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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第91話:【閑話】軍事帝国の滅亡と、開通した『極秘の調味料配送ルート』

### 第91話:【閑話】軍事帝国の滅亡と、開通した『極秘の調味料配送ルート』

大陸北部の凍てつく大地に君臨する、戦闘狂の国――軍事帝国ザガン。

その武を象徴する堅牢な王城の玉座の間で、狂王ザガンは信じがたい報告を前に、顔面を土気色に染めていた。

「……もう一度言え。我が国が誇る神話の生体兵器『ギガント・ベヒーモス』が、どうなったと?」

狂王の御前に這いつくばっているのは、迷宮の裏口から数千の軍隊を率いて侵入し、今や数名となって命からがら逃げ帰ってきた隻眼の将軍であった。彼の隻眼は完全に焦点が合っておらず、恐怖と狂気に苛まれていた。

「へ、陛下……! ギガント・ベヒーモスは、裏ルートの過酷な環境で瀕死の重傷を負っていたところを……突如現れた数名の人間たちによって、光輝く極大の回復魔法で『ピカピカの健康体』に治癒され……」

「ほう! ならばその健康な体で奴らを蹂躙したのだな!?」

「い、いえ……完全に元気になった直後、一瞬にして『氷漬けの肉塊』にされ、天を貫く光の柱と共に……奴らの『冷凍庫アイテムボックス』の中に、美味しく収納されてしまいました……!!」

「…………は?」

狂王ザガンが、戦斧を取り落とした。

「そして我々は、それを見て逃げ帰る途中に魔物に襲われ……」

「馬鹿な!! そんな馬鹿な話があるか!!」

狂王が激昂し、玉座を蹴り飛ばした。

「我が国の最高兵器が、ただの『新鮮な食材』として扱われただと!? 貴様、狂ったか!!」

――その、直後であった。

**ズドォォォォォォォォォォンッッ!!!!**

ザガン帝国の王城の天井が、跡形もなく消し飛んだ。

「な、何事だァァァッ!?」

狂王が空を見上げると、そこには太陽の光を遮るほどの絶望が広がっていた。

アルカディア王国が誇る『大型飛空ガレオン艦隊』と、神聖魔導帝国エルドリアの『超弩級・浮遊魔導要塞』が、ザガンの王都上空を完全に制圧していたのである。

そして、要塞の先端から、拡声魔法で増幅された『激怒の声』が降り注いだ。

『――愚かなるザガンの王よ!! 貴様らのその薄汚い泥靴で、我が国の【若き英雄たちの神聖なる食卓】を荒らそうとした大罪、万死に値するぞォォォッ!!』

アルカディア国王ヴィルヘルムと、帝国のガルド宰相である。

「ア、アルカディアとエルドリアの連合軍だと……!? なぜだ、なぜ我が国の極秘作戦がすでにバレて……!!」

『言い訳は聞かん! 万が一、貴様らの送ったあのバケモノの血肉で迷宮の床が汚れ、英雄たちが「飯が不味くなった」とご機嫌を損ねていたらどうするつもりだったのだ!!』

『ええ! 彼らの食事の邪魔をすることは、すなわちこの世界そのものを氷河期に変えるリスクを伴うのです! その程度のことも理解できない野蛮な国家は、ここで歴史から退場しなさい!!』

「し、食事の邪魔……? 飯が不味く……? 何を言っている、貴様ら正気かァァァッ!?」

狂王ザガンには、両国の首脳が本気で「キャンパーの機嫌」のために国を滅ぼしに来ているという事実が、全く理解できなかった。

『問答無用! 全艦、主砲一斉掃射!! 英雄たちのスローライフを脅かす塵どもを、物理的に消し飛ばせェェェッ!!』

圧倒的な魔力砲撃の雨が降り注ぎ、武力のみを信奉した軍事帝国ザガンは、その理不尽極まりない理由(食事の邪魔未遂)によって、わずか半日にして地図上から完全に消滅(無条件降伏)することとなったのである。

***

【数日後・『悠久の大迷宮』第42階層(裏ルート)】

ザガン帝国が滅亡したことで、彼らがベヒーモスを送り込むために使っていた『迷宮の裏口(地下水脈)』は、そのままアルカディア・エルドリア連合の完全な管理下に置かれることとなった。

そして現在、その暗い裏ルートの入り口に立っていたのは、帝国の特級隠密部隊『影歩く者』の隊長サイラスと、彼の部下たちであった。

彼らの背中には、彼らの本来の任務(暗殺や諜報)とは全く似つかわしくない、巨大な『木箱』がいくつも背負われていた。

「……隊長。俺たち帝国最高峰の隠密部隊が、なぜこんな……」

部下の一人が、木箱の重さに耐えながら涙声で尋ねる。

「泣き言を言うな」

サイラスもまた、深い溜息を吐きながら木箱を背負い直した。

「ザガン帝国への制裁後、世界中の国々が『英雄の胃袋を掴むことこそが生存戦略だ』と理解し、アルカディアへ次々と『極上の食材や調味料』を献上してきたのだ。特に、オロス連盟から届いた【世界最高峰の香辛料セット】は、ヴィルヘルム王たちを大いに喜ばせた」

