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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第95話:深淵からの逆出前(ウー〇ー)と、地上の常識を覆す神話級の晩餐

### 第95話:深淵からの逆出前(ウー〇ー)と、地上の常識を覆す神話級の晩餐

『悠久の大迷宮』第45階層――『黄金の豊穣平原と聖なる牧場』。

隠れ中ボスである『豊穣の黄金巨羊ギガント・ゴールデン・アリエス』を討伐し、神話級の調理設備を手に入れた『悠久の踏破者』たち。

彼らの最強拠点【星の箱庭】の広大なテラスには、暴力的なまでの香ばしい匂いが立ち込めていた。

「さあ焼けたぞ! 『黄金巨羊の究極骨付きラムチョップ 〜オロス産香草パン粉焼き〜』! そして新設の魔導石窯で焼き上げた『芳醇豚の極上自家製ベーコンと特濃チーズの無限ピザ』だ!!」

トウヤが、熱々の鉄板と巨大なピザボードをテーブルにドンッと置いた。

ジュワァァァァァッ! と溢れ出す肉汁と、とろけるチーズの匂いが暴力となって八人(六人と三匹)の鼻腔を直撃する。

「いただきますッッ!!」

全員が一斉にかぶりつく。

「――――ッッ!! なんですのこれぇぇぇっ!!」

エリスが、ラムチョップを一口かじった瞬間に天を仰いだ。

「羊のお肉特有のクセが一切ないのに、旨味だけが何十倍にも濃縮されていますわ! そしてこの香草パン粉のサクサク感と、お肉の異常な柔らかさ……! 噛まなくても口の中で溶けていきますの!!」

「ガッハッハ! ピザもヤバいぞ! 生地は外がカリッと、中はモチモチ! 濃厚すぎるチーズに自家製ベーコンの強烈な燻製の香りが絡みついて……無限発酵蔵のビールが一瞬で消え去る!!」

ガレスが、チーズをビローンと伸ばしながら樽ジョッキを煽る。

「ヒャッハー! これ食ったらもう地上の飯なんて一生食えねえぜ!」

ジンがピザとラムチョップを交互に口に放り込みながら大笑いした。

――その時である。

「……失礼する、トウヤ殿。お届け物だ」

テラスのすぐ外に、帝国最高峰の隠密部隊にして、現在『深淵のウー〇ー配達員』として完全覚醒を果たしたサイラスと部下たちが、音もなく(しかし堂々と)姿を現した。

彼らの背中には、厳重に梱包された木箱がいくつも背負われている。

「おおっ! サイラス! 待ってたぜ!」

トウヤが笑顔で出迎える。

「今回の品は、南方の国から献上された『幻の七色柑橘』と、東方の『千年熟成醤油の種麹』だ」

「マジか! 醤油の種麹があれば、発酵蔵で完璧な醤油が造れる! さすが地上の王様たち、有能すぎるぜ!」

サイラスたちは任務を完遂し、ホッと息をついた。

しかし、彼らの視線は先ほどから、テーブルの上の『究極のラムチョップと極上ピザ』に釘付けになり、喉をごくりと鳴らしていた。

「まあ、お前らも座れよ! ちょうど極上のピザが焼き上がったところだ。いつも遠いところ(地上から数十階層)まで配達してくれてるお礼だ、腹いっぱい食っていけ!」

トウヤが巨大なラムチョップと焼きたてピザを取り分け、サイラスたちの前にドンッと置いた。

「い、いただきますッ!!」

帝国最高のエリートスパイたちは、もはやスパイの面影など一切なく、涙を流しながらラムチョップにかぶりついた。

「う、うめぇぇぇっ! 隊長、このピザ、チーズが……チーズが無限に伸びます!!」

「肉が……こんな美味い肉、皇帝陛下の晩餐会でも絶対に出ないぞ……!」

サイラスたちが顔をグシャグシャにして喜ぶ姿を見ながら、マリアがふと、優しく微笑んで呟いた。

「……こんなに美味しいお料理、地上の孤児院のみんなや、シスターにも食べさせてあげたいですね。みんな、ずっと芋粥ばかり食べていましたから……」

その言葉に、ジンもピタッと手を止めた。

「……そうだな」

ジンは、かつて自分が所属していた暗殺ギルドの冷酷な日々を思い出し、そして、そこから抜け出すために足掻いた時のことを思い浮かべた。

「俺が暗殺ギルドに追われてた時……あいつら、俺を炙り出すためにマリアの孤児院まで狙いやがった。あの時、身を呈して孤児院の子供たちとシスターを護衛してくれた恩人の冒険者たちがいるんだよ。……あいつらがいなきゃ、俺は今ここでこうして笑って飯を食えてねえ。あいつらにも、この極上肉を腹いっぱい食わせてやりてえな」

