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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第70話:神速の連携と、憂い無き美食家たちの中ボス蹂躙

### 第70話:神速の連携と、憂い無き美食家たちの中ボス蹂躙

『悠久の大迷宮』第24階層の最奥。

昨日、迷宮の計らいによる『時空の通信鏡』で地上の王城と繋がり、彼らが抱えていた「家族への心配」や「悪党への復讐心」が『すべて完全に空回り(地上はすでに超平和)』であったことを知った一行。

一晩明けた彼らは、第25階層――『中ボス』が待ち受ける黒曜石の大扉の前に立っていた。

「……ふぅ。空気が美味いな!」

ジンが、これまでにないほど晴れやかな顔で大きく伸びをした。

「ええ! 本当に清々しい朝ですわ。お父様が子爵になって毎日美味しいものを食べていると知って、私の心から一切の曇りが消え去りました!」

エリスが、重剣を背負いながら花がほころぶような笑顔を見せる。

「ガッハッハ! 全くだ! もう地上を憂う必要は一ミリもねえ! これからは純粋に、100%の力で『美味い飯』だけを求めて迷宮を突き進めるぞ!」

ガレスの豪快な笑い声に、マリアとルミナも深く頷いた。

トウヤは、そんな憑き物が完全に落ちた仲間たちを見て、ニヤリと笑った。

「よし。最高のコンディションだな。今日の第25階層は、5階層区切りの『中ボス』部屋だ。地上の憂いが消えたお前たちの、100%の食欲と連携を、あの扉の向こうにいる特大食材にぶつけてやれ!!」

「「「おおおおおおおッッ!!!!」」」

一切の迷いがない、純度100%の捕食者たちによる雄叫びが響き渡る。

トウヤが勢いよく大扉を押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

ボス部屋の中に広がっていたのは、床も壁も燃え盛るマグマで形成された、巨大なドーム状の空間だった。

そしてその中央。マグマの海から、太陽そのもののような圧倒的な熱量と光を放つ巨大な影が舞い上がった。

「ピィィィッ!!(兄貴! すっごく熱いけど、すっごく美味しそうな匂いがする鳥だよ!)」

クーの念話と共に、その姿が明らかになる。

翼長三十メートルを超える、燃え盛る炎の羽を纏った巨大な神鳥。

第25階層・中ボス――『煌炎の不死鳥サン・フェニックス』であった。

ただ羽ばたくだけで空気がプラズマ化し、通常の冒険者であれば近づくことすらできずに灰と化すであろう、理不尽なまでの超高熱の権化である。

「トウヤの兄貴! あいつの味は!?」

ジンの問いに、トウヤの【神眼の指揮】が光る。

「最高だ!! あの不死鳥、自身の放つ神聖な炎のおかげで、体内のお肉が常に『究極の遠赤外線による低温調理状態』に保たれてやがる! 噛めば極上の肉汁が溢れる『神の鶏肉』だ! しかもあのガラ(骨)からは、世界中のどんなスープもひれ伏す『不死鳥の黄金出汁』が取れるぞォォッ!!」

「「「神の鶏肉!! 黄金出汁ッ!!」」」

全員の目の色から理性が完全に消し飛んだ。

「だが気をつけろ! あいつが怒って本気のフルパワーを出すと、せっかくの低温調理肉が焼け焦げて『ただの炭』になっちまう!! 焦がす前に、一瞬で熱を奪って冷凍保存だ!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

