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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第89話:美食羅針盤の導きと、太古の恐竜台地での極上ステーキ合宿

### 第89話:美食羅針盤の導きと、太古の恐竜台地での極上ステーキ合宿

『悠久の大迷宮』第41階層――『琥珀の果樹園と神蜜の川』。

昨晩、手に入れたばかりの【無限の果樹・神蜜工房】から抽出された芳醇な果実酒と、黄金ターキーのハニーローストを限界まで堪能し、心身共に完璧に満たされた『悠久の踏破者』の八人(六人と三匹)。

翌朝。爽やかな果樹園の風を浴びながら、トウヤは新しく手に入れた神話級アーティファクト『天啓の美食羅針盤』を手のひらに乗せていた。

「いやー、この羅針盤マジで便利だぞ。次の第42階層の様子が、扉を開ける前になんとなく分かる」

トウヤの言葉に、身支度を整えた仲間たちが興味津々で集まってくる。

「おお! トウヤの兄貴、それで次の階層にはどんな極上肉が待ってるんだ!?」

ジンがヨダレを拭いながら尋ねる。

「……それがな」

トウヤは、羅針盤の盤面を指差した。

そこには、安全地帯(次の階層への階段)を示す青い光の矢印だけが真っ直ぐに点灯しており、極上食材を示す黄金色の反応は【完全にゼロ】であった。

「……第42階層、食材反応ゼロだ。おそらくアンデッドか石ころの類しかいない『完全なハズレ階層』だ」

「「「…………」」」

八人(六人と三匹)の間に、一瞬の静寂が落ちた。

しかし、過去に何度もハズレ階層で「生殺し」や「精神的苦痛」を味わってきた彼らの反応は、もはや絶望ではなく、極めて合理的かつ冷酷なものへと進化していた。

「なるほど」

ガレスが、無表情のまま『太陽神の鏡盾』を構えた。

「開けてガッカリするより、事前に分かっているなら話は早い。要するに『一秒も長居する必要のないゴミ捨て場』ということだな」

「ええ。羅針盤が次の階段の正確な位置を示しているのなら、迷宮の構造など無視して【最短距離を直線で】突き進めばよろしいですわね」

エリスが、淑女の微笑みを浮かべながら『竜殺しの重剣』にマグマの闘気を纏わせる。

「よし、作戦は『神速の通り抜け』だ! 邪魔する壁も魔物も全部ぶち抜いて、最速で第43階層に行くぞ!!」

「「「了解(消え失せろ)ッッ!!!!」」」

***

ギギギギギギ……ッ!!

第42階層――『風化する砂岩の迷宮と亡霊騎士』。

扉の先に広がっていたのは、文字通りカサカサに乾燥した砂岩の壁で構成された複雑な大迷路と、そこを徘徊する実体のないアンデッドたちであった。

「邪魔ですわァァァッ!! 【渾身撃・オーバードライブ・城壁砕き】!!」

ズドォォォォォンッ!!

迷路? 関係ない。

エリスの大剣とガレスの爆炎が、羅針盤の青い矢印が指し示す方角にある「砂岩の壁」を次々と物理的に粉砕し、強引に直線ルートを開拓していく。

群がってくる亡霊騎士たちは、マリアの【ホーリー・レイ】によって文字通り一瞬で浄化され、悲鳴を上げる間もなく光の粒子となって消え去った。

圧倒的すぎる蹂躙。

彼らは第42階層に入ってから、ただの一度も足を止めることなく、わずか『15分』で隠れボス(巨大な骸骨騎士)の部屋に到達。それすらもルミナの【アブソリュート・ゼロ】で出落ちの瞬間冷凍粉砕に処し、宝箱だけを流れ作業で回収して、さっさと第43階層への階段を駆け下りたのであった。

