第470話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その6:全自動レンジアップの完了と、極上スモークオイルの収穫祭)
第470話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その6:全自動レンジアップの完了と、極上スモークオイルの収穫祭)
『起爆!!』
トウヤの合図と共に、数キロ四方に及ぶ超特大の鉄板まな板(平定された歯車大陸)の上で、凄まじい現象が巻き起こった。
ルミナとマリアの魔法によって広域散布された【特製・電磁スパイス】。紫金松露の雷磁気とハバネロ蓮根の超熱量が生み出した不可視の高周波が、分厚い星海合金の装甲をすり抜け、殺戮機巧たちの内部構造を直接焼き切ったのである。
バチバチバチバチッ……! ピタッ。
先ほどまで大宴殿に殺意を向けていた何万という機械の軍勢が、まるでコンセントを抜かれたかのように一斉に崩れ落ち、完全な機能停止(気絶)状態へと陥った。
第一フェーズ:レンジアップ完了の合図と、溢れ出す芳醇な香り
「ふぅ……。どうやら『チン』できたみたいだな」
トウヤが満足げに息を吐き、黄金の大剣を肩に担ぐ。
静寂に包まれた鋼鉄の大地。
しかし、その静寂はすぐに、暴力的なまでの「食欲をそそる音と匂い」によって破られた。
プシュゥゥゥゥゥゥッ……!!
機能停止したマキナたちの装甲の継ぎ目や排気口から、黄金色に輝く高温の蒸気が次々と噴き出し始めたのだ。
「おおおっ……! トウヤさん、すっごく良い匂いがしますわ!」
エリスが両手を頬に当て、うっとりとした表情を浮かべる。
「これまでの機械のオイル臭さとは全然違います! まるで、最高級のオークの薪で何日も燻したような……深みのあるスモークの香りに、ピリッとしたスパイスの刺激が混ざり合って……!」
「ワォォォォンッ!(トウヤ! 中身がすっげぇ美味そうな温度になってるぞ!)」
クロが尻尾を千切れんばかりに振りながら、一番近くで倒れているサソリ型マキナの周りをピョンピョンと跳ね回る。
「ガッハッハ! そりゃそうだろ! トウヤの野郎、あの硬い装甲を『電子レンジの箱』代わりにしやがったんだからな!」
ガレスが大笑いしながら、サソリ型マキナに近づく。すでに抵抗の意思を失ったただの「鉄の箱」である。ガレスは超振動戦斧を振るうまでもなく、素手で装甲の継ぎ目に指を引っかけ、「フンッ!」と力任せに背中の甲羅(蓋)をパカッと開け放った。
ボワァァァァァァッ!!
蓋が開いた瞬間、中に溜まっていた濃厚なスモークの蒸気が一気に解放される。
現れたのは、美しく赤熱した『紅蓮の魔力結晶』と、沸騰寸前の最高の温度に加熱された、琥珀色の『極上スモークオイル』がタプタプに詰まったタンクであった。
「完璧だ……! ハバネロ成分の熱量が、オイルの香ばしさを極限まで引き出してる! これぞ、俺が求めていた『宇宙最強の調味料』だ!!」
トウヤが【美食神の鑑定眼】を輝かせ、ガッツポーズを決める。
第二フェーズ:大収穫祭の幕開け
「よし野郎ども! 下ごしらえは完全に終わった! 今、この大陸に転がってる鉄クズどもは、全部『極上の熱々スモークオイル缶』だ! 冷める前に一滴残らず収穫(お片付け)するぞォォッ!!」
トウヤの号令と共に、大宴殿の甲板から開拓者たちが一斉に飛び出した。
ここからは、一切の危険がない「全自動収穫フェーズ」である。
「カッカッカ! 開けるのは俺に任せな! 【連続プルタブ飛ばし・手動】だァァッ!」
ガレスが広大な鉄板まな板の上を爆走しながら、倒れているマキナたちの装甲(蓋)を次々と素手で放り投げていく。
「プルルンッ!(オイルいっぱい飲むー!)」
「ガウッ!(こっちは任せろー!)」
蓋が開いたマキナのタンクへ、リルとクロがサイラスのバキュームホースを咥えて飛び込む。
シュゴォォォォォォッ!! という豪快な吸引音と共に、黄金に輝く熱々のスモークオイルと紅蓮結晶が、大宴殿のストレージへと猛烈な勢いで吸い上げられていく。
「わたくしは、要塞蟹型の『機巧蟹味噌(特濃ペーストオイル)』を回収しますわ! 【貴族剣技・精密スプーンカット】!」
エリスのレイピアが閃き、蟹型マキナの複雑な駆動系の奥に隠された、最も濃密なオイルの塊だけを綺麗にすくい出す。
「……関節部に付着した『星海合金の微粒子』も、摩擦熱で焙煎されて良いスパイスになっているな。これも回収だ」
ジンが短剣を器用に使いこなし、オイルだけでなく、料理の隠し味になりそうな副産物を次々と小瓶に回収していく。
ゼノスとサイラスによって「真っ平らな調理台」と化し、トウヤの電磁スパイスによって「レンジアップ」された歯車大陸。そこは今や、宇宙一豪華なオイルとスパイスのバイキング会場と化していた。
第三フェーズ:味見と、驚愕の化学反応
収穫作業が一段落した頃。
大宴殿の甲板に特設された野外キッチンでは、トウヤが抽出したての『極上スモークオイル』を小鍋で軽く熱していた。
「よし、とりあえず味見してみるか。ケンジのおっさん! ちょっと前の階層で獲れた『深淵鮪の赤身』を出してくれ!」
「お、おう。これだな」
賢者ケンジが異空庫から、ルミナの魔法で鮮度を完璧に保たれた深淵鮪の極上赤身ブロックを取り出す。トウヤはそれを薄くスライスし、大皿に並べた。
「刺身も良いが、ここに熱々の『機巧スモークオイル』を回しかけて……岩塩と、ジンの集めた合金焙煎スパイスを少々振る!」
ジウゥゥゥゥゥッ……!!!
