第100話:折り返しの大ボス戦と、美食家たちの原点回帰(レベ上げ合宿)
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未だに折り返し地点の50階層
なので皆さんが楽しく読んで
くれるよう1日の投稿を15話
ストック30話をキープしております。
これからも宜しく┏○ペコッ
### 第100話:折り返しの大ボス戦と、美食家たちの原点回帰(レベ上げ合宿)
『悠久の大迷宮』第49階層――『天空の暴風魔境と浮遊島の神域』。
世界最強のウー〇ー配達員たちによる増員計画が地上で進められていることなど露知らず、トウヤたち『悠久の踏破者』の八人(六人と三匹)は、ついに大迷宮の「折り返し地点」となる第50階層への扉の前に立っていた。
「……さて。とうとうここまで来たな」
トウヤが、黒曜石と黄金で縁取られた巨大な大扉を見上げる。
「全100階層と言われるこの迷宮の、ちょうど半分。第50階層の大ボス部屋だ」
「ええ。最近は羅針盤のおかげでタイムアタックや出落ち瞬殺ばかりでしたけれど、さすがに階層の半分を統べる大ボスともなれば、一筋縄ではいきませんわね」
エリスが『竜殺しの重剣』の柄を固く握り直す。
「ガッハッハ! 望むところだ! 腹の空き具合もバッチリだからな、どんな極上肉が出てきても残さず食ってやるぜ!」
「よし、気を引き締めて行くぞ!」
トウヤが両手で大扉を押し開けた。
ギギギギギギ……ッ!!
扉の先に広がっていたのは――右半分が煮えたぎる『紅蓮の溶岩海』、左半分が絶対零度の『極寒の氷河』という、相反する極限環境が真っ二つに分かれた異常な巨大ドームであった。
そして、その中央。
マグマと氷河が交わる境界線から、天を突くほどの巨体がゆっくりと立ち上がった。
体長八十メートル。右の首は紅蓮の炎を、左の首は絶対零度の吹雪を吐き出す、二つの頭を持つ神話級の古竜。
第50階層大ボス――『双極の災厄竜』であった。
「グオォォォォォォォォォッ!!」
咆哮一つで、空間そのものが熱膨張と凍結を繰り返し、ミシミシと悲鳴を上げる。
通常の冒険者であれば、その覇気だけで魂が砕け散るであろう、正真正銘の「絶望」。
しかし、トウヤの【神眼の指揮】は、その絶望を「奇跡の双極メニュー」として完璧に解析していた。
「おい、お前らァァァッ!! 当たりだ! 超特大の当たりだぞ!!」
トウヤの歓喜の声が、ボスの咆哮を上書きする。
「あの大ボス! 右の炎の首は、常に熱を発しているおかげで脂が極限まで溶け込んだ『究極の霜降り肉』だ! そして左の氷の首は、寒さに耐えるために身が引き締まった『至高の極厚赤身肉』だ! 熱々の極上しゃぶしゃぶと、ステーキの二種盛りが一度に楽しめるぞォォォッ!!」
「「「究極の双極肉ゥゥゥッ!!」」」
「ヒャッハー!! どっちの首も俺が切り落としてやるぜェェッ!!」
ジンが『次元歩行の靴』を起動し、神速で虚空を蹴って双頭竜の懐へと飛び込む。
「させませんわ! お肉は私のものですの!! 【渾身撃・オーバードライブ・脳天割り】!!」
エリスもマグマの闘気を纏い、右の炎の首に向かって重剣を振り下ろす。
いつものように、一瞬で気絶させてからの冷凍保存。
――その「お決まりのパターン」が通用するはずだった。
ガキンッッ!!!!
