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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第52話:深海の究極収穫祭と、黄金出汁の海鮮しゃぶしゃぶ

第52話:深海の究極収穫祭と、黄金出汁の海鮮しゃぶしゃぶ

『悠久の大迷宮』第12階層――『輝石の珊瑚礁と浅瀬の海』。

昨日、この階層におけるレベルとスキルの『上限カンスト』を確認した『悠久の踏破者』の八人(六人と三匹)は、宣言通り、今日は朝から「戦闘」ではなく「完全な収穫作業」に徹していた。

「よし! 今日はアイテムボックスの空き容量がゼロになるまで、この豊かな海の幸を根こそぎ持っていくぞ! 海藻、貝類、見慣れない魚、なんでもいいから美味そうなものは全部集めろ!」

海中とは思えないほどよく通るトウヤの号令に、神話級アーティファクト『海神の呼吸輪』を身につけたメンバーたちが、水中の抵抗を全く感じさせない軽やかな動きで散開した。

「トウヤの兄貴! この海底の岩場、すげえのが張り付いてるぜ! トゲトゲの巨大なウニと、大人の顔よりデカいアワビだ!」

ジンが『幻影の外套・極』で気配を消し、岩の隙間に潜む魔物(?)たちを次々と発見する。

「おっ、それは『ニードル・シーウーチン(針ウニ)』と『アーマード・アバロン(装甲アワビ)』だな! ウニは身が崩れないように慎重に、アワビは殻ごとひっぺがすぞ!」

「任せなさい! 【渾身撃】で岩の表面ごと薄く削り取ってあげるわ!」

エリスが『竜殺しの重剣』を繊細(?)に振るい、巨大アワビを岩盤ごと綺麗に切り剥がしていく。

一方、ルミナとマリアの二人は、海中高くそびえ立つ『海藻の森』で作業にあたっていた。

「マリアさん、そちらの『エメラルド・ワカメ』を束ねてもらえますか? 私が根元を凍らせて一気に刈り取ります!」

「はいっ! 【絶対結界】でワカメをひとまとめにしますね!」

透き通るような緑色に輝く極上のワカメを、二人の高位魔法使いが、まるで大鎌で麦を刈るような鮮やかさで収穫していく。

さらにその奥では、トウヤが【空間斬り】を使って、太さ数十センチ、長さ十メートルにも及ぶ巨大な昆布――『深海王昆布ディープ・ケルプ』を、旨味が逃げないように細胞の隙間からスパンッ! と両断していた。

「いいぞ! この昆布、表面に旨味成分がビッシリと結晶化してる! これで出汁を取れば、どんな料理も神の味になるぞ!」

トウヤが歓喜の声を上げる。

「ピュイ〜♪」

スライムのリルも【流体操作】を駆使し、水流を操って散らばったホタテや小魚を竜巻のように巻き上げ、トウヤのアイテムボックスへとダイレクトに放り込んでいる。

クロとクーは海中を駆け回り、ちょっかいを出してくる鮫やイカを瞬殺しては、その極上肉を「ついで」のように回収していた。

もはや迷宮探索の光景ではない。

世界最強のバケモノ集団による、前代未聞の『超ド級・密漁(潮干狩り)フェスティバル』である。

「ガッハッハ! トウヤ、この巨大な『真珠ガキ』はどうだ!? 殻の中に魔力とミルクみたいな汁がタプタプに詰まってるぞ!」

ガレスが両手で抱えるほどの特大牡蠣を持って泳いでくる。

「最高だ! それは生でも焼いても美味いぞ! よし、片っ端から回収だ!!」

一日中、ただひたすらに、貪欲に。

彼らは第12階層の深海領域を縦横無尽に泳ぎ回り、昆布、ワカメ、ウニ、アワビ、ホタテ、牡蠣、そして未知の魚介類を、これでもかというほど収穫し尽くしたのだった。

***

夜。

『星の箱庭』の異空間に建つ、三階建ての大豪邸。

その広々としたダイニングルームには、今日一日の疲れ(という名の遊び疲れ)を癒やす、極上の香りが満ち溢れていた。

「さあ、第12階層・収穫祭の集大成だ! 今夜は『深海王昆布の黄金出汁・特選海鮮しゃぶしゃぶ』! そして『ニードル・ウニとアーマード・アバロンの超贅沢・海鮮丼』だ!!」

「「「うおおおおおッ!!」」」

テーブルの中央に鎮座する巨大な魔力鍋。その中では、深海王昆布から取った、まるで黄金のように透き通った出汁がフツフツと煮えたぎり、上品で奥深い磯の香りを漂わせている。

そこに、薄切りにしたバレット・ツナの大トロ、巨大アワビのスライス、プリプリの真珠ガキ、そしてエメラルド・ワカメをサッとくぐらせるのだ。

「いただきますっ!」

エリスが、出汁にくぐらせてほんのりと桜色に色づいた大トロを口に放り込む。

「――――あふっ、んんんッ!!」

エリスの瞳から、ポロリと感動の涙がこぼれ落ちた。

「お、美味しい……! 昆布のお出汁が、信じられないくらい上品なのに力強くて……大トロの脂の甘みを何倍にも引き立ててます! 噛まなくても、舌の上でとろけちゃいますぅ……っ!」

