ソレはその時考えよう。まず、最低限は進めるようにはしてやってくれ」
「解かりました。それはなんとか考えておきます」
そう言うと、今後の対策を終わらせ、俺は新顔達が深部へ到達するのをひたすら待つことにしたのだ。
「っというのが現在の状況だな。解かったか?」
俺は今、修練の門の先、俺の支配空間というべきものか、そこに座ってお茶と菓子を愉しんでいる。
今日はアップルティーとシュークリームである。
対面にはいつも通り、お菓子の匂いに釣られてきたのか、暇なのか、ラヒルデの姿が見える。
一応、秘匿されてはいるが、俺の補佐扱いになっているため、冒険者が来る旨は伝えていた。
ちゃんとした試練なので俺も正装に着替えている。
神獣の皮で作られたローブで、裾は長くジャケットのように羽織って着るタイプである。特徴として、裾は右の方が長く。左腕の袖は無い。
俺がアンシンメトリーが好きなのと、能力使用時に袖があると邪魔なので左袖だけ無くしている。
ローブの縁にはもふもふのファーがついており、毛並みは最高である。
ローブの下にこれも神獣の皮で作られたレザーアーマーを着用し、左腕にだけ同素材のガントレットをつけている。
ズボンも皮製、厚手のブーツも皮製である。これらの素材は俺が作成し、製造系の神に依頼した一品で俺のお気に入りだ。
「冒険者が主というよりも、駄犬がメインで攻略している気がしますね。ここの構成を考えると、あまりにも相性が悪い。これではアイツの進行を止められないですね」
ホントに仲が悪い。
無理と思いつつ、なんとかヤラレテくれないかと考えているようだ。
「まぁ仕方ない。アイツの本質は対神戦だからな。それでもあくまで進ませることが目的で、神獣戦では出ないようだ」
俺たちはルイミウォルテの精霊樹の根を使ったネットワークで冒険者たちを観戦している。
当初の予定通り、三つの神獣戦は新顔たちに行かせ、他のメンバーを最深部に案内するようだ
「駄犬も手を抜きすぎですね。冒険者も、もう少し鍛えれば何とかなったでしょうに」
彼らの戦い方を見てそういった。
俺も助言を出したが、戦い方が悪い。ホントに……鍛えれば面白そうなんだがな。
そんな事を思いながら、紅茶に手を伸ばす。
と、ラヒルデが
「それはそうと、ネク神。初めて冒険者を出迎えるんですから、ソレっぽくしてください。一応格好も大切ですので」
俺は馴染みの神魔しか相手にしてこなかったので、そういうのをやったことが無い……
「む。そうか……まぁ、見ていてくれ」
そろそろ到着の頃だろう。
そう言うと、俺は席を立ち、修練の門の前に歩いていく。
流石に少し真面目にやろう。
そう思い、真剣な顔をする。
俺は低く、クククッと哂いながら
「久しぶりの来客だな……それも二人も、珍しい」
そうだな、ホントに珍しい。口うるさい戦乙女と獣耳魔族、人の不幸を本気で笑う古神ども……そんなんばっかだった。
その事を考えると自然と苦笑がでてきた。そうだ、一柱はいつものメンバーだ……。
「一人はいつものアイツか。しかし、もう一人は新顔だな」
つまり、この新顔が俺の試練を受ける必要がある人物なのだろう。
わざわざ俺の試練を受けるほどの願いだ。
しかも、ここの情報を教えたのがミネルバときた。
絶対面倒なことだ。ミネルバが俺を教えたということは俺にし《・》か出来無い事なのだろう。
しかも何か思うことが有ったのか。攻略させるためにフェリアスを同行させるほどにだ。
ここに来てから十余年、神にとってはつい先日だが、今までと違うこと、違うメンバーというのはそれだけで刺激的だ。
「同じ顔ばかりではつまらないからな。アイツがわざわざ同行するくらいだ、期待しておこう。」
そうつぶやき、俺はわくわくした思いで扉の前まで歩き出した。
そのまましばし待っていると、いよいよ扉が空こうとしている。
扉の隙間から、挑戦者たる少女の姿が見える。
さぁ、はじめようじゃないか!
俺は声を上げた。
「ようこそ! オレの迷宮へ!!」
ようやくのネクのターンです。
この回でようやく冒頭の邂逅シーンまで到達しました。




