第467話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その3:広域防衛システムの起動と、機神の超次元演算)
第467話 歯車大陸の大蹂躙(8部構成・その3:広域防衛システムの起動と、機神の超次元演算)
狂戦士ガレスの『超振動・缶切りモード』によって、次々と極上の「スモークオイル缶」へと解体されていく殺戮機巧たち。
しかし、大陸の最下層から侵入し、我が物顔で解体ショーを繰り広げる『星海大宴殿』という異物に対し、ついに星海機巧の大陸そのものが本格的な排除へと乗り出した。
『……単体防衛兵器ニヨル排除、困難ト判断。プロトコル変更。広域防衛機構、起動』
無機質なシステム音声が天に反響した直後。
ギギギギギギギギギィィィィィィッッ!!!!!
鼓膜を突き破らんばかりの凄まじい金属の摩擦音が、大陸全土を揺るがした。
トウヤたちが見上げる頭上の空――雲海を裂いて回転していた雲を突くほどの超巨大歯車群が、その回転速度を異常なまでに引き上げたのだ。
「おいおい! なんだか景色全体が歪んで見えてきたぞ!」
甲板で黄金の大剣を構えるトウヤが、眉をひそめる。
大宴殿の周囲を囲んでいた数百、数千の巨大歯車が、本来の「大陸を浮遊・駆動させる」という目的を捨て、要塞を物理的に『すり潰す』ための超巨大な粉砕機へとフォーメーションを変化させてきたのである。
上下左右、あらゆる方向から山脈ほどの大きさを持つ鋼鉄の歯が、大宴殿の次元バンパーへと迫り来る。
「カッカッカ! さすがの俺も、大陸そのものに挟まれちゃあミンチになっちまうぜ!」
ガレスが巨大な戦斧を構え直すも、物理的な質量が桁違いすぎる。
だが、大宴殿のブリッジには、この狂った機械のパズルを前にしても、冷や汗一つ流さない男がいた。
『フッ……愚かな。自らの機構を複雑化させれば、それに乗じられる隙も増えるということが理解できていないようだな。所詮は古代のポンコツAIか』
メインコンソールに座るサイラスの眼鏡が、モニターの光を反射して鋭く光る。
彼の周囲には、数百枚ものホログラムウィンドウが展開され、超高速で流れる緑色のデータ文字列が滝のように表示されていた。
『トウヤ殿、慌てる必要はない。ヤツらの動きはデタラメに見えて、完全に「一定の規則性」に基づいている。あの巨大歯車群の駆動系、トルク、回転周期……そのすべての数式は、すでに私の頭脳が掌握した』
サイラスの言う通り、どれほど巨大で複雑に見えようと、歯車は歯車である。一つの歯が動けば、必ず隣の歯が連動する。その果てしない連鎖の法則を、元『影歩く者』の頭脳にして、現・移動要塞のメインシステムである機神サイラスが、超次元の魔導演算によって瞬時に解析し尽くしていたのだ。
『これより大宴殿の全魔力回路を、私の演算システムと直結させる。狙うは、あの粉砕フォーメーションの「起点」となる三つのメインギアだ』
サイラスの指が、キーボードの上で目にも留まらぬ速度で乱舞する。
『第一トルク、同調。第二ギア、回転周期の予測完了。第三ギア……エネルギーパスの逆流ポイントを特定。ゼノス殿! データリンクを送る!』
「……フッ、待っていたぞ機神よ」
大宴殿の甲板の最前線。
迫り来る鋼鉄の壁を前に、漆黒のマントを夜風に翻して立つ魔王ゼノスが、不敵な笑みを浮かべて右手を前に突き出した。
「機械仕掛けの運命など、私の空間支配の前ではただの児戯。次元の狭間に、その無様な歯車ごと縫い付けてやろう」
ゼノスの瞳が、深淵の闇色に発光する。
サイラスから送られた「歯車の急所」の座標データと、魔王の絶対的な空間支配魔術が、完璧な次元のリンクを果たした瞬間だった。
「ひれ伏せ、鉄屑ども。ここが貴様らの世界の終着点だ」
【絶対空間支配・漆黒ノ楔】!!!
ゼノスの手から放たれた漆黒の魔力波が、サイラスが特定した三つのメインギアの『回転軸(中心点)』へと音もなく突き刺さった。
それは物理的な破壊ではなく、歯車が存在する「空間の座標」そのものを、次元の楔で強制的に固定する神話級の空間魔術。
ギッ……!!
ガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!!
空間を固定されたメインギアが、急激に回転を停止する。
しかし、他の無数の歯車たちは止まることができず、動かないメインギアに無理やり噛み合おうとして、凄まじい悲鳴のような金属音を上げ始めた。
運動エネルギーの行き場を失った鋼鉄の歯車群が、互いに激しく削り合い、火花と高熱の機巧オイルを間欠泉のように噴き上げながら、次々と機能不全に陥っていく。
「素晴らしい連携ですわ、サイラスさん、ゼノスさん!」
マリアが白神の杖を握りしめ、パッと花が咲くような笑顔を見せた。
「ハッハッハ! 流石はうちの頭脳と魔王だ! これであの鬱陶しい巨大歯車どもは、完全にただの『動かないデカいまな板』に成り下がったぜ!」
トウヤが、機能停止し、静まり返った巨大歯車群を見渡して極悪な笑みを深める。
狂気的な回転で要塞をすり潰そうとした大陸のシステムは、サイラスの完璧な演算と、ゼノスの空間固定の前に、わずか数十秒で沈黙させられた。
だが、これで終わりではない。トウヤの視線は、歯車が停止したことで生じた「副産物」へと向けられていた。
「見ろよお前ら! 歯車が無理やり止まったせいで、あちこちのパイプが破裂して、極上の『機巧スモークオイル』が溢れ出してきてるぞ! しかも、動力の逃げ場がなくなったせいで、大陸全体の温度が急上昇してやがる!」
トウヤの【美食神の鑑定眼】が、赤く熱を帯びていく歯車大陸の深部から、未知なる食材の最高の「調理環境」が整いつつあることを見抜いていた。
「これより、ゼノスとサイラスが固定したこの『超巨大な熱々のまな板』の上で、メインディッシュの仕込みに入る! 俺の現代知識と『電磁スパイス』の出番だァァッ!!」
空間を制圧された機械仕掛けの大地を舞台に、トウヤの狂気的な『対機械用クッキング』が、いよいよその牙を剥こうとしていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、こちらの新作「異世界・天下布武 〜魔族を従えた織田信長は、今度こそ本能寺を回避する〜」不定期執筆になりますがよろしく
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