第475話 白銀の祝宴と、次なる領域『奈落の粘菌回廊』への潜入準備
## 第475話 白銀の祝宴と、次なる領域『奈落の粘菌回廊』への潜入準備
「星海うま味の結晶塩砂漠」を、一滴の出汁すら残さず、一粒の結晶も逃さず食い尽くした移動料亭要塞『星海大宴殿』。
要塞の外壁は、あの地獄のような塩の嵐を浴びたにもかかわらず、リルの分泌液とスモークオイルによる極上のコーティングのおかげで、新車以上の輝きを放っていた。
「よし野郎ども! 塩と出汁の全面完全平定、お疲れさん! 今夜は砂漠から搾り取った『無限のうま味』で、史上最大級の祝宴だァァッ!!」
大宴殿の大広間には、砂漠で乱獲した『生ハム猪』の原木が数百本、そして『砂漠のサボテン烏賊』から抽出した特濃スープが、巨大な銀の釜でグツグツと黄金色の泡を立てていた。
### 第一部:砂漠の至宝による祝宴と、神々の暴食
「素晴らしい! 結晶岩塩でコーティングして一週間、極上のアミノ酸が凝縮されたこの猪肉……! 噛むほどに塩味と肉汁が混ざり合って、口の中で小宇宙が爆発するようだ!」
神様が、猪肉の塊を齧りながら涙を流して称賛する。
「この出汁……! このサボテン烏賊のスープ……! 帝国には数多の料理長がおるが、この深みと透明度を両立させたスープなど、神話の時代まで遡らねば出会えんぞォォッ!!」
エルドリア元皇帝が、巨大な椀を抱えて飲み干し、感極まって絶叫した。
「酒が進む! この生ハムのスライスを、結晶化したうま味成分を砕いてパラパラと振りかけて食うだけで、これほどまでに酒が……エールが止まらん!」
ガレスと上皇が、猪肉を肴に樽酒を酌み交わし、賢者ケンジは「……明日、確実に成人病になるレベルだな。だが、後悔はしない」と悟りを開いた表情で、最後の一切れまで堪能していた。
宴は深夜まで続き、最後には全員が満腹で床にひっくり返るという、いつも以上の大乱痴気騒ぎとなった。
### 第二部:次のエリア『奈落の粘菌回廊』の戦慄
翌朝、静寂を取り戻した作戦会議室。
前夜の宴で限界突破した面々が、少し眠たげな目を擦りながらホログラムマップの前に集まった。
『……さて、塩砂漠の次は、これまでの環境とは全く異なる、最も不快で、最も厄介な領域だ』
サイラスが投影したのは、地図というよりは『胃腸の断面図』のような、グネグネと入り組んだ広大な通路空間。
そこは、世界全体が巨大な生物の体内のような構造になっており、壁面から常に栄養価の高い粘液が滴っている。
「……粘菌が支配するエリア、ですわね」
エリスがホログラムを見て顔をしかめる。
「以前の火山や砂漠とは違う……。このエリアは、常に何かが腐敗し、再構成され続ける『生きた大迷宮』……【奈落の粘菌回廊】ですわ」
『その通りだ』とサイラス。
『この回廊は、世界中のあらゆる有機物を分解し、吸収し、そして新たな粘菌へと変貌させる。回廊の壁面には、無数の「捕食粘菌」が張り付いており、要塞が近づけば、その質量で船体を溶かし、吸収しようとするはずだ』
「食っても食っても増える……まるで、終わりのないバイキング会場だな」
トウヤが皮肉げに笑う。
「だが、粘菌ってことは、コイツらは『栄養そのもの』だよな?」
「トウヤ殿、甘いぞ」
ジンが短剣をいじりながら冷徹に指摘する。
「粘菌の内部には、彼らが分解した『毒素』や『寄生因子』が混入している可能性が高い。単に食えば美味いという代物ではない。食べた瞬間に、その粘菌の養分となって消化されるリスクがある」
### 第三部:作戦の準備と、大宴殿の『胃袋』改造
「毒と消化か……。なら、俺たちのやることは一つだ」
トウヤはニヤリと笑い、新たなプランを提示した。
「これより大宴殿を**【要塞胃袋】**へと改造する!」
「胃袋……ですと?」
「そう! 粘菌に溶かされるなら、むしろ要塞の外壁に『最強の消化酵素』と『中和バリア』を纏わせて、逆にこっちが粘菌を『逆吸収』してやればいいんだ!」
トウヤがサイラスと協力し、大宴殿のシステムを改造し始めた。
1. **対粘菌・中和液の散布システム:**
塩砂漠で収穫した『うま味結晶』を触媒として使い、リルのスライム成分と、前々回の『スモークオイル』を混合した【対粘菌・超溶解中和剤】を要塞の外壁全体に常時噴射するシステムを構築。これにより、要塞に触れた粘菌は、消化される前に強制的に「良質なアミノ酸スープ」へと還元される。
2. **粘菌回収・精製ライン:**
外壁を覆う粘菌を、そのままの状態で「吸い上げる」ための高粘度バキュームシステムを甲板の全周に配置。要塞自体を巨大な「捕食者」に作り変える。
3. **武器のカスタマイズ:**
ジンとエリスの武器には、粘菌の核を確実に刺し貫くための【超高周波・神経切断刃】を付与。また、マリアの聖光を「浄化の炎」として要塞の外殻に巡らせ、粘菌の再生を封じる。
「いいか、今回の敵は砂漠のように『狩る』だけじゃ終わらねぇ。ヤツらの増殖スピードを逆手に取り、要塞の外壁で常に『粘菌のスープ』を錬成し続けるんだ。食い物がある限り、俺たちの燃料(魔力)と食材は無限に補充される!」
「ガッハッハ! 腐った粘菌も食い物に変えるなんて、トウヤの頭の中はまさに神の領域だな!」
「……やれやれ。まあ、面白そうだ。俺の短剣が、どれだけあのブヨブヨを削ぎ落とせるか試させてもらう」
ジンが静かに短剣を研ぎ始める。
トウヤは、黄金の大剣に最後に「特製のスパイス」を塗り込み、不敵に大陸の奥深くを見据えた。
「準備はいいな? これより、大宴殿は世界最大の『捕食者』として、粘菌の回廊に突入する! 栄養満点のバイオ食材、一滴残らず腹の中へぶち込んでやるぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
要塞の外壁に「中和・消化システム」を施し、不屈の食欲を糧に粘菌の海へと挑む準備を整えた開拓者たち。
最強の移動料亭要塞『星海大宴殿』は、次なる深淵、『奈落の粘菌回廊』の入り口へ向けて、その捕食の牙を剥き出しにしながら、静かに、そして力強くその巨体を滑り込ませていくのであった。
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