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新しい一歩を

●あらすじ

【3章】『     』

無事戦争を切り抜けたネクとミア一向。

平和な時間も束の間。そんなミアたちに、ネクは周辺の迷宮への遠征を言い渡す。

困惑する一同だが、そこにはネクの意図が込められており?

一方、遠征を指示したネクだが、彼には彼でやらなければならない課題が多く存在していた。

ネクはある計画を胸に抱き、とある神との交渉に挑む!


 終戦から一週間。

 俺は雑事を終え、再度ミア経由で向こうの様子を見に向かうことにした。

 

 それまでは、俺も何だかんだ言いつつも、後始末に追われていたのだ。

 まったく。戦後処理というものはいつもいつも面倒である。

 ベルク共を処断した後。事情説明及び、今後の対処のため、神界と回線を開き映像越しに会議を行たのだが……。


 俺はその時の事を思い出す。






 向こうではオルやアレフをはじめ、幹部連中が勢ぞろいしていたが、開口一番、オルが


『久しぶりにお前の本当の名を聞いた気がする。よく再び表に戻ってきたな』

 などと、そんな言葉を口にするのだ。


「お前等……よくもまぁ……そんな口がきけるな。今回の一件、お前等が黒幕だろうが」

 

 俺は半眼で睨みながらも“くそったれ”と思いつつ話をすすめる。

 こいつ等に何を言ってもムダなのだ。

 楽しければ何でもいい、と言うやつ等である。


「そもそも。お前等も真名を隠してるじゃないか。何で俺を表舞台に引っ張り上げる必要があったんだ?」

『まぁ、確かに真名を俺達も名乗っているわけではないが。その理由はアレフが話してくれるだろう。……話してくれるんだろ?」


 オルのそんな言葉に皆の視線がイスに腰掛け、ニヤニヤしている一柱の男へと注がれる。


『ん? ああ、理由だったね。え~と、そうだな。“神ベルク、他数名の戦闘系の神が再び大戦を引き起こそうと画策していたので、それを潰す目的があったのと、ベルクの狙いが獣人に向かっていたので、その対処の為”って感じかな』


 如何にも、とってつけたような理由。

 実際にはその理由もあるんだろうが、本当の所はもっと深いところで進行している計画があるのだろう。

 だが、俺も含め、周囲の神もアレフへと真相を問いただすことは出来ない。

 こいつが策謀を本気でめぐらせて、ソレを本気で表に出す気が無いなら解りはしない。

 

 何より、神というものは良くも悪くも変化しない。

 こいつの本質は俺達も良く知っている。

 それだけの長い付き合いなのだから。


 俺はため息をつくと、今後の話しを切り出すべく、オルに問い訊ねる。

「アレフの件はもういい。次の話しだ。現在、オーレアの主神権が俺に移っているが、ソレを別の神へと譲渡したい。許可をもらえるか?」


 この俺の申しでに、皆驚きとともに、僅かながらも納得の色を見せる。


『まぁ……ネクならそう言うとは思ったが。まだ、人から崇められたくないのか?』

「当たり前だ。俺みたいな神が、人の信仰の対象になって善いわけがない。……俺みたいな虐殺の神が」

 

 俺の言葉に、会議場は静まり返る。

 オル達は無論のこと、アレだけテンションの高いアレフですら、苦笑いを浮かべて視線を逸らす。

 

 その雰囲気をかき消すべく、オルは咳払いをするとその件について、訊ねてきた。


『予想していなかった訳ではない。だが、あそのを誰に任せる? 一応隣国にはお前の庇護種族が居るわけだし。まぁ、それでも希望者は大勢いるだろうが』

 


 一都市国家の主神。

 神族にとってソレは何よりも欲しい“信仰”と同じ価値を持つ。

 なぜなら、ベルクが行っていたように、自身を崇めさせ、他の神を排他することで、自己の神力を蓄え、強化することができるのだから。

 だが、あまりやりすぎると、信仰心は薄れ、本人が気がつかないうちに自己の弱体化にも繋がっていく。


 ベルクはあれだけ好き勝手やっておいて、信仰が集まっていると思い込んでいたようだ。

 無論、幼少の頃からの洗脳的な教育のおかげで、盲目的な信者も多数存在しているようだが、その結果、命を消耗品として扱わされる兵士やその家族にとっては怨みに近い感情を持っているだろう。


 まぁ、過ぎたことだ。

 今後は新しい主神が……()()()()が、あそこを盛りたてていくことだろう。


「ああ、その事だが。任せる神は既に決めている」

『ほう? 一体誰だ? お前の知り合いの神で主神じゃない者など……まさか?ラヒルデなどと言わないだろうな?」

「阿呆。アイツに勤まるものかよ。……任せるのはコイツだ」

 

 俺はそう言うと彼らにその神を紹介する。

 一同は一瞬理解が出来なかったようだが、俺が何を言っているのか、そしてその神が誰なのかを理解すると、驚愕に包まれる。


『馬鹿なっ! その者は確かに喰われた筈っ!?』

『そうだ……確かに……。だが、その()、その()。間違いなくあの時の……』

 