「……よし! ゴミ掃除完了だ! 全く、羅針盤のおかげで無駄な労力とメンタルを削られずに済んだぜ!」

トウヤが羅針盤の盤面を撫でながら笑う。

「ガッハッハ! 全くだ! 腹が減る前にハズレ階層を抜けられたのはデカいぞ!」

「トウヤさん! 羅針盤、次の第43階層はどうなっていますか!?」

マリアが期待に目を輝かせる。

トウヤが第43階層の扉の前で羅針盤を確認すると――。

盤面全体が、眩いほどの『黄金色の光』で埋め尽くされた。

「……おい、お前らァァァッ!!」

トウヤの声が、歓喜でブルブルと震えた。

「黄金の反応が、数え切れないほど無数にある! しかも、この階層……これまでの森や海とは比べ物にならないくらい『果てしなく広大』だぞ!!」

「「「広大で、極上の当たり階層ッッ!!」」」

全員のタガが、音を立てて吹き飛んだ。

「行くぞ!!」

バンッ!! と、トウヤが勢いよく大扉を蹴り開けた。

――そこに広がっていたのは、まさに「太古のロマン」そのものであった。

第43階層――『太古の巨樹海とジュラシック・プラトー(恐竜台地)』。

見上げるほど巨大なシダ植物や古代樹が生い茂るジャングルを抜けた先には、地平線の彼方まで続く広大な台地が広がっていた。突き抜けるような青空の下、大地を揺るがしながら歩いているのは……超巨大な『恐竜』の魔物たちであった。

「ピィィィッ!!(兄貴! すっごくおっきなお肉がいっぱい歩いてるよ!!)」

上空に飛び立ったクーが、大興奮で念話を飛ばす。

トウヤの【神眼の指揮】が、台地を闊歩する巨大生物たちを次々と解析していく。

「見ろお前ら! あの首の長い巨大草食竜『ハーブ・マーブル・ブロントサウルス(香草霜降り巨竜)』! 台地に生える極上の魔法ハーブだけを食べて育ったせいで、肉の内部に完璧な『香草の風味』と『究極の霜降り脂』が最初からマリネされた状態で仕上がってやがる!!」

「「「最初から、香草マリネの霜降り肉ッ!!?」」」

「それだけじゃない! 奥の方で吠えてる凶暴そうな二足歩行の肉食竜『タイラント・ステーキ・レックス(暴君赤身竜)』! 凄まじい運動量で鍛え上げられたその体は、ナイフがスッと入るほど柔らかいのに、噛めば肉汁が爆発する『究極の極厚赤身ステーキ肉』の塊だァァァッ!!」

「「「究極の、極厚赤身ステーキ肉ゥゥゥッ!!!」」」

エリスとジンの目から、もはや人間としての理性が完全に蒸発した。

「ステーキ! 骨付きの特大マンガ肉ですわぁぁッ!!」

「ヒャッハー!! どいつもこいつもビルみたいなデカさだぜ! 肉の山だァァァッ!!」

トウヤが、興奮する仲間たちをバンッと手で制した。

「待てお前ら! 落ち着け! この階層はとにかく広すぎるし、獲物がデカすぎる! 今までみたいに1、2時間で狩り尽くして『ハイ終わり』って規模じゃねえ!!」

トウヤは広大な恐竜台地を見渡して、ニヤリと笑った。

「ここは、数日かけてじっくりと腰を据えて狩りを行う! 今日から数日間は、この恐竜台地での『極上ステーキ狩猟合宿』だ!! 獲物がデカい分、肉を劣化させないための繊細な解体が求められるぞ!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

こうして、広大なる太古の台地を舞台にした、美食家たちによる「丁寧かつダイナミックな恐竜狩り」が幕を開けた。

「まずはあの首長竜ブロントサウルスの香草霜降り肉からいただきますわ! 【次元歩行の靴】起動!」

エリスが虚空に足場を作り、体長三十メートルを超える首長竜の頭上へと一気に駆け上がる。

「お肉にストレスはかけません! 一瞬でお眠りなさいませ! 【渾身撃・寸止め・脳天落とし】!」

ドゴォォォンッ!!

