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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第67話:星降る水晶の森と、風景を無視した極上エビフライの狂宴

第67話:星降る水晶の森と、風景を無視した極上エビフライの狂宴

『悠久の大迷宮』第22階層――『超重力の暴風渓谷』。

普通の冒険者なら一歩歩くごとに骨が軋み、暴風に吹き飛ばされる過酷な環境であったが、『悠久の踏破者』の八人(六人と三匹)にとっては「極上のラム肉(暴風山羊)」と「マッチョな鳥肉(重力コンドル)」が採れる最高の狩り場にすぎなかった。

新装備を駆使して2日間にわたり暴風渓谷の魔物たちを(ジンギスカンのために)乱獲し尽くした彼らは、全員の経験値バーがカンストしたのを見届け、名残惜しそうに第23階層への扉の前に立っていた。

「……ふぅ。俺のアイテムボックスも、拠点の『時空の豊穣農園』の培養プールも、ラム肉と胸肉でパンパンだ。これ以上狩っても経験値が入らないなら、先に進むしかないな」

トウヤが、満足感と一抹の寂しさを滲ませながら言う。

「ガッハッハ! 次の階層にもきっと、俺たちを唸らせる美味い酒のツマミ(魔物)がいるはずだ!」

ガレスが新装備『暴風神の重鎧』をガシャリと鳴らして笑った。

「よし、行くぞ! 第23階層、オープンだ!」

ギギギギギギ……ッ!!

重厚な扉が開き、一行が足を踏み入れた先は――。

「うわぁぁっ……!! なんて、なんて綺麗な……!」

マリアとエリスが、両手を胸の前で組んで感嘆の声を漏らした。

第23階層――『星降る水晶の森と銀河の湖』。

見渡す限り、足元には淡く発光する青や紫の水晶の草花が咲き乱れ、樹木すらも透き通るようなクリスタルで形成されている。

そして目の前には、まるで夜空の天の川をそのまま水面へと写し取ったかのように、無数の星屑がキラキラと輝きながら流れる『銀河の湖』が広がっていた。

見上げれば、迷宮の天井には本物の星空のようなプラネタリウムが広がっており、幻想的でロマンチックな、息を呑むほどの絶景であった。

「……エルフの森の秘境でも、ここまでの美しい景色は見たことがありません。まるで夢の中のようです」

ルミナもうっとりとした表情で、光る水晶の草に触れようと手を伸ばした。

そんな、乙女たちが幻想的な雰囲気に酔いしれていた、まさにその瞬間。

「ピィィィッ!!(兄貴! 湖の中と、森の奥から、すっごく美味しそうな匂いがするよ!!)」

上空のクーが、一切の情緒をぶち壊すヨダレまみれの念話を叩き込んできた。

ドパァァァンッ!!

クーの声と同時に、銀河の湖の水面が割れ、星屑の光を纏った体長三メートルの超巨大なエビ『スターダスト・シュリンプ(星屑の極大海老)』が飛び跳ねた。

さらに水晶の森の奥からは、透き通るような美しい毛並みを持つ、体長五メートルの巨大豚『オーロラ・ポーク(極光の幻豚)』が群れを成して現れたのだ。

「…………!!」

トウヤの【神眼の指揮】が、その幻想的な魔物たちの『真の成分』を一瞬で解析した。

「おい、お前らァァァッ!!」

トウヤの絶叫が、美しい星降る森に木霊した。

「景色なんてどうでもいい! あの湖のエビを見ろ! 常に星の魔力プランクトンを食って育ったせいで、身が信じられないくらい甘くてプリップリだ! 尻尾まで身がギッシリ詰まってやがる! そしてあの豚! オーロラの光を浴びて育った幻の豚だ、イベリコ豚すら裸足で逃げ出すほどの『究極の甘い脂』を持ってるぞォォォッ!!」

「「「究極の甘い脂ッ!?」」」

先ほどまで「綺麗……」と感動していた女性陣の目から、一瞬にして情緒が消え去り、代わりに『絶対的な食欲(殺意)』が宿った。

「エビ! 特大のエビフライですわ! タルタルソースをたっぷりかけて、尻尾までサクサクにいただきますの!!」

エリスが『竜殺しの重剣』にマグマの闘気を纏わせる。

「幻の豚さん……! 分厚く切ってトンカツにしてもいいですし、オーロラのように美しい角煮も最高ですね!!」

マリアが『聖樹の純白法衣』を翻し、ヨダレを拭う。

「ガッハッハ! エビと豚の最強コンボ階層か! 景色なんざ見てる暇はねえ! 全部狩り尽くせェェッ!」

「ヒャッハー! ロマンチックな森だろうが、俺たちにとってはただの『巨大なスーパーマーケットの鮮魚・精肉コーナー』だぜ!」

「よし! エビの殻は絶対に傷つけるな! 豚の脂は一滴も落とすな! 極上食材の乱獲祭り、開幕だッ!!」

「「「いただきますッッ!!!!」」」

幻想的な風景など一秒で忘却したバケモノたちが、水晶の森と銀河の湖へ雪崩れ込んだ。

「エビども! 俺の盾でまとめて茹で上がれ! 【魔力城塞・天蓋】!」

ガレスが新装備の防御力を活かし、エビの突進を完全に受け止めながら熱で囲い込む。

「重力を操って動きを止めるぜ! 【重力支配の指輪】からの【直感回避・急所突き】!」

ジンが新装備の指輪の力でオーロラ・ポークの足元だけを超重力にし、動きが鈍った瞬間に神経を的確に切断していく。

「エビの殻だけを綺麗に剥がしますわ! 【渾身撃・装甲剥がし】!」

エリスが水晶のように硬いエビの殻の継ぎ目だけを割り、中から透き通るような極上のエビの身を露出させる。

「逃がしません! 鮮度は私が守ります! 【氷塊連弾】!」

ルミナが氷魔法で豚とエビの退路を塞ぎ、トウヤが『神斬りの業物』で完璧なブロック肉とエビの剥き身を空間ごと切り出していった。

美しい星空と水晶の森の中で繰り広げられる、情緒もクソもない血も涙もない圧倒的な乱獲。

彼らの底なしの食欲は、第23階層の幻想的な生態系をわずか数時間で完全に崩壊へと追いやった。

そして――システムが『異常事態』を検知した。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!!!

