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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
1‐2人の長いプロローグ
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旅は道連れ④

記載漏れがありましたので追加しました

「神を倒せなんてぇ。そんなのムリじゃないですかぁ~!?」


 先ほどまで、黙っていたネーネが声を上げた。

 私たち人族と違い、エルフ族は神に近いとされる種族だ。

 精霊とも交信が盛んに行われている種族なので神族について私たちよりも詳しいのだろう。

 その表情には悲壮さがにじみ出ている。


「まぁ、あくまでも挑むことも出来るって話だよ。本来ならば身の丈にあった願いを口にするべきなんだしね」


 フェリアスさんは苦笑しながらネーネに語りかけた。


 ()()()()心配してくれただろう、ネーネの頭をなで、落ち着かせた。


 不可能な試練という、その重苦しい空気の中

「しかし、いいのですか? 今の話は私たちに『口にしてはいけない』のでないですか??」


 レクスが冷静にフェリアスさんに訊ねた。

 私たちの推測が正しければ、神魔のダンジョンの情報を口にするのは本来タブーのはずだ。


 フェリアスさんは「まいったな」と苦笑しながら

「やっぱり気がついた?」


 と、ばつが悪そうに答えた。


「それは気がつきます。クラスやレベルが『認識不可』と表示される存在なんて私は1つしか聞いたことがありません」

 カウスはそういうと、姿勢を正し、敬意を込めてこういった


「推測ではありますが、貴方様は「魔獣聖母」に連なる魔族の、『遠征者』ではないでしょうか?」



 『遠征者』とは、神族や魔族の中で、他の派閥のダンジョンに冒険者として乗り込み、そこをクリアすることを目的とした存在と聞く。

 そのスタイルは様々で、人と同じ性能の仮想体(アバター)を使う者もいれば、権能を使って突破するものもいるそうだ。

 私たちは噂でしか聞いたことが無い存在で、遭遇することがあるとも思っても見なかった。

 その噂、伝説とも言っていい存在にあえるとは……。


「やっぱりタイミングが良すぎたか」

 フェリアスさんは笑いながらそう言い


「ミネルバに頼まれてね。あの子も、教えたはいいけども、どうなるか心配だったのさ。それに行く場所がね、あそこにはミネルバも私も縁があるのさ」

 ただ、これ以上は教えてはくれず、その日の話は終わったのだった。




 翌日、出発とともにフェリアスさんが

「さて、昨日は話が脱線してしまったけど、スキルの話だね」


 と、昨日脱線してしまったスキルの講義を再開してくれた。

 前日と同様、馬に乗るフェリアスさんが馬車にいる私たちに講義する形だ。


「EXスキルの話だったか。昨日も言ったように、これはダンジョンでのクリア報酬で付与されるもので、何が与えられるかはそこの迷宮主次第だね」

 フェリアスさんは昨日のおさらいを兼ねて説明をしてくれる。

「このスキルはほとんどがパッシブスキルでね、自身の身体能力や武器や防具に付与効果を与えるものなど様々あるんだよ、効果は迷宮主の格が高いほど性能がいいものが多いんだよ」


