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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第66話:超重力の暴風渓谷と、地上を安堵(と呆れ)させた久々の狼煙

### 第66話:超重力の暴風渓谷と、地上を安堵(と呆れ)させた久々の狼煙

『悠久の大迷宮』第21階層――『紅蓮の火山と雷鳴の魔境』。

これまでの「見つけ次第瞬殺」という力技が通用しないほどの強敵たちを前に、トウヤたちは逆に歓喜し、数日をかけて徹底的に連携を磨き上げた。

ガレスの鉄壁の盾、マリアの絶対結界、ジンの神速の機動力、エリスの装甲粉砕、ルミナの地形操作と温度管理、そしてトウヤの完璧な解体。

極限の環境下で、彼らの『絶対鮮度保持陣形』は文字通り「神の領域」へと昇華され、全員の経験値バーも文句なしのカンストを迎えていた。

「よし! この数日間、本当に充実したキャンプ(特訓)だったな!」

トウヤが、アイテムボックスいっぱいに詰まった雷牛のスパイス肉と溶岩蟹の濃厚ミソを確認し、満面の笑みで振り返る。

「ええ! 私の大剣の精度も、さらに上がりましたわ!」

「ヒャッハー! どんな速い敵が来ようが、もう俺の目からは逃れられねえぜ!」

全員が確かな自信と(異常な)強さを漲らせ、第22階層への扉を押し開けた。

ギギギギギギ……ッ!!

扉が開いた瞬間、一行の体を、見えない「巨大な鉄の塊」が上から押し潰すような凄まじい衝撃が襲った。

「ぐっ……!? な、なんだこの体調不良は……体が、鉛みたいに重いぞ!」

ガレスが思わず膝を突きそうになる。さらに、耳をつんざくような轟音と共に、立っていることすら困難なほどの強烈な暴風が彼らを容赦なく打ち据えた。

第22階層――『超重力の暴風渓谷』。

空は荒れ狂う竜巻に覆われ、大地はむき出しの岩肌。そして何より、この階層は「通常の数倍の重力」が常にのしかかっているという、普通の冒険者であれば足を踏み入れた瞬間に内臓を潰され、暴風で岩に叩きつけられてミンチになる絶望の環境であった。

「ピィィィッ!!(兄貴! 風に乗って、美味しそうなのが来るよ!)」

上空の竜巻の中から姿を現したのは、翼長十五メートルを超える巨大な猛禽『グラビティ・コンドル(重力巨鳥)』。さらに岩肌を蹴って現れたのは、竜巻を纏った巨大な四足獣『テンペスト・ゴート(暴風山羊)』の大群であった。

「重力と暴風だと……?」

トウヤの【神眼の指揮】が、過酷な環境を生き抜く魔物たちの真の価値を弾き出した。

「おいお前らァ! あの鳥、超重力に逆らって飛んでるおかげで、胸肉が信じられないくらい分厚く発達した『究極のマッチョ鳥肉』だ! そしてあの山羊! 常に暴風のハーブを食って育った、臭みゼロで脂の甘い『最高級ラムジンギスカン』だぞォォッ!!」

「「「最高級ラム肉ッッ!!?」」」

超重力による息苦しさなど、強欲な美食家たちには一秒で忘れ去られた。

「ガレスさん! エリスさん! 身体強化のバフと重力軽減の結界を張ります! 【ホーリー・フェザー・フィールド】!」

マリアが即座に神聖魔法を展開し、周囲の重力を相殺する。

「ガッハッハ! 結界さえあればいつもの体だ! 暴風ごと俺が受け止めてやる! 【魔力城塞・極】!」

「よし、お前ら! 第21階層で数日かけて磨き上げた『完璧な連携』の成果を見せてやれ! ラム肉も鳥肉も、最高の状態で収穫するぞ!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

