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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第81話:海神の呼吸輪と、深淵の海中神殿に眠る「古代の白身肉」

### 第81話:海神の呼吸輪と、深淵の海中神殿に眠る「古代の白身肉」

『悠久の大迷宮』第33階層――『瑠璃色の珊瑚礁と白亜の海岸』。

昨晩、手に入れたばかりの神話級設備『時空の豊穣酒造&発酵蔵』から無限に湧き出る極上のビールと醤油をお供に、特大生ウニ丼と牡蠣、そしてイカスミパスタを限界まで堪能した『悠久の踏破者』の八人。

翌朝。エメラルドグリーンの美しい海から昇る朝日を浴びながら、彼らは波打ち際の白い砂浜で優雅なモーニングコーヒー(と、昨日のイカの余りで作った極上イカリング)を楽しんでいた。

「いやー、ここは本当に最高の階層だな。景色はいいし、気候も暖かいし、何より海鮮が美味すぎる」

トウヤが、砂浜のデッキチェアで伸びをしながら言う。

「ええ! 昨日の夜は本当に幸せでしたわ。これまでのハズレ階層の疲れが、波の音と一緒に完全に洗い流されましたの」

エリスも、水着の上に軽い羽織を羽織ったバカンス仕様の格好で、優雅にイカリングを齧る。

そんな中、波打ち際でヤドカリを突いていたジンが、ふと海面を見つめて振り返った。

「なぁ、トウヤの兄貴。昨日俺たちが狩ったウニや牡蠣って、せいぜいこの浅瀬の珊瑚礁の範囲だけだったよな?」

「ん? ああ、そうだな。沖合には巨大イカの隠れボスがいたが、基本は海岸沿いでの収穫だった」

「ってことはさ……この果てしなく広がる海の『底』には、まだ俺たちの知らない極上の深海魚や、とんでもない海鮮が眠ってるんじゃないか?」

ジンのその一言に、全員のピクッと耳が動いた(クーとクロとリルも反応した)。

「そういえば……!」

マリアがポンッと手を打つ。

「私たち、ずっと前に第12階層の深海王昆布を獲った時に、大ボスから『海神の呼吸輪』という水中で呼吸ができるアーティファクトを手に入れていませんでしたか!?」

「おおっ! そうだ、アイテムボックスの奥に突っ込んだまま忘れてたぜ!」

トウヤが虚空に手を突っ込み、青い宝石が埋め込まれたリングを取り出す。これを起動すれば、パーティ全員が水中でも陸上と全く同じように呼吸ができ、水圧も無効化されるという超便利アイテムである。

「ガッハッハ! そいつはいい! 浅瀬の海鮮であれだけ美味かったんだ、深海の食材はどれほどの旨味を隠し持っているか想像もつかねえぞ!」

「行きます! 行きましょうトウヤさん! 私、トロピカルなお魚のお刺身が食べたいですわ!」

お腹いっぱい朝食を食べたばかりだというのに、彼らの底なしの探求心(食欲)は留まることを知らない。

トウヤは『海神の呼吸輪』に魔力を流し込み、全員の体に薄い水の皮膜のような結界を纏わせた。

「よし! 今日は趣向を変えて、第33階層の『海中探索(ダイビング&フィッシング)』だ! 極上の海鮮を探すぞ!」

「「「おおおおおッ!!」」」

ザパーーーンッ!!