「……えっ!?」
エリスの重剣が、炎の首の鱗に弾かれ、凄まじい反動で彼女自身が後方へ吹き飛ばされた。
同時に、ジンの神速の双剣も、氷の首の異常な動体視力によって完全に防がれ、逆に氷のブレスのカウンターを受けてしまった。
「うおっ!? 寒ッ! まじかよ、俺のスピードに反応しやがった!」
ジンが空中で姿勢を立て直しながら舌打ちする。
「グァァァァァァッ!!」
双頭竜が怒り狂い、溶岩の津波と氷河の棘を同時に巻き起こして一行に襲いかかる。
「くっ! 【魔力城塞・超重絶界】!!」
ガレスが巨大な盾を構え、結界を展開する。しかし、双属性の極大魔法の直撃を受けた瞬間、神話級の盾が「ミシッ」と嫌な音を立て、ガレスの巨体が数メートル後ずさった。
「ぐぬぅ……ッ! おいトウヤ! こいつ、今までのボスとは次元が違うぞ! ただの力押しや神速だけじゃ、肉質を保ったまま一撃で仕留めるのは不可能だ!」
トウヤも額に汗を浮かべた。
(……マジか。俺たち、美味い飯を食うことばっかり考えてて、ここ最近「強い敵と真面目に戦う」ってことをしてこなかった。50階層の壁……これが大迷宮の本当の恐ろしさか!)
しかし、トウヤの口角はニヤリと吊り上がった。
「面白えじゃねえか。……お前ら! 流れ作業の収穫祭は終わりだ! 食材の鮮度を絶対に守るため、俺たちの【全力の連携】を見せてやるぞ!!」
「「「了解ッッ!!!!」」」
そこからの戦いは、美食家たちが久々に見せた「最強の探索者」としての本気の死闘であった。
「ジン! 左の氷の首の視界を奪え! エリスは俺と一緒に右の炎の首の装甲を剥がす!」
「任せな! 【幻影歩法・千刃の舞】!!」
ジンの双剣が分身し、氷の首の意識を完全に釘付けにする。
「ルミナ、マリア! ガレスの結界の後ろから、双頭竜の足元を狙って極大魔法の準備だ! 属性を反転させて叩き込め!」
「「はいっ!!」」
「エリス、行くぞ!! 【空間斬り・次元断層】!!」
「合わせますわ!! 【竜殺しの重剣・真打・極大星砕き】!!」
トウヤの空間魔法が炎の首の絶対防御(鱗)を空間ごと切り裂き、そこにエリスの最大火力の重剣が叩き込まれる。
「ギャァァァァァッ!?」
右の首が悲鳴を上げ、双頭竜のバランスが大きく崩れた。
「今だ! ルミナ、マリア!!」
「「【ホーリー・アブソリュート・バースト(絶対浄化の光氷結)】!!!!」」
カッ――――!!!!
二人の融合魔法が、属性のバランスを崩した双頭竜の巨体を完全に飲み込んだ。
炎の熱も、氷の冷気も全て中和され、双頭竜は反撃の隙を与えられずに「純白の光の柱」の中へと消えていった。
ズドォォォォォォォォォンッッ!!!
「ハァ……ハァ……っ」
光の柱が収まった後、そこには完璧な状態で瞬間冷凍された「巨大な双極のブロック肉」が鎮座していた。
「……よぉーし! 大ボス、討伐完了だ!!」
トウヤが肉をアイテムボックスに収納し、その場にドカッと座り込む。
「ふぅ……。久しぶりに、少しだけ本気を出しましたわ」
エリスが汗を拭い、ジンも「ヤバかったぜ、あの反射神経」と息を吐く。
「おっ、トウヤの兄貴! 大ボスの宝箱が出たぜ!」
ジンが開けた豪華な宝箱の中には、炎と氷の耐性を完全に無効化する『双極の神外套』や、全ステータスを底上げする『覇王の指輪』など、折り返し地点にふさわしい破格のレア装備が大量に入っていた。
「おおっ! これで装備はさらに最強になったな!」
トウヤが喜びながらも、ふと真剣な顔で仲間たちを見回した。
「……なぁ、お前ら」
「どうした、トウヤ?」
「今回の大ボス、正直言ってかなり手応えがあった。俺たちの火力やスキルは神話級だが……最近、美味い飯を最速で食うための『作業』ばかりで、純粋な戦闘経験やレベ上げ、それに不測の事態を想定した連携訓練を怠ってた気がする」
トウヤの言葉に、ガレスやルミナも深く頷いた。
「……確かに。50階層でこの強さなら、ここから先の後半戦……60階層や70階層では、今のような『獲物(食材)扱い』では痛い目を見るかもしれん」
「最悪の場合、お肉に傷をつけてしまったり、鮮度を落としてしまう危険性がありますわね……!」
エリスが、それは絶対に避けねばならないという悲壮な顔をする。
「そうだ! 飯を最高に美味く食うためには、俺たち自身がもっと強く、もっと完璧にならなきゃダメだ!」
トウヤが立ち上がり、拳を握りしめた。
「よし! 次の51階層からは、初心に帰るぞ! 食材探しも大事だが、まずは【真面目にレベル上げと連携訓練】を行う! どんな極上食材が来ても、涼しい顔で一撃で仕留められるような『絶対的な力』を身につけるための【原点回帰のレベ上げ合宿】だ!!」
「「「うおおおおおおッ!! 美味い飯のために、強くなるぞォォォッ!!」」」
***
ギギギギギギ……ッ!!