彼らの蹂躙が始まった。

超重力と暴風に絶対の自信を持っていた魔物たちにとって、それは悪夢のような光景だった。

「重力がなんだ! 私の闘気は重さすら断ち斬りますわ! 【渾身撃・オーバードライブ】!」

エリスの大剣が、重力コンドルの硬い羽毛だけを的確に吹き飛ばす。

「ヒャッハー! むしろ重力を利用して落下速度を上げりゃあ、最高の加速器だぜ! 【直感回避・隕石突き】!」

ジンが神速で空から降り注ぎ、暴風山羊の神経を一瞬で麻痺させる。

「逃がしません! 【氷塊爆槍】!」

ルミナが暴風の軌道を読んで氷の槍を撃ち込み、魔物たちの動きを完全にコントロールする。

そして、最後にトウヤが『神斬りの業物』で寸分の狂いもなく極上肉を空間ごと切り出していく。

「す、すげえ……」

トウヤ自身が驚愕した。

第21階層で数日かけて極限まで高められた彼らの連携は、この第22階層の過酷な環境と強敵たちすら「完全にただの作業」へと貶めてしまっていたのだ。

「いいぞ! このペースなら、今日一日でアイテムボックスがジンギスカンで満杯になる! 狩れ! 狩り尽くせェェッ!!」

久しぶりの「圧倒的無双モード」にタガが外れた彼らは、そのままの勢いで暴風渓谷の生態系を数時間で崩壊させた。

そして――当然のごとく、システムが『異常な討伐速度』を検知した。

ゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!!!

渓谷の全てを飲み込むような超特大の竜巻が発生し、大地が真っ二つに割れた。

「メェェェェェェェェッ!!!!」

咆哮だけで暴風を吹き飛ばし現れたのは、体長四十メートルに達する、大地の神のような威圧感を纏った超巨大な羊――第22階層の隠れボス『巨神羊帝タイタン・ベヒーモス・ゴート』であった。

「トウヤさん! あのバカでかい羊の味は!?」

「最高級のマトンだ! だが年老いた羊特有の臭みは一切なく、赤身と脂のバランスが神がかってやがる! 特大のラムチョップが数百本は取れるぞ!!」

「「「特大ラムチョップ!!」」」

「だが気をつけろ! あいつが暴れて体温が上がると、せっかくの極上脂が溶けちまう!! マリア、ルミナ!!」

「「了解です!! 完璧な温度で、瞬間冷凍しますッ!!」」

もはや言葉のキャッチボールすら不要。

ルミナのエルフの【アブソリュート・ゼロ】と、マリアの【絶対結界】。

バグじみた魔力効率を誇る神話級装備に身を包んだ二人の「融合魔法(保存用調理魔法)」が、過去最大級の出力で放たれた。

カッ――――!!!!

暴風渓谷を、いや、世界そのものを白く染め上げる、圧倒的な閃光。

ズドォォォォォォォォォンッッ!!!

極太で眩い『純白の光の柱』が、迷宮の天井をぶち抜き、数日ぶりに王都の空へと向かって一直線に噴き上がったのである。

***

【その頃、地上の王城・国王執務室では】

「……陛下、陛下ッ!!」

宰相オズワルドが、執務室の扉をバンッと開け放ち、血相を変えて飛び込んできた。

窓際で、完全に目の焦点が合っていない状態で立ち尽くしていた国王ヴィルヘルムが、ビクッと肩を震わせた。

「お、オズワルド……! 見たか、今の光を……!!」

国王の目からは、滝のような涙が溢れ出していた。

ここ数日、第21階層に入ってからというもの、あの「いつもの光の柱(冷凍保存ビーム)」がパタリと止まっていたのだ。

「ついに、彼らも深層の理不尽な壁に阻まれたのだ……」「毎日冷凍庫を稼働させていた彼らが沈黙するということは、食うに困るほどの絶体絶命の危機に陥っているに違いない」と、国王たちは食事も喉を通らないほど心配し、胃に穴を開けていたのである。

