表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/510

第99話:【閑話】絶対同盟の頂上会議と、世界最強の『ウー〇ー配達員育成機関』の誕生

第99話:【閑話】絶対同盟の頂上会議と、世界最強の『ウー〇ー配達員育成機関』の誕生

アルカディア王城、最も格式高い『太陽の円卓の間』。

かつては他国を牽制するための軍事会議が行われていたその場所で、現在は大陸全土を巻き込んだ『第一回・絶対同盟定例会議』が開催されていた。

円卓を囲むのは、アルカディア国王ヴィルヘルムと、神聖魔導帝国エルドリアのガルド宰相を筆頭に、海洋通商連盟国家オロスのゴールドマン議長や、南方・東方諸国の特命全権大使たちである。

「――以上が、現在第49階層『天空の暴風魔境』に滞在されている英雄トウヤ殿たちへの、第十四回・調味料デリバリーの報告書である」

ガルド宰相が、羊皮紙を置きながら重々しく告げた。

「我が帝国のサイラス率いる『深淵の配達部隊』は、昨日、見事断層を越えて彼らの元へ『千年熟成バルサミコ酢』と『幻の海鮮セット』を無傷で届けることに成功した。……現在、英雄殿たちは高度50階層目前の神域にて、極上の天空スローライフを満喫しておられる」

円卓を囲む各国の代表たちから、「おおおっ……!」と安堵と感嘆のどよめきが上がった。

「さすがは帝国最高峰の部隊だ! あの暴風と雷の魔境へ、酢を一滴もこぼさずに届けるとは……!」

オロスのゴールドマン議長が、汗を拭いながら称賛する。

「うむ。そして諸君……サイラスよ、アレを」

ヴィルヘルム国王が、ニヤリと笑って合図を出した。

「ハッ」

円卓の背後に控えていたサイラスが、恭しく巨大な『魔法の保温ボックス』をテーブルの中央に置いた。

「これこそが、英雄殿たちがバルサミコ酢のお礼にと我々に持たせてくれた【逆デリバリー(おこぼれ)】の品……。『天空海の大怪鯨レヴィアタンの極上大トロステーキ 〜特製バルサミコソース仕立て〜』、そして『迅雷帝王鷲グリフォンの神・雷神焼き鳥』である!!」

パカッ、とボックスが開かれた瞬間。

「――――ッッ!!?」

円卓の間に、脳髄を直接揺さぶるような『極上の脂の甘い香り』と『焦げた特級黒胡椒と熟成酢の芳醇な匂い』が爆発した。

各国の代表たちは、用意された小皿にほんの一切れずつ(人数が多いため少量しか行き渡らないのだ)取り分けられたその肉片を、震える手で口に運んだ。

「…………ッッ!!」

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?」

東方の特命大使が、椅子から転げ落ちて絶叫した。

「肉が……! 鯨の肉が、口に入れた瞬間に雪のように溶けたぞ!? なのに、この凄まじい旨味の奔流はなんだ! バルサミコ酢の酸味が、脂の甘みを何百倍にも引き立てておる!!」

「ひぃぃぃっ! この焼き鳥、噛んだ瞬間に雷のようなピリッとした刺激が……! なのに肉汁が滝のように溢れて止まりませんぞォォォッ!!」

各国の重鎮たちが、涙と鼻水を流しながら、たった一口の肉片を赤子のように舐め回している。

「あああ……! この神の食べ物に比べたら、我が国が誇る最高級宮廷料理すら、ただの泥水と雑草ではないか……!」

「もっと! もっと食べたい! 財産の半分を支払うから、もう一切れだけ売ってくれ!!」

阿鼻叫喚の(情けない)飯テロ地獄絵図と化した円卓の間。

ヴィルヘルムとガルドは、「フッ、我々はもう何度もこの衝撃を味わっているからな」と、謎の優越感に浸りながらステーキを味わっていた。

しかし、その圧倒的な賛美と興奮が少し落ち着いた頃。

オロス連盟のゴールドマン議長が、鋭い(商人の)目つきでサイラスを見つめた。

「……サイラス殿。一つ、お尋ねしたい」

「なんでしょうか、議長」

「先ほどの報告によれば、貴殿の部隊は今回の配達途中に、空間を切り裂く神話級の魔物『次元蜘蛛』に遭遇し、これを【荷物を背負ったまま、無傷で一瞬にして討伐した】とありましたな」

「いかにも。配達のタイムロスを防ぐため、迅速に処理いたしました」

サイラスが平然と答える。

その言葉に、各国の代表たちがゴクリと息を呑んだ。

「……恐ろしい話だ。かつて大陸全土を恐怖に陥れた神話級のバケモノを、『配達のついで』にノーダメージで処理するなどと……。サイラス殿の部隊は、この短い期間の間に、一体どれほどの高みへ到達したというのか」

ゴールドマン議長が、バンッ! とテーブルに手をついて立ち上がった。

「ヴィルヘルム王! ガルド宰相! 我々同盟国から、一つ重大な提案(お願い)があります!!」

「む? なんだ、申してみよ」

「この【深淵へのウー〇ー配達】という任務は……極限の環境と死地を『荷物を守りながら踏破する』という、世界で最も過酷で、最も実力を引き上げる【究極の修練】になっているのではありませんか!?」

