第474話 白銀のうま味砂漠・大蹂躙(究極のサビ止め防具と、一週間の生ハム・出汁枯渇作戦)
第474話 白銀のうま味砂漠・大蹂躙(究極のサビ止め防具と、一週間の生ハム・出汁枯渇作戦)
次なる絶景『星海うま味の結晶塩砂漠』へと突入した移動料亭要塞『星海大宴殿』。
彼らを待ち受けていたのは、致死量の塩分とアミノ酸が混じり合う、金属とインフラを瞬時に腐食させる最凶の【超特濃・結晶塩の嵐】であった。
ズゴォォォォォォォォォォォッッ!!!!
真っ白な塩の竜巻が、侵入者である大宴殿を容赦なく飲み込む。
普通の要塞であれば、数秒で外壁が赤茶色に錆びつき、魔導回路がショートして崩壊するほどの圧倒的な塩害環境。
しかし、要塞のブリッジに立つ機神サイラスの口元には、絶対的な自信に満ちた笑みが浮かんでいた。
『……外壁センサー、異常なし。魔導パイプライン、腐食率ゼロパーセント。マリア殿の聖光を焼き付けた【星海耐塩・スモーク・シールド液】のラミネート皮膜が、塩の微粒子を物理レベルで100%弾き返している!』
「ハッハッハ! 当たり前だ! 俺の現代知識と異世界スモークオイルが合わさった『最強のサビ止め(アンダーコート)』だぜ! これで塩害の心配は完全にゼロだ!!」
トウヤが甲板の最前線に立ち、猛烈な塩の嵐を心地よい潮風のように全身で受け止めながら、黄金の大剣を抜き放った。大剣の刃もまた、黄金色の防錆コーティングによって美しく輝き、塩の微粒子が触れたそばからツルツルと滑り落ちていく。
「さぁ野郎ども! 要塞も武器もサビる心配はねぇ! この白銀の砂漠に眠る『極上の生ハム』と『天然の出汁』を、一匹残らずお片付け(乱獲)するぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
第一フェーズ:生ハム猪の群れと、滑る刃の芸術
ズズズンッ! ズズズンッ!!
塩の砂丘を蹴り立て、猛烈な勢いで大宴殿に突撃してきたのは、体長十メートルを超える『星海結晶の生ハム猪』の特大群れであった。
その全身はダイヤモンドのような硬度を持つ「天然の塩結晶」で分厚くコーティングされ、並の武器では刃が塩に食い込んで摩耗し、一瞬でナマクラになってしまう厄介極まりない装甲だ。
「カッカッカ! 出たな歩く生ハム野郎! だが、今日の俺たちの武器は一味違うぜ!」
ガレスが、防錆加工を施された超重量戦斧を構えて大跳躍する。
「オラァッ! 【剛腕絶技・滑り峰打ち】!!」
ドゴォォォォンッ!!
ガレスの戦斧が、生ハム猪の分厚い塩の装甲に叩き込まれる。しかし、戦斧は装甲を「砕く」のではなく、コーティングされた刃が塩の結晶の分子結合をツルンッ! と『滑り』、衝撃だけを内部へ浸透させて猪を空中に大きくカチ上げた。
「ナイスパスですわガレスさん! 今度は私の出番ですわね!」
エリスが空中に舞い上がり、白銀のレイピアを閃かせる。
「【貴族剣技・神速生ハム・スライス】!」
シュパパパパパパパッ!!!
エリスのレイピアもまた、塩の結晶に一切の摩擦を起こすことなく、装甲の隙間を滑るように透過した。そして、その下にある『極限まで水分が抜け、うま味が超濃縮されたルビー色の豚肉(生ハム)』だけを、見事な一口サイズの極薄スライスへと空中で切り刻んでいく。
「……見事な切れ味だ。刃が塩に噛まないから、肉の繊維を1ミクロンも潰さずにシメられる」
影から現れたジンが、空中で解体された無数の生ハムスライスを、短剣の腹で受け止めて綺麗に整列させる。
「リル! サイラス! パッキングだ!!」
「プルルンッ!(はーい!!)」
リルが広げた浄化の膜に包まれた生ハムスライスを、サイラスのバキュームアームが一切の塩を余分に付着させることなく、猛烈な勢いで吸い込んでいく。
塩の鎧を纏った強靭な魔獣たちは、トウヤたちの「滑る刃」の前に、ただの『高級生ハムの原木』として次々と解体されていった。
第二フェーズ:サボテン烏賊と、うま味出汁のオアシス
「よし! 次はあそこのオアシスだ! 匂いで分かる、あそこはただの水じゃねぇ! グルタミン酸とイノシン酸が飽和した『特濃の出汁沼』だぞ!」
トウヤの指差す先、砂丘の窪みにあるオアシスからは、日本人が嗅げば一瞬で郷愁に駆られて気絶しそうなほどの、凄まじく芳醇な「カツオと昆布の合わせ出汁」のような香りが立ち昇っていた。
バシャァァァァァッ!!
