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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第473話 白銀のうま味砂漠と、要塞丸ごと耐塩防腐(サビ止め)コーティング作戦

第473話 白銀のうま味砂漠と、要塞丸ごと耐塩防腐(サビ止め)コーティング作戦

『星海機巧の超巨大歯車大陸』を文字通り真っ平らな鉄板へと平定し、深海の至宝を最高級のスモークオイルで揚げ尽くした移動料亭要塞『星海大宴殿』。

宇宙一高カロリーな大宴会から一夜明け、要塞は静かに、しかし凄まじい推進力で機械の大陸を離れ、次なる未知の座標へと向けて爆走を続けていた。

「ぷはぁ……。流石に昨日の揚げ物祭りの後は、胃袋にガツンと残るな。リルの冷たいレモン水が五臓六腑に染み渡るぜ」

大宴殿の最上階・展望作戦会議室。

トウヤは、スライムのリルが体内でキンキンに冷やして注いでくれた天然レモン水を飲み干し、ふぅと満足げな溜息をついた。

隣では、神狼クロが昨日食べ残した(といってもトウヤが夜食用にキープしておいた)深淵鮪のトロカツの端切れを、サクサクと小気味よい音を立てて美味そうに咀嚼している。

「トウヤさん、贅沢な悩みを言わないでくださいませ。あんなに美味しいものを毎日お腹いっぱい食べられるなんて、かつてのわたくしの没落時代からすれば、神界の奇跡以外の何物でもありませんわよ」

エリスが白銀のレイピアの手入れをしながら、呆れたように、しかし嬉しそうに微笑む。彼らの肌は、これまでの神話級フルコースによる限界突破バフの恩恵で、文字通りピカピカに光り輝いていた。

『……全員、席についてくれ。大宴殿が間もなく、次なる未知のエリアへと突入する。前方の視覚遮蔽ハッチを開放するぞ』

ブリッジからメインコンソールを操作するサイラスの声が室内に響くと、正面の超巨大な鋼鉄製シャッターが、重々しい音を立てて左右へと滑り開いた。

窓の外に広がったその光景に、開拓者たちは一斉に息を呑んだ。

【第一部:次なる地平・星海うま味の結晶塩砂漠】

「……真っ白。雪、ですの?」

マリアが窓に顔を近づけ、蒼い瞳を丸くする。

彼らの眼前に広がっていたのは、地平線の彼方まで遮るものなく続く、一面の白銀の世界であった。

しかし、それは冷たい雪の大地ではない。紅蓮の大地とも、深海とも違う、どこか乾いた、そして……信じられないほどに「食欲を直接刺激する香ばしい空気」を孕んだ異界。

「いや、雪じゃねぇ。この匂い……そして空気中に漂う微粒子。これ、全部『塩』だ!!」

トウヤが【美食神の鑑定眼】を限界まで発動させ、窓の外の大地を睨みつける。

次なるエリア――『星海うま味の結晶塩砂漠アストラル・サボリィ・ソルト・デザート』。

そこは、世界のあらゆる「塩分」と「アミノ酸(旨味成分)」が地殻変動によって超濃縮され、結晶化して堆積した、料理人にとっての究極の聖地にして、生命にとっては最凶の極限環境であった。

大地を構成する白い砂の正体は、1粒がダイヤモンドの如き硬度と純度を持つ『星海結晶岩塩アストラル・ソルト』。そして、時折砂丘の合間からタワーのようにそびえ立つ半透明の巨大結晶は、グルタミン酸やイノシン酸といった魔法的うま味成分が結晶化した『至高のうま味結晶サボリィ・クリスタル』だったのである。

「カッカッカ! 塩の砂漠だと!? 料理に塩は絶対に欠かせねぇからな、トウヤが泣いて喜ぶエリアじゃねぇか!」

ガレスが窓ガラスに鼻を押し付け、牙を剥き出しにして笑う。

「ええ、料理の基本にして頂点、それが塩ですわ! どんなに良い肉や魚があっても、最高の塩がなければ画竜点睛を欠きますもの!」

エリスも、美食の神眼を輝かせて激しく同意する。

しかし、トウヤの表情は、ただ歓喜するだけのものではなかった。彼は腕を組み、鋭い目で砂漠の生態系グラフィックを観察し始める。

「ああ、塩の品質は間違いなく宇宙一だ。だがな、これだけ塩分とうま味が濃縮されてるってことは、そこに生息してる魔獣どもは……とんでもねぇことになってるぞ」

トウヤがホログラムマップのいくつかのポイントを指差すと、そこには砂漠の過酷な環境に適応した、異形の魔獣たちの姿が映し出された。

白銀の塩砂を蹴立てて爆走する、体長十メートルを超える巨大なイノシシの魔獣。

全身が天然の塩結晶によって何重にもコーティングされ、その過酷な浸透圧に耐え抜いた結果、肉体の水分が極限まで抜け、旨味だけが超濃縮された『星海結晶の生ハムソルト・ハム・タウロス』。

