求める答え②
私はその覚悟について答えることが出来なかった。
家族を生き返らせたい。
ダンジョンの奇跡ならば出来る。
そう思っていた。
しかし、そこに至るまでの道のりを……リスクを……私は考えていなかった。
……いや、考えないようにしていたのだろう。
人の蘇生
ソレは人の領分を越えてしまった願い。
どのような存在がその願いを叶えてくれるのか。
もしも。上級ダンジョンに存在しているとし、そこを攻略できる存在など、一握りだけだろう。
私のような駆け出しの冒険者が、いつか必ずという夢を見るだけならいいだろう。
しかし、その夢に他人を、仲間を巻き込んで。
その果てに誰かが命を落とすことになるのなら……。
両親との懐かしい思い出が蘇る
だが、父は戻らず、母はモノ言わぬ凄惨な死をとげた。
その後育ててくれた老冒険者との生活の思い出が蘇る。
しかし、その老冒険者もダンジョンで散った。
同じような悲しみをまた受けないといけないのか?
しかし、同時に早く早くと願う私もいる。
歳を重ね、成長していくにつれ、思い出の中の自分と今の自分との乖離が大きくなる。
成長した私を見て、父は、母は、私とわからないのではないか。
両親の中の私はまだ三歳なのだ。しかし、今の私は十五歳になっている。
そして、もう一つ。
思い出の両親の顔がぼやけるのだ。
こんな顔だった、こんな顔のはずだ、自分に言い聞かせる、思い出の父の、母の顔はこうだったと。
希望と不安が入り混じり、留め止めの無い思考があるふれる。
答えがでない問答が頭の中を走り、わたしはどうすることも出来ないでいた。
私が答えも出せず、思考の堂々巡りに陥っている、そのとき。
「魔神様、それは今更ですよ。俺たちはミアを手伝おうって、ご両親を生き返らせようって決めたんですよ」
と、レクスが……そう、言ってくれた。
「俺たちはそりゃ、たいした力を持ってなんかいません。でも、リスクがあるから、難しいから、現実的でないから、なんて理由で辞めるんだったら。俺たちははじめから冒険者なんてやっていません。」
私はそのレクスの言葉を聞いて涙が出てきた。
皆がその言葉をきいてうなずき、私に笑い掛けて来てくれる。
だったら私が諦めたらいけない。
私はもう一度、家族と会うために、冒険者になったのだから!
「私も諦めません。皆を失う覚悟なんてそんなもの持てないけど、でも皆といっしょに目指していく覚悟ならあります!」
そう私は知恵の魔神に宣誓するのだった。
私のその言葉を聞き、思案顔だったミネルバが顔をあげ、微笑みながら告げる。
「いいでしょう、その言葉、確かに聞き届けました。あなた方に知識を授けます」
そう言うと
「ベオ、ネーネ、そしてミア。貴方たちが求めているものは全て同じ場所にあります。おそらくは運命を司る神が気を利かせたのでしょう」
その言葉に驚く私たち。三人の探しているものが同じ場所に有るということ、そしてミネルバの言葉によれば、私たちが出会ったのは偶然ではなく、運命の神という存在が引き起こした必然であるというのだ。
「ベオとネーネの探しているものに関しては、申し訳ありませんが、私の口からは 詳細を言うことが出来ません、ただ、そこに行けば解かると思います」
「そして、ミア。解かっていると思いますが、神の干渉があるほどの場所です、心しておいてください。あたなの願いを叶えるためにはそこの迷宮を攻略しなければなりません」
私たちに告げるミネルバ
「そこの名は『精霊の迷宮:ルイミウォルテ』そこに貴方たちの求めるモノがあります」
そこまで言ってミネルバが申し訳なさそうに。
「クリアの対価として今の情報が出せる限界です、申し訳ありませんが、残りのお二方の質問にはお答えすることができなくなりました」
自身よりも上位者の情報を提供するのはかなり制限があり、5人全員の報酬を合わせても今の情報が限度だという。
「いえ、大丈夫です。私たち二人も是非に知りたい知識があったわけではないので。なあ、カウス」
「ですね、むしろ、彼ら三人の質問に答えていただきありがとうございました」
ミネルバに対し、そう答えるレクスとカウス。
と、レクスが
「あ~、まぁ強いていうなら、うちの嫁さんをなんとかする方法があれば教えて貰いたかったくらいかな~」
と軽く冗談をとばす。
すると、それを聞いたミネルバが、あからさまに目を背けてしまった。
その光景を見てレクスが意気消沈し……カウスが肩を叩き慰めるのだった。
報酬を受け取り、部屋を後にしようとする私たち。
するとミネルバが
「ここからは私のサービスとなります、名前を教えましたが、場所はわからないのでしょう。この街にあの迷宮までの道を知っている者がいます。おそらく、あちらから接触してくると思いますので。酒場かどこかで待っていると善いでしょう」
と、にこやかにウィンクしながら教えてくれた。
そしてかなり腕の立つ冒険者であるとも告げ、頼りにするように奨められた。
「ミア、少し言っておくことがあります」
私だけをそばに呼びこう忠告した。
「あの迷宮は少し特殊なモノです、特殊性については行けば解かります。しかし、貴方の場合、問題はクリアした時です。」
そう私だけに忠告してくれた。
「神は願いを叶える代償として、等価の贄を求めます。死者の蘇生を求める貴方の対価はおそらく小さくはありません。それを心しておいてください」
その言葉を聞き、私たちはダンジョンを後にしたのだった。
◇◆◇
「先輩、聞いてましたよね?」
「もちろん、それで、あの子は深部にたどり着けると思うのかい?」
「たどり着くだけならあそこは簡単ですよ。問題はその後なんですから」
「そりゃそうだ。あの子に自分を少し重ねたのかい?」
「少しですね。会いたくても会えないのは同じですから……」
「そうか、よしわかった、なんとかしてみるよ」
「お願いしますね、先輩。あと、あの方に……よろしくお伝えください」
「……ああ、わかった、必ず伝えておくよ」
暗がりの中で二人の会話だけが響いた。