「……俺の元部下だった近衛騎士の連中も、きっと俺の無実が証明されて喜んでいるだろう。……それに」

ガレスが、ふっと笑って付け足す。

「俺たちの復讐を肩代わりしてくれて、こんな最高のスパイスまで探して送ってくれるヴィルヘルム国王やオズワルド、ガルド宰相たちにも、この【究極の味】を教えてやりたいな」

トウヤは、仲間たちの顔を見回し、ニカッと笑った。

「よし! なら決まりだ! 今日は特例で【逆デリバリー(出前)】をやるぞ!!」

「「「逆デリバリー!?」」」

トウヤは立ち上がり、魔導石窯と大鍋の前に陣取った。

「サイラス! あんたたち、地上に帰るんだろ? 帰るついでに、俺たちが作ったこの料理を、地上の知り合いたちに『出前』してくれないか!?」

「なっ……! 我々が、君たちの料理を地上へ……!?」

サイラスが驚愕する。

「ああ! 時間経過と温度を完全に停止させる魔法の『保温ボックス』に詰めるから、出来立て熱々のまま届けられる! 国王たちにラムチョップのフルコース! ガレスの部下の騎士団には特大の極上ピザ! そしてマリアの孤児院と、そこを護衛してくれた恩人の冒険者たちには、ピザに加えてフルーツたっぷりのタルトと特濃ミルクのシチューの大盤振る舞いだ!!」

「「「うおおおおおッ!! やりましょうトウヤさん!!」」」

キャンパーたちのモチベーションが、爆発的に跳ね上がった。

彼らは自分たちが食べるだけでなく、恩人や大切な人々に「美味い飯」を振る舞うことにこそ、無上の喜びを感じる美食家たちなのである。

トウヤたちが猛烈な勢いで料理を作り、次々と魔法のボックスに詰め込んでいくのを見て、サイラスはゴクリと唾を呑み込んだ。

「(……これは、ただの出前ではない。大迷宮の深層でしか獲れない【神話級の極上食材】を、地上の重要人物たちに届けるという……我が帝国隠密部隊の歴史上、最も重大な『最重要物流任務』だ!!)」

サイラスは、部下たちを整列させ、ビシッと敬礼した。

「任せてくれ、トウヤ殿! マリア殿! ジン殿! この命に代えても、一滴のスープもこぼさず、熱々のまま地上の皆へ届けてみせる!! 我ら『深淵のウー〇ー配達員』の誇りにかけて!!」

こうして、帝国最強の隠密部隊による、地獄の深層から地上へ向けた『神速の逆出前デリバリー作戦』が幕を開けたのである。

***

【閑話:地上の常識を覆す、神話級の出前(ざまぁならぬ飯テロ)】

その夜。アルカディア王城、ヴィルヘルム国王の執務室。

国王とオズワルド、そして帝国のガルド宰相が、今後の同盟の調整を行っていたその時。

スゥッ……。

音もなく、サイラスが執務室の窓枠に降り立った。その背中には、巨大な魔法の保温ボックスが背負われている。

「サ、サイラス! 戻ったか。して、トウヤ殿たちは香辛料を喜んでおられたか!?」

「ハッ! 大変お喜びでした。……そして、こちらがトウヤ殿たちからの【お礼の品(出前)】であります」

サイラスが保温ボックスを開けた瞬間。

「――――ッッ!?」

執務室内に、ヴィルヘルムたちがこれまで嗅いだことのない、脳髄を直接殴りつけるような『暴力的な肉の香ばしさ』と『芳醇な香草の匂い』が爆発した。

「こ、これは……ッ! なんだこの圧倒的な匂いは!?」

「『黄金巨羊の究極骨付きラムチョップ 〜オロス産香草パン粉焼き〜』であります! トウヤ殿が『いつも世話になってるおっさんたちに食わせてやってくれ』と!」

サイラスが、熱々のラムチョップを皿に取り分ける。

ヴィルヘルムとガルドは、震える手でナイフとフォークを入れ、そして口に運んだ。

「…………ッッ!!??」

ドゴォォォォォンッ!!!

