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秘境迷宮の創造主《クラフター》  作者: 黒狗
2 ‐神々の降臨
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エピローグ『表』

 長い様で、短い期間だったのだろう。

 頂点に君臨していた、神の更迭という形で、戦争は終わった。

 

 ネクさんのおかげもあり、公式記録での戦死者は()()という事になっている。

 アレだけの数の軍勢が動き、そして多くの死者も出て、辛うじて生き残ったオーレア兵も本来であれば、まともに生活することが困難なほどの損傷を受けていたのだ。

 

 それがたったの一名で済んだことに、両軍とも、胸を撫で下ろし、無事を喜んでいた。


 

 なお、敗残の兵……といってもほぼ全て残っているので、オーレア軍といって善いだろうが、彼らは一旦フラクペネイト周辺で野営をし、順次オーレアへと戻る計画となっている。

 襲ってきた敵国の兵が直ぐ傍らに居ることに不安もあるが、そこはネクさんのツルの一声で解決した。


『いまさら、戦う理由もないだろう。今は仮としてだが、こいつ等の(主神)でもあるんだ。……手を出せばどうなるか、理解しているだろう』


 と、不安がっていた住民と、()()()()()()に言い含めて、ネクさんはあっさりとダンジョンにもどっていった。

 再び姿を消してしまったことに、多くの獣人が嘆いていた。

 しかし、危機的状況で無くなったとはいえ、まだ移住計画は生きているようなので、希望者は少しずつネクさんの住む迷宮都市へと移住していく事になる。

 


 建物などには被害は無かったが、避難のため非常食も含め、食料備蓄を全てかき集めてしまっていたため、当座の生活にも困るありさまだった。

 それは既に食料が尽きているオーレア軍同様であり、このままでは生活することもままならない。


 それを見かね、戻る前にネクさんは


『十日分の備蓄だからな?』


 と、釘を刺しつつ、街のど真ん中に食糧備蓄を残してくれていた。

 私達に釘を刺したのは、迷宮踏破後、食料が尽きて喘いでいたのを見ているからだろう。


 流石にこの状況でそんな事は出来ないし、それで不足するならそもそも足りないんじぁないかな? とも思ってしまうが、貰う立場なのであまり文句は言えない。

 ただ、その後で付け加えられた、“利子”って言葉が気になる。

 一体なんの事だろうか?


 とはいえ、それは今考えなくてもいい事だろう。

 今は皆の無事を祝い、盛大な宴の最中なのである。 


 この宴は和解の意味合いも込め、オーレア軍も全員参加している。

 彼らは明日にも出立するようだが、今日は皆にこやかな顔をして酒を交わしている。

 

 先ほどまで戦っていた敵国なのだが、いかに主神(ネクさん)の言葉とはいえ、こうも打ち解けるとは。

 ベオもそうだが、これが獣人の気質なのだろうか?


 そう言うベオは自警団の仲間と今は飲んでいる。

 明日以降は再びクランとして動くことになるのだ。今日くらい古巣の仲間と騒ぎたいのだろう。


 そしてネーネだが、今はウルスと一緒にいろんな部族をまわり挨拶をしている。

 ネーネとウルスは年恰好がほとんど同じなため、仲がよさそうだ。


 と、そんな事を思っていると側にいるレクス達に声を掛ける一団が現れた。


「この度は、団長の件、ありがとうございました。立派な墓を作っていただき。感謝いたします」

「いや、それはこの土地を貸してくださった獣人たちに。しかし、遺体をオーレアに埋葬しなくて本当によかったのですか?」

「はい。常々、団長は万が一の時は亡骸は国外へと、仰っておられましたので」

「そうですか。それならば良いのですが」


 今、レクスと話しているのは騎士団の副団長を務めている方だそうで、この戦争の唯一の死者、騎士団の団長の葬儀の例を言いに来ていたのだ。

 

「しかし、どうしてアドラだけ蘇生が出来なかったのか……。そうだ、ミア。何か聞いているか?」


 と、急にレクスは私に話しを振ってくる。

 蘇生が出来なかった理由。

 一応、聞かれたら答えるようにネクさんからは伝言を受けている。


「え~と、あ、名前はもう出していいのか。ネクさんからは伝言を貰ってますよ。なんでも『本人がこの地に蘇ることを強く拒んだ為』だとか」

「拒んだ? アドラがか?」

「名前までは知りませんけど。『もうあそこで生きていく理由が無い』ってことですけど、レクスは解りますか?」


 私は何のことを言っていたのか、全然解らない。

 だが、この話しを聞いて、レクスは解ったらしく、納得をしていた。 

 

「そう……だな。唯一の宝だったからな」


 そう呟く、レクスの寂しそうな表情が印象的だった。

 そんなレクスにカウスが声をかけ、励ます。

  

