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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第57話 15階層の中ボス前の連携強化

第57話 15階層の中ボス前の連携強化

『悠久の大迷宮』第14階層――『白銀の氷雪山脈と凍結湖』。

裏ボスであるエンペラー・マンモスを三本目の光柱で「冷凍庫」にぶち込んだ翌日。猛吹雪が吹き荒れる銀世界の中で、『悠久の踏破者』たちは、これまでのただの乱獲から少しだけ趣向を変え、真剣な顔つきで隊列を組んでいた。

「いいか、お前ら。この第14階層の食材も順調に集まり、レベルもいい具合に上がってきた。だが、忘れてはならないことがある」

トウヤが、防寒具(リルが展開する温度調節バリアのおかげで実際は薄着だが)の襟を正しながら、仲間たちを見回した。

「次の第15階層は、第5階層のカマキリ(タイラント・デスマンティス)と同じ『中ボス階層』だ。5階層ごとに強力な関門が設けられているのが、この迷宮の法則。どんな異常な環境で、どんな初見殺しのギミックを持ったボスが現れるか分からない。……つまり!」

「つまり!」

エリスとマリアがゴクリと息を呑む。

「不測の事態で『極上のボス肉』を焦がしたり、ミンチにしちまう可能性があるってことだ!!」

「「「それは絶対に避けねばならん(いけないわ)!!」」」

彼らにとっての「不測の事態」とは、全滅することではなく「食材の鮮度や旨味を損なうこと」であった。その点において、彼らの危機感は王国の精鋭騎士団すら凌駕するほど研ぎ澄まされている。

「だから今日は、ただ狩るだけじゃない。『いかなる状況下でも、対象を無傷で無力化し、安全かつ迅速に解体(討伐)に持ち込むための連携』を徹底的に体に叩き込む! 題して『絶対鮮度保持・多角包囲陣形』の訓練だ!」

「ガッハッハ! 望むところだ! 俺の盾でどんなボスの攻撃も完封してやる!」

ガレスが『獄炎の竜盾』をバンバンと叩き、やる気に満ちた笑いを上げる。

「よし。まずはガレスとマリア、お前たちは『絶対防衛と隔離』のコンビネーションだ。マリアの【絶対結界】で敵の退路と魔法を封じ、ガレスが結界の内部でヘイトを完全に引き受ける。敵を『逃げ場のない生簀いけす』に閉じ込めるんだ」

「はいっ! 聖女の祈りで、一歩も外には逃がしません!」

「次にルミナとジン。ルミナの氷魔法で地形を操作し、ジンの『幻影の外套・極』による隠密機動力を極限まで引き上げる。ルミナ、ジンが動くルートにピンポイントで『氷の滑走路』を作り出せるか?」

「やってみます! ジンさんの足元だけを摩擦ゼロにして、超高速で敵の死角に送り込むんですね!」

「ヒャッハー! そいつは面白そうだ! スピードが乗れば、俺の短剣の貫通力も跳ね上がるぜ!」

「エリスは、クロとクーと組んで『装甲剥がし』だ。クーの風とクロの影跳躍で敵の体勢を崩した瞬間に、【渾身撃】で食べられない外殻や装甲だけを叩き割る。中身(肉)には絶対に傷をつけるなよ」

「任せてちょうだい! 貴族の令嬢たるもの、カニの殻剥きくらいエレガントにこなしてみせるわ!」(※大剣で)

「そして俺とリルで、最後に美味しいところを【空間斬り】でいただく。……よし、実践だ! ちょうどいい的(食材)が来たぞ!」

トウヤが指差した先。雪煙を上げて斜面を駆け下りてきたのは、水晶のように透き通った立派な角を持つ体長三メートルの巨大鹿『クリスタル・トナカイ』の群れと、その群れを追って現れた全身真っ白な巨大熊『ブリザード・ベア』だった。

「冬眠前に脂をたっぷり蓄えた雪熊と、引き締まった極上のトナカイベニソンだ! 訓練開始ッ!!」

「「「応ッ!!」」」

白銀の雪原で、進化した『悠久の踏破者』の連携が火を噴く。

「ピィィッ!(敵の足並み、乱すよ!)」

上空からクーが【重力嵐】を放ち、トナカイと熊の群れを一箇所に押し留める。

「そこです! 【絶対結界・多重展開】!」

マリアの聖なる結界が、押し留められた魔物たちをドーム状に包み込んだ。

「ガッハッハ! お客様、こちらがメインテーブルだ! 【挑発】からの【魔力城塞・極】!」

結界の内部に陣取ったガレスが、強烈な炎の壁を展開し、魔物たちのヘイトと攻撃を一点に集中させる。炎の壁は結界の内部で熱を循環させ、魔物たちの体力をジワジワと削っていく。

「ルミナ、頼むぜ!」

「はいっ! 【アイス・スライダー】!」

ルミナが『星天の魔杖』を振り抜くと、結界の内部に複雑に交差する「氷のレール」が一瞬にして形成された。

「ヒャッハーッ! こいつは最高に速えぇ!!」

姿を消したジンが、その氷のレールの上をスケートのように滑り出し、常識外れの超スピードで結界内を縦横無尽に飛び回る。

目にも止まらぬ速度から放たれる【直感回避】を乗せた急所突きが、魔物たちの関節の隙間にある神経を的確に麻痺させていく。熊も鹿も、何が起きているのか理解する前に、その場に崩れ落ちた。

