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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第80話:絶望の灰砂漠と、怒りの1時間クリアからの『黄金海岸』

### 第80話:絶望の灰砂漠と、怒りの1時間クリアからの『黄金海岸』

『悠久の大迷宮』第31階層――『広大なる秋覚の巨森』。

この数日間、トウヤたち『悠久の踏破者』の八人(六人と三匹)は、見渡す限りの広大な森をピクニック気分で練り歩き、『王侯の香茸マツタケ・トレント』と『純血イベリコ・ボア』を心ゆくまで収穫し、毎晩極上のBBQを満喫していた。

しかし、いかに広大な森とはいえ、底なしの食欲と神がかった探索能力を持つ彼らが本気を出せば、資源には限界が訪れる。

「……ふぅ。俺のアイテムボックスも農園のストックも限界までパンパンだが……ついにこの森のイベリコ豚も松茸も、ほぼ獲り尽くしちまったな」

トウヤが、すっかり静まり返ってしまった(生態系が崩壊した)森を見渡して息を吐く。

「ピィィ……(兄貴、もう美味しい匂い、どこからも全然しないよ)」

上空から偵察から戻ってきたクーも、残念そうに首を振った。

「仕方ねえ。これ以上この階層に長居しても経験値も食材も手に入らねえし、そろそろ次の第32階層に降りるか!」

「ガッハッハ! 異存はないぜ! 次はどんな極上のツマミが待っているか楽しみだ!」

「ええ! 松茸も豚肉も最高でしたけれど、そろそろサッパリした海鮮なんかも食べたい気分ですわ!」

満場一致で第32階層への進出に納得した一行は、意気揚々と第31階層の最奥にある重厚な大扉の前に立ち、それを力強く押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

「さあ! 極上食材、いらっしゃ……ぶふぅっ!?」

先頭を切って飛び込もうとしたジンが、顔面に吹き付けた強烈な『砂埃』を浴びて激しく咽せた。

第32階層――『絶望の灰砂漠と枯渇の岩石地帯』。

そこは、見渡す限り生命の息吹など微塵も感じられない、灰色の砂とひび割れた岩だけが続く荒野であった。上空には太陽の代わりに不気味な赤い月が浮かび、肌の水分を一瞬で奪い取るような極度の乾燥した風が吹き荒れている。

ズズズズズ……ッ!

砂の中から這い出してきたのは、カラカラに乾いた包帯と白骨で構成された『デスパア・マミー(絶望のミイラ)』の群れと、ただの灰と砂の塊である『アッシュ・ゴーレム(灰塵の泥人形)』たちであった。

「…………」

「…………」

八人(六人と三匹)の間に、かつてないほどの『絶望的な沈黙』が落ちた。

トウヤの【神眼の指揮】が、無慈悲な解析結果を空中に弾き出す。

「……おい、お前ら」

トウヤが、地鳴りのような低い声で呟いた。

「あのミイラ……水分量ゼロパーセント、脂質ゼロパーセント。出汁すら取れない完全なる乾燥骨だ。そしてあのゴーレム……100パーセント、ただの砂と灰の塊だ」

「つまり……」

マリアが、絶望に満ちた瞳でトウヤを見つめる。

「食える部位は、原子レベルで存在しねえ。完全なる『ハズレ階層』だ」

その宣告が下された瞬間。

「新しい美味しいお肉(または海鮮)」を期待してテンションを最高潮に高めていたメンバーたちの表情から、一切の感情が消え去り――直後、それが『純度100%の怒り(殺意)』へと裏返った。

「またか……! またハズレ階層ですかぁぁぁッ!!」

エリスが、淑女の仮面を完全にかなぐり捨てて絶叫した。

「乾燥した骨! 砂! ふざけるな! 私のお肌の水分まで奪う気ですかこの階層は!!」

ルミナも『星天の魔杖』をギリッと握りしめ、エルフらしからぬ怒気を放つ。

「おいお前ら! こんなカラカラのゴミ溜めに俺たちの時間を一秒でも割く価値はねえ! 作戦は『完全殲滅』だ!! 隠れボスごと、この階層を最速で終わらせるぞ!!」

「「「了解(消え失せろォォォッ)!!!!」」」

食欲を阻害された美食家たちの、理不尽極まりない大蹂躙が始まった。

「砂風情が俺たちの前に立つな! 【魔力城塞・超高熱爆炎】!」

ガレスの放つ爆炎が、アッシュ・ゴーレムたちを瞬く間にドロドロのガラス玉に変える。

「浄化します! カラカラの骨は土に還りなさい! 【ホーリー・レイ・テンペスト】!」

マリアの極大の光が砂漠全域を薙ぎ払い、デスパア・マミーたちを一瞬で光の粒子へと分解する。

ジンとエリスも無言のまま、ただひたすらに目に映る動くものを物理的に粉砕して回った。

彼らの『怒りの殲滅スピード』は、もはや迷宮のシステムが処理落ちするレベルであった。

第32階層に足を踏み入れてから、わずか『1時間』。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!!

