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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第48話:新たな階層への扉と、完全に洗脳された捕食者たち

第48話:新たな階層への扉と、完全に洗脳された捕食者たち

『悠久の大迷宮』第11階層――『蒼天の雲海と浮遊群島』。

この美しい天空の階層で、ひたすらに優雅な狩りと豪邸での休息を繰り返すこと数日。

「……よし。見事に全員、この階層の経験値上限カンストに達したな。スキルの熟練度も完全に頭打ちだ」

朝の爽やかな空気の中、大豪邸の庭でステータスボードを確認したトウヤが、満足げに頷いた。

目の前には、第10階層のボスから得た神話級の武具を完全に手足のように使いこなせるようになった五人の仲間と、三匹のテイムモンスターが頼もしく並んでいる。

「ガッハッハ! 雲海での狩りも最高だったが、さすがに空飛ぶ牛の肉もサメのヒレも、アイテムボックスに一生分詰め込んだからな。そろそろ次の飯……いや、次の階層が恋しいところだ!」

ガレスが『獄炎の竜盾』をバンバンと叩きながら豪快に笑う。

「ふふっ、ガレスさんったら完全に目的が『ご飯』になってますよ。……まあ、私も新しい環境の『食材』が何か、気になって仕方ないんですけどね」

マリアが『慈愛の聖印ペンダント』を胸に輝かせながら、聖女らしからぬ食欲全開の笑顔を浮かべた。

「昨日のうちに、この浮遊群島の最奥で『第12階層への扉』は見つけてある。準備はいいな? 今日からまた、新たな階層でのキャンプ生活の始まりだ!」

「「「おおおおおッ!!」」」

トウヤの号令に、全員が力強く応える。

【星の箱庭】の扉を収納し、彼らは雲海の大扉を重々しい音と共に押し開けた。

***

第12階層。

扉の先に広がっていたのは、またしてもこれまでの常識を覆すような、美しくも異質な光景だった。

「うわぁ……! きれーい……!」

エリスが感嘆の声を漏らす。

そこは、『輝石の珊瑚礁と浅瀬の海』だった。

天井には太陽の代わりとなる巨大な発光鉱石が輝き、見渡す限りの広大な空間に、足首から膝ほどの深さの「透き通ったエメラルドグリーンの海水」が広がっている。

そして、海水のあちこちから、赤、青、黄金など、宝石のように輝く巨大な珊瑚サンゴが森のように生い茂っていた。

「水棲の階層か! 第3階層の地下湖以来だな。水は冷たくない……むしろ温かい南国の海みたいだ」

トウヤが海水をすくい上げて確認する。

その時だった。

「ピィィィッ!(前方から、大きいの来るよ!)」

上空を飛ぶクーの念話と共に、巨大な珊瑚の森の奥から、ザバーーッ!! と豪快な水飛沫を上げて新たなモンスターが姿を現した。

それは、体長五メートルを超える巨大な甲殻類――透き通るような青い甲殻と、ハサミの代わりに『巨大なドリル状の巻貝』を両腕に装備したヤドカリの魔物『クリスタル・エルミタ』だった。

さらに、浅瀬の海中からは、全身がヌメヌメとした真珠色に輝く巨大なタコ『パール・オクトパス』が、太い触手をうねらせて数匹這い出てくる。

普通の冒険者であれば、足場が悪く動きの制限される浅瀬で、このような巨大な水棲魔物の群れに囲まれれば、即座に死を覚悟するだろう。

しかし。

彼らはすでに、トウヤの作る『極上の迷宮飯』に完全に脳を支配された『悠久の踏破者』であった。

「トウヤの兄貴! あのでっかいヤドカリの背負ってる殻の中、絶対に『特大の身』が詰まってますよね!? あれ、カニミソみたいに濃厚な味噌も入ってるんじゃないですか!?」