「仕上げよ! クロちゃん!」

「ワォンッ!」

クロが熊の死角から飛び出し、注意を引いた瞬間。

「【渾身撃・装甲砕き】!!」

エリスの重剣が、ブリザード・ベアの分厚い氷の毛皮と、クリスタル・トナカイの硬質な水晶角の『根元』だけを、精密機械のような正確さで叩き割った。

中から露出した、一ミリの傷もついていない完璧な「お肉」。

「完璧だ! お前ら、最高のアシストだぞ!」

トウヤが音もなく滑り込み、【空間斬り】の不可視の刃を閃かせる。

一瞬にして、極上のトナカイ肉と、脂の乗った雪熊の肉、そして美しい水晶角だけが空間から切り離され、トウヤのアイテムボックスへと吸い込まれていった。

「ふぅ……! やりましたね!」

マリアが結界を解除し、額の汗を拭う。

「ああ。ルミナの氷のレール、マジでクセになりそうだぜ。どんな分厚い装甲の裏にも一瞬で回り込める」

ジンも手応えを感じたように短剣を回した。

「よし! この連携なら、15階層でどんなカチカチの魔物が出ようが、素早い魔物が出ようが、確実に『無傷で解体』できる! 今日は一日、この連携を完璧に手足に馴染ませるまで狩り続けるぞ!」

「「「おおおおおッ!!」」」

もはや訓練という名の「極上の冬の味覚・収穫祭」。

彼らは猛吹雪の第14階層を縦横無尽に駆け巡り、フロスト・キングクラブ、プラチナ・サーモン、スノー・ターキーといった極上食材を、一切の無駄なく、芸術的な連携で乱獲し続けた。

***

その日の夜。

【星の箱庭】の大豪邸。広々としたダイニングルームには、暖炉の火がパチパチと心地よい音を立てていた。

「さあ! 連携訓練の成果を味わう時間だ! 今夜のメインは『クリスタル・トナカイの極厚ローストベニソン 〜特製ベリーソース添え〜』! そして、『ブリザード・ベアと雪山キノコ、タラバガニの熱々ホワイトシチュー』だ!!」

「「「いただきますッ!!」」」

テーブルに並べられたのは、表面は香ばしく、中は美しいロゼ色に焼き上げられたトナカイ肉の厚切りロースト。その上には、迷宮で採れた酸味のあるベリーを赤ワインで煮詰めた特製ソースがたっぷりとかかっている。

そして、巨大なスープボウルには、雪熊の甘い脂とカニの出汁が溶け込んだ、濃厚でクリーミーな熱々のシチュー。

「んんんんッ!! トナカイのお肉、全然臭みがなくて、信じられないくらい柔らかいです!」

エリスが目を輝かせながらローストベニソンを頬張る。

「赤身のギュッと詰まった旨味に、甘酸っぱいベリーのソースが完璧に合いますぅ……! 噛むほどに幸せが口の中に広がって……!」

マリアも両頬を押さえてうっとりとしている。

「ガッハッハ! こっちのシチューもとんでもないぞ! 熊の脂がシチュー全体に強烈なコクを出してるのに、カニの出汁がスッキリとまとめてやがる!」

「バゲットを浸して食うと無限にいけるぜ! 寒い雪山で訓練した後のシチューは、悪魔的な美味さだな!」

ガレスとジンが、特大のバゲットをシチューに浸しては豪快に口に放り込んでいる。

「ふふっ。クーちゃんもクロちゃんも、お口の周りがシチューで真っ白ですよ」

ルミナが自身の分を上品に楽しみながら、テイムモンスターたちの顔をナプキンで拭いてやっている。リルもシチューの皿の中でポヨンポヨンと跳ねながら美味しそうに(?)味わっていた。

圧倒的な美味しさの前に、今日の訓練の疲労など完全に吹き飛んでいく。

「……よし。連携も完璧に仕上がったし、アイテムボックスの冬の味覚も十分すぎるほど集まった」

トウヤが食後のコーヒーを啜りながら、全員の顔を見渡した。

「明日はいよいよ、第15階層。中ボスの待ち受ける関門だ」

トウヤの言葉に、全員の表情がスッと引き締まった……かに見えた。

「中ボス……! どんなお肉(敵)なんでしょうね!」

「第5階層のカマキリみたいに『食べられないハズレ』じゃないといいな。せっかく連携を磨いたんだ、極上のレア食材であってほしいぜ!」

「ええ! エビやカニなら私がお殻を割りますし、お肉ならみんなで瞬間冷凍しましょう!」

恐怖も緊張も、一切ない。

彼らの頭の中はすでに、「次のボスをどうやって美味しく料理するか」という期待感でパンパンに膨れ上がっていた。

「ああ。どんな奴が来ようが、今日の『絶対鮮度保持陣形』でサクッと捌いてやる。しっかり寝て、明日の大一番に備えろよ!」

「「「おやすみなさい!!」」」

大迷宮の恐るべき関門を前にしても、彼らの夜は最高に平和で、美味しい笑顔に満ちている。

万全の連携と底なしの食欲を武器に、『悠久の踏破者』たちはいよいよ第15階層の未知なる中ボスへと挑むのであった。


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