「キェェェェェェェェッ!!」

サン・フェニックスが、鼓膜を破るような甲高い鳴き声と共に、全てを焼き尽くす極大の火球を放とうとした、その瞬間。

憂いが消え去り、連携が神の領域に達した彼らの動きは、もはや『神速』の域にあった。

「火球ごと俺が抑え込む! 【魔力城塞・極・圧縮天蓋】!」

ガレスが、炎を無効化する新装備『暴風神の重鎧』を輝かせながら、フェニックスの頭上から巨大な結界の盾を叩き落とし、その動きと炎の広がりを完全に封じ込める。

「ヒャッハー! 鶏肉の筋だけを切るぜ! 【直感回避・神速・急所穿ち】!」

ジンが空中の炎を物理的にすり抜け、フェニックスの巨大な翼の付け根にある神経を、瞬きする間に全て切断する。

「お肉に羽は不要ですわ! 【渾身撃・羽毛散らし】!」

エリスの大剣が、フェニックスの極上の肉を1ミリも傷つけることなく、表面を覆う炎の羽毛だけを的確に削ぎ落としていく。

流れるような、一切の淀みもない完璧な作業工程。

フェニックスは、自分が攻撃されていることすら認識できないまま、ただの「綺麗に羽をむしられた丸鶏」へと姿を変えられていた。

「仕上げです! マリアさん!」

「はいっ! 一気にいきます!!」

「焦がしません! 最高の焼き鳥のために!! 精霊力、最大解放!!」

「肉汁と黄金出汁を閉じ込めます! 聖女の祈りよ、完璧な密閉冷凍庫となりなさいッ!!」

ルミナのエルフの【アブソリュート・ゼロ】と、マリアの【絶対結界】。

もはや彼女たちの代名詞となった「融合魔法(保存用調理魔法)」が、過去最速の詠唱と、過去最大の出力で放たれた。

カッ――――!!!!

マグマのボス部屋を、いや、階層全体を白く染め上げる圧倒的な閃光。

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

極太で眩い『純白の光の柱』が、迷宮の天井をぶち抜き、王都の空へと向かって一直線に噴き上がった。

(※地上の王城では、国王ヴィルヘルムと宰相オズワルドが窓の外の光柱を見上げ、「おお、昨日の通信で元気を出したからか、今日の冷凍ビームは一段と太くて勢いがあるな」「ええ、復讐心を食欲に変換したのでしょう。素晴らしい若者たちです」と、完全に孫の成長を見守るような顔で微笑み合っていた)

「よぉーし!! 完璧な巨大冷凍丸鶏の完成だ!!」

氷像と化した三十メートルの巨大フェニックスに対し、トウヤが神話級包丁『神斬りの業物』を抜き放ち、【空間斬り・千紫万紅】を発動する。

『極上のモモ肉』『弾力のある胸肉』『黄金スープの取れる特大ガラ』が、一瞬にして完璧なブロック肉として切り出され、アイテムボックスへと収納された。

大ボス部屋の扉を開けてから、討伐(解体)完了まで、わずか7秒。

神速の蹂躙であった。

「ふぅ……! お前ら、マジで速すぎだろ。俺の解体が追いつかないかと思ったぞ」

トウヤが苦笑いしながら包丁を納める。

「ガッハッハ! 復讐なんて重苦しいものを背負うより、美味い飯を食うために全力を出す方が、俺たちの性に合ってるってことだ!」

ガレスが豪快に笑い、他のメンバーも晴れやかな笑顔で頷いた。

「おっ、トウヤの兄貴! 中ボス瞬殺ボーナスだ! 部屋の中央にすげえ宝箱が出たぜ!」

ジンがマグマの跡地に現れた、宝石で飾られた巨大な宝箱を開ける。

中からは、神々しい光を放つ複数のアイテムが飛び出してきた。

「おおっ! これはすごいぞ!」

トウヤがシステムアナウンスを確認し、歓声を上げる。

「まずは『天空神の風切羽』! ジンの機動力をさらに底上げするアーティファクトだ! そして『太陽神の鏡盾』! ガレスの盾の防御力と熱耐性を倍増させる!」

「ヒャッハー! これで俺はもっと速くなれるぜ!」

「ガッハッハ! どんなマグマのボスが来ようが完封してやるぞ!」

「そして、俺にはこれだ……!」

トウヤが震える手で取り出したのは、小さな黒い炭の塊だった。

「『神鳥の黄金炭』……! 火をつけると、絶対に食材を焦がさず、最高の遠赤外線を無限に放ち続ける神話級の調理器具(炭)だ! これがあれば、拠点でのBBQや焼き鳥が、王室の料理人すら到達できない究極の領域に進化するぞォォォッ!!」

「「「神の炭キターーーッ!!!」」」

もはや武器や防具よりも、調理器具のドロップに一番の歓声を上げる異常なパーティー。

「よし! 新しい装備と、究極の焼き鳥セットのゲットを祝って! 早速拠点に戻って、フェニックスの極上焼き鳥と、黄金出汁の絶品ラーメンで大宴会だ!!」

「「「うおおおおおおッ!! 焼き鳥だァァァッ!!」」」

地上の憂いを完全に断ち切り、心置きなく「食欲」という最強のバフを全開にした『悠久の踏破者』たち。

彼らの前には、どんな強大な中ボスも、ただの「極上の新鮮な食材」でしかない。

神鳥の焼き鳥の暴力的なまでの美味しい匂いを漂わせながら、彼らの迷宮スローライフは、かつてないほどの明るさと熱量で、さらなる深層へと突き進んでいくのであった。


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