表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/510

第65話:雷炎の魔境と、難易度上昇に歓喜する美食家たち

###第65話:雷炎の魔境と、難易度上昇に歓喜する美食家たち

『悠久の大迷宮』第20階層――『天海の水鏡』。

大ボスである天海の神鯨を完璧に捌き、神話級設備『時空の豊穣農園&生簀』を手に入れた『悠久の踏破者』たちは、拠点での祝の宴を終え、いよいよ未知なる領域である第21階層への扉の前に立っていた。

「ここから先は、ギルドの過去の文献にも一切記録がない。文字通りの『完全未踏の深層』だ」

トウヤが、これまでの扉よりも一回り大きく、禍々しい装飾が施された黒曜石の扉を見上げて言った。

「第20階層までの敵は、俺たちの異常なレベルと装備でサクサク狩れたが……迷宮の法則上、ここから先は敵の強さが『理不尽』な次元に跳ね上がるはずだ。油断するなよ」

「ガッハッハ! 望むところだ! どんなバケモノが来ようと、俺の『獄炎の竜盾』が全部弾き返してやる!」

「私の『聖樹の純白法衣』とペンダントの魔力も万全です! 皆さんの鮮度(HP)は絶対に守り抜きます!」

ガレスとマリアが頼もしく頷き、他のメンバーも各々の神話級装備を鳴らして闘志を高めた。

「よし、行くぞ!」

ギギギギギギギギ……ッ!!

地響きのような重低音と共に扉が開いた瞬間。

「うおっ!?」

「きゃあっ!?」

扉の先から吹き付けてきたのは、息をするだけで肺が焼け焦げそうになるほどの『超高温の熱風』と、髪の毛が逆立つほどの『強烈な雷の魔力嵐』であった。

第21階層――『紅蓮の火山と雷鳴の魔境』。

そこは、見渡す限り黒焦げた大地が広がり、至る所で煮えたぎるマグマの川が流れていた。空は分厚い暗雲に覆われ、数秒おきに紫色の極大の雷が大地に向かって降り注いでいる。

これまでの「過酷だが美しい自然」といった環境とは次元が違う、純粋な『殺意』だけで構成されたような地獄の風景だった。

「リル! すぐに温度と環境を調節してくれ!」

「ピュイィィッ!」

トウヤの肩に乗ったスライムのリルが、全魔力を振り絞って【温度調節】と【流体バリア】を展開する。それでもなお、バリアの表面がジリジリと焦げる音が響いていた。

「……信じられない環境ですね。立っているだけでも体力を削られそうです」

ルミナが『星天の魔杖』を構え、周囲の熱を相殺するように冷気を纏う。

ズドォォォォンッ!!

目の前のマグマの川から、凄まじい爆発と共に巨大な影が飛び出した。

体長十メートルを超える、全身が溶岩の装甲で覆われた巨大な蟹『マグマ・エンペラークラブ』。

さらに、黒焦げの大地を揺らして現れたのは、紫電を纏った二本の巨大な角を持つ、体長八メートルの巨大牛『ライトニング・ブル』の大群であった。

「…………!!」

ジンが【気配察知】と【直感回避】のスキルをフル稼働させ、額に冷や汗を浮かべた。

「トウヤの兄貴……。こいつら、昨日までの魔物と基礎ステータスが違いすぎる。ただ歩くだけで空気がビリビリ震えてやがるぜ。さすがにこれは……」

普通の冒険者(あるいはこれまでの彼ら)であれば、一歩引いて陣形を組み直すほどのプレッシャー。

しかし。トウヤの【神眼の指揮】は、そのプレッシャーの奥にある『真理』を完璧に見抜いていた。

「おい、お前らァァァッ!!」

過酷な魔境の雷鳴すら掻き消す、トウヤの絶叫が響いた。

「あいつら、ただの化け物じゃないぞ! あの溶岩蟹、極限の高熱と高圧の環境で育ったせいで、殻の中の身が信じられないくらい『超・高密度』に引き締まってやがる! 普通のカニの百倍の旨味が凝縮された『究極の濃厚カニミソ』が詰まってるぞ!!」

「なっ……!」エリスの目の色が変わる。

「そしてあの雷牛! 常に雷の魔力を筋肉に流して活動してるおかげで、全身が『奇跡の赤身肉』だ! 霜降りとは違う、噛めば噛むほど肉の旨味とピリッとした雷の刺激が爆発する、極上のスパイスステーキ肉だァァァッ!!」

「「「極上の、スパイスステーキ肉ッ!!?」」」

地獄の環境に対する恐怖など、彼らの脳内から一瞬で消し飛んだ。

「ガッハッハ! 雷の牛だと!? ビールに合わないわけがないだろうが!!」

「カニミソ! 濃厚なカニミソですわ! バゲットに塗って焼いたら絶対に美味しいです!」

「だが気をつけろ! こいつらは今までみたいに5秒で瞬殺とはいかない! 殻は鋼鉄より硬く、動きは雷のように速い! 肉を傷つけないように、全員の連携をフル稼働させて『極上のコース料理』を仕上げるぞ!!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

