26.加護管理局本所
ガルドはロウェン邸をあとにした後,その足で加護管理局へ赴いていた.
滞納していた税を支払うためだ.宿の営業は決して順調とは言えない.探し屋の副業も副業の域を出てはいない.しかし,ギルド拠点としてラゼルトから前受けした賃料はそれなりに達していた.延滞税を支払っても十分手元に残る.
月の終わりには込み合う加護管理局もその日は閑散としていた.
ガルドはまずカウンターで納付書を記入し,それが終わると窓口へ行く.その手には銀貨の詰まった革袋が携えられている.ずっしりと重たい.
職員が書類を確認すると,ガルドから受け取った革袋から銀貨を出し数を確認する.ふだん目にしない大金にティオが興味を示す.
計算が終わった窓口の職員があらためて納付書を見ると口を開いた.
「ガルドさん.これで納税完了です.それとともに強制執行の申し立てが取り下げられていることも申し添えます」
ガルドは細く息を吐いたが,ふと職員の背後,窓口の奥に見覚えのあるクレインの顔に気付いた.ガルドを一瞥したようにも見えるが,気のせいかもしれない.
声を掛けるような仲でもない.ガルドはそのまま立ち去った.
ただ,考えてみれば,ガルドに所有権がないためギルド申請はそもそも無効だった.それでも今まさに,強制執行の申し立ては取り下げられ,税の滞納に厳しい罰則もなかった.これは当局の処理にしては少々緩すぎる気がする.
もしかすると,クレインがなんらかの便宜を図ってくれたのかもしれない.
真相は分からないが,ガルドはそういうことにしておこうと思考を中断し,宿への帰路に就いた.いまや新興ギルドの拠点となった宿へ.