決意を新たに、一行は第51階層への扉を押し開けた。
第51階層――『迷い草の広葉樹林と清流のせせらぎ』。
そこは、前半の階層を思わせるような、緑豊かで穏やかな森であった。しかし、徘徊している魔物は『ミスリル・ホーン・ベア』や『アサシン・シャドウ・ウルフ』など、50階層を越えた凶悪なステータスを持つ強敵ばかりである。
「よし! ここに拠点を張るぞ! 今日から数日は、魔物をただ瞬殺するんじゃなく、回避のタイミングや新しい魔法の組み合わせを試しながら戦うんだ!」
トウヤの指示で、一行は真剣な表情で森へと散っていった。
「ジン! 私の魔法に合わせて裏へ回ってください! 【氷槍雨】!」
「おう! 魔法の死角から切り裂くぜ!」
「エリス、大振りを狙われているぞ! 盾で防ぐから、カウンターを合わせろ!」
「はいっ! ガレス様の防御を信じますわ!」
彼らは「ただの美食家」から「超一流の探索者」としての顔を取り戻し、汗を流しながら真面目に、そしてストイックに迷宮の魔物たちと戦闘訓練を重ねていった。
(※もちろん、倒した魔物の肉は全て「今日の晩ご飯」として丁寧にアイテムボックスへ収納されている)
***
そして、夜。
森の清流のほとりに展開された【星の箱庭】のテラスにて。
「いやー! 久々に真面目に体動かして、レベルも上がった気がするぜ!」
「ええ! やはり基礎訓練は大切ですわね。剣の振りがさらに鋭くなりましたの!」
心地よい疲労感に包まれた彼らの前に、トウヤが特大の鍋と鉄板を用意した。
「さあ食え!! 今日は50階層の折り返し記念! 『双極の災厄竜の極上霜降りしゃぶしゃぶ 〜熟成バルサミコポン酢〜』! そして『極厚赤身ドラゴンのサイコロステーキ』だ!!」
「いただきますッッ!!!!」
ジンが、サッと湯通しした霜降りの竜肉を、バルサミコ酢の効いた特製ポン酢に絡めて口に放り込む。
「――――ッッ!! う、うめぇぇぇっ!! 炎の首の肉、口に入れた瞬間に脂が雪みたいに溶けて消えた! なのにポン酢の酸味で後味がめちゃくちゃサッパリしてるから、無限に食えるぞ!!」
「こちらの氷の首のステーキも最高ですわ! 赤身なのにスッと噛み切れて、中から濃厚な竜のお肉の旨味が爆発しますの!!」
エリスが、ステーキを頬張りながら幸せそうに身悶えする。
真面目にレベル上げと連携訓練を行い、心地よい汗を流した後に食べる「大ボスの極上肉」。
それは、これまでのどんな食事よりも五臓六腑に染み渡る、至高の味わいであった。
後半戦(51階層〜)に向けて、装備もステータスも、そして『食への異常な執着』もさらにパワーアップした悠久の踏破者たち。
彼らの原点回帰のレベ上げ合宿は、これから先の深層で出会うであろう未知の極上食材を完璧に調理するため、熱く、そして美味しく続いていくのであった。