巨大な首長竜が、痛みを感じる間もなく白目を剥いてズシンと大地に倒れ伏す。

「ナイスだエリス! ルミナ、マリア! そのまま鮮度を保つために全体を急速冷却しろ!」

「「はいっ!!」」

二人の魔法が首長竜の体を適切な温度に保ち、そこへトウヤが『神斬りの業物』を構えて飛び込む。

「【空間斬り・千紫万紅】! 完璧な霜降りブロック肉に切り分けるぜ!」

圧倒的な巨体を持つ恐竜が、トウヤの包丁(空間魔法)によって、美しいサシの入った巨大なステーキ肉へと次々と解体され、アイテムボックスへと収納されていく。

「ヒャッハー! 次はあっちの暴君竜(Tレックス)だ! ジン様が神速で腱を斬ってやるぜ!」

「ガッハッハ! 暴君の突進なんざ俺の盾で受け止めてやる! 来いッ!!」

彼らは焦ることなく、しかし一切の無駄のない完璧な連携で、広大な台地の極上肉を一つ一つ丁寧に「収穫」していった。

広大な階層ゆえにシステムが異常を検知することもなく、穏やかな(恐竜にとっては絶望的な)狩猟の時間が流れていく。

***

そして、夕暮れ時。

オレンジ色に染まる恐竜台地の安全な岩陰に、【星の箱庭】の拠点が展開されていた。

「いやー、今日はよく動いたな! アイテムボックスの中は、香草霜降り肉と極厚赤身肉でパンパンだぜ!」

トウヤが満足げに汗を拭う。

「ええ! 本当に広くて、最高の狩り場ですわ! 明日も明後日も、このお肉が獲れるなんて幸せすぎますの!」

拠点の外庭テラスには、特大のBBQコンロが設置され、『神鳥の黄金炭』がパチパチと心地よい音を立てて燃えていた。

「さあ食え!! 初日のディナーは、シンプルにして最強! 『ハーブ・マーブル・ブロントサウルスの極上霜降り特大ステーキ』! そして『タイラント・レックスの極厚マンガ肉・炭火焼き』だ!!」

ジュワァァァァァァッ……!!!

炭火の上に分厚い肉塊が乗せられた瞬間、暴力的なまでの肉汁が滴り落ち、香ばしいハーブと獣脂の匂いが台地の風に乗って広がった。

「いただきますッ!!」

ジンが、自分の顔よりも大きいタイラント・レックスの赤身ステーキに噛み付く。

「――――ッッ!! うめぇぇぇっ!! なんだこれ、赤身なのに全然硬くねえ! 噛んだ瞬間に肉の旨味の爆弾が口の中で弾け飛んだぜ!!」

「ハフッ、んんんッ……!! こちらの首長竜の霜降り肉も最高ですわ! 脂が信じられないくらい甘くて、お肉自体から爽やかなハーブの香りがしますの! 永遠に食べられそうですわぁ……!」

エリスが、両手で頬を押さえながらとろけるような笑顔を見せる。

「ガッハッハ! 無限発酵蔵で造った極上の赤ワインが水のように消えていくぞ! 最高だ!!」

ガレスが樽ジョッキでワインを煽り、マリアとルミナも巨大なステーキを前に満面の笑みでナイフとフォークを動かしている。

地上の国々が「迷宮の奥底で、若き英雄たちが世界の命運をかけて神話の魔物と死闘を繰り広げている」と固く信じ、彼らを怒らせないために必死の同盟を結んでいるその頃。

当の英雄たちは、太古の恐竜台地で数日間の『極上ステーキ合宿』を満喫し、口の周りを肉汁でベタベタにしながら、心の底から大自然のBBQを楽しんでいた。

羅針盤という新たな道標を得て、ハズレ階層を神速でスルーできるようになった彼らの美食スローライフは、もはや誰にも止められない無敵の領域へと突入していくのであった。


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