砂漠の砂が全て一箇所に集束し、体長五十メートルの超巨大な砂の王――隠れボス『ファラオ・オブ・デザート(砂塵の冥王)』が姿を現した。

しかし。

「邪魔ですわ!! 【渾身撃・滅砕】!」

「凍って砕け散りなさい! 【アブソリュート・ゼロ】!」

隠れボスが咆哮を上げる間すら与えられず、エリスの闘気とルミナの絶対零度が直撃。巨大な砂の王は一瞬で氷漬けにされ、そのまま細かい氷の塵となって砂漠に散った。

(※当然、食材ではないため保存用の結界も使われず、光の柱は上がっていない)

「……チッ。よし、ゴミ掃除は終わりだ!」

トウヤが舌打ちしながら、砂漠の跡地に現れた隠れボス討伐ボーナスの豪華な宝箱を蹴り開ける。

中からは、極度の乾燥や熱射を完全に無効化する『砂漠王の幻影外套』や、魔力を水に変換し続ける『無限オアシスの指輪』など、超一級品のレア装備がゴロゴロと出てきた。

「フン、装備は一丁前だな。さっさと回収して、次に行くぞ!」

彼らにとっては、どんな神話級装備よりも「次が美味い階層かどうか」の方が一万倍重要であった。

時刻は、まだ午前中を少し回ったばかり。

「よし! この鬱憤は次の階層で晴らす! 第33階層、開けるぞ!!」

バンッ!! と。

トウヤが祈るような(そして半ばキレ気味の)気持ちで、第33階層の大扉を蹴り開けた。

――その瞬間。

彼らの鼻腔を、潮の香りと、ほんのりとした『磯の甘い匂い』がくすぐった。

「…………おおっ!?」

八人(六人と三匹)の目が、一斉に見開かれた。

第33階層――『瑠璃色の珊瑚礁と白亜の海岸』。

目の前に広がっていたのは、突き抜けるような青空と、太陽の光を反射してキラキラと輝くエメラルドグリーンの透き通った海。白い砂浜にはヤシの木のような植物が揺れ、浅瀬には色鮮やかな巨大珊瑚が群生している、まさに南国の楽園であった。

そして、その浅瀬をウロウロしているのは、軽自動車ほどもある超巨大なウニ『エンペラー・シーアーチン(帝王海胆)』。さらに岩場にびっしりと張り付いているのは、巨大な牡蠣『パール・ギガント・オイスター(真珠大牡蠣)』であった。

トウヤの【神眼の指揮】が、その成分を完璧に解析する。

「お、おいお前らァァァッ!!」

トウヤの歓喜の絶叫が、南国の海に響き渡った。

「当たりだ!! あの巨大ウニ、殻の中に最高級の『黄金の雲丹ウニ』がバケツ十杯分も詰まってやがる! 濃厚でクリーミーな甘みのバケモノだ! そしてあの牡蠣! 海のミルクどころの騒ぎじゃない、極上の旨味とプリップリの食感を持った『神の牡蠣』だぞォォォッ!!」