 彼らの眼には今絶対に“有り得ないこと”が起こっているのだろう。

 だが、俺に言わせれば、まだ甘い。

 その事を理解しているのだろう。オルは呆れ顔で、


『お前……一から再製したのか? 既に消化され、バラバラになっていただろうに』

「はっん! 甘い、甘いね。確かに完全再製には及ばなかった。コイツは個人ではなく、今まで全ての残滓があつまった群体のような存在だ。だが、意識体としては本人に間違いは無く、記憶も完璧に復元している」


 なんの為に俺がちまちまとパズルのように欠片を集めて再構成したと思ってる。


『それで……ネク。()()()に任せる……そう言うんだね? キミは』

「ああ。問題はないだろう?」


 アレフは薄く哂いながら俺に尋ねる。

 俺が再度、その意思を告げると、向こうでは緊急の話し合いを開始しだした。

 

 ……まぁ仕方ない。

 彼らからすれば、全くの素人に国の運営を任せると言われているのだから。

 だが、俺からすれば、国なんて、人なんて、神が居なくても回っていくのだ。


 暫くして、結論が出たようで、オルの口から結果が告げられる。


『不安も大きいが、勝利者でもあり、現管轄でもある、お前の推挙だ。今後、都市国家オーレアは、以降そこに居るマ―――』

「ちょい待ちっ!」


 俺はオルの口を遮ると、もう一つの問題を提示する。


「いつまで、あの国をオーレアって呼ぶんだ? あのハゲは居ないんだ。名前も変えるべきだろ?」

『あ~もう、解った解った。それで何ていう名にするんだ?』

「あの国は……たった今から……………」





 俺は長い会議を終え、引継ぎを完了させ、再度()()()()に向きあう。

 彼らは今から神界へと戻り、詳細な引継ぎを行うことになる。

 

「あの国は任せた。これからはお前が主神だ。いい国を作れよ?」

「はいっ! ネク様、いろいろお世話になりました」

 

 そう言うと神界へのゲートをくぐっていく。

 俺はもう片方の……片割れの方へ目を向ける。


「次こそ……自分で守りぬけよ?」

「承知しました。この機会を作っていただき、本当にありがとうございました」


 そう言い残すと、二柱は光の中へと消えていく。

 さて、俺も残すは向こうの処理と()()の問題だな。


「いい加減顔を出してやらないと、心配している可能性が……寧ろ、食糧を気にしたほうがいいか?」

 

 そう独り言を言いながらミアへと接続するのだった。







『ホントにね、お前らは予想を裏切らないやつ等だよ。……ホント』


 俺がミアと接続し、目にした光景。そこにはある意味、阿鼻叫喚が写り込んでいた。

 

「あぁぁ!? ねくさんだぁ? ちょおぉっとぉ? おかぁあさんは~ぶじなあんですかぁぁ??」


『……まともな声を出せ』


 俺はそう言いながらも、この惨状に目を向ける。

 正直、見たくない。

 そこには、酔いだくれ、通路で眠る獣人の群れ。そして、付き合わされていたのだろう。青い顔で横になっているネーネやウルスの姿も見える。

 レクスとカウスは早々にダウンしているのか、表情は解らないがピクリとも動く気配が見えない。


 ベオは……此処には居ないのでわからないが、恐らく何処かで飲んでいるのだろう。

 

 つまり、俺が目にした光景。

 終戦から五日が経過した現在。

 終戦日から始まっただろう宴は延々と延々と続き、5日たった今もまだ終わる事無く続いているというのだ。


『……俺……こいつらの主神か……そうか……表に出るの、早まったかなぁ?』

 

 俺はそう言いながら、いまだドンちゃん騒ぎをしている獣人を見て、ため息をつく。

 

「ちょっとおぉぉ、ねくさんてばぁぁ? きいてますかぁぁ??」

『聞いてるよ、ってか、お前飲みすぎだろ? ちゃんと向こうの兵士は帰ったんだろうな? 宴会に巻き込んでないんだろうな??』


 俺は酔いだくれ……こと、ミアへ質問を投げる。

 恐らく、酒の飲みすぎで酒精耐性とかでも付いたんじゃないだろうか?

 他がダウンしているのに一人平気なコイツをそう分析する。


「あぁぁ?? お~れあのへいたいさんたちですか、そうですか。かえりましたよ? ちゃんとかえりましたよ?」

 

 何で疑問文なんだ?

 この馬鹿はほんと……何なんだろう。

 俺はここ最近、何度目かになるため息をつきながら、一応の訂正をしてやる。


『ミア。あの国だが、お前からしたら故郷の名前が変わるんで思うことが有るかもしれないが……もうオーレアという名前じゃない』

「んあおう??????」

 

 ……一瞬、叩き倒したくなった。

 大丈夫、コレは挑発行為ではない、挑発ではない、挑発ではない。

 よし、ダイジョブダイジョウブ。


『あの国はの今の名前は、“アーレス”。都市国家アーレスだ』


 俺は、この地ではっきりと口にする。

 それは、恐らく忘れ去られていくであろう。ある兄妹の名前だった。 

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