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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第87話:絶対同盟の裏で、大ボス瞬殺と天空のフルーツターキー

### 第87話:絶対同盟の裏で、大ボス瞬殺と天空のフルーツターキー

地上の世界では、アルカディア王国と神聖魔導帝国エルドリアという大陸の二大国家が、「迷宮の底にいる若き英雄たちのスローライフ(と食事の時間)を絶対死守する」という、あまりにもスケールの大きすぎる(そして盛大な勘違いに基づく)歴史的な絶対同盟を高らかに宣言していた。

しかし、当の「若き英雄」たちはといえば。

昨晩の『深淵の霜降りミノタウロスの極上ビーフシチュー』で胃袋を満たしきり、最高にハッピーな気分のまま、一つの大きな区切りである第40階層――大ボスの間へと続く白亜の大扉の前に立っていた。

「……さて! 30階層台の後半は、環境最高・食材ゼロの『生殺し』が続いて精神が削られたが、大ボス階層は絶対に美味い奴が来るはずだ!」

トウヤが、大扉に手をかけながらニヤリと笑う。

「ええ! 私、もう食べられない魔物はお腹いっぱいですわ! ドカンと大きくて、ジューシーなお肉が待っていると信じていますの!」

「ガッハッハ! どんな強大なボスだろうが、今日の俺たちは一撃で仕留めるぜ!」

地上で世界平和が確約されたことなど微塵も知らない彼らの頭の中には、「今日の昼ご飯は何だろう」という能天気な思考しか存在していなかった。

ギギギギギギ……ッ!!

トウヤが力強く扉を押し開ける。

その瞬間、扉の先から吹き込んできたのは、澄み切った冷たい風と、鼻腔をくすぐる『極上の獣脂』の匂いであった。

「……おおっ!?」

一行が足を踏み入れると、そこはどこまでも続く白銀の雪山と、頭上に美しいオーロラが輝く『白雪の霊峰と氷晶の湖』であった。

刺すような寒さではあるが、新装備である『次元歩行の靴』やこれまでの防寒具のおかげで、彼らにとってはただの「快適な冬の絶景」に過ぎない。

ドゴォォォォォォンッ!!

湖の厚い氷が砕け散り、凄まじい地響きと共に『第40階層の大ボス』が姿を現した。

体長は優に六十メートルを超える。白銀の毛皮を纏い、山のように巨大な筋肉の塊を持った、極北の王。

『極北の帝熊エンペラー・スノー・ベア』であった。

「グォォォォォォォォォッ!!」

霊峰の雪崩を引き起こすほどの凄まじい咆哮。通常の冒険者であれば、その威圧感だけで心臓が止まるであろう強大なバケモノである。

しかし、トウヤの【神眼の指揮】は、その恐怖の象徴を「奇跡の食材」として完璧に解析していた。

「おい、お前らァァァッ!!」

トウヤの歓喜の絶叫が、霊峰に響き渡った。

「あの大ボス! 久しぶりの環境と極上食材の完璧なセットだ! 極寒の雪山で鍛え抜かれたおかげで、身が信じられないくらい引き締まった『究極の赤身肉』だ! そして何より……あの『右前足(熊の手)』!! 霊泉の水を飲んで育ったせいで、臭みが一ミリもない『神話級のゼラチン質と旨味の塊』だぞォォォッ!!」

「「「神話級の、熊の手ェェェッ!!?」」」

全員の理性が、白銀の世界へと綺麗に吹っ飛んだ。

「熊肉の極上スープ! そして熊の手のトロトロ煮込みですわ!!」

エリスがヨダレを撒き散らしながら大剣を構える。

「ヒャッハー! あのデカい右腕は俺の短剣で綺麗に切り落としてやるぜ!」

「暴れさせて肉を硬くするな! 一瞬で仕留めろ!!」

「「了解いただきますッッ!!!!」」

「ガァァァッ!?」

帝熊が、全てを粉砕する右前足を振り下ろそうとした、その瞬間。

「肉質は落とさせませんわ! 【渾身撃・オーバードライブ・脳天砕き】!」

エリスが『次元歩行の靴』で空中を駆け上がり、大ボスの脳天に寸分の狂いもなく大剣の峰を叩き込んで気絶させる。

「右腕、いただきます! 【直感回避・神速・関節抜き】!」

ジンが神速の刃で、究極の食材である右前足の関節の神経を綺麗に切断する。

「マリア! 究極の熊肉を、絶対に劣化させないで!」

「はいっ! 完璧な密閉冷凍庫となりなさいッ!!」

カッ――――!!!!

白銀の霊峰をさらに真っ白に染め上げる、圧倒的な閃光。

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

第40階層の大ボスは、反撃の隙すら一切与えられず、お馴染みの『純白の光の柱』によって超巨大な冷凍熊肉へと姿を変えた。

(※地上の王城では、ヴィルヘルム国王が「おお、我が同盟の祝砲が上がったな!」と、都合よく解釈してガルド宰相たちと乾杯していた)

「よぉーし!! 大ボス即殺完了だ!!」

トウヤが【空間斬り】で魔力コアを処理し、大喜びで巨大な肉のブロックをアイテムボックスに収納する。

「おっ! トウヤの兄貴、大ボス瞬殺ボーナスの超豪華な宝箱が出たぜ!」

ジンが開けた宝箱からは、神々しい光を放つ羅針盤が現れた。

「おおっ! これは……【神話級アーティファクト:天啓の美食羅針盤】だ!!」

トウヤがシステムアナウンスを確認し、歓喜に打ち震えた。

「これを設定すれば、未踏の階層でも『特定の食材』や『安全地帯(環境の良い場所)』の方向を正確に指し示してくれる! これからの探索(という名の食材探し)の効率が爆上がりするぞ!!」

「「「うおおおおおッ!! 神ドロップだァァァッ!!」」」

これまでは扉を開けるまでどんな環境か分からなかったが、この羅針盤があれば、ハズレ階層の探索を最短ルートでスルーし、極上食材の元へ一直線に向かうことができるのだ。

時刻は、まだお昼前。

「よし! 羅針盤のテストも兼ねて、このまま第41階層にも降りちまうか!」

「ガッハッハ! 全く異存はねえ! 次の極上ツマミを探しに行こうぜ!」

***

ギギギギギギ……ッ!!