一行は躊躇うことなく、エメラルドグリーンの海へと飛び込んだ。

***

海の中は、地上以上に息を呑むほどの幻想的な世界であった。

巨大な色とりどりの珊瑚が森のように群生し、太陽の光が水面を透過して光のカーテンのように降り注いでいる。その間を、宝石のように輝く魚の群れが泳ぎ抜けていく。

『海神の呼吸輪』のおかげで、彼らは水底を陸上と全く同じように歩き、空を飛ぶように泳ぐことができた。

そして当然、ただ景色を楽しむような彼らではない。

「トウヤの兄貴! あそこに丸々と太った銀色の魚の群れがいるぜ!」

「あれは『プラチナ・シマアジ』だ! 脂の乗りが尋常じゃないぞ! ジン、傷をつけずに仕留めろ!」

「ヒャッハー! 水の抵抗なんて関係ねえ! 【直感回避・神速・水月突き】!」

「あ! トウヤさん、あの岩の隙間に巨大なアワビが!」

「『エメラルド・アワビ』だな! バター焼きにすると最高だ! エリス、殻を割らずに岩から剥がせ!」

「お任せくださいませ! 【渾身撃・寸止め】!」

水中の物理法則すら彼らの圧倒的なステータスの前では意味を成さず、極上の高級魚や貝類が次々とトウヤのアイテムボックスへと吸い込まれていく。

そうして海中を乱獲しながら、さらに深い海溝トレンチへと潜っていった時のことだった。

「ピィィッ!(兄貴! この深い溝の奥から、すっごく強い魔力と……古い匂いがするよ!)」

頭の上の水のドームに入ったクーが、海底のさらに奥を指して鳴いた。

「……ん? なんだあれは」

トウヤたちが海溝の底を覗き込むと、そこには周囲の珊瑚礁とは明らかに異質な、白亜の大理石で作られた巨大な建造物が沈んでいた。

柱には古代の文字が刻まれ、入り口には巨大な水の渦が巻いている。

「『深淵の海中神殿』……! システムのアナウンスによれば、この階層の『隠しルート』みたいだな」

トウヤが【神眼の指揮】で神殿を解析する。

「どうやら、昨日倒した巨大イカとは別の『第二の隠れボス』がこの奥に眠っているらしい」

「「「第二の隠れボスッ!!」」」

全員の目が、海底の暗闇の中でギラリと光った。

「決まりですね! 第一の隠れボスが究極のイカだったのですから、第二の隠れボスも絶対に極上の海鮮に決まっていますわ!」

「ガッハッハ! まさか一日で二度も大物に出会えるとはな! 迷宮の神様に感謝だぜ!」

一行は一切の警戒もなく、むしろヨダレを垂らしながら海中神殿の渦の中へと突入した。

神殿の内部は、水で満たされたダンジョンになっていた。

『パール・ゴーレム(真珠の泥人形)』や『コーラル・ナイト(珊瑚の騎士)』といった水陸両用のガーディアンたちが襲いかかってきたが。

「食べられない石ころが、私の海鮮への道を塞がないでくださいな! 【渾身撃・オーバードライブ】!」

「邪魔だ! 【魔力城塞・水蒸気爆発】!」

エリスの大剣が真珠のゴーレムを粉砕し、ガレスの超高熱の盾が周囲の海水を沸騰させて珊瑚の騎士を茹で上げる。

食べられない魔物に対する彼らの『作業(殲滅)』は無慈悲を極め、海中神殿の道程はわずか十数分で最奥の「大祭壇の間」へと到達した。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!

神殿の最奥。祭壇の上に鎮座していた巨大な岩塊がパカッと割れ、中からとてつもない威圧感と共に『それ』が現れた。

体長三十メートル。頭部から背中にかけて、ミスリルよりも硬いとされる古代の重装甲殻に覆われ、巨大な顎にはノコギリのような牙が並ぶ。

第33階層・裏隠れボス――『古代海神の巨鎧魚エンシェント・ダンクルオステウス』であった。

「ト、トウヤの兄貴! なんだあのバケモノ魚! 頭が完全に鋼鉄の塊だぜ!?」

ジンの問いに、トウヤの目がカッ! と見開かれた。

「当たりだお前らァァァッ!! あの古代魚、頭部の装甲が重すぎるせいで、それを支える『首から下の筋肉(白身)』が信じられないくらい発達してやがる!! 深海魚特有の水分を全く感じさせない、プリップリでフワッフワの『究極の白身肉』だ! 極厚のフィッシュ&チップスや、焦がしバターのムニエルにしたら世界が滅ぶほど美味いぞォォォッ!!」

