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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
1‐2人の長いプロローグ
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旅は道連れ①

 ダンジョンから帰還した私たちは酒場にいた。

 迷宮都市の酒場は今日も多くの冒険者であふれ、喧騒に満ちている。

 去り際にミナルバから言われたことも気にはなるが、食事を食べて休息を取りたかったのである。



「みんな、さっきはありがとう。皆のおかげで決断することができたよ」

 私は皆にそうお礼を言った。

 実際、あのときレクスが言い出してくれなかったら私は答えることができたかどうか判らないのだ。


「いや、おれはこのパーティーの皆は家族も同然だと考えているから」

 私が改まってお礼を言うとレクスは照れてそう口にする。


「そうだな。ここの家族の方が平和でいいからな」

 しみじみとカウスが言うとレクスが落ち込んでしまった。


 先ほどのミネルバに言ったことはどうやら本気だったようだ。



「人事みたいにいってるなよ、カウス。お前も何とかしたいだろう!?」

「もう姉さんから解放されてるから、そこはレクスに任せてるよ。……頑張って、義兄さん」


 レクスの恐妻と噂の女性、実はカウスのお姉さんだそうで、

 昔はカウスにとっての恐怖の対象だったそうだ。

 会った事は無いが、元冒険者でレクスよりも強いのだそうだ。


「いや、ムリだ。婚約前のあの立ち合いで俺の心は既に折れている。無事だったから良かったものを……。普通、下位冒険者にアーツ使ってまで攻撃してこないぞ。 しかもあの時の嬉々としたあの顔。俺はこの人と結婚するんだろうが、一生尻に敷かれ、頭が上がらないんだと思ったぞ」


 そこまで恐れているのか、まくし立てるレクス。

 私は一度会ってみたいとも思うのだが。


「おれには結構優しいっすよ? ……逆らったらマズイオーラはあるっすけど」

 とベオ。獣人のあのモフモフした耳とかが好きらしく、

 ベオのはやさしいとのこと。

 私も獣耳をたまに触らせてもらうけど、

 内側の毛などは柔らかくさわり心地がいい。

 ベオ曰く、自分よりも兎型や羊型などのほうが毛が柔らかいそうだ……。

 いつかモフモフさせてもらおう。


 まぁ、さておき、レクスやカウスは嫌がるかもだけど、

 一度会うのは悪くないとおもう。

 なにより、アーツの使い手ともなれば、その価値は大いにあるとおもう。


 アーツとはレベルアップなどで手に入るスキルとは違う。

 流派などで違うようだが、魔力を使い発動する技だそうだ。

 ネーネの魔術も魔力を使う点でアーツと同じ扱いである。


 私たちのように武器を使うものからすれば、

 武器にに魔力を通し使用する【魔装技】であろうか。

 使える冒険者を私は見たことが無く。

 何度も見ているレクスやカウスですら使うことができない。

 これが使えるかどうかが下位冒険者と中位冒険者の差だとも言われている。


「レクス、カウス。一度アーツの手ほどきを頼んでみたらどうですか?」

 私は使い手が近くに居るのならば、

 習得のチャンスだと思いそうレクスたちに聞いてみたのだけど


「「絶対にだめだ!」」


 ものすごく顔を青くして切実な拒絶の声を上げてしまった。

 そこまで会いたくないものなのだろうか。奥さんでお姉さんなのに。


 と二人と話しているとネーネが先ほどから喋らないのに気がついた。

 ネーネは物憂げな表情で果実水を飲んでいる。どうかしたのだろうか?