赤身の刺身に熱々のスモークオイルが触れた瞬間、食欲のタガを外すような凄まじい香ばしさが爆発した。表面だけが瞬時に炙り(カルパッチョ)状態となり、オイルの燻製香が鮪の旨味を何十倍にも引き上げている。
「完成だ! 【深淵鮪のスモークオイル・カルパッチョ 〜歯車大陸の熱々仕立て〜】! 食ってみろ!」
「いただきますわ!」
エリスが真っ先にフォークを突き刺し、口へ運ぶ。
その瞬間――彼女の瞳が見開かれ、全身から桜色のオーラが噴き出した。
「んんんんんっっっ!!! な、なんですのこれ!? まるで、何十年も熟成させた最高級のイベリコ豚の生ハムと、極上の海鮮の旨味が口の中で一緒に踊り狂ってますわ!!」
「マジかよ……ッ!」
ガレスも手づかみで口に放り込む。
「美味ェェェェッ!! 鮪のサッパリした赤身に、このガツンとくる燻製のパンチ! 噛んだ瞬間に香ばしいジュースが溢れてきて、酒が無限に飲めちまう味だぜ!!」
「……信じられん。ただの機械の潤滑油が、地球のミシュラン三ツ星レストランのシェフが血眼になって欲しがる『究極のフレーバーオイル』に化けやがった」
ケンジが震える手で二切れ目を口に運びながら、頭を抱える。
「ハッハッハ! だから言っただろ? 機械のバケモノは最高のスパイスとオイルの宝庫だってな!」
トウヤが満足げに胸を張り、自身もカルパッチョを美味そうに平らげる。
第四フェーズ:次なる狂気、大陸丸ごと『超特大フライパン』構想
「さて……」
トウヤが【美食神の鑑定眼】を眼前の真っ平らな鉄板大陸へと向ける。
数万体のマキナからのオイル回収は順調に進み、大宴殿のストレージは極上の調味料で満たされつつあった。しかし、トウヤの目はまだ「料理の完成」を見ていなかった。
「なぁお前ら。せっかくゼノスがこの大陸を『真っ平らな熱々鉄板』にしてくれて、俺が『極上オイル』を大量に抽出したんだ。これだけで終わらせるなんて、料理人の名が廃ると思わねぇか?」
トウヤの口角が、どこまでも極悪に吊り上がる。
その表情を見たサイラスが、コンソールの奥でピクリと眉を動かした。
『……嫌な予感がするな。トウヤ殿、まさかとは思うが』
「ああ、そのまさかだ! ここには摂氏数千度を保つ『超特大の鉄板(まな板)』がある! そして、俺たちの手元には大量の『極上スモークオイル』と、前の階層で獲りすぎた『深海の特大食材』がある!」
トウヤが両手を大きく広げ、狂気的な熱量で宣言した。
「これより最終フェーズに移行する! この熱々の歯車大陸全体を【超特大のフライパン】に見立て、抽出したスモークオイルの海に深海食材をブチ込む! やるぞお前ら!! 宇宙最大規模の【星海樹海鮮の超特大・絶品ディープフライ(揚げ物)&スモーク炒め】の開宴だァァァッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
機械の軍団を電子レンジでチンして調味料へと変え、次はその大地そのものを巨大なフライパンとして再利用する。
規格外の開拓者たちの「胃袋と狂気」は留まるところを知らず、歯車大陸を巻き込んだ前代未聞の超絶クッキングは、ついに真のクライマックス(大宴会)へと突入しようとしていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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