さらには、砂漠のオアシス(すべてが特濃のうま味出汁で満たされた底なし沼)に潜む、体内に最高級の出汁スープを蓄えた『砂漠のサボテン烏賊スルメ・クラーケン』。

「泳いでるだけで生ハムになってる猪に、出汁の詰まったイカだと……!? おいおい、機械の次は、最初から『加工完了状態』の極上食材が歩いてやがるのかよ!」

ガレスがゴクリと喉を鳴らす。

【第二部:居候たちの乱入と、塩害という最大の問題点】

「ちょっと待ったぁぁぁッ! その生ハムと出汁、創造神わたしも絶対に食べるからね!!」

バタンッ! と会議室の扉が勢いよく開き、ルームウェア姿にマイ箸を持った神様が、フワフワと浮遊しながら突入してきた。その後ろからは、アルカディア上皇、エルドリア元皇帝、そして賢者ケンジという「いつもの居候VIPカルテット」が、一応の威厳を保ちつつも、ヨダレを隠しきれない顔でゾロゾロと入ってくる。

「トウヤ殿! 部屋のモニターで『生ハム猪』という単語が聞こえた瞬間に、ワシの隠居生活の血が騒ぎ出したわ! 普段は部屋で別々に静かに食しておるが、このような新エリアの開拓会議、国を興すのと同等の熱量があるではないか!」

アルカディア上皇が拳を握りしめる。

「ガッハッハ! 娘の現皇帝(女帝)へのお土産に、これ以上のものは存在せん! 塩漬けの極上肉、これぞ帝国の戦士たちが最も愛する極上のスタミナ食よ!」

エルドリア元皇帝もナイフをジャキッと構える。

「……ハァ、お前らなぁ。ここはただのご馳走の山じゃねぇぞ。地球の『死海』や『ウユニ塩湖』を遥かに超えた、致死量の塩分が支配する地獄だ」

賢者ケンジが眼鏡を指で押し上げ、シリアスな声でホログラムの数値を指し示した。

「トウヤ、サイラス。俺の魔法眼で見ても、あの砂漠から立ち昇る『塩の魔力(浸透圧)』は異常だ。大宴殿がそのまま突っ込めば、一瞬で水分を吸い尽くされて干からびるか、それとも……」

『……ああ、ケンジ殿の指摘は正しい』

画面上のサイラスが重々しく頷く。

『最大の問題は**【致命的な塩害(インフラ腐食)】**だ。大宴殿は先のアップデートで機巧化し、合金装甲や魔導パイプラインが剥き出しになっている。あの砂漠の超特濃な結晶塩のソルト・ストームを浴びれば、要塞の全金属部分が一瞬で錆び付き、魔導回路がショートして、一歩も動けなくなる。当然、キッチン設備のインフラも全滅だ』

「な、なんですって……!? 私たちの聖なる台所が、サビだらけになって使えなくなるというのですか!?」

マリアが悲鳴のような声を上げる。

そう、これまでの異常環境は「熱」や「冷気」であり、マリアの断熱結界やゼノスの空間隔離で防ぐことができた。しかし、今回の敵は「微細な塩の結晶の物理的付着と、容赦のない腐食魔力」。結界の僅かな隙間からでも、空気と共に塩分が侵入すれば、要塞の内側からボロボロに崩壊していくのだ。

「追いかけることも、吸い込むこともできねぇ。装甲をガチガチにしても、ネジの隙間から塩が入れば終わりか……。相変わらず、大迷宮の深層ってのは料理人に優しくねぇな」

トウヤが頭を掻きむしり、ギリリと歯を鳴らす。

【第三部:現代知識の逆転劇、【超魔導・サビ止めコーティング】の仕込み】

「……いや、待てよ」

トウヤの瞳に、再びあの『狂気的な発明家(現代料理人)』のギラギラとした光が宿った。

「塩害が問題なら、地球の車や船がやってる最強の対策をやればいい。――**『アンダーコート(防錆サビ止めコーティング)』**だ!!」

「あんんだーこーと……? サビ止め、ですか?」

ルミナが小首を傾げる。

「そうだ! 金属の表面を、塩分を100%弾き返す『特殊な油の膜』で完全にラミネートしちまえば、塩の嵐が吹こうが、どれだけ結晶が擦れ合おうが、大宴殿は1ミリも錆びねぇし腐食もしねぇ!」