その指摘に、サイラス自身がハッと目を見開いた。

確かに、彼らはただ「キャンパーたちに美味い飯を届けておこぼれを貰う」という一心で迷宮を走り回っていたが、結果として、彼ら十三名は今や一国を単独で滅ぼせるほどの『規格外のバケモノ部隊』へと進化してしまっている。

「そこで提案です! 各国から、最も優秀な精鋭騎士や暗殺者を選抜し、サイラス殿の部隊との【合同訓練】を行わせていただきたい! そして、サイラス殿が『実力あり』と認めた者には、この【深淵のウー〇ー配達員】として、正式にデリバリー業務に参加する許可を与えてほしいのです!!」

「な、なんと……!?」

「我々も、自国の部隊を世界最高峰に鍛え上げたい! そして……あわよくば、この神話級の極上肉の『つまみ食い……ゲフンゲフン、おこぼれの恩恵』に預からせていただきたいのです!!」

各国の代表たちが、血走った目で一斉に立ち上がり、ヴィルヘルムたちに懇願した。

部隊の底上げという名目もあるが、本音の八割は「うちの国の奴らにもあの超絶美味い出前を取りに行かせろ!」という強欲な食欲であった。

ヴィルヘルムとガルドは顔を見合わせた。

「……確かに。これから英雄殿たちが50階層の『大ボス』を越え、さらに深層(60、70階層)へと進めば、サイラスたちの部隊だけでは物流デリバリーの負担が大きすぎる。配達員の増員は、我々の【生存戦略(貢物ルート)】を維持するためにも必要不可欠だ」

「ええ。しかし、彼らの神聖なスローライフの場に、見ず知らずの新人を送り込むわけにはいきません。……これは、トウヤ殿たちに直接相談し、了承を得る必要がありますな」

***

【同時刻・第49階層 浮遊島】

「ハックションッ!!」

トウヤが、巨大なピーチ(神仙の蟠桃)をかじりながら盛大にくしゃみをした。

「……おかしいな。またすっげえ嫌な悪寒がしたぞ」

『――ト、トウヤ殿! 聞こえるか! 余だ、ヴィルヘルムだ!』

通信アーティファクトから、国王の焦ったような、しかしどこか期待に満ちた声が響く。

「おっ、陛下! 逆デリバリーのステーキ、届いたか? 口に合ったなら良かったぜ!」

『ああ! もう円卓の全員が涙を流して喜んでおる! ……そのことで、トウヤ殿に一つ、折り入って相談があるのだ』

「ん? なんだ? もっと別の調味料でも送ってくれるのか?」

『いや、その……いつも配達してくれているサイラスの部隊についてだ。これから君たちがさらに深層へ向かうにあたり、彼らだけでは人手が足りなくなる恐れがある。そこで、同盟国の精鋭たちをサイラスの下で鍛え上げ、【配達員の増員(新人アルバイトの採用)】を行いたいという申し出が各国から殺到しておるのだ』

ヴィルヘルムが、恐る恐る尋ねる。

『もちろん、トウヤ殿たちが「見知らぬ者が来るのは不快だ」と言うなら、この話は白紙にする! どうだろうか……?』

「……なんだ、そんなことか!」

トウヤの明るい笑い声が、通信機から響いた。

「全然オッケーだぜ! むしろ大歓迎だ! 配達してくれる人が増えれば、一度に注文できる食材や調味料の量も増えるし、俺たちとしては願ったり叶ったりだ!」

『ほ、本当か!? 邪魔ではないか!?』

「ああ! サイラスの兄貴がしっかり教育した奴なら問題ねえよ! 俺のいた世界の『ウー〇ー』だって、配達員がいっぱいいた方が早く飯が届いて便利だったからな! 新人の配達員が来たら、歓迎会代わりにまた極上のBBQを腹いっぱい食わせてやるって伝えといてくれ!」

『――――ッッ!! おお、おおおおおっ!! 寛大なる英雄殿の御心に、世界を代表して感謝する!!』

通信が切れた瞬間。

王城の円卓の間では、各国の代表たちが「ウオォォォォォッ!!」と狂喜乱舞し、抱き合って涙を流していた。

「聞いたか! トウヤ殿の了承を得たぞ!! これで我が国の騎士団も、ウー〇ーの新人研修に参加できる!!」

「すぐだ! すぐに本国へ魔法通信を送れ! 最強の精鋭を100名選抜し、明日からサイラス隊長のもとへ弟子入りさせろォォォッ!!」

かくして。

迷宮の底で「ウー〇ーの配達員が増えれば、もっと色んなスパイスが頼めるな!」と能天気に喜んでいるトウヤたちの知らないところで。

地上では、世界各国のエリート騎士や最強の暗殺者たちが、「極上飯のデリバリー権」を獲得するためだけに、サイラス率いる『影歩く者』の地獄のシゴキ(深層無振動マラソン)に身を投じるという……世界最強の【ウー〇ー配達員育成機関】が爆誕してしまったのである。

次なる舞台は、いよいよ折り返し地点の第50階層。

最強のキャンパーたちと、彼らに飯を届けるために異常進化を続ける物流部隊の物語は、さらにスケールを拡大して深淵へと潜っていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