サイラスの顔が、どこか遠くを見るような目に変わる。

「だが、地上の人間が正面からそれを大迷宮の深層へ持っていけば、キャンパーたちの『非日常のスローライフ』に水を差すことになる。……そこで、我々隠密部隊の出番だ」

そう。サイラスたちに与えられた新たな極秘任務は。

**『この裏ルートを使い、キャンパーたち(トウヤ一行)に気づかれないよう先回りし、彼らの通り道にある宝箱の中身をすり替えたり、あるいは偶然を装って【極上の香辛料や珍味】をドロップ品として配置デリバリーする』**ことであった。

「いいかお前ら。決してキャンパーたちに姿を見られるな。彼らが『おっ、この宝箱、すげえ良いスパイスが入ってるぜ!』と喜ぶように、極めて自然に配置するのだ。我々のこのウーバーな任務が、世界の平和と、彼らの美味しい食卓を支えているのだ!!」

「「「了解しましたッ!!(でも、もし見つかったら、またあの極上のBBQを分けてもらえるかな……)」」」

帝国最強のスパイたちは、己の隠密技術の全てを「調味料の裏口配達」に注ぎ込む決意を固めたのである。

***

【そして、同時刻。アルカディア王城・バルコニー】

ザガン帝国の完全制圧と、裏口の確保を終えたヴィルヘルム国王とガルド宰相は、世界に向けて『第二回・絶対同盟の大布告』を行っていた。

『世界中の国々よ! 先日、軍事帝国ザガンが、あろうことか我らの誇る若き英雄たちの神聖なる食卓(迷宮の階層)を、泥靴で荒らそうとするという大罪を犯した!』

ヴィルヘルムの怒りの声が、魔法通信網を震わせる。

『故に我々は、宣言通りザガン帝国を完全に粉砕し、彼らの国力を無力化した! 何人たりとも、英雄たちのスローライフを害することは許さん!!』

その布告は、世界中に「絶対同盟の言葉に嘘はない(そして英雄への執着は異常である)」という究極の恐怖を植え付けた。

『しかし!』

ガルド宰相が、声を和らげて続ける。

『英雄たちに敬意を払い、彼らの生活を豊かにしようとする者たちには、我々は最大限の友誼をもって応える! この度、最も早く同盟への参加を表明し、英雄たちのために【世界最高峰の香辛料】を献上してくれた【海洋通商連盟国家・オロス】の同盟参加を、我々はここに大いに歓迎する!!』

この「オロス連盟の同盟参加承認」のニュースは、世界中の首脳陣に電流のような衝撃を走らせた。

((((やはり……! あの英雄たちの「胃袋」に貢献することこそが、この絶対同盟に加わり、自国を守るための絶対条件なのか!!))))

この瞬間から、世界情勢はかつてないほどの『異常なベクトル(飯テロ支援)』へと加速し始めた。

中立を保つか参加するかで揺れていた国々は、こぞって「我が国特産の幻のチーズを!」「千年熟成のワインを!」と、国家の威信をかけた極上食材をアルカディアへ送りつけ、同盟参加の申請を雪崩のように行い始めた。

サイラスたちの「裏口デリバリー」の荷物は、これから先、地獄のように増え続けることが確定したのである。

一方で。

軍事帝国ザガンのように、裏で武力を蓄え、迷宮や古代兵器を奪おうと懐疑的だった小国たちは。

「……む、無理だ。あんな光の柱を日に何度も撃つバケモノたちに、世界の二大国が狂信者のように傅いている。ザガンのように逆らえば、国ごと消し飛ばされる!」

彼らは即座に全ての野心を捨て去り、「我が国は永遠に完全中立を貫き、英雄たちの安眠を草葉の陰からお祈り申し上げます!」と、平身低頭の絶対不可侵を誓うこととなった。

***

かくして。

迷宮の底で、何も知らずに恐竜のステーキを腹いっぱい食べているキャンパーたちの存在によって。

世界からは「戦争」や「武力による侵略」という概念が完全に消え去り、代わりに『どれだけ美味いものを英雄トウヤたちの食卓に届けられるか』という、謎の「極上食材プレゼン大会」による平和な世界統一が始まろうとしていた。

「ハックションッ!!」

第43階層の恐竜台地。特大ステーキを焼いていたトウヤが、再び盛大にくしゃみをした。

「……おかしいな。またすっげえ背中がムズムズしたぞ。風邪引いたか?」

「トウヤの兄貴、塩コショウだけじゃなく、たまには別のスパイスも欲しいよなー」とジンが笑う。

「そうだな。まあ、羅針盤もあるし、次の階層の宝箱あたりで都合よく極上のスパイスでもドロップしねえかな」

世界の命運と平和を決定づけた究極の美食家たちは、自分たちの足元(数階層上)に帝国最高峰の隠密部隊が極上スパイスを担いで必死に駆け下りてきていることなど知る由もなく、今日も能天気に極上肉を頬張るのであった。


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