タガが外れた美食家たちが、魔境の大地を蹴った。

「ブルモォォォォォッ!!」

ライトニング・ブルが、紫電を纏った超音速の突進を仕掛けてくる。

「速えっ!? だが、受け止める! 【魔力城塞・極】!」

ガレスが竜盾を構えるが、牛の突進を受けた瞬間、ガレスの巨体が「ズザザザッ!」と数メートルも後退した。今までどんな攻撃も片手で弾いていたガレスの盾が、初めて軋みを上げたのだ。

「ガッハッハ! 効くぜ! こいつは骨があるな!」

「ガレスさん、私が支えます! 【絶対結界・多重防壁】!」

マリアがすかさず結界を重ね掛けし、雷の衝撃を完全にシャットアウトする。

「カニの殻、硬すぎますわ! 私の一撃でもヒビしか入りません!」

エリスが『竜殺しの重剣』でマグマ・クラブの関節を叩き斬るが、超高密度の溶岩殻に阻まれ、一撃での【装甲剥がし】が通じない。

「エリス、俺が隙間を作る! 【直感回避・神速】!」

ジンが空中の雷をすり抜けながら、カニの関節のヒビに短剣をねじ込み、強引に隙間をこじ開ける。

「そこです! 冷却して脆くします! 【アブソリュート・ゼロ】!」

ルミナがその隙間に絶対零度の魔法を撃ち込み、急激な温度変化によってカニの溶岩殻を内側から崩壊させた。

「よし、完璧なパスだ!!」

最後はトウヤが『神斬りの業物』を抜き放ち、【空間斬り】で無防備になった雷牛の極上赤身肉と、溶岩蟹の濃厚なミソだけを美しく切り出す。

「……ふぅ! やったぞ!」

息を弾ませながら、トウヤがアイテムボックスに食材を収納する。

これまでの階層のように「見つけ次第瞬殺の乱獲」とはいかない。敵の動きを見切り、防御を固め、全員のスキルを噛み合わせてようやく「一つの食材」を無傷で狩ることができる難易度。

だが、トウヤの顔には、疲労よりも『狂喜』の笑みが浮かんでいた。

「最高だ……! 敵が硬くて速いからこそ、俺たちの連携をさらに上の次元に引き上げられる! 何より、苦労して手に入れた分、この肉の味は絶対に格別だぞ!!」

「ヒャッハー! 違いないぜ! トウヤの兄貴がそこまで言うなら、狩りがいがあるってもんだ!」

「ええ! 私の大剣も、もっともっと鋭く研ぎ澄ませてみせますわ!」

難易度が上がったことで、彼らの「キャンパーとしての闘争心(食欲)」にさらに火がついたのだ。

***

その日から、彼らの第21階層での『過酷で美味しいスローライフ』が始まった。

これまでは一日で階層を駆け抜け、乱獲してカンストさせていたが、今回は違う。

一日中、雷とマグマの降り注ぐ魔境で死闘(食材調達)を繰り広げ、ギリギリの連携を少しずつ洗練させていく。

そして夜になれば、【星の箱庭】の快適な豪邸に戻り、その日に採れた最高の食材で極上の晩餐を開くのだ。

「さあ食え! 今夜は『ライトニング・ブルの超厚切りスパイシーステーキ』と、『マグマ・エンペラークラブの特濃ビスクスープ』だ!!」

ジュワァァァァァァッ!!

トウヤが鉄板で焼き上げた雷牛のステーキは、口に入れた瞬間、凝縮された赤身の圧倒的な旨味が爆発し、同時に雷の魔力による「ピリッ!」とした心地よい刺激が舌を駆け抜ける。

「んんんんッ!! なにこれ、噛めば噛むほどお肉の味が濃くなります! 雷のビリビリが最高の胡椒みたいになって、永遠に食べ続けられますぅ!」

マリアが白飯を片手に感動の涙を流す。

「ガッハッハ! カニのビスクもとんでもないぞ! 今までのカニミソが霞むくらい、味が暴力的に濃い! バゲット一本じゃ足りねえ!!」

ガレスが鍋ごと抱え込みそうな勢いでスープを飲み干す。

さらに、彼らには第20階層で手に入れた『時空の豊穣農園&生簀』がある。

「よし、この雷牛の赤身細胞と、溶岩蟹の足を農園の培養プールにセットしておいたぞ。これで明日には、拠点の中でもこの極上食材が勝手に育つようになる」

「「「神の設備バンザイッ!!」」」

過酷な戦闘をこなし、最高の飯を食い、拠点設備で食材を無限増殖させる。

数日後。

雷鳴とマグマが荒れ狂う第21階層で、ライトニング・ブルの大群を前に、彼らはもはや焦ることなく、笑い合いながら完璧な陣形を組んでいた。

「ガレスさん、右から三頭来ます!」

「おう! 俺がまとめて受け止める! エリス、ジン、殻割りは任せたぞ!」

「ルミナ、マリア! 鮮度保持の準備だ!」

「「「了解いただきますッッ!!!!」」」

大迷宮の真の深層、真の地獄。

しかし、『悠久の踏破者』たちにとって、そこは「少し歯ごたえのある、極上の高級食材の狩り場」へと変貌していた。

難易度が上がれば上がるほど連携が研ぎ澄まされ、手に入る食材の質が上がり、農園が豊かになっていく。

最強の拠点と底なしの食欲を持つ彼らの迷宮スローライフは、もはや迷宮の法則すらねじ伏せ、どこまでも美味しく、そして熱く続いていくのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