「俺達に出来ることはやったはずだ。そうだろ? それに、探し出した遺品は全て棺に入れてやったんだ。これ以上は俺達の手ではどうにも出来ない」

「……そうだな」


 

 カウスも事情を把握しているようだ。

 もし、重要なことであれば、きっと後で教えてくれるだろう。


 騎士団との話しも終わり、ひと段落した後、ベオ、ネーネ、そしてウルスが連れ立って戻ってきた。


「なんだ? どこかで出くわしたのか?」

「そうなんすよ。皆と飲んでたら二人がやってきて、そろそろ今後の話しでもって、引っ張られてきたっすよ~」


 そこそこ飲んでいるのだろう。

 落ち着いて旧友たちと飲んで楽しかったようだ。


「いや、悪いな。速いうちに今回の顛末と今後を話しておかないと。後々面倒が起こるとも限らないからな」


 レクスは苦笑しながらも三人に座るよう促がす。


「ネーネも、巫女様も今回はお疲れ様でした」

「ウルスで構いませんよ。これから色々お世話になるのですし」


 様付けを嫌いっているウルスは、私たちに呼び捨てで呼ぶようにお願いする。

 だが、少し変な事を言わなかったか?

 

「え? どういうこと?」


 私がそう訊ねると、ウルスはさも当たり前のようにその話しを持ち出した。


「当たり前です。私はネク様に仕える巫女なのですから。ネク様のお側か、それか、配下のクランに所属するのが筋かと」

「いや、そうかも知れないけど。でもこの国はどうするの?」

「それは大丈夫。移民も開始されますし、何より、ソレを指揮するのに私が居たほうが便利でしょ?」


 いや、そんな便利だからという理由で……。

 だが、ウルスは更に爆弾を投下していく。


「それに、巫女といえば、神の伴侶。つまり、私はネク様の奥さんなのですから。その力になって当然です」

「……は?」

「え、えぇぇ!? どういうことですかぁ~?」


 その言葉に私とネーネは驚きの声をあげる。

 だが、側で聞いていたカウスは納得したかのように、手をうち、


「ああ。そういえば、そんな伝承も残っていたな。巫女たるもの、神の伴侶として純潔を守るベしって」

「いや、まて。だが……その理論でいえば、オーレアはどうなるのだ?」


 レクスは少し疑問に思うようで首を傾げる。

 だが、正確なことを判断できる知識が無い。

 しかし、このままウルスの理論を承認するのはなんだか腑に落ちない。



 そんな時。恐らくこの話しを理解できる知識をもった方が来られる。 


「騒がしいのぅ。何を話し込んでおるのじゃ?」


 その童女は、その外見に似合わぬ口調で私たちに尋ねたのだった。



「……なるほどの。巫女とは何かという話しでいいのかのぅ?」

「はい! 是非お教えくださいっ!」


 ふらっと宴の席に現れた方、エカテさん。

 おそらくは魔族だとは思うのだが、ネクさんともフェリアスさんとも親しいようだし、きっと知っているだろう。


 私がそう思い、質問を投げかける。

 その様子をネーネとウルスが食い入るように見つめ、なぜかレクスとカウスは青褪めて距離をおいている。

 ベオは興味が無いのか、お肉を皿にとりわけ、嬉しそうに食べている。


「まぁ、お前たちがどこまで知っているか定かではないが、これは口外出来ぬ知識じゃ、ソレを念頭においておくがよい。巫女とは本来、“御子”。すなわち神の子やその直系を指す言葉なのじゃ」

「え? 神の子……子孫ってことですか?」

「そうじゃ。故に、その力の源は神の血筋に由来する。ここまでは善いかの?」


 私たちは神妙に頷きを返す。


「つまり、その血を薄めないためにも、定期的に巫女は神の妻として迎え入れられることがあるのじゃ。まぁ、(ニエ)とは違うが、人間の認識での生贄に近いのぅ。神に輿入れした巫女は、その神に飽きられるまで、寵愛が無くなるまで神に囲われるがのぅ」

「えっ! 本当ですかっ!」


 その答えにウルスは歓喜をあげる。


「やったっ! ほらっ! 私がネクさんの妻として側に居ても問題はないでしょ? こんかいの件でネクさんに代価を払わないといけないのですし」

「い、いや、代価だったら、私も今払っている最中だよ!?」


 そんなやり取りをウルスとしていると、底冷えするような声が私たちに投げられる。


「ハハハッ! こら、そこの小鳥共。()()となるべき、このワシを差し置いて“妻”だの身の程を弁えんかのぅ?」


 そう言うと、エカテさんが瞳をまるで()()()のように変え、私たちを見据える。

 その圧倒的な威圧感と重圧にのまれ、一瞬で背中につめたい汗が流れ落ちる。

 

「折角じゃ、名乗ってやろう。我が名はエカテ、魔獣聖母:エカテ。大公の爵位を持つ魔族にして、魔獣を統べる者じゃ。覚えておくがいい」


 っ!?

