求める答え①
本日2話目です
私たちは天からの声に上を見上げる。
目を凝らしても何もみえない……と不意を突いて声を掛けられた。
「ふふふ、お疲れ様。ホントに、ギリギリの勝利って感じ。それでも勝利は勝利。祝福をあげないとね」
いつの間にそこに居たのか、私たちの目の前に美しい少女が佇んでいる。
いや。アレを少女などと軽々しくい言ってはいけないのだろう。
相対して感じるこの重圧。息がうまくできない……。
私たちの前に力を隠さずに現れたソノ存在はこう告げた。
「魔獣聖母が眷属魔族・第五位:知恵の魔神『ミネルバ』が名の下に貴方がたに知恵の祝福を授けます」
ソノ存在は、ダンジョン主は高らかに告げたのだった。
「さてさて、私は堅苦しいのが苦手なので楽にさせていただきますね。……話もできないことですし」
私たちの感じる重圧を察してか、力の放出を止める。
先ほどまでの威圧感がうそのように霧散する。
あらためてソノ存在を伺いみる。
外見の年齢は私とさほど変わらないように見える。
茶色に白いメッシュが入った髪の毛
クラシックなドレスを着ており、まるで人形のような愛らしさがあった。
ただ、その瞳は猛禽類のそれであり、この薄暗い部屋でも輝いて見えた。
「私の与えるものは知恵であり、知識。おそらく皆様はすでに聞き及んでいることと思いますが、それが私の唯一の権能です」
迷宮都市部での事前調査で聞いていた通り……。
このダンジョンの完全踏破報酬はスキルではなく知恵。
「さぁ、お聞きになってください。私はあなた方が探し求める問いに答えましょう」
このダンジョンの知識を象徴する存在は私たちにささやいたのだった。
「なんでも答えを返してくれるのか?」
「流石に、答えのない問いや無意味な問いには答えませんよ?ですが、それ以外でしたら知識を授けましょう」
レクスの問いにそう保証するミネルバ。
「では皆様、どうぞご質問なさってください、お答えいたします」
今から一年以上前の話である。
各地を巡り、情報を集めていた私は報酬が『聞けば何でも答えてくれるという』ダンジョンの情報を手にいれた。
その情報を頼りにこの迷宮都市に着いたのだが、その当時まだ駆け出し程の力しかなく、また、ダンジョンクリア経験も無い私はこのダンジョンに挑むことが出来ず、途方にくれていた。
そんなとき、レクスとカウス、ベオに出会った。
彼らも知恵のダンジョンに挑む為にこの都市にやってきた冒険者で、私の事情を聞くと協力し、パーティーに入れてくれた。
無論、まだダンジョンクリアを経験してなく、レベルもさほど高くない私のことを考え、クリアし易いダンジョンでの修行にも付き合ってくれた。
そのダンジョンで、私たちはネーネと出会い、ネーネも探している者がおり、この知恵の迷宮に興味を示して、今の五人パーティーとなったのだ。
「先に譲るよ、私は切実な問いなど持っていない」
「俺もだな。お前たち三人はあるのだろう?」
レクスとカウスはそういい、うしろに下がる。
彼らに感謝しながら私たち三人がミネルバに問いかける。
そう、私、ベオ、ネーネには聞かねばならないことがある。その為に、このダンジョンに挑んだのだ
「じゃあ、オレから。ベオと言います。数年くらい前にオレが住む街の巫女様が不穏な予知をしたっす。『獣人の庇護者を探せ』ってことらしいっすけど、ご存知ないっすか?」
ベオがミネルバに問いかける。
彼が冒険者になった理由はコレだ。
獣人都市『フラクペネイト』、そこに住む獣人の巫女が危機を予言。
どのような危機か解からないが、自身たちを守護してくれる存在を探すよう予知したという。
獣人は守護する神の名を失って久しく、神託ができないそうで、予言・予知などに頼りにしているそうだ。
神の名を失った理由はあまりに古い神なので伝承が途切れてしまったことらしい。
そんなベオの話を聞いて、ミネルバは眉をひそめた。
「『獣人の庇護者』と聞いて出てくる答えは限られます。ですが、その名は軽々に語るものでも無いのです。」
予想だにしない答えが返ってきた。
だがしかし、その答えは庇護者という存在が実在するということでもある。
語れないと言われ、ベオの耳が垂れる。そんなベオに
「そう落ち込まないでください、ただ、この名を語るには私の裁量だけではどうすることも出来ないです。少し上位者に聞いてみますのでお待ちください」
そう申し訳無さそうに応えるミネルバ。
空に視線をあげ、ミネルバは誰かと話しているのか、口を動かしている。
暫くして、会話が終わったのか、次の人を促した。
「次は私ですねぇ。ネーネといいますぅ。私は十年ほど前に姿を隠してしまわれた精霊様をさがしているのですがぁ。お心当たりはないですかぁ?」
ネーネの住んでいたエルフの集落、そこに存在していた精霊が突如とすて姿を消してしまったそうだ。
痕跡を残さず消えたそうなので、おそらくは自分から居なくなったのだろと、そう里では判断したそうだ。
しかし、ネーネはよく話をしていた精霊を探しに里を飛び出し、街を巡り今に至るのだ。
ミネルバの答えを聞こうとしたのだが、ミネルバ様子がおかしいことに気がついた。
何か、聞きたくないものを聞いた、あるいは、言えないなにかを言わないといけないそんな様相をしていた。
その重たい口を開き
「そこのエルフの方。お聞きします。あなたの氏はルミリアと言うのではないですか?そして探している精霊は高位のドリアードなのではないですか?」
私たちも知らないネーネの一族の氏を言い当てるミネルバ
その問いにネーネは眼を見開き
「その通りですぅ! ご存知なのですかぁ!?」
今にもすがりつきそうな表情で応えた。
そのネーネの応えを聞いて、さらに表情を暗くするミネルバ
そ して顔をこちらに向け
「先にそちらの方に聞いておきます。貴方のご質問はなんですか?」
私は先の二人の流れに何か不安を感じながら。それでも10年もの長い間探していたもの……。
その思いが堰を切ったように出てきて。私は懇願していた。
「十一年前に死んだ……お父さんと……お母さんを生き返らせる方法を探しています。死者の蘇生が出来る秘宝が存在していると聞きました。お願いします……どうか……教えてください!」
「十一年前……」
思案する顔でつぶやくミネルバ
すると表情を消し、こちらにその瞳を向けこう訊ねる。
「ミアさんと言いましたか。貴方のご家族は11年前にオーレアで『ベヒモス』の犠牲となったのではありませんか?」
「っ!?」
その言葉を聞いて驚きに包まれる。
そう……あの国を蹂躙した双角の獣。それは伝説として語られていた『魔獣ベヒモス』と言われる存在だった。
知恵の権能というものに驚かされるとともに、死者の蘇生についての情報が手に入るのではないかという期待が大きくなっていく。
「いえ、十一年前という言葉。そしてその前のお二方の質問との共通性を考えると検討はつきます。ただ、これをただの偶然と片付けるのはムリですね。あの方の手でしょうかね。とすればココに来ることも織り込み済みということでしょう」
ミネルバはそう言うと真剣な表情でこう訊ねてきた。
「知恵の魔神ミネルバとして訪います。」
そう告げると、その存在感を増し。人を超越した存在として、私の覚悟の是非を訊ねてきたのだった。。
『ミアさん。貴方は何を犠牲にしても成し遂げる。その覚悟が有りますか?』
明日は1話だけ投稿予定です。




