旅は道連れ③
・ミアがフェリアスの素性を考察するシーンを追加しました。
・フェリアスが自身の話が脱線したことに気が付いた描写を追加しました。
おそらくは長いあいだ放置された遺跡のようだった。
昔は転移門を中心に街が出来、そこから栄えていたのだろう。
しかし、今では建物は崩れ、草木が多い茂っている。
一つの都市が朽ち、森に変わるまでの時間、放置されたのだろう。
転移門の装置自体には何らかの力があるのだろうか、床の石畳と周囲の柱は多少の苔こそ生えているものの。他の建物と違い、
朽ちてはおらず、来る前に見た転移門と同じ姿を保っていた。
私たちは目的のダンジョンに行くべく、その遺跡を出発した。
この遺跡から方角で言うと東に目的の迷宮都市があるそうだ。
ただ、街道というものは無く、そのまま行けば草の生い茂った草原を走らないといけないという。
「まぁ、皆も想像しているだろうけど、ここから先は長い年月まともに人の手が入っていない土地だ。草原地帯を抜けるのは馬でなら問題ないんだが、馬車を使うとなると車輪に草が絡まってすすまないだろうね」
とフェリアスさんが教えてくれた。
そのため、南に迂回すれば、少し荒れているが地面が硬く、馬車でも走れる、丘があるそうなのでそちらを目指すことにした。
「まぁここからは半月もかかるんだ、気を張ってても仕方ない」
レクスはそう言い御者台で体を伸ばした。
確かに、そうだろう。私もはやる気持ちを抑え、体を休めた。
馬車を走らせていると、カウスがフェリアスさんに話しかけた。
「フェリアスさん、少しお伺いしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「なんだい?」
「我々は先々のことも考え、アーツ取得の必要性を感じています。よろしければご教授願えませんか?」
確かにアーツの取得は必要だとおもう。
レクスの奥さんに取得の相談に行こうと提案したが、レクス・カウスとともに悲壮感漂うほどの拒絶をされてしまった。
「アーツか、確かに必要だけど、あんた達の場合は悪いけど、それ以前の問題があるんだよ?」
と、フェリアスさんが言ってきた。
「冒険者がアーツを取得しただけで、簡単に強くなるわけではないんだ、あんた達。クラスとかスキルって本当に理解しているかい?」
そして私たちが驚愕に包まれる話をしてきた。
「そもそも。クラスのレベルが上がれば強くなっているって勘違いをしてないかい?」
「まずは、そこからか」
私たちが皆驚き、口をあけている様を見てそういった。
「結論から先に言うと、クラスレベルが上がっても身体能力は上がらない。これがクラスの大前提の話なんだよ」
フェリアスさんの話はこうだ。
クラスのレベルとはあくまでもその職業の修練度を示すもので、身体能力をブーストする効果は無いという。
クラスレベル自体は敵を倒すのではなく、そのクラスにふさわしい行動をとった場合に経験値がたまるようになっている。
「だってそうだろ?そんなレベルで身体能力があがるなら、製造系のクラスを与えられている高レベルの生産者がダンジョンに行けば、強いことになる」
確かにそうだろう。実際に高Lvの製造職専門の人がダンジョンで活躍している話も聞かない。
高位冒険者に製造も出来る人が要るそうだが、普通はそうだろう。
それでは、言われている安全マージンや実際に感じる能力の上昇は何だろうか。
「安全マージンって言われているものこそが、誤解を招く原因なんだ。たとえば、知恵の迷宮の安全マージンは三十って言われているけど、これは間違いで、たとえレベルが一であっても、必要最低限のアーツとスキルを持って、十分な戦闘技量があれば攻略できる。安全マージンとは、あくまでも技量習熟目安として使えばいいよ。」
私たちは今まで聞いたことも無い情報に黙って聞き入っている。
「あと、感じる能力上昇だが、それはスキルのせいだ。スキルにある補正等により戦闘時などスイッチが入り、動きがよくなるんだ。補正スキルとかはクラスレベルによって効果があがるから、その分強くなったったと感じるだけだね」
そう教えてくれた。
クラススキルがレベルアップで効果が上昇するなら、レベル上昇にも大いに意味があるのではないか?