「こっちの海鮮丼もヤバいぞ! なんだこのウニってやつは!?」

ジンが、どんぶり飯の上に山盛りにされた『黄金色のウニ』と『アワビの刺身』を掻き込み、絶叫する。

「口に入れた瞬間、磯の香りとカスタードクリームみたいな濃厚な甘みが爆発しやがる! アワビのコリコリした歯ごたえも最高だ! 醤油とワサビが合いすぎて、飯が無限に消えていくぜ!」

「ガッハッハ! この昆布出汁を吸ったワカメも絶品だな! シャキシャキで、噛むたびに海の旨味がジュワッと溢れてくる! 日本酒ってやつにピッタリだ!」

ガレスが豪快に笑いながら、熱燗を煽る。

「ふぁぁ……っ。真珠ガキのしゃぶしゃぶ、ミルクのように濃厚で……私、聖女の祈りよりもこのお出汁に祈りを捧げたいです……」

マリアも完全に限界突破した食欲で、巨大な牡蠣を次々と鍋に投入している。

ルミナは上品に(しかし凄まじいスピードで)アワビとウニを堪能し、クロやクー、リルもそれぞれの専用の丼に顔を突っ込んで無心で海鮮を味わっていた。

圧倒的な昆布出汁の旨味と、暴力的なまでに新鮮な海の幸。

彼らの胃袋と心は、第12階層がもたらした究極の恩恵によって、完全に満たされていった。

***

「……ふぅ。食った食った。まさか迷宮の地下で、こんな完璧な海鮮フルコースが食える日が来るとはな」

食後のハーブティーを飲みながら、ジンが膨れ上がった腹をさすって満足げに息を吐く。

「ええ。お出汁の余韻がまだ口の中に残っていて……本当に幸せです」

ルミナもソファに深く沈み込み、うっとりとした表情を浮かべている。

トウヤはそんな仲間たちの様子を見て、ニッと笑みを深めた。

「アイテムボックスの容量も、この階層の海鮮で限界ギリギリまで埋まった。レベルもスキルもカンストしたし、思い残すことは何もないな」

トウヤがそう言うと、リビングの空気が、ふわりと『次の冒険』への期待感に包まれた。

「よし。宣言通り、明日からは未知の『第13階層』へ足を踏み入れるぞ」

「第13階層……!」

エリスが背筋を伸ばし、目を輝かせる。

数十年間、誰も生還したことのない深層の、さらに奥深く。

地上の人間であれば、名前を聞いただけで絶望し、震え上がるような前人未到の領域だ。

しかし、この豪邸のリビングで交わされる会話は、悲壮感などとは対極にあった。

「次はどんな環境なんでしょうね! 火山階層なら、また美味しいお肉が焼ける魔物がいそうですし、氷雪階層なら、身の引き締まったお魚がいるかもしれません!」

マリアがワクワクした声で予想を立てる。

「ガッハッハ! 森やジャングルなら、また見たこともないフルーツやキノコがあるかもしれんな! どんな巨大な魔物が来ようが、俺の『獄炎の竜盾』で返り討ちにしてやる!」

ガレスが自信満々に胸を叩く。

「俺の【直感回避】と『幻影の外套・極』のコンボなら、どんな罠も奇襲も散歩みたいなもんだぜ。新しい階層の『お宝(食材とアーティファクト)』探しが楽しみで仕方ねえや」

ジンもニヤリと笑って短剣を回す。

恐怖も、不安も、一切ない。

彼らの心にあるのは、ただ純粋な「未知の環境への好奇心」と、「まだ見ぬ極上食材への底なしの食欲」だけだった。

「ああ。どんな過酷な環境が待っていようと、俺たちの連携とこの【星の箱庭(拠点)】があれば関係ない。徹底的に安全マージンを取りながら、新しい食材を食い尽くすぞ!」

「「「おおおおおッ!!」」」

王都で彼らの無事を祈る者たちの涙も、彼らを陥れようとした悪党たちの絶望も、もはや彼らには届かない遠い世界の話だ。

絆と神話級の装備、そして最強の飯で結ばれた『悠久の踏破者』たちの前には、ただ「どこまでも美味しく、楽しい迷宮スローライフ」だけが果てしなく続いている。

「よし、今日はゆっくり寝て、明日に備えろよ!」

「「「おやすみなさい!!」」」

笑い声が響く大豪邸。

明日開かれる第13階層の扉の先には、果たしてどんな未曾有の魔物と、極上の飯テロが待ち受けているのか。

彼らのワクワクが止まらない夜は、心地よい波の音(と海鮮の余韻)に包まれながら、静かに更けていくのであった。

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