大宴殿がオアシスに近づいた瞬間、出汁の沼から無数の巨大な触手が現れた。
体内に特濃スープを蓄え、自らの身を天然のスルメ(干物)状態にまでうま味凝縮させた魔獣『砂漠のサボテン烏賊』である。
「ハッハッハ! スルメイカが出汁の沼で泳いでやがる! 最高のマッチポンプじゃねぇか!」
トウヤが黄金の大剣を構えて甲板からダイブする。
「オラァッ! 【神速解体・スルメそうめん斬り】!!」
トウヤの大剣が、空空中で踊る巨大な触手を、瞬時に細長い「イカそうめん(スルメ状態)」へと切り刻む。そして切り裂かれたイカの体内から、黄金色に輝く究極の出汁スープが滝のように溢れ出した。
「マリア! ルミナ! 出汁を一滴もこぼすな!」
「女神の御名において! 【絶対断熱・スープボウル結界】!」
「精霊たち、一気に吸い上げてちょうだい!」
マリアの結界が空中で出汁を漏らさず受け止め、ルミナの風魔法がそれをサイラスの貯蔵タンクへと直接送り込む。
沼そのものも、大宴殿の巨大バキュームによって底の底まで啜り上げられ、オアシスは瞬く間に「空っぽの窪地」へと変貌した。
第三フェーズ:至高の結晶採取と、狂乱の一週間
「魔獣どもだけじゃねぇ! そこら中に生えてるタワーみたいな『うま味結晶』も全部引っこ抜くぞ!」
「フッ、任せておけ。空間ごと切り取ってやろう」
ゼノスが漆黒の魔力を放ち、数十メートル級のうま味結晶の根元を次元の刃でスパスパと切断する。それをクーが【重力制御】でふわりと浮かせ、甲板へと優しく積み上げていく。
塩害という最大の障害を「最強のサビ止め」で完全に無効化した大宴殿にとって、この星海うま味の結晶塩砂漠は、もはや一切の脅威が存在しない『完全なビュッフェ会場』であった。
そして、彼らの乱獲(お片付け)は、一日や二日では終わらなかった。
朝は、生ハム猪の大群を追い回して超薄切りスライスの山を築く。
昼は、出汁のオアシスを見つけては沼ごと啜り上げ、スルメ烏賊を収穫する。
夜は、積み上げたうま味結晶を砕きながら、大広間で『生ハムとスルメの出汁茶漬け』や『極上塩焼き肉』の狂乱の大宴会を開催する。
VIPルームの面々も、この一週間は狂ったように食べ続けた。
「あかん……この生ハム、噛めば噛むほど塩味とうま味が無限に湧き出てきよる……! 地球のイベリコ豚の最高峰ベジョータですら、この味の深みには勝てねぇ……!」
賢者ケンジが、生ハムの塩気で星海エールを樽ごと空にしながらむせび泣く。
「トウヤ殿! この出汁! この黄金のスープ! ワシの帝国の全シェフを釜茹でにしても、この深みは出せんぞォォッ!」
元皇帝が出汁のプールで泳ぎたいと泣き叫び、神様は「うま味の真理に到達しちゃったよぉ……」と後光を放ちながら気絶していた。
食えば食うほどにステータスと魔力が限界突破していく開拓者たちは、疲労を知らぬ永久機関と化し、三日目には砂漠の東半分を、五日目には西半分を完全に「更地」へと変えていった。
――そして、作戦開始からちょうど【一週間】が経過した日の夕刻。
『……トウヤ殿。氷室の第十拡張ストレージまで、完全にカンストした。生ハムスライス一千万枚、極上出汁スープ五十万トン、うま味結晶十万本。これ以上は、塩一粒すら入らない』
ブリッジのサイラスが、全システムの稼働率をアイドリング状態に落とし、深い達成感と共に報告した。
「よし! ならば乱獲はここまでだ!」
トウヤが甲板に立ち、黄金の大剣を鞘に納めた。ガレスも、エリスも、ジンも、全身に一切のサビや塩害を受けることなく、ツヤツヤの笑顔で息を吐く。
彼らが振り返った先に広がっていたのは――。
一週間前には無数の生ハム猪が走り回り、巨大なうま味タワーが乱立し、オアシスが点在していた「最凶の極限環境」。
しかし今や、そこには魔獣の一匹も、結晶の欠片一つも、出汁の一滴すらも残されていない。ただ風が吹き抜けるだけの、どこまでも平坦で無害な「ただの白い砂場」が広がっているだけであった。
「ふぅ……! 食いきったな! 完璧な『お片付け』だ!」
トウヤが額の汗を拭い、満ち足りた笑みを浮かべる。
「本当に、一週間でこの広大な砂漠を干上がらせてしまいましたわね……。私たちの胃袋と大宴殿の収納力、恐ろしいですわ」
マリアが呆れたように笑いながら、杖の光を優しく収めた。
「これで料理の『基本』である塩とダシ、そして最高の保存食(生ハム)が一生分以上手に入ったぜ! 次のエリアがどんなゲテモノ環境だろうと、この塩と出汁があれば極上のフルコースに変えてみせる!!」
パンパンに膨れ上がった氷室と、絶対サビない黄金の装甲を手に入れた移動料亭要塞『星海大宴殿』。
世界を構成する究極の「うま味」を完全にしゃぶり尽くした規格外の開拓者たちは、沈みゆく夕日に向かって、次なる未知の絶景と美食への渇望を胸に、高らかな凱歌を上げるのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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