そこへ、数日ぶりの、しかも過去最大級の特大の光柱である。

「生きて……生きておったのだなァァァッ!!」

国王がオズワルドと抱き合い、男泣きに泣いた。

「ええ、陛下! 数日間の死闘の末、ついに強大な敵を打ち破り、生存の狼煙を上げてくれたのです! なんという強靭な精神力か!!」

そこへ、魔力観測所の所長が、手元の羊皮紙を見つめながら、ひどく気まずそうな顔で執務室に入ってきた。

「……へ、陛下。オズワルド様。泣かれているところ大変申し訳ないのですが……」

「おお、所長! 報告せよ! 彼らがどれほどの死闘の末にあの魔法を放ったのかを!」

所長は、一つ咳払いをして、淡々と読み上げた。

「えー、震源地は第22階層です。……波長の解析結果ですが、いつも通りの**『対象を絶対に傷つけず、完璧な温度で冷凍保存するための魔法』**です。しかも、出力が過去の300%増しとなっております」

ピタッ、と。

国王とオズワルドの涙が、砂漠に落ちた水滴のように蒸発した。

「…………冷凍、保存」

国王が、ピクピクと頬を引き攣らせる。

「は、はい。数日ぶりに放たれた理由について、観測所の魔導士たちと会議を行ったのですが……」

所長が眼鏡を押し上げ、真面目な顔で推論を述べる。

「おそらく彼らは、ここ数日間、第21階層で**『新しい食材をじっくりと厳選して集めていた』**ため、隠れボスを出すほどの乱獲をしていなかっただけかと。そして今日、第22階層で『どうしても冷凍保存したい特大の肉』を見つけたため、溜め込んでいた魔力で特大の冷凍庫(光の柱)を稼働させた……と推測されます」

「…………」

「…………」

執務室に、数日間の心配と胃痛を完全に無に帰す、壮大な虚無の沈黙が落ちた。

「……オズワルド」

「……はい、陛下」

「余の、この数日間の胃痛と、神への祈りを返してほしい」

「御意。私も、今朝から飲んでいた高級な胃薬の代金を請求したい気分でございます」

地上の最高権力者たちを「極限の安堵」から「究極の呆れ」へと突き落とした光の柱。

「もう二度と心配などしてやるものか」と、国王は涙を拭って紅茶を啜るのであった。

***

一方、地下の第22階層。

「よぉーし!! 完璧な巨大冷凍羊肉の完成だ!!」

トウヤが【空間斬り】で魔力コアを切除し、ウキウキでアイテムボックスに収納する。

「おっ、トウヤの兄貴! 巨神羊帝の跡地から、見たこともないくらい豪華な宝箱が出たぜ!」

ジンが開けた宝箱からは、神々しい光を放つ神話級装備が溢れ出した。

「おお! ガレスには暴風を反射する『暴風神の重鎧』! ジンには重力を操る『重力支配の指輪』! 俺にはあらゆる食材の旨味を倍増させる『美食神の調味料入れ』だ!!」

「ガッハッハ! 21階層で苦労した甲斐があったな! これでまた一段と強くなっちまうぞ!」

「ええ! レア装備も最高ですけれど、早く拠点に戻ってジンギスカンにしましょう!」

「よし! 今夜は【星の箱庭】の豪邸で、『巨神羊帝の極上ラムチョップ』と『特濃ジンギスカン鍋』! そして農園で採れた新鮮野菜の特大サラダだ!!」

「「「うおおおおおおッ!! ジンギスカンだァァァッ!!」」」

地上の王室を盛大にズッコケさせたことなど露知らず。

21階層の特訓を経て、環境すら超越する絶対的な強さを手に入れた『悠久の踏破者』たちは、最強のレア装備と極上肉を抱え、今日も今日とて、最高に美味しくて非常識な宴会へと向かうのであった。


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