銀河の湖が大きく渦を巻き、底から全てを呑み込むような水柱が立ち上がった。

「ギャァァァァァァァァッ!!!!」

水晶の森を吹き飛ばす咆哮と共に現れたのは、体長四十メートルを超える、銀河の星々をそのまま鱗にしたような超巨大な海竜――第23階層の隠れボス『銀河の水晶海竜ギャラクシー・リヴァイアサン』であった。

「出たな裏ボス! トウヤさん、あの方のお味は!?」

エリスが目を輝かせて振り返る。

「あれはただの竜じゃない……! 湖の冷たい水と豊富な星屑を食べて育った、究極の『ドラゴン・サーモン』の変異体だ!! 全身がマグロの大トロすら超える『究極の霜降りサーモン肉』でできてるぞ!!」

「「「究極の、ドラゴン・サーモンッ!!」」」

全員のテンションが、臨界点を突破した。

「だが気をつけろ! あいつがブレスを吐いて体内の魔力(脂)を消費すると、せっかくの大トロサーモンがただのパサパサの赤身に落ちちまう! マリア! ルミナ!!」

「「了解です!! 一滴の脂も逃がしません!!」」

「ギャァァァァッ!」

銀河の水晶海竜が、星屑のブレスを吐き出そうと大きく息を吸い込んだ、その瞬間。

「このサーモンは、私たちのお刺身とハラス焼きのために!! 精霊力、最大解放!!」

「絶対にパサパサにはさせません! 聖女の祈りよ、完璧な密閉冷凍庫となりなさいッ!!」

ルミナのエルフの【アブソリュート・ゼロ】と、マリアの【絶対結界】。

もはや息を吸って吐くように発動される「保存用調理魔法(融合魔法)」が、最大出力で放たれた。

カッ――――!!!!

幻想的な銀河の湖を、全て白く染め上げる圧倒的な閃光。

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

極太で眩い『純白の光の柱』が、迷宮の天井をぶち抜き、王都の空へと向かって一直線に噴き上がった。

(※地上の王城では、国王ヴィルヘルムと宰相オズワルドが「おお、今日も見事な特大冷凍ビームが上がったな」「ええ、第23階層の美味しい魔物を見つけたのでしょうね」と、完全に呆れを通り越して「近所の晩ご飯の気配」を感じるような穏やかな顔で紅茶を啜っていた)

***

「よぉーし!! 完璧な巨大冷凍ドラゴン・サーモンの完成だ!!」

トウヤが【空間斬り】で魔力コアを切除し、ウキウキでアイテムボックスに収納する。

「おっ、トウヤの兄貴! 海竜の跡地から、またまた豪華な宝箱が出たぜ!」

瞬殺ボーナスとして現れた宝箱からは、美しい星屑の光を放つ神話級装備が現れた。

「おお! マリアには回復魔法の効果範囲を倍増させる『銀河の聖環』! エリスには闘気の威力を底上げする『星屑の剛剣飾り』だ!」

「ふふっ、これでまたお肉を綺麗に捌けますわ!」

「ありがとうございます! これで皆さんの胃袋のケアも完璧です!」

「よし! 新しい極上エビと幻の豚肉、そしてドラゴン・サーモンのゲットを祝って! 拠点に戻って最高の大宴会だ!!」

「「「うおおおおおおッ!! エビフライだァァァッ!!」」」

数十分後。

第23階層の安全地帯に展開された【星の箱庭】の豪邸。

そのダイニングテーブルには、暴力的なまでのごちそうが並べられていた。

「さあ食え! 『スターダスト・シュリンプの超特大サクサク・エビフライ 〜特製タルタルソース〜』! そして『オーロラ・ポークの極厚トロトロ角煮』! メインは『ドラゴン・サーモンの究極大トロ刺身と炙りハラス』だ!!」

「いただきますッ!」

エリスが、自分の顔ほどもある特大エビフライに齧り付く。

「――――ッッ!! ザクッとした衣の中から、信じられないくらいプリプリで甘いエビの身が弾け飛びました! タルタルソースの酸味とエビの甘みが……もう、最高ですわ!!」

「こっちのオーロラ・ポークの角煮もヤバいぞ! 箸で持てないくらいトロトロだ! 口に入れた瞬間に豚の脂がスッと溶けて、濃厚な甘辛いタレと絡み合って……白飯が無限に消えていくぜ!!」

ジンがどんぶり飯を片手に歓喜の雄叫びを上げる。

「ガッハッハ! トウヤの新装備『美食神の調味料入れ』で味付けされたドラゴン・サーモンの炙りハラス、脂の乗りが尋常じゃない! ビールが水のように進むぞ!」

ガレスとルミナ、マリアも、完全無欠の極上フルコースに胃袋を完全に支配され、至福の表情で食事を貪っていた。

息を呑むほど美しい幻想的な階層すら「ただの食材調達の背景」としか認識しない規格外のバケモノたち。

彼らの迷宮スローライフは、もはや迷宮の神秘すら食い尽くし、どこまでも楽しく、そして最高に美味しく続いていくのであった。

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