ジンが『幻影の外套・極』を翻しながら、ヨダレを垂らさんばかりの勢いで叫ぶ。

「ト、トウヤさん! あの真珠色のタコさん、足がすごく太くてプリプリしてます! ぶつ切りにしてアヒージョとか、唐揚げにしたら絶対に美味しいやつですよね!?」

ルミナも『星天の魔杖』を握りしめ、魔物ではなく「歩く海鮮パーティー」を見るような熱い視線を送っている。

「ガッハッハ! 足場が水でも関係ねえ! あのタコの墨袋、パエリアに使えるんじゃないか!? 傷つけないように俺がヘイトを買うぞ!」

「私、ヤドカリの殻を真っ二つに割って中身を取り出しますわ! 貴族の誇りにかけて!」

「私はタコさんが逃げないように、結界で生簀いけすを作りますっ!」

誰も「強い敵だ」「どう倒そう」などと考えていない。

「どうやって美味しく食べるか」「どの部位を傷つけずに収穫するか」――それしか頭になかった。

「お、おう……お前ら、すっかり頼もしく(食い意地が張って)なったな」

トウヤは苦笑しつつ、愛用の『幻影の解体短剣』を抜き放った。

「よし! ヤドカリの身は刺身と炭火焼き! タコの足はガーリック炒めと唐揚げだ! 収穫祭、開始ッ!!」

「「「応ッ!!」」」

ザパァァァンッ!!

浅瀬の海を蹴り立て、八人(六人と三匹)の完璧すぎる連携が炸裂した。

「来い、海鮮ども! 【魔力城塞・極】!!」

ガレスの竜盾から放たれる獄炎の壁が、パール・オクトパスの吐き出すスミと水流の魔法を完全に蒸発させる。

「生簀、展開します! 【絶対結界】!」

マリアの結界がタコの群れの周囲を囲い込み、逃げ場を失わせたところに、ルミナの【アブソリュート・ゼロ】がピンポイントで海水を凍らせ、タコの足を一本残らず氷漬けにして動きを封じる。

「シャァァァァッ!!」

クリスタル・エルミタ(巨大ヤドカリ)が、怒り狂って両腕のドリルを回転させながら突進してくる。

「大味な攻撃だな! 【直感回避】!」

完全に気配を消したジンが、ドリルの軌道を紙一重で躱し、ヤドカリの足の関節の隙間に短剣を突き立てて機動力を奪う。

「ワォンッ!」

クロが【次元影跳躍】で空間を飛び越え、ヤドカリの死角から背中の殻の接合部に強烈な一撃を叩き込む。

「これで、殻ごといかせてもらうわ! 【渾身撃】!!」

エリスの『竜殺しの重剣』が、超高熱を伴って振り下ろされる。

分厚いヤドカリの水晶の殻が、まるでパカッと蓋を開けるように真っ二つに割れ、中から「艶やかで透き通った巨大なヤドカリの身」が丸見えになった。

「ナイスだエリス! もらうぞ!」

トウヤが【空間斬り】を放つ。

次元を切り裂く刃は、ヤドカリの生命を絶つと同時に、最も美味しい「尻尾の極太の身」と「濃厚な味噌」の部位だけを寸分の狂いもなく切り出し、タコの「太い足」だけを綺麗にスライスして、アイテムボックスへと収納していった。

パキィィィンッ……!!

戦闘開始から、わずか数十秒。

第12階層の強力な水棲モンスターたちは、一切の反撃すら許されず、ただの「極上の海鮮食材」へと姿を変え、光の粒となって消えていった。

「よし! 新階層の初戦闘、完全無傷で大勝利だ!」

トウヤが短剣の水を払い、満面の笑みで振り返る。

「ヒャッハー! 楽勝だぜ! 新装備のおかげで、足場が悪くても全く苦にならねえ!」

「ヤドカリさんのお肉、すごく美味しそうでした……! 今夜の宴会が楽しみです!」

ジンとエリスがハイタッチを交わし、マリアとルミナも嬉しそうに微笑み合っている。

未知の恐怖など、このパーティーには一切存在しない。

過酷な大迷宮の環境すら、「極上のスパイス」と「新しい食材の宝庫」に変換してしまう『悠久の踏破者』たちの、圧倒的で非常識な快進撃。

彼らの底抜けに明るい笑い声は、美しい珊瑚礁の海に高らかに響き渡るのであった。

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