第468話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その4:連鎖崩壊のシンフォニーと、魔王が創りし超特大の鉄板まな板)
第468話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その4:連鎖崩壊のシンフォニーと、魔王が創りし超特大の鉄板まな板)
「ひれ伏せ、鉄屑ども。ここが貴様らの世界の終着点だ」
魔王ゼノスの放った神話級の空間魔術【絶対空間支配・漆黒ノ楔】。
それは、機神サイラスの超次元演算によって特定された、歯車大陸を粉砕機へと変貌させるための「三つのメインギア」の回転軸を、物理的破壊ではなく『次元の固定』という理不尽な力で強制停止させた。
ガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!!
ギィィィィィィィィィンッッ!!!!!
メインギアが突如として絶対停止したことにより、行き場を失った大陸の運動エネルギーが、凄まじい金属の悲鳴となって連鎖し始めた。
止まったメインギアに対し、他の数千、数万という巨大歯車たちがプログラム通りに無理やり噛み合おうと押し寄せ、自らの強靭な星海合金の歯をバキバキと砕きながら削り合っていく。
第一フェーズ:機神のハッキングと、自壊のオーケストラ
『……かかったな。ここからが本番だ』
大宴殿のブリッジで、サイラスが冷酷な笑みを浮かべ、さらにキーボードを猛烈な速度で叩き始める。
「サイラス! 何をしてるんだ?」
トウヤが通信機越しに尋ねる。
『ヤツらの防衛システムが、メインギアの停止によるエラーを復旧しようと、予備のサブギアへ動力を迂回させようとしている。だが、その迂回ルートの数式は既に書き換えた』
サイラスの周囲に展開された緑色のホログラムデータが、一斉に真っ赤な警告色へと反転する。
『私がヤツらのネットワークに流し込んだのは、すべての歯車の回転ベクトルを「逆」にする論理爆弾だ。今、この大陸の防衛システムは、自らの手で自らの首を絞め上げている』
ズガァァァァァァァァァァンッッ!!!!
サイラスの言葉を裏付けるかのように、頭上を覆っていた超巨大な歯車群が、次々と逆回転を始め、順回転を止められない別の歯車と正面衝突を引き起こした。
大陸全土が、まるで巨大な時計の内部で爆竹を鳴らしたかのような大混乱と連鎖崩壊に陥る。
「カッカッカ! サイラスの野郎、あのデカい鉄クズどもを完全にオモチャにしちまいやがった!」
ガレスが大爆笑しながら、降り注ぐ星海合金の破片を戦斧で弾き飛ばす。
「見てください! 歯車が削れ合って、ものすごい熱と煙が……!」
マリアが耐圧結界の出力を上げながら空を指差した。
第二フェーズ:極上スモークオイルの霧と、オーバーヒート
物理的な衝突と、行き場を失った紅蓮の魔力結晶のエネルギー。
その二つが掛け合わさった結果、歯車大陸の深部から、火山地帯をも凌駕する超高温の熱波が吹き上がり始めた。
プシュゥゥゥゥゥゥッッ!!!!
破裂した無数のパイプラインから、黄金色に輝く『機巧オイル(アストラル・オイル)』が間欠泉のように噴き出し、超高温の歯車に触れて一瞬にして気化していく。
それは単なる機械の排気ガスではない。何万年もの間、魔力と高圧で練り上げられた、極上の『スモーク(燻製)エキス』を含んだオイルの霧であった。
「す、すっげぇ匂いだ……! まるで最高級のベーコンを、さらに極上のオーク材で燻したような……!」
トウヤが【美食神の鑑定眼】を輝かせ、鼻腔をくすぐる暴力的なまでに香ばしい匂いに喉を鳴らす。
『……大陸の広域防衛システム、完全沈黙。全域の温度上昇を確認。環境温度、摂氏四千度を突破』
サイラスが眼鏡を押し上げ、完璧な仕事の完了を告げた。
「上出来だサイラス! あとはこの暴走して熱々になった鉄クズの大地を、俺が料理しやすいように『平ら』にするだけだ! 頼むぜ、ゼノス!」
トウヤの掛け声に、甲板の最前線に立つ魔王が優雅に一礼した。
第三フェーズ:魔王が創りし、超特大の『鉄板まな板』
「フッ……我が主の料理のために、世界を均すのも悪くない。空間よ、平伏せ」
ゼノスが両腕を広げ、全身から底知れぬ深淵の魔力を爆発させた。
漆黒のオーラが大宴殿を包み込み、そのまま暴走と崩壊を続ける巨大歯車の大地へと波状に広がっていく。
【絶対空間支配・星海平定ノ陣】!!
ゼノスの魔力が触れた瞬間。
山脈のように隆起し、複雑に噛み合って暴れていた超巨大歯車の残骸たちが、まるで見えない巨大なプレス機で押し潰されたかのように、一瞬にして「完全に平らな鋼鉄の大地」へと強制変形させられた。
ギギッ……ピタッ。
一切の起伏がなく、水平器を当てたかのように完璧なフラット。
そして、その鋼鉄の表面は、歯車の摩擦熱と紅蓮結晶の暴走により、ルビーのような美しい赤熱光を放っている。
「……完成したな」
ゼノスが杖を下ろし、静かに息を吐いた。
大宴殿の眼前に広がっていたのは、もはや機械仕掛けの迷宮などではない。
サイラスのハッキングによる自滅と、ゼノスの空間魔術による平定(フラット化)が生み出した、数キロメートル四方に及ぶ**『超特大の熱々鉄板(まな板)』**であった。
その表面からは、極上のスモークオイルが「ジウゥゥゥゥッ……!」と心地よい音を立てて煮えたぎり、最高の調理環境が整ったことを雄弁に物語っている。
「ハッハッハッハ!! 完璧だ! これ以上ない、宇宙一贅沢なキッチンステージの完成だぜェェッ!!」
トウヤが黄金の大剣を「包丁モード」へと変形させ、歓喜の咆哮を上げた。
「さぁ野郎ども! まな板と油の準備は整った! ここからは俺の出番だ! 現代知識の粋を集めた『電磁スパイス』で、この大陸に隠れてる機械のバケモノどもを、一匹残らず『極上のスモークロースト』にしてやるぞォォォッ!!」
「「「オオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」」」
狂戦士の缶切りショーから始まり、機神と魔王によるスケールオーバーな環境構築(ハッキング&空間ロック)によって、完全に『ただの調理台』へと成り下がった歯車大陸。
立ち昇る香ばしいオイルの煙の中、いよいよトウヤの狂気的「対機械用クッキング」が、その本性を現そうとしていた。
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