「ネーネ。どうかしたの?」


 そう尋ねると


「いえぇ~、精霊様の場所がわかったにとたん、

今度は会うのがこわくなってしまって。」


 ネーネはそういいながら苦笑した。

 探していた存在がいる場所が判った。でもどう会えばいいのか。

 自分たちを必要としてないのではないか、

 だから居なくなったのではないのか、と不安になって仕方が無いのだそうだ。


 と、ネーネは話を変えるためにか

「そういえば、ミア。深部から戻る前にミネルバ様と何かお話をしてたじゃないですか~。なにを話してたんですかぁ~?」


 そう私に話しを振ってきた。





 私は、あのときの言葉を考えなければいけない。

 払うべき対価。

 そして、あのとき漏らした『神』という言葉。


 皆と居るときにミネルバが聞いてきたのは挑むことに対しての覚悟だ

 でも、去り際のあの言葉は私だけに対していったことだ。

 おそらく、人の命と等価の代償を払わないといけないと考えるべきだろう。


 皆には言えない。

 これは、私が考えなければいけない問題なのだろう。


「うん、がんばれって」

 言葉を濁しながらそう答える。

 あの魔神は私を気遣ってくれたのだろう。









「ちょっといいかい?」

 食事をしている私たちにそう言って冒険者が話しかけてきた。

 歳ごろは二十代半ばか、紫の長髪を後ろで束ねた美しい女性だった。

 身長は一メートル七十センチほどか、スレンダーな体型なのだろう。皮鎧をつけ、腰には数本の短剣をさしている。

 立ち居振る舞いは見るものを引きつける美しさがあった。


「あんたたちが秘境の迷宮に行こうって連中かい?」

 彼女は頭の()()をピクピクさせながら聞いてきた。


 何かを感じ取ったのか、レクスが席を立ち

「私がこのパーティーのリーダーを務めております。レクスといいます。失礼ながらお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」


 と彼女に声をかけた。

 

「おっと、悪いね。フェリアスというよ、よろしく頼む。ここの主から話は聞いている。ここで話すのも問題だから奥に移動しようか、ついて来な」

そう言うと

 酒場のマスターに目で合図をし、奥の個室へ進んでいった。

 こういう迷宮都市の酒場などにはVIPルームとよばれる部屋があり、高位の冒険者が機密性の高い話をするときに使うそうだ。


 私たちは席を立ち彼女の後をおって部屋へと入っていった。








「さて、改めて自己紹介といこうか。フェリアスと呼んでくれ」

 笑顔で再度自己紹介する獣耳の女性。

 フェリアスと名乗った彼女はそういうと私たちに自己紹介を振って来た。


「レクスといいます。このパーティーのリーダーをさせてもらっています」

「カウスです、斥候を主にやっています。よろしくお願いします」

「ベオっす、弓を使うっす、よろしくお願いしますっす」

「ネーネっていいますぅ~。魔術士やってますぅ~」

「ミアです、剣を少し、まだ駆け出しですがよろしくお願いします」


 全員の自己紹介が終わったあと、今後の話が始まった。


「さて、と。自己紹介が終わったところで、迷宮の話をしようか」

 彼女はそういうと私たちに視線を投げかける。

「あそこはかなり特殊な迷宮でね。覚悟が無い冒険者は本来知ることすら辞めたほうがいい」

 私たちはその言葉で少し怯んでしまった。



 わずかな逡巡をしたあと、私は彼女、フェリアスさんに顔を向けた。

 目が合う中、私は先ほど怯んでしまったことを恥じながら

「大丈夫です。それは先ほどミネルバにも言われました。私たちは皆で行く覚悟をもって彼女の話を聞きましたから」

 目を逸らさず、私はそうフェリアスさんに告げた。


 それを聞くとフェリアスさんは満足そうに。

「まぁいいだろう。細かい話は道すがら説明しよう。なにせ移動には時間がかかるからね」


 フェリアスがそういうと、ネーネが首をかしげて尋ねる。

「迷宮は遠いのですかぁ~?」

 そこ問いにフェリアスは

「この迷宮付近にある転移門をつかって移動して、

 そこから馬車で半月ってところだね」


 転移門とは主要な都市の近辺に設置された長距離移動用の転送装置だ。

 利用には門の鍵と言われるアイテムが必要らしく、

 しかも、転送先の転移門に一度いって登録しないと使えないそうだ。

 その長距離移動の転移を行ってもさらに半月……。


 その言葉に私たちは今後の長い旅を覚悟するのだった。


奥さんは相当怖い人です。、ツンドラのドSです。デレなんてありません。

立会いで「まぁ、合格」ということで結婚しました。

現在、ギルド所属しているはずのレクスとカウスが旅にでてるのは、

……家出です。

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