二人の脳内で、巨大な味覚の爆発が起きた。

「う、う、うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

ヴィルヘルム国王が、王の威厳など完全にかなぐり捨てて絶叫した。

「な、なんだこの肉はぁぁぁっ!! 噛まなくても溶ける! なのに肉の旨味が洪水のようになって喉の奥に押し寄せてくる!! 王宮の料理長が三日三晩煮込んだホロホロ鳥の肉が、ただのゴム靴に思えるほどの異常な柔らかさだ!!」

「こ、これが、トウヤ殿たちが大迷宮の底で食べている『日常の食事』だというのか……ッ!?」

ガルド宰相も、涙をボロボロと流しながら骨の周りの肉までしゃぶり尽くしている。

「我々が今まで食べていたものは、ただの『カロリーのある餌』に過ぎなかった……! ああ、なんという至福……! このラムチョップのためなら、私は悪魔に魂を売ってもいい!!」

「分かったぞ、ガルド宰相!!」

ヴィルヘルムが、ラム肉の脂で口の周りをテカテカにしながら立ち上がった。

「彼らがなぜ、大迷宮の深層という地獄に潜り続け、日に何度も光の柱を撃ってまで魔物を狩り続けるのか……! 答えは一つ! 【この異常なまでに美味すぎる肉を食べるため】だ!!」

「ええ……! こんな神の食べ物を知ってしまえば、もう地上の食事などでは満足できるはずがありません! 彼らが迷宮しょくざいのほうこにこだわる理由を、私の舌が、胃袋が、完全に理解いたしました!!」

二人の首脳陣は、トウヤたちの『食への異常な執着』の理由を身をもって体感し、「絶対に彼らの食事の邪魔をしてはならない(そしてあわよくば、またおこぼれを貰いたい)」という決意を、さらに鋼のように固くしたのであった。

***

時を同じくして。

王都の近衛騎士団の兵舎にも、サイラスの部下たちによる『極上ピザ』のデリバリーが到着していた。

「な、なんだこの丸い美味そうな食い物は!?」

「ガレス団長からの差し入れだって!? うおおおっ、いただきます!!」

ガブッ!!

「――――!!? う、うめぇぇぇぇぇっ!! なんだこのチーズ! 濃厚すぎる! そしてこの燻製ベーコンの香り!! エールだ! エールを樽ごと持ってこい!!」

「ガレス団長は、こんな美味いものを食いながら迷宮を踏破してるのか!? ズルすぎる!!(※潜ったら一階層で死にます)」

王都の誇る騎士たちが、涙を流しながらピザを貪り食い、大宴会が巻き起こった。

***

そして、王都の片隅にある小さな孤児院。

夜、静かに眠りにつこうとしていたシスターと子供たち、そして今も孤児院の警護を無償で手伝ってくれている数名の冒険者たちの前に、こっそりと手紙と、魔法のボックスが置かれた。

「マリアお姉ちゃんからだ……!」

「こっちは、ジンの坊主からか? 『あの時は命懸けで守ってくれてありがとな。今の俺から出せる、とびっきりの礼だ』……って」

箱を開けると、そこには宝石のようにキラキラと輝く『幻の七色柑橘の極上タルト』、巨大な『芳醇豚と特濃チーズの極上・窯焼きピザ』、そしてホカホカと湯気を立てる『特濃ミルクの甘いシチュー』が山のように入っていた。

「わぁぁ……! 甘くて、すっごくいい匂い……!」

子供たちが、タルトを一口食べて、目を丸くする。

「おいしい……っ! ほっぺたが落ちちゃうよ!!」

護衛の冒険者たちも、恐る恐るピザを口にして絶句した。

「……おいおいおい、なんだよこのピザ……。王侯貴族だってこんな美味えもん食ったことねえぞ……!」

「ジンとマリアの嬢ちゃん……迷宮の底で、とんでもねえもん食って生きてやがるな。……ははっ、本当に、無事でよかったぜ」

シスターも、特濃ミルクシチューを一口飲み、その優しくて底知れぬ美味しさに涙をこぼした。

「マリア、ジン……あなたたち、本当に素敵な仲間たちと出会えたのね。……神様、どうか彼らの食卓が、いつまでも平和でありますように……」

孤児院の小さな食堂は、かつてないほどの温かくて美味しい笑顔に包まれていた。

***

かくして。

『悠久の踏破者』たちによる気まぐれな「逆デリバリー」は、地上の人々に【食事の概念を根本から覆す神話級の飯テロ】を引き起こした。

それは同時に、地上の人々(特に国王たち)に「絶対に彼らに極上の香辛料を送り続け、定期的にこの出前を要求(お願い)しなければならない」という、新たな生きる目的(欲望)を植え付けることとなったのである。

深淵の底と地上を結ぶ、世界最強のデリバリー業者スパイ

彼らの配達ルートが開通したことで、トウヤたちの迷宮スローライフは、ついに地上をも巻き込んだ『世界規模の極上飯テロ協奏曲』へと発展していくのであった。


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