「「「究極の白身肉ッ!! ムニエルゥゥゥッ!!」」」

装甲の硬さなど、彼らには「食べられない殻」以上の認識はなかった。

「ギュォォォォォォッ!!」

古代鎧魚が、神殿を崩壊させるほどの超水圧のブレスを放つ。

「水鉄砲なんざ俺の盾の前じゃそよ風だ! 【魔力城塞・極・圧縮天蓋】!」

ガレスが神話級の盾を構え、超水圧のブレスを真正面から受け止めて完全に霧散させる。

「硬い頭は食べませんわ! お肉の部分だけをいただきます! 【渾身撃・滅砕・装甲剥がし】!」

エリスが海底を蹴り、古代魚の頭部と胴体の境目(装甲の最も薄い部分)に、マグマの闘気を纏った大剣を寸分の狂いもなく叩き込む。

「ギャァァァッ!?」

「ヒャッハー! 動きが止まったぜ! 関節とヒレの神経、全部もらう! 【直感回避・神速連撃】!」

ジンが神速で魚の周囲を駆け巡り、古代魚の機動力を完全に奪い去る。

「仕上げです! 究極の白身肉、絶対に鮮度を落としません!」

「海底だろうと関係ありません! 凍りつきなさいッ!!」

カッ――――!!!!

海底神殿の深淵を、全て白く染め上げる圧倒的な閃光。

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

マリアとルミナの融合魔法『純白の光の柱(超特大冷凍保存魔法)』が、古代魚を完全に氷漬けにした後――その勢いのまま神殿の天井をぶち抜き、さらに第33階層の数十メートルの海水を割って、地上の空へ、そして王都の空へと向かって一直線に噴き上がった。

(※地上の王城では、国王ヴィルヘルムとオズワルドが窓の外を見て「……オズワルド。今日は光の柱に、大量の海水とワカメが混ざっているように見えるのだが」「……ついに彼らは、海の底からでもあの特大冷凍庫を撃ち放つようになったようですな」と、もはや驚くことすら放棄して遠い目をしていた)

「よぉーし!! 古代の白身魚、完全ゲットだ!!」

トウヤが【空間斬り】で完璧なフィレ肉へと解体し、アイテムボックスへ収納する。

すると、祭壇の奥から、まばゆい光を放つ『虹色の宝箱』が出現した。

「おおっ! 第二の隠れボスの宝箱だ! トウヤの兄貴、開けるぜ!」

ジンが開けた宝箱の中には、手のひらサイズの美しい『竜宮城の水晶模型』と、一本の黄金の三叉槍が入っていた。

「……こ、これは!」

トウヤがアナウンスを読み上げ、歓喜に打ち震えた。

「【神話級アーティファクト:海神の竜宮楼アトランティス・リゾート】! これを拠点に連結すれば、地下に『巨大な水族館兼・海中ラウンジ』が増築される! しかも、この黄金の三叉槍『ポセイドンの矛』は、海中の魔物を自在に操るだけでなく、『食材の水分量を0.1パーセント単位で完璧にコントロールする』究極の調理器具だ!!」

「「「水族館ラウンジ!! 水分コントロールの神調理器具!!」」」

全員が海底でガッツポーズを決めた。

これで彼らの最強の拠点【星の箱庭】は、美しい魚たちを眺めながら極上の酒と海鮮を楽しめる、地上の王族すら一生味わえない『究極の海底リゾート』へと進化を遂げたのだ。

「ガッハッハ! 最高の海中探索だったな! 宝も食材も大豊作だ!」

「ええ! 早く拠点に戻って、新しいラウンジでご飯にしましょう!」

「よし! 今夜は拠点の竜宮ラウンジで、『古代巨鎧魚の極厚フィッシュ&チップス』と『焦がしバターの究極ムニエル』! そして今日獲れた浅瀬の高級海鮮の『特大カルパッチョ』だ!!」

「「「うおおおおおおッ!! ムニエルだァァァッ!!」」」

かつて第12階層で手に入れたアイテムを駆使し、隠された海中神殿の裏ボスすらも「極上の白身肉」としてあっさりと美味しくいただいてしまったバケモノキャンパーたち。

美しい海底の景色をそのまま拠点に持ち帰り、彼らの常軌を逸した迷宮スローライフは、今夜も究極の焦がしバターの匂いと共に、優雅に、そして最高に美味しく続いていくのであった。


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