トウヤがニヤリと笑い、コンソールへ向かって指示を出す。

「サイラス! 昨日の歯車大陸の『お片付け』で、ストレージに売るほど溜まってるアレを全部引っ張り出せ!」

『……なるほど! 殺戮機巧キリング・マキナから抽出した、あの何万年も高圧下で練り上げられた【極上機巧スモークオイル】か!』

サイラスの眼鏡の奥の瞳が、トウヤの意図を理解してカッと見開かれた。

「その通り! あのオイルは、超硬度の星海合金の潤滑油として使われていた、宇宙一粘り気が強くて熱に強い、完璧な不活性油だ! あのスモークオイルをベースに、リルの『スライム分泌液(高分子弾性皮膜)』をブレンドする。これで、塩分を絶対に透過させない究極の防錆ペーストが完成する!」

「プルルンッ!(リルのネバネバ、いっぱい出すよー!)」

リルがやる気満々で全身を波打たせる。

「さらに仕上げだ! マリアの光魔法【聖者の不変ホーリー・プロテクト】を、そのコーティング液の分子に直接エンチャントして、要塞の表面に焼き付ける!」

「お任せくださいませトウヤさん! 要塞の輝き、1ミクロンも曇らせはしませんわ!」

作戦が決まれば、大宴殿の開拓者たちの行動はマッハであった。

居候の神様や王たちも「美味い生ハムのためなら何でも手伝うよ!」と、魔力の供給や資材の運搬に自ら名乗りを上げる。

大宴殿の超巨大ファクトリーがフル稼働を始め、抽出されたスモークオイルとリルの弾性液が超高速で撹拌され、黄金色に輝くドロリとした究極の防錆コーティング剤【星海耐塩・スモーク・シールド液】が何万ガロンも錬成されていく。

「よしガレス! 要塞の外壁全体に、このシールド液をぶっかけるぞ! お前の戦斧の超振動を使って、液体の粒子を外壁のネジの隙間の奥の奥まで完璧に浸透させろ!」

「ガッハッハ! 缶切りの次は『ペンキ塗り』か! 腕が鳴るぜ、任せな!!」

外壁に大量に噴射された黄金のシールド液。そこへガレスが超高周波の振動を響かせると、液体はまるで生き物のように大宴殿の金属装甲の細孔へと滑り込み、完全に一体化していく。仕上げにマリアが純白の聖光を照射すると、シールド液は一瞬にして「ダイヤモンドをも弾く、完全耐塩の透明な防護ガラス皮膜」へと硬化した。

さらに、彼らの準備は要塞の防護だけに留まらない。

「ジン、エリス! お前たちの武器にも、この塩砂漠専用の加工を施すぞ」

トウヤが二人の刃に、スモークオイルの成分を魔力で焼き付ける。

「あの砂漠の魔獣どもは塩の鎧を着ている。普通に斬れば刃が塩分で摩耗してナマクラになるが、このコーティングがあれば、刃が塩の結晶の分子結合を滑らかに『滑り落ちる』。つまり、塩の殻だけを綺麗に受け流して、中の肉だけをシメられるって寸法だ」

「……完璧。これで塩の生ハムも、私の短剣ナイフで綺麗にスライスできる」

ジンが影の中で短剣をクルリと回し、満足げに目を細める。

「ふふっ、これならドレスの裾が塩でザラザラになる心配もありませんわね。淑女の狩り、準備完了ですわ」

エリスも、防錆加工された白銀のレイピアを美しく正眼に構えた。

夕刻を迎える頃には、移動料亭要塞『星海大宴殿』は、全身を黄金の防腐オーラで包み込んだ、塩害を100%無効化する**【弩級・耐塩開拓プラットフォーム】**へと完全な進化を遂げていた。

「よし、準備はすべて整ったな!!」

要塞の最先端デッキに立ち、防錆仕様となった黄金の大剣を夕日に向かって抜き放ったトウヤが、眼前に広がる白銀のうま味砂漠を睨みつける。

「どんなに塩分が強かろうが、全部俺たちのフルコースの『最高の味付け(下味)』に変えてやる! 明日は朝から、あの砂漠の生ハムを根こそぎお片付け(収穫)して、最高のディナーを仕込むぞォォォッ!!」

「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」

居候VIPたちをも巻き込んだ圧倒的な熱量と、現代知識の防錆テクノロジーによって、最凶の塩害環境を「ただの塩調味料の山」へと変え去った規格外の開拓者たち。

移動料亭要塞『星海大宴殿』は、白銀に輝く結晶塩の砂漠へと向けて、明日の大蹂躙(大乱獲)への雄叫びと共に、轟音を上げて突入を開始するのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく


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