そう思ったのだが、フェリアスさんがソレを否定する。
「補正っていっても絶大なものじゃない、自分で感じているよりもかなり効果が低いんだよ。でも自身ではレベルって数字の上昇と、補正スキルの効果により、大幅に強化されたと誤解してしまうんだ」
私たちはその言葉を聞いて驚きとともに、
自分たちが認識していた冒険者の法則が音をたて崩れていくのを感じた。
戦ってレベルを上げればいい、と。そう思い、それが当たり前だとすごしてきたが、このフェリアスさんは違うというのだ。
「本来鍛えるというのなら、ソレこそ実践経験をつんでLvじゃなく、自身の技量を磨くのが一番なんだよ。その上で、アーツとスキルを習得することが大事なんだ」
と、言い。さらに。
「ただクラスのレベルを上げただけ、ただスキルを習得しただけ、ただアーツを習得しただけ。それではいつか必ずどこかで躓く、日銭を稼ぐだけでなく、本当に冒険者として生きていくなら、絶対覚えておかないといけないことだよ」
私たちにレベルというシステムの与える誤解を説明し、何が必要かを教えてくれた。確かに今までの常識とは異なる見解だが、私たちはソレが正しいと感じていた。
何故、この人の言うことが信じられるか。
それは出会ったときから解かっていたこと。
立ち居振る舞い? 知識? それもある。しかし最大のことは、普通は一目見ただけで判るものが、彼女のはわからなかったのだ。
そう、彼女のクラスとレベルは……『認識不可』と書かれていたからだ。
初めて見たけれど、そう表記されるであろう存在を、噂ではあるが私たち冒険者は知っている。
だからこそ、私より経験のあるレクスも、カウスも、彼女の言うことを信じ、ベオやネーネに至っては畏怖して会話も少なくなっている。
「さて、基本の話はここまでとして、皆はスキルとアーツに関する理解と実践経験が大きく不足している。実戦経験はそれこそ数をこなさないといけないだろう。スキルについては専門家を知っているから、私からは基礎知識だけを教えるか。その後でアーツ取得について説明しよう」
私たちに、基礎を教えてくれる気になったフェリアスさんは、馬を走らせながらスキルについての説明を始めた。
「さて、まずはスキルだ。スキル自体にも階位があり、クラスLvアップなどで覚えるスキルがコモンスキルと呼ばれる基本汎用スキルだ。これには取得しているだけで効果がある「パッシブスキル」使う意思の元に発動する「アクティブスキル」に分けられる。
ここまではいいかい?」
私たちは馬車上でうなずいた。
私たちの補正スキルや「強打」や「盾強打」などがそうだろ。
フェリアスさん曰く、これらのスキルは本来、非常に弱いスキルであり、攻撃などのアクション毎に無意識で常時発動させられるくらいまで鍛えないといけないそうだ。
アクティブスキルはそのほとんどがスタミナを消費、つまり、使用すると疲れるというものである、その疲労に耐えるだけのスタミナを培う必要があるこという。
「クラスのLvアップで覚えるものは、コモンスキルまでだ。つまり、それ以上のスキルは別の手段で習得するしかない。たとえばダンジョン報酬スキルだ。
これは通常EXスキルという分類にされ、そのほとんどがパッシブスキルだ、下位ダンジョンでもクラス習得スキル以上の効果を発揮するものがほとんどで、冒険者の身体性能強化はこれによるものが多いんだよ」
確かに、ダンジョン報酬のスキルの恩恵は大きく、下位ながら手に入れた「タフネス」にはずいぶん助けられている。
さらにフェリアスさんはEXスキルの特性について教えてくれた。
「スキルってのは簡単にいうと。世界の理の書き換えなんだよ。だから人の身で取得できるクラススキルの効果が小さく、ダンジョンなどで上位存在の神魔から貰うスキルが効果が高いんだ。さらに言うと、スキルを授けるのは魔族がほとんどでね、これは神族と魔族の性質の違いによるんだ」
これは、神族が信仰され、人に汎用のクラスとスキルを授けるのに対し、魔族は信仰をほぼされない。
そのため、生存するエネルギーをダンジョンに依存しているものが多く、
効率よく人をダンジョンに寄せるため。報酬が魅力的なのだそうだ。
それに付随した話で、魔族ダンジョンは人を集めないといけないため、道中の敵が弱く素材が美味しいがダンジョンボスは強く、
逆に神族は人を集める必要が無いため、道中の敵が強いが深部に到着すると、必ず勝てる可能性のある試練が提示されるという。
少し話がズレて来たが、私たちでは知り得ない情報が出てきた。
神族のダンジョンと魔族のダンジョンの違い……。
ここで、私を悩ませている神族の試練に関する話がでたため、聞いてみた
「神族のダンジョンの試練とその報酬についてお聞きしたいのですが」
話がスキルからダンジョンに脱線したことに気が付いたのか。
フェリアスさんは少し困った顔をして
「……魔族迷宮とちがって神族迷宮の深部では「修練の扉」というものが存在する。その先でその扉をくぐったものに合わせた難易度の試練が提示され、
それにクリアするとその難易度に見合った報酬が渡される」
と口にし、しかし、一旦間をおいて。
「ただし、その神に願いを奏上する場合は別で、その神の権能の範囲でならば叶えられる願いは叶えてくれる。
……ただし、試練の報酬を超える、身の丈に合わない願いを口にすると、その不足分を対価として要求されるんだ」
これが知りたかったんだろ?とフェリアスさんが教えてくれた。
そうか、これがミネルバの言ってた対価のことか。確かに、人を蘇らせる願いは私の身の丈にあった願いとはいえないだろう
「対価はわかりました。では、ソレを回避する手段はないのですか?」
と、この話を理解したカウスがフェリアスさんに聞いてきた。
「……あることには『有る』しかし、現実的ではないぞ」
方法があるのだ!
私はソレが聞きたく、フェリアスさんに尋ねた。
「どうすればいいのですか?」
「ああ、試練のときにクリア課題が提示だれるんだが、実は2つ提示されてね、1つは扉をくぐったもの全員にあわせた難易度。……そしてもう1つは『対象の迷宮支配者の討伐』って提示されるんだよ。
……つまり、神もしくは、その代行者、その迷宮を任せられている者を倒して力を認めさせるのさ」
その話を聞いて私たちは、その不可能な課題に息を呑むのだった。
フェリアス先生の冒険者講座~
半月の長い旅になるので説明回です。
皆が戦い方が悪いといった一因を語っています
彼女はスキルなどの専門家ではないので基礎知識だけを語っています。




