第469話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その5:対機械用『電磁スパイス』の錬成と、電子レンジ理論の幕開け)
第469話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その5:対機械用『電磁スパイス』の錬成と、電子レンジ理論の幕開け)
魔王ゼノスの【絶対空間支配・星海平定ノ陣】によって、山脈のように隆起し暴走していた巨大歯車群は、一切の起伏を持たない数キロメートル四方に及ぶ『超特大の熱々鉄板(まな板)』へと強制変形させられた。
赤熱した星海合金の表面からは、破裂したパイプから漏れ出した機巧オイルが「ジウゥゥゥゥッ……!」と心地よい音を立てて煮えたぎり、極上のスモーク(燻製)の香りが大陸全土を包み込んでいる。
「ガッハッハ! マジでただのデカい鉄板になっちまいやがった! だがトウヤ、歯車が止まって平らになったとはいえ、まだあちこちに『中身入り』の鉄クズどもがウヨウヨ残ってるぞ!」
ガレスが、平定された大地の上でピクピクと稼働を続ける殺戮機巧の群れを指差す。
大陸のシステムエラーによって動きを制限されながらも、超硬度の装甲に身を包んだ無数のマキナたちは、未だ大宴殿を標的としてターゲティングし、砲門やブレードを向けていた。
「ああ、分かってる! ガレスが一つずつ『缶切り』していくのも良いが、これだけ数がいると時間がかかりすぎる。だからこそ、ここからは俺の『現代知識』と『魔法の調味料』で、あの鉄クズどもを一瞬で【調理完了状態】に持っていくんだよ!」
トウヤは黄金の大剣を背中に納め、代わりに巨大なすり鉢と乳棒を取り出した。
大宴殿の最前線デッキは、すでに彼専用の『特設野外キッチン』と化している。
第一フェーズ:紫金松露とハバネロ蓮根の悪魔的調合
「いいかお前ら、機械ってのは外側(装甲)は無駄に硬いが、内側(回路)は熱と電磁波にすこぶる弱い! 地球の電子レンジと同じ原理で、装甲をすり抜けて中身だけをチンしてやれば、ヤツらは一切の抵抗を失い、さらに中身の『極上オイル』が最高の温度に温まるって寸法だ!」
そう豪語しながら、トウヤがすり鉢の中に放り込んだのは、これまでの階層で手に入れた二つの強烈な食材であった。
一つは、雷雲の迷宮で採取した、触れるだけで強力な磁気と放電を引き起こす『星海磁雷の紫金松露』。
もう一つは、紅蓮結晶地帯のマグマの中で育った、暴力的すぎるカプサイシンと熱量を持つ『ハバネロ蓮根』の乾燥粉末である。
「この紫金松露の放つ『磁気帯びの雷魔力』と、ハバネロ蓮根の『超発熱成分』。これを俺の【解体刃】のオーラで極限まで細かくすり潰し、結合させる!」
ゴリゴリゴリゴリッ……!!!
トウヤが凄まじい腕力と魔力で乳棒を回すと、すり鉢の中から「バチバチバチッ!」という青白い放電現象と共に、鼻を突き抜けるような刺激的かつ芳醇なトリュフの香りが爆発的に広がる。
「か、辛っ! そしてすっごく良い匂いですわ!」
横で見守っていたエリスが、くしゃみを堪えながらもその香りの虜になっていた。
「完成だ! 名付けて【特製・電磁スパイス】!!」
トウヤがすりこぎを掲げると、鉢の中には、青白い火花を散らしながらギラギラと輝く、赤紫色の魔法の粉薬が山盛りに完成していた。
第二フェーズ:精霊と聖女による『広域シーズニング』
「よし、スパイスの準備はできた! だが、これを俺の手でパラパラ撒いてたんじゃ日が暮れちまう。ルミナ、マリア! お前たちの魔法で、このまな板(大陸)全体に、このスパイスを均等に振りかけてくれ!」
「お任せなさい! 風の精霊たち、最高のシーズニング・タイムですわよ!」
ルミナが星屑の杖を天高く掲げる。
『ピュイィィィッ!』
彼女の呼びかけに応え、無数の不可視の風の精霊たちがトウヤのすり鉢の周囲に集まり、小さな竜巻を作り出した。
「わたくしも光の魔力で、スパイスの粒子をより細かく、そして機械の隙間に入り込みやすく拡散させますわ!」
マリアが白神の杖から純白のオーラを放ち、風の精霊たちが巻き上げたスパイスの粉末に光のコーティングを施していく。
「いけぇぇぇッ!! 【精霊と聖女の広域散布】!!」
ブワァァァァァァァァァァッッ!!!!!
ルミナとマリアの放った魔法の突風が、赤紫色の『電磁スパイス』を大空へと巻き上げた。
それはまるで、美しいオーロラのような光の帯となって、熱気渦巻く鉄板大陸の全域へと、きめ細やかな雨のように降り注いでいく。
第三フェーズ:電子レンジ理論の幕開け
サラサラサラ……。
赤紫色の光を帯びた微粒子が、平定された大地の上で身動きが取れずにいる数千、数万の『殺戮機巧』たちの分厚い合金装甲の上に、音もなく付着していく。
『……警告。未確認ノ粉塵物質が装甲ニ付着。分析……エラー。物理的損傷、ナシ』
マキナのAIは、装甲を溶かすわけでも砕くわけでもないその粉末を「無害」と判定し、排除行動を取らなかった。
「ハッハッハ! 機械の頭じゃ、料理の『下味』の意味なんて理解できねぇよな!」
トウヤが極悪な笑みを浮かべ、指をパチンと鳴らす。
「そのスパイスは、外側を傷つけるためのもんじゃない。中身を『温める』ためのスイッチだ。――起爆!!」
トウヤの合図と共に、マキナたちの装甲に付着した『電磁スパイス』が、内包していた紫金松露の磁気雷力と、ハバネロ蓮根の超熱量を一気に解放した。
バチバチバチバチバチィィィィィィィッッ!!!!!!
「なっ……なんだあれは!?」
ジンが驚きの声を上げる。
スパイスから発生した不可視の高周波電磁波が、分厚い星海合金の装甲をいとも容易く透過(すり抜け)し、マキナたちの内部構造へ直接作用し始めたのだ。
『エラー! エラー! 内部魔力回路、異常加熱! 動力炉ノ温度、規定値ヲ大幅ニ超越……ッ!』
『システム、強制シャットダウ――』
ガックンッ……! ピタッ。
先程まで大宴殿に砲門を向けていた超巨大な大百足型マキナや要塞蟹型マキナたちが、外傷一つ負うことなく、次々とその場に崩れ落ち、完全な機能停止(気絶)状態へと陥っていく。
「見ろよお前ら! これが地球の叡智『電子レンジ』と、異世界のスパイスが融合した奇跡の調理法だ!」
トウヤが、次々と活動を停止していく機械の大群を見下ろして高らかに笑う。
電磁波によって内部の精密回路だけが焼き切られ(ショートし)、同時にハバネロの成分によって、タンクの中に詰まった『極上スモークオイル』が、沸騰するギリギリの最高の温度へと「内側から加熱」されている。
広大な鉄板まな板の上で、一切の抵抗を失い、極上の香りを内側から漂わせる「熱々のスモークオイル缶」。
トウヤの常識外れの現代知識と魔法の融合は、強固な機械の軍団を、またしてもただの『極上の下ごしらえ済み食材』へと変貌させてしまったのである。
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