 この魔族の方が……魔獣聖母!?

 私の中で思い描いていた姿が音をたて崩れていくきがする。

 だが、真に問題なのはそこではない。


「まってくださいよぉ~? 貴方様が魔獣聖母ってことは……ミネルバ様の母親ってことで……」


 そうだっ!

 つまり、目の前のエカテさんは……ネクさんと……


「うそ……? だって……どう見ても()()()()()()()()()()じゃない!?」

 

 そう、最大の問題点はそこだろう。

 どうみても、童女であり、一児の母には見えない。


 というか……ネクさん……手を出したのか。


 私たちが少し考え込んでいると、エカテさんがさも当たり前のように口を開く。


「何をいっている。本来男神など、本能で生きているような奴らじゃぞ? ネクなどまだまだマシな方じゃ。引きこもっておった頃は全然じゃったが、まぁ、真名を宣言したことじゃし、少しは昔のようにヤンチャをしてくれるとワシも愉しいのじゃがな」

「え? 本当ですかぁ~?」


 私の中で男神=ケダモノと言う答えが結びつきそうになる。

 そして、何故エカテさんやネーネは嬉しそうなの?

 しかし、そうすれば、最も危険なのは誰か……?


「いけないっ! お母さんが危ないっ!」

「……お母さん? ああ、そういえば、蘇生の願いを叶えにいって……まて、今母は何処におるのじゃ?」


 エカテさんもソレに気がついたのか、真剣な顔で私に尋ねる。


「……ネクさんの迷宮都市です・・」

「つかぬ事を聞くが……今、母は幾つなのじゃ?」

「多分……二十四かそこら辺だと思います」


 それを聞いたエカテさんは、急に表情を消し、ぶつぶつと呟く。


「あの戯けめ、ワシの報告をせなんだな。こうなっては仕方がない。その母親はネクから美味しく食べられる頃じゃろ。往年のネクの前に二十四の未亡人などぶら下げてみろ……あっという間じゃ」


 その思わず背筋が凍る雰囲気と迫力に私は言葉を失う。

 そんな、ネクさんとお母さんが……まさか……再婚っ!?


 そんなっ! そんなっ! ソレはダメっ!


「エカテさんっ! フェリアスさんは!? 今からいってフェリアスさんに母の身の安全を……あっ! でも、フェリアスさんがネクさんの近くにいると、フェリアスさんにも危険がっ!」

「おい、流石にネクさんに失礼だろ? いくらなんでも手当たり次第って事は無いだろうし。そもそも、嫌がる相手に手を出すような方じゃないだろ?」


 レクスが私を宥め、落ち着かせようとしている。

 だが、その言葉を聞き、エカテさんは表情を消したまま、呟くように私に教えてくれる。


「ああ、アイツはそんなヤツじゃない。自分からはなかなか手を出さない。じゃが……相手にその気があれば別じゃ」

「……別なんですか」


 レクスはあまり……いや、全然聞きたくない様子だが、思わずだろう。聞き返してしまったようだ。


「……相手がその気なら、パクンとひと呑みじゃ」


 つまり、お母さんがその気じゃなければOKってこと?

 でも……相手はネクさんだ。どうなるか解らない。


「急いで……戻りましょうっ! エカテさんっ! ネクさんの迷宮都市までいけませんか?」


 私はエカテさんにそう尋ねてみた。

 神や魔族は転移魔法が使えたはずだ。

 制限とかはこの際置いておき、先ずは確認を急がないと。


 だが、私のその言葉を聞き、急に気を取り戻し、エカテさんは答える。


「無理じゃ。迷宮都市への入場はその神の招待が無ければ入れん。それに、ワシは大公。立場がある故にそもそもの入場が禁止されておる」

「そんな……」

「……それに、今、あの都市へは神魔は近づかない方が善い。恐らく、ネクは後処理をしているのだろうからのぅ」


 先ほどまでとうってかわって、エカテさんは困った顔をしている。


「後処理ですか?」

「そうじゃ、愚かな者に、相応の報いを与えるはずじゃからの」



 巫女の話しから始まり、ネクさんの赤裸々な嗜好を聞いていたはずだが。

 こちらの話しとは裏腹に、向こうは重要な案件が進行中のようだ。

 

ネクさんを、上げて……落とす。

少しネクのガッカリな話しを書いてみました。

でも、神様ってそんなもんですよね?


評価が上がって、そして下げられたネク。

一応始祖の神で偉いんですけどね。

普段が威厳がないモノで・・・・・。


『表』が来れば次は・・? 

評価が上がる話しに・・?

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