第41階層への扉を押し開けた一行を待っていたのは――。

「おおっ……!!」

鼻腔をくすぐる、甘く芳醇な果実の香りと、暖かい日差し。

第41階層――『琥珀の果樹園と神蜜の川』。

見渡す限り、リンゴやブドウ、桃など、世界中のあらゆる果実が黄金色に輝きながら実る広大な果樹園が広がり、その間を流れる川はなんと、キラキラと輝く『琥珀色の蜂蜜』であった。

「き、綺麗……! そして、すっごく甘くていい匂いがします!」

マリアがうっとりとした表情で両手を組む。

羅針盤の針は、真っ直ぐにこの果樹園の奥を指し示していた。

そこを歩き回っていたのは、丸々と太った巨大な七面鳥『フルーツ・ターキー(果実喰いの七面鳥)』と、蜜の川の上を飛ぶ巨大な蜂『エンペラー・ハニービー』の群れ。

「お前ら! 羅針盤の指し示す通り、特大の当たり階層だ!!」

トウヤが絶叫する。

「あの七面鳥、果物と神蜜だけを食べて育ったせいで、肉そのものに『極上のフルーティーな甘みと香り』が染み込んでやがる! ローストターキーにしたら、肉汁と果汁が合わさって世界が滅ぶほど美味いぞ!! そしてあの川の蜂蜜は、どんな砂糖もひれ伏す『究極の神蜜』だ!!」

「「「究極の、フルーツ・ターキーッ!!?」」」

「果汁滴るローストターキー! 蜂蜜たっぷりのパンケーキですわぁぁッ!!」

もはや、彼らを止めることは誰にもできない。

「よし! 蜂の針には気をつけろ! ターキーは肉に傷をつけずに丁寧に仕留めろ! 夕方まで狩り尽くすぞ!!」

「「「いただきますッッ!!!!」」」

美しい果樹園で、本日二度目となる生態系の神速蹂躙が幕を開けた。

ジンとエリスが空を駆け回り、フルーツ・ターキーの神経を次々と切断していく。トウヤは空間収納の魔法で、木になっている極上のフルーツと、川の神蜜をバケツリレーのように回収していく。

環境が良く、食材も極上。彼らにとってこれ以上ないパラダイスである。

そして夕方。彼らが果樹園のターキーをあらかた狩り尽くしたその時。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!

果樹園の中央にある巨大な大樹が割れ、体長五十メートルに達するこの階層の隠れボス『ギガント・フルーツ・ターキー(黄金の七面鳥王)』が姿を現した。

「トウヤさん! あの親玉のお味は!?」

「最高級のさらに上だ! 果物の魔力を凝縮した『究極の黄金ターキー肉』だ! 暴れさせて肉質を落とすな! 一瞬で凍らせろ!!」

「「了解です!! 完璧な温度で、瞬間冷凍しますッ!!」」

カッ――――!!!!

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

夕焼け空を真っ白に染め上げ、本日二本目となる『純白の光の柱(超特大冷凍保存魔法)』が天を貫いた。

(※地上の王城では、ヴィルヘルム国王が「おお、夕方にもう一本! 我らの同盟は永遠なり!」と歓喜の涙を流していた)

「よぉーし!! 黄金ターキー、完全回収だ!!」

トウヤが【空間斬り】で解体する。

「おっ! 隠れボスの宝箱だぜ!」

ジンが開けた宝箱の中には、神々しい光を放つ小さな「温室」のミニチュア模型が入っていた。

「【無限の果樹・神蜜工房キット】だ!! これを拠点に設置すれば、今日獲れたフルーツと神蜜が全自動で栽培・抽出され、極上のジャムや果実酒が無限に造り出されるぞォォォッ!!」

「「「ジャムと果実酒が、無限にィィィッ!!?」」」

大人組(ガレス、ジン、エリス)が狂喜乱舞した。

「ガッハッハ! 40階層からの深層は本当に最高だな! 宝も食材も大豊作だ!」

「ええ! 早く拠点に戻って、新しい果実酒で乾杯しましょう!」

「よし! 今夜は拠点の大広間で、『極北帝熊のトロトロ熊の手煮込み』! そして『黄金ターキーの極上ハニーロースト 〜特製フルーツソース〜』の最強ディナーだ!!」

「「「うおおおおおおッ!! 熊の手だァァァッ!!」」」

地上で世界規模の歴史的同盟が結ばれていることなどつゆ知らず、極上の熊肉とフルーツターキーを求めて一日で二度の光の柱をぶっ放した『悠久の踏破者』たち。

彼らの非常識極まりない迷宮スローライフは、究極のハニーローストの甘い香りとともに、今夜も絶好調で更けていくのであった。


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