「「「雲丹ッ!! 牡蠣ィィィッ!!!」」」

先ほどまでの絶望と怒りが嘘のように、彼らの顔がパァァァッと歓喜に染まり上がった。

「海鮮! 私の待ち望んでいた極上の海鮮ですわ!!」

エリスがヨダレを拭いながら重剣を構える。

「ヒャッハー! 生ウニ丼! 焼きガキ! カキフライだァァァッ!」

ジンが狂ったように笑いながら砂浜を蹴る。

「よし! ウニの棘には気をつけろ! 牡蠣の殻は絶対に傷つけるな! 夕方まで、この楽園で極上の海鮮を狩り尽くすぞ!!」

「「「いただきますッッ!!!!」」」

タガが完全に外れきった美食家たちが、美しい珊瑚礁の海へと雪崩れ込んだ。

「殻だけを綺麗に剥がしますわ! 【渾身撃・装甲剥がし】!」

エリスの大剣が、巨大牡蠣の硬い殻の継ぎ目だけを的確に叩き割り、中から艶やかで極上の牡蠣肉を露出させる。

「ウニの棘の隙間を縫って神経を切る! 【直感回避・神速針】!」

ジンが巨大ウニの急所を的確に突き、中身の黄金ウニを一切崩すことなく沈黙させる。

トウヤは『神斬りの業物』で殻を美しく開き、次々とアイテムボックスへ極上の海鮮を収納していった。

怒り(第32階層)から一転、歓喜に包まれた彼らの狩りは、夕暮れ時までノンストップで続けられた。

そして、夕方。

彼らが海岸のウニと牡蠣をあらかた獲り尽くしたその時、システムが防衛本能を作動させた。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!

沖合の海面が大きく盛り上がり、体長六十メートルに達する、透き通るような美しい肉体を持った超巨大なイカの神獣――第33階層の隠れボス『ロード・オブ・カラマリ・クラーケン(深海の大神烏賊)』が姿を現した。

「トウヤさん! あの巨大イカのお味は!?」

「最高だ! 巨大なのに身が信じられないほど甘くて柔らかい『究極の剣先イカ』だ! しかも体内の墨袋には、そのまま極上のソースになる『特濃イカスミ』が詰まってるぞ!!」

「「「究極のイカ刺し! イカスミパスタ!!」」」

「だが暴れさせて墨を海に吐かせるな! 一瞬で凍らせろ!!」

「「了解です!! 完璧な温度で、瞬間冷凍しますッ!!」」

ルミナとマリアが、息の合った(そして完全に作業化した)動きで杖とペンダントを掲げる。

カッ――――!!!!

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

夕焼け空を真っ白に染め上げ、迷宮の天井をぶち抜いて地上の王都へと噴き上がる『純白の光の柱(超特大冷凍保存魔法)』。

(※地上の王城では、国王ヴィルヘルムが「おお、今日は夕方に特大の冷凍庫が稼働したな。夕飯は巨大な海鮮だろうか」と、もはや近所の晩ご飯を予想する主婦のような顔で紅茶を啜っていた)

「よぉーし!! 巨大冷凍イカ、完全回収だ!!」

トウヤが【空間斬り】で魔力コアを処理する。

「おっ! トウヤの兄貴、海に浮かんだ宝箱から、とんでもないモンが出たぜ!」

ジンが引き揚げてきた宝箱の中には、神々しい光を放つ小さな「蔵」のミニチュア模型が入っていた。

「おおっ! これは……!」

トウヤがシステムアナウンスを確認し、歓喜に打ち震えた。

「【時空の豊穣酒造&発酵蔵】!! 拠点の農園設備をさらに拡張する神話級のレア設備だ! この中に食材を放り込んでおけば、時間経過が外界の百倍になり……醤油、味噌、そして『極上の酒』が無限に、しかも最高の品質で全自動で造り出されるんだぞォォォッ!!」

「「「酒と醤油が、無限にィィィッ!!?」」」

大人組(ガレス、ジン、エリス)が狂喜乱舞した。

これがあれば、今日獲れた極上海鮮に合わせる「究極の醤油」や、BBQに欠かせない「極上のビールやワイン」が、迷宮の中で完全自給自足できてしまうのだ!

「ガッハッハ! もう王都の酒場に帰る必要は一生ねえな! 最高の大当たり階層だ!!」

「ええ! 本当に、絶望の砂漠を1時間で抜けて正解でしたわ!」

「よし! 早速拠点に戻って、この【発酵蔵】を設置するぞ! そして今夜は、獲れたての『特大生ウニ丼』と『神牡蠣のカンカン焼き』! 〆は『極上イカスミパスタ』の大海鮮パーティーだ!!」

「「「うおおおおおおッ!! 海鮮だァァァッ!!」」」

地獄のようなハズレ階層の鬱憤を神速で晴らし、続く楽園の階層で極上食材と「無限の酒・調味料」を手に入れた『悠久の踏破者』たち。

彼らの迷宮スローライフは、新設備の導入によってさらなる「食の完全無欠状態」へと進化し、今夜も最高に美味しく、賑やかに更けていくのであった。


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