 私たちもEXスキルを獲得したことがあるので性能の高さは理解しているつもりである。

 私たちのタフネスやネーネの魔力回収などは効果がわかりやすいスキルではあるが、

 レクスの「不破の鎧」、カウスの「立体駆動」、ベオの「無尽蔵」など高性能なスキルなどもあり、私も目指しているものである。




「まぁ、昨日の補足もこめてこのくらい知っていればいいだろう、次はアーツだね」


 いよいよ、本来の目的のアーツについての話となった


「まず基本から。アーツは本来魔力を用いて発現する技術のことを指し、広義の意味で言えば、魔術もアーツに含まれる。ここまでは理解できてるね?」


 そこは理解をしているので一同うなずく。

 それを確認してフェリアスさんが


「なのでアーツを取得するために大事なことは、魔力の使い方を知ること。一番簡単な方法は初級でもいい、魔術を覚えることだ」

「魔術……ですかぁ?」


 以外だったのか、ネーネから声が上がる。


「ああ、そうだ、魔力の流れがわかるから、関係の無いように見えて判りやすい。実際にやってみよう。ネーネちゃん、少しいいかい?」


 そういうと、フェリアスさんはネーネを呼び、馬から降りて練習しやすいよう、移動を開始した。

 私たちは一旦馬車をとめ、フェリアスさんとネーネを見た。

 2人は少し離れたところで向かいあっている。


「いいかい? アーツの基本の一つに【魔装術】というものがある。これは本来、武器などに魔力を込めて威力を上げたり、盾や鎧の込め防御力をあげる技だ。

 しかし、魔力の量が少ないと効果は出ず、逆に多すぎると、よほど高位の装備品でもないかぎり、その魔力に耐え切れず、自壊してしまう。

 ではどうするか、武器の『中』に込めるのでなく、外に纏わせるんだよ。もちろん、中にも魔力を込めれるならそれに越したことは無い」


 と、私たちが知らないアーツの習得法を教えてくれた。

フェリアスさんが持っている短剣の周りに紫の燐光が纏い輝いている。


「剣でいえば、その周囲に魔力の膜をつくるようなイメージで。この操作は魔術で使う魔力操作に似ているから魔術を使えるのなら習得は問題ないはずだよ」


 そう言うとネーネに短剣を一本渡し、実際にやらせてみせる。


 ネーネは受け取ると短剣を両手で持ち、眼前に構えると、集中のためか目を閉じた。


「イメージするのは魔術になる前の魔力だ、その魔力をその短剣を中心に集めるんだ」


 その言葉を受けてか、ネーネの持つ短剣に肉眼で見える魔力が集まっていく。その色はネーネの髪と同じできれいなエメラルドグリーンをしていた。

 フェリアスさんによると、魔力は個人で色が異なり、得意とする属性もあるそうだ。


 そうしている間に、いびつながら、魔力が短剣を覆い尽くした。

「魔力を均等に薄く延ばす感覚で剣に纏わせることができると、第一段階の完成だよ」


 少しずつ、少しずつ、均等に短剣を魔力が覆っていく。

 こうして、私たちの中でネーネが一番最初に「魔装術」を習得したのだった。



「流石に魔術士だけあって魔力の扱いに長けてるね。ネーネちゃんの課題は今後、その状態を瞬時にできるようにすること、そして出力の調整だね」


 実践では敵はまってはくれない。この魔力操作を瞬時にできるようにならないといけないのだ。

今 後、この状態で魔力を属性変換すると炎の魔剣や風の魔剣が出来る様になるというそうだ。


「他の皆は自分がよく使う武器に同じ事が出来る様にならないといけない。でもその為には簡単な魔術を取得して魔力操作を覚えるんだ」

 アーツはさらにスキルと重ねることでより大きな効果を得ることが出来、さらに慣れてくるとオリジナルの組み合わせで奥義を作るのだという。





 魔術と剣とスキルの組み合わせによる奥義、冒険者として惹かれるものがあるが、私たちは先ず、魔術の習得がから始めるひつようがあり、

 迷宮に着くまでの間。ネーネに初級魔術の講義を受け、移動の半月間をかけ、なんとか武器に魔力を込められるまでにはアーツを修めることができた。




 そして、迷宮都市を出発して十九日目。私たちはその迷宮が見える距離まで到達していた。



「なんて大きな樹なんっすか……」



 ベオが遠くに見える巨大な樹を見て感嘆する。

 まだ数キロは離れているが、見晴らしのいい丘を通ってきたため、それが良くわかる。

 高さは数百メートルはあるだろう大樹がそこには存在していた。

 周囲には森が存在しているのだが、大きさが違いすぎた


「みえてきただろ? あれが精霊の迷宮都市『ルイミウォルテ』さ」


 近づくにつれ、ベオとネーネが周囲を見回す。


「ここの空気は何か……落ちつくっす……なんでっすかね?」

「それに、精霊が多いですょ~!精霊があんなにたくさんいるなんてぇ!」


 ベオはこの森の空気というか、雰囲気がえらく気に入ったようで、

 私は見えないが、ネーネも精霊の迷宮と呼ばれるだけのことはあり、ここの精霊の多さに興奮気味である。


「この森の奥に精霊が住む都市部があるんだが。ここに来ただけでは入れないんだ。」


 そう言いながら奥へと進んでいく。

 私たちも追いかけるようについて行くと、そこに坑道なのだろうか、5m四方の大きな入口があった。

 しかし、その入口は樹の蔦や根が壁のように塞いでおり、人が入る隙間は無さそうに見えた。


「この先が迷宮部になる。ここに一度挑戦することが都市部に入るための条件なんだよ。そのため、皆には先ず、この迷宮に挑戦してもらう」

 フェリアスさんはそう言うと迷宮の入口を指した。

 内容もわからない、しかも超高難易度であろう迷宮に初見で挑めと言う。私たちの不安を代弁し、レクスが、


「このダンジョンについて教えて頂きたいのですが、中はどうなっているのですか?」


 そう質問するが、フェリアスさんは


「何度も言ったように、一度このダンジョンに挑まないと詳細は教えられないんだ」


 私たちは始めてのダンジョンで前情報もないため、強い不安を感じていた。

 基礎ながらアーツを身に着けようとも、スキルを身に着けようとも、圧倒的な差を感じてやまないのだった。


そ の不安を軽くするためか

「大丈夫、大事にはならないよ。そこは間違いなく保障できる」


 その言葉に私たちは腹を決め、ダンジョンに挑む用意を始めた。

 用意が出来終わると、フェリアスさんが、


「これから挑むよ、空けてくれ!」


 そうダンジョンに向かって声を掛けた。

 すると、入口を塞いでいた植物が動いて私たちが入れる入口を作ったのだ。


「さぁ、行っておいで。待ってるから」


 そう言うフェリアスさんに見送られ、私たちはダンジョンの奥に進んでいくのだった。










 ◇◆◇



 フェリアスは()()()()()()迷宮を見ながら口を開いた。



「さて、どれだけ早くに出てくるか……」

「今回は新顔だな、お前の眼に適うのがいたのか?」

「いえ、私ではありません。彼らは()()()()が見つけたんですよ」

「……なに?」

「しかも五人のうち三人はここに来る理由があって、さらにうち一人はこのダンジョンをクリアするだけの理由があります」

「……ほう?」

「しかも彼女はミネルバのお気にいりですよ」

「それは……めずらしいな」

「そのミネルバから伝言があります。『()()()()』だそうです」

「そうか、元気そうでなによりだ」

「そう思うなら、会えばいいじゃないですか」

「簡単に言ってくれる……」



「奥でまっているぞ」





 そこに居るのはフェリアス一人、その会話は風にのって消えていった。




ようやく……次回から本来